魔法少女アギア・ケルベロス~俺は地獄の番犬ではない   作:dwwyakata@2024

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目立つと言うことで、仕事衣装変更!

自作です。

それを着るだけで変身と称しています。

ただそれも、魔祓いが精神に影響を受けるので、それで良いのです。

本人が強そうだと思えば強い魔祓いの道具になるし、効果がありそうと思えば効果が出る服になります。





2、赤マントから白仮面へ

新しい仕事服は、ワンピースに似ている。ワンピースはいくつかよそ行きの服として買ってもらったけれど。

 

あんまり買っても成長期だから着れなくなると言って、燐火から張り切っているお父さんを止めたりもした。

 

ワンピースの上から、更に白い布を重ね着する。

 

これが古代ギリシャ風であるらしい。

 

後は本来だったらサンダルにちかい履き物なのだけれど。

 

今はスポーツシューズが良いだろうとケルベロスに言われて、そうした。確かに野山も走り回るのだ。

 

指先とかはしっかりガードしないといけないし。

 

買ってもらったスポーツシューズはとてもいいもので、軽やかに走り回ることができる。

 

クラスの一番速い男子をしのぐようになってから、明確に走ることに関して燐火は貪欲になってきた。

 

興味を持ったのだ。

 

それもあって、どうすれば更に速く、効率よく動けるかは研究を進めている。

 

とりあえず、着て走り回ってみて、問題がないかは確認をしておく。

 

赤マントの噂はなくなったが。

 

白い服を着た子供が時々走り回っている。

 

そういう噂があると、涼子に言われた。

 

すぐに噂は広まるのだなと思ったし。それに、意外とみられているものだなと思った。そう考えると、やはり格好を変えていて正解だったかもしれない。

 

青いアクセントを入れたかったけれど。

 

青系を好む燐火と気づかれるとまずい。

 

だから、当面はこれでいい。

 

今日も走り回って、アリバイを作っておく。それに体力作りにもちょうど良いのが事実だった。

 

さっさと着替えてから、家に戻る。

 

鍛錬をかねて走り回っているので、時間は無駄にならない。

 

現在まだ少し遅れている社会の勉強をする。

 

黙々と机に向かうことができるようになってきていて。

 

ケルベロスはそれをとても褒めてくれていた。

 

駄目な子はそれもできないらしい。

 

ただ、燐火の場合は、そもそもとして子供らしさとか言うのが欠落しているらしいから。

 

決して良いことではないのかもしれないが。

 

勉強をしていると、おかあさんがぐったりした様子で戻ってくる。

 

確か昨日は夜勤だったはずだ。

 

冷蔵庫から牛乳を出してくる。

 

おかあさんが椅子に座ると、黙々と飲む。

 

牛乳を嫌う人もいるけれど。

 

栄養としては申し分ない。

 

牛乳を飲み終えると、おかあさんは机にしばし突っ伏していた。燐火は淡々とドリルに戻る。

 

国語がしっかりできるようになってから、ドリルの効率はぐっと上がった。

 

今は遅れているのは社会と道徳くらいだ。

 

どっちもあまり興味が持てない分野だったけれど。

 

ケルベロスによると、世の中には善人面をしているあの孤児院の院長だとか金木の一家みたいなのがわんさかいて。

 

隙を見せるとだまされるという。

 

そういうのに引っかからないためにも、如何に無駄に思える勉強でもやっておく必要はあるし。

 

何よりも、こうやって勉強を常にする習慣をつけておくことで。

 

後々役に立つという。

 

「燐火ちゃん、もう勉強については見なくても大丈夫かしら?」

 

「大丈夫です。 おかあさんは疲れているのなら、すぐにでも休んでください」

 

「そうしたいのだけれど、ちょっと限界気味。 風呂入ってから休むわ」

 

「お風呂の中で寝ないように気をつけてください」

 

頷くと、ふらふらとお母さんはお風呂に向かう。

 

まだ若いのに。

 

「ああいう昼夜関係ない仕事は、恐ろしく体力を消耗する。 篠葉は体力がかなりある方だが、それでもこのままだと寿命を縮めるぞ」

 

ケルベロスが言う。

 

ちょっと燐火も心配になった。

 

とにかく、このままではあまりよくはなさそうだ。

 

でも、燐火にできることはあるだろうか。

 

「迷惑をかけるのが子供の仕事だっていうけれど、今のおかあさんにそれを受ける余裕はなさそうだね」

 

「そうだな。 だが、燐火に解決できない問題があったら、遠慮なく言うんだ。 二人とも、少し心配している。 あまりにも子供らしくない、とな」

 

「子供らしいっていうのが、猿になることだったら、燐火はそうはなりたくない」

 

「……そうだな」

 

事情を知っているケルベロスがそう寂しそうに言う。

 

ともかく、勉強だ。

 

おかあさんはちゃんとお風呂から出てくると、ふらふらと寝室に消えた。そのまま寝室で下手すると一日くらい寝ているのだろう。

 

この国のお巡りさんは、時々問題も起こすし、県によっては役立たずと悪名高いらしいけれど。

 

他の国に比べると随分とましだそうだ。

 

ドリルはできた。

 

おとうさんがちょうど配信が終わったので、採点してもらう。おとうさんは大体こういうのを採点できるからすごい。

 

今はこういう高い能力を持っている人が、率先してVtuberをやっているそうだ。

 

「こことここがちがうね」

 

「ここはわかりました。 こちらはどうして違うのかわかりません」

 

「こういうのは、問題を作った人が何を書いてほしいか、の問題なんだ。 燐火ちゃんがおかしいと思うのは、むしろ自然なことなんだよ。 だけれど、相手が何を考えているのか、ある程度洞察する。 そういうことが必要になるんだ」

 

なるほど。

 

ケルベロスと違って、燐火は相手が何を考えているかなんてわからない。

 

世の中には、全部自分の基準で考える人がいるらしいけれど。

 

燐火はそこまでのお馬鹿になるつもりはない。

 

ただ、こういう問題レベルだと、何を望んでいるか洞察することは不可能ではないのだとおとうさんは言う。

 

後にやるような受験だと、そういう洞察力が求められるものがでてくるのだそうだ。

 

国語なんかでも、とてもアバウトな問題があるなと燐火は思っていたけれど。

 

それも、相手の思想次第で、望んでいることを書いてあげなければいけないのか。それは難しい。

 

答えを聞いて、それについても詳しく説明を受ける。

 

頷いて、黙々とそれを把握する。

 

相手の言いたいことを洞察するのは有用だ。

 

ただそれを、自分の主観で決めつけるのは危なくて仕方がない。

 

実際それがどういう結果をもたらすか。

 

金木のあのカス一家を見ていて、燐火は理解している。

 

相手のお気持ちにあわせてなんでも周りがやらなければならない。

 

そういう思想の行き着く先は。

 

手当たり次第に暴力を振るう化け物の登場だ。あれはそういったゆがみが、形を為した存在そのものだ。

 

ドリルが終わったが、まだちょっと余力がある。

 

外にでて、柔道と合気の練習をしておく。

 

おとうさんはこういうのはからっきしなので、軽く動いて型をしっかり確認しておく。

 

ケルベロスがいくつかアドバイスをしてくれるので。

 

体重をかける位置や、どう体重を制御するか、重心はどうするかを細かく自分で調整していく。

 

集中してやっているので、周囲の声はあまりきこえない。

 

無意識でひょいとよけた。

 

鳥の糞が、今までいた地点に着弾していた。

 

「今のはよくよけたな」

 

「うん。 なんとなくよけられた」

 

「切り上げたら、着替えてくれ」

 

「わかった」

 

仕事だ。

 

おとうさんは防音室に戻っている。リュックに服を詰め込んで、ささっと新しい仕事着に着替える。

 

顔半分を覆うサングラスみたいなマスクもあって、どうせ素性はばれない。

 

そもそも怪人赤マントの噂の時から、二メートルもある巨人だなんてものがあったくらいである。

 

変な噂が拡散しすぎると、本当に日女さんの手を煩わせることになるかもしれないけれど。

 

いずれにしても、燐火が正体だとばれることはないだろう。

 

着替え終わる。

 

それから、さっと家を飛び出していた。

 

 

 

今日は商店街を通ることなく、裏道を疾走する。

 

野良猫が集まっていたが、それをひょいと飛び越える。逃げ散る暇すらなく、野良猫が呆然と見送っていた。

 

燐火は犬も猫も別に好きでも嫌いでもない。

 

そのまま走って、できるだけ人目を避ける。

 

即座に道を変えたのは、前の方に人が来る気配があったからだ。

 

五感というのは練習すれば研ぐことができるらしく。

 

燐火はその辺り、他の子供よりだいぶ鋭くなっている。

 

ケルベロスがいることも関係しているのかもしれないけれども。ともかく、人とぶつかるとか、そういうのは避ける。

 

「まだ小さいが、アギアと言われるといいのかもな」

 

「アギア?」

 

「聖人とでもいうような言葉だ。 今風に言えば聖女だな。 女性の宗教的な偉い人、くらいの意味になる。 本来だったら一神教で業績を残した人間を、そうギリシャでは呼んだのだが。 別に一神教でなくても、我らギリシャの神々のために働いたというのでも問題はあるまい」

 

「まだそんなこと言われるような活躍なんてしていないよ」

 

いずれの話だ。

 

そうケルベロスに言われた。

 

確かに、ケルベロスの役には立ちたい。随分と助けてもらっているから、である。

 

淡々と指示通り走り、薄暗い裏道に出た。

 

この辺りは知っているけれど、いつもとちょっと雰囲気が違う。近づかない方が良い。そう感じた。

 

「ちょっと悪辣化が進行しすぎているな。 これはよそで相当に悪運をばらまいてきている」

 

「どこにいる?」

 

「右斜め上だ」

 

見上げる。

 

いた。

 

電線に、コウモリのようにぶら下がっているそれは、今までよりも明らかに形がしっかりしていた。

 

この辺りの異様な気配。

 

あれから出ているとみて間違いないだろう。

 

即座に竹刀袋に包んだ棒を手に取る。

 

狙っているのは。ぼろぼろの服を着たおじさんだ。お酒を飲みながら、ふらふらと歩いている。

 

ひどい匂いを放っているが。

 

ああなるまでに、きっとたくさん悲しいことがあったのだろうと思う。

 

ホームレスというやつだ。

 

ああいう人を、子供は馬鹿にして笑ったりするけれど。

 

燐火はそれらと一緒になる気はない。

 

悲しみがわかるからだ。

 

燐火だって、孤児院にいたときはそうだった。周りの孤児院の子供を見る余裕はなかったけれど。

 

もう少し年上の女の子は、あの院長に乱暴に手を引かれて、部屋に連れて行かれたりもしていた。

 

あれが何をされていたのか、いまならわかるし。

 

あの院長が逮捕されて、もう生きている間は刑務所から出てこないと聞いて。それで心底安心もした。

 

もう少し年をとったら、燐火だって触られるだけではなく、ああいう目に遭わされていた可能性が高いし。

 

ひどい境遇にいる悲しみは、理解できるのだ。

 

それを、コウモリみたいなカコダイモーンはじっと見ている。

 

燐火がさっと文字を書く。

 

もう、ケルベロスに言われるまでもなかった。

 

苦しみ始めたカコダイモーン。

 

一発で霧散しない。

 

ケルベロスが、舌打ちしていた。

 

「もう一度だ」

 

「わかった」

 

カコダイモーンが、明らかにこちらを見る。目も何もない不定形。霊という存在のうち、悪辣な方。

 

だから、その視線があると思ったとき、ちょっとぞくりとした。

 

感覚が戻るのは良いことだと思う。

 

いずれにしても、もう一度、字を空中に書く。

 

それで、ねじ切れるようにして。

 

カコダイモーンは消し飛んでいた。

 

ケルベロスが、回収したという。

 

同時に、周囲の空気が、明らかに穏やかになっていった。

 

ホームレスのおじさんが、地べたに座り込んで、しくしくと泣いている。男が泣くのはどうのこうのと言うけれど。

 

あの人があれだけ追い詰められた過程を思うと、燐火にはそういう話にはとても同意できない。

 

着替えて、戻る。

 

その途中で交番によって、ホームレスのおじさんがいて、つらそうだから保護してあげてほしいと連絡をする。

 

若いお巡りさんは迷惑そうにしていたが。

 

年配のお巡りさんが、鋭くにらむと。いやいやながら、一緒に出て行った。一応確認するが、どこかに連れて行くらしい。

 

国によっては、ホームレスはとてもひどい待遇を受けると聞くが。

 

きっと悪いようにはされないはずだ。

 

ともかく、辺りの空気は既に完全に変わっている。それで十分すぎるのではないかと燐火は思う。

 

とりあえず、戻る。

 

家に戻ると、連絡が来ていた。

 

スマホで確認すると涼子からだった。

 

「白仮面見たよ」

 

「そうですか。 どんな様子でしたか」

 

「マントを翻して走っていたけれど、すごく足が速かった。 多分中学生くらいだと思ったけれど、もっと年上かもしれない」

 

「危ないかもしれないから、近づかない方が良いかもしれないですね」

 

そう会話をしてから、嘆息。

 

見られたか。

 

ただ、高校生と誤認されるようだったら大丈夫だ。

 

少なくとも燐火とばれることはないだろう。

 

「口元も覆った方が良いかもしれないな」

 

「そうすると本格的に不審者じゃないの」

 

「いや、今の時点で大概だ。 特にマントはどうにかならないか」

 

「でも格好良いし」

 

ちょっと呆れられた。

 

マントは仕事着として外したくない。

 

今までわがままを一切言わなかった燐火だから、そういうことを言われると勝手が違うのかもしれない。

 

ケルベロスは、それについては触れなかった。

 

いくつか話をして、反省会をしておく。

 

「カコダイモーンは、強力になると文字一回ではやっつけられないんだね」

 

「あれは神の名において浄化を促す強力なものでな。 あれで倒れないというのは、この国の民がそれだけ鬱屈をため込んでいると言うことだろう。 ただ、問題なのは……」

 

「?」

 

「他の国は、この国の比ではないということだ」

 

それはなんとなくわかる。

 

今、世界中の状況がとても悪いという話だ。

 

既に世界大戦というのが実際には始まっているという話もあるくらいに。

 

この国だって、あまりいい方向に動いていない。

 

実際問題、燐火が受けてきた所業を思うと。

 

この国の人たちが善良だとか、モラルが優れているとか。冗談でもはいとはいえないのが事実だ。

 

ただ、ケルベロスが言うように。

 

他の国は、もっとひどい有様だというのもわかっている。

 

銃を子供が乱射して、何十人も死んだり。

 

本来人々を守る警察や軍隊が、人々を苦しめたり。

 

国が法律を悪く使って、人々をいじめたり。

 

世界中でそういうのがおきている。

 

そう思うと、燐火はケルベロスのいう不安がよくわかる。いずれにしても、できることを、できる範囲でやっていくしかない。

 

「あのカコダイモーンは、もっともっと強くなるの?」

 

「ああ。 ただし、そういう奴に対処するのは俺と燐火ではない。 それについては安心していい」

 

「でも、その人は大丈夫なの?」

 

「問題ない。 世界でも最強の英雄の一人だ。 どれだけ背伸びしても、カコダイモーン程度は問題にもならん」

 

ケルベロスがそこまで言うほどの人なんだ。

 

どれくらいすごいのだろうと思ったけれど。

 

まあ、そういうなら安心して良いか。

 

とりあえず、服の洗濯は自分でやる。服については、ドラム式の洗濯機で、自分でやるようにしている。

 

最初はお父さんが見て教えてくれたのだけれども。

 

今ではすっかり地力でできるようになっていた。

 

こういうのも、自立した後では必要なことだ。

 

この家から大人になって出て行くかはわからない。今の時代結婚しない人だって多いし、燐火だってそれは例外ではない可能性だってある。

 

だけれども、それはそれとして、これくらいは一人でやらなければならないのだ。

 

洗濯も乾燥も終わったので、アイロンをかけてしまっておく。

 

自分用のタンスは用意してもらってあるので、そこに。

 

鍵もかけておく。

 

これも自分でプライベートは管理するように、という両親の方針だ。一人の人間として扱ってくれていると言うことだ。

 

まだ子供だとしても、尊重してくれる。

 

そういう親はあまり多くないのだと、ケルベロスは教えてくれた。

 

片付けも終わったので、休みながらぼんやりと動画を見る。

 

最近は一分もかからないショート動画というのがはやりらしいけれど。本当に一瞬だけの快楽を楽しむだけのものとなっている。

 

これがはやりと言われても。

 

燐火にはよくわからない。

 

時間が時間なので、お風呂に入っておく。

 

最初はおかあさんと一緒に入って、体の細かい洗い方とか指導してもらったけれども。今では自分でできる。

 

考えてみれば、孤児院では短時間だけしかシャワーを浴びることしかできなかった。湯船は院長と一部の職員だけで使っていた。

 

湯船に入ってみて、随分とリラックスできるので驚いたものだ。

 

今は湯船に肩までつかって、一分数えるとかやっているけれど。

 

これすら許されない子供もたくさんいる。

 

それについては、燐火は忘れない。

 

忘れてはならないのだ。

 

お風呂から上がって、それで寝る前にも少し勉強はしておく。疲れは残さないようにとケルベロスには時々言われる。

 

だから、アラームをつけておいて。

 

そのアラームの時間までにこなす。

 

こなせない分は、翌日に持ち越しだ。ドリルはできた分から先生に提出する。もう、残りはわずかだ。

 

できるたびに先生は褒めてくれる。

 

ただ、燐火の反応を見て、少し寂しそうにする。

 

周囲曰くの、死んだ目。

 

それは一切、直っていないらしかった。






アギアというのはギリシャで言う聖人の事。それも女性のことですね。

つまりケルベロスの聖女と言うことです。

ケルベロスとともにある魔法少女というわけですハイ。


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