魔法少女アギア・ケルベロス~俺は地獄の番犬ではない 作:dwwyakata@2024
林西さんのお寺を修理している間、公安が用意してくれた場所。正確には近場の公民館だが。
防音、防諜は完璧だ。
其処で集まって話す。
今回はヘラクレスさんが来てくれている。
ただ、ヘラクレスさんは霊体でも部屋には入れないので。内部には代理の分霊を入れてきたが。
その分霊はイオラーオス。
ヒドラとの戦いを始め、ヘラクレスさんの戦いに多数同行した甥である。
勇敢で知恵が回る人物で。
無限再生するヒドラの頭を焼いて対応することを提案したのはイオラーオスとも言われている。
ともかく、ヘラクレスさんと違って背丈は普通なので、一緒に会議をすることが可能である。
林西さんは多少負傷していたが、既に退院している。
他の家族にも、害は出ていないようだった。
「早速だが、本格的に動き出した魔獣についてだ。 あの存在は、恐らくは……」
「よろしいでしょうか」
「うむ」
燐火が挙手すると、林西さんが頷く。
燐火は丁寧に、持論を展開する。
あれは食肉目の魔が融合した存在。
今までスコルだと思っていたものは、実際にはあれが変えた姿の一つだったに過ぎない可能性が高い。
だが、総力で見るとフェンリルなどが内部にいるにしては物足りない。
極めて狡猾なのは、狐などのずる賢いとされる魔が融合しているからであると思われる。
それらを説明すると。
林西さんは、満足げに頷いていた。
「もう俺より客観的な分析力は高いな」
「ありがとうございます、日女さん」
「それでその意見についてはどう思う」
「私は何ら反論はありませんけれど、そのような強大な存在、倒せますの?」
珍しくカトリイヌさんが不安げだ。
まあ、それもそうだろう。
もしそれが本当だとすれば、それこそ数限りない魔が融合している融合魔の究極形態と言える。
ただ、それにしては全盛期のフェンリルには力がまるで及ばないというのも、不可解なのだ。
それにそれほどの存在なら。
オーディン等を削って少しずつ倒すのではなく。
一気に滅ぼしてしまえば良かっただろうに。
敵には何かしらの事情がある。
それが弱点なのか。
こちらを混乱させるための策なのか。それを見抜かなければならないだろう。
菖蒲さんが挙手。
皆が注目する中、提案をする。
「罠を張りましょう」
「罠であるか」
エヴァンジェリンさんは興味津々だ。
菖蒲さんが、ぱぱっと説明をする。
なるほど、罠としてはとても面白いと思う。
人間と魔の知恵比べは、たくさんの作品で扱われている。魔を強大な存在だと描く物語も多いが。
最終的に魔は人間に敗れるのである。
近年ではクトゥルフ神話のように人間が敗れる作品や。
あるいは北欧神話のように魔に世界が滅ぼされる神話も例外的に存在しているのだが。それはあくまで例外。
そして菖蒲さんが提案した作戦は。
燐火も、思わず頬を引きつらせる内容だった。
苛烈である。
危険である。
だが、いいように林西さんと菖蒲さんのいる寺を蹂躙していった魔だ。
あれは恐らくだが、力を見せつけるための行動だった。
実際、力が足りない魔祓いは、それで恐怖を感じてしまったらしく。作戦には絶対に加わらないと言っているものが少なくないそうだ。
少なくとも恐れさせることには、ブラックドッグを捨て駒にしたとしても、あいつは達成しているのだ。
「提案した私が餌になります。 何か意見は」
「……異議なし」
「叔父上とともに、可能な限り力になろう」
「頼もしいですねイオラーオスさん。 ただ、恐らくヘラクレスさんを敵は最も警戒している筈。 何かしらの陽動策で動きを封じてくるでしょう。 戦闘では当てには出来ない、と判断して動きます」
菖蒲さんがテキパキと指示を飛ばして、この場を支配していく。
それにしても凄いな。
英傑というのはこういうのをいうのだと、一発で分かる。
菖蒲さんも確か今高三の筈だが。
同年代の人間なんて、これでは幼児にしか見えないかもしれない。
とにかく膨大な経験を積み。
信じられない数の修羅場をくぐってきた。
だから、これほどまでに成長したのだ。
燐火も、ともかく今の菖蒲さんがいる位置に行くことを、まずは目標にするべきだろうと思う。
それで会議は解散となる。
嘆息すると、家に戻る。
三学期末くらいに作戦を開始することになるだろう。
残る敵一派の主軸、二柱。
その片方を討ち取ることが出来れば。
一気に敵の本丸に肉薄が可能だ。
敵の本丸を堕とせば。
その時は、ケルベロスと別れることになる。
それは悲しいが。
ケルベロスがくれたたくさんのものは、燐火にとってはとても大事な宝物だ。一生失うことはないだろう。
とりあえず、帰路でダイモーンの気配を感知したので、さっさと片付ける。
手足が伸びてきた事もある。
白仮面は成人らしい。
そういう都市伝説まで流れているようである。
燐火は無言でダイモーンを始末して。
浄化まで済ませる。
苦手だった浄化も、今では相手の規模にもよるが。手早く出来るようになっていた。
すっかり不良やら反社やらも街から減ったが。
それでも悪党がいなくなった訳ではない。
翌日のニュースで、なんとかいう詐欺師が捕まったらしいと書かれていたが。
その程度で片付いたのならそれでいい。
燐火は、そう思えるようになってきていた。
(続)
魔獣との対決が迫る中、燐火は皆との連携、更には自己の強化に努めることになります。
弱体化していたとはいえ北欧の神々を一蹴した猛者です。
今までにない苛烈な戦いになるのは目に見えていました。
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