魔法少女アギア・ケルベロス~俺は地獄の番犬ではない 作:dwwyakata@2024
次々に現れる予母都志許売。
攻撃は最終攻撃を見越して、苛烈さを増していくことになります……
恐れていたことが起きた。
三体目の予母都志許売が現れたのである。いや、同一個体でないという補償はないから、三回目、というべきか。
悪いことに中間試験の最中の帰路だったが、関係ない。中学の勉強は最後まで終わらせているし、テストの期間中にやっているのは基本的に最終確認だけだ。その程度は、人死にが出かねない相手との交戦に優先できない。
テスト期間中なので、一人で帰っていたし。
着替えて出るのも即座にやる。
現地に急ぐ。
スマホで連絡が来る。どうもカトリイヌさんらの教会が襲われたらしい。文化圏が違う魔なので、防戦一方だそうだ。
しかもダイモーンの気配もあるという。
まあそうだろうな。
この件、燐火を狙ってきたこともある。
邪神が絡んでいるに決まっている。
現地に急ぐ。
既に自衛隊が公安と連携して人払いをしていた。ドンと音が響く。何かの事件かと、騒ぎになっている裏から、燐火は教会の敷地に入っていた。
教会の壁が、完全にぶっ壊されている。
カトリイヌさんと、セバスティアンさんが必死の防戦をしているが。予母都志許売は紙のようにソロネとドミニオンが展開した壁を引き裂き、他の神父達は恐怖で震え上がっていた。
「か、神よ! あの恐ろしい悪魔を退けたまえ!」
「そんな神の力など、この地には届かぬ。 まったく、魔祓いだけを食えとか言われたが、他の人間どもも食らいたいのだがなあ。 子供の肉汁を久々に味わいたいものよ」
「子供だったらこちらにいますが」
「……標的捕捉」
振り返った予母都志許売が、不意に口調を変える。
以前とは少し姿が違う。
前の顔がない恐ろしい姿ではなく、顔はある。顔はあるが、痩せこけた老婆で手足が長く、顔中が口になっていた。その口の中に乱ぐいの歯が並んでおり、凄まじい雄叫びを上げる。
「気をつけろ、かなり手強いぞ。 ダイモーンを払いながら、日女や菖蒲の救援を待て」
「分かってる」
ケルベロスのアドバイスを受けて、横っ飛びに跳ぶ。
当たり前のように伸びた手が、燐火のいた地点をえぐり取っていた。コンクリの床が、バターみたいに抉られる。
立て続けに手が襲ってくる。
それをことごとく回避しながら、燐火は走る。
教会の椅子が次々と破壊され、後ろからのカトリイヌさん達の援護が、ほとんど抑えになっていない。
これはちょっとおかしい。
日本神話系の神々と接点がないとはいえ、高位天使が作り出す壁の性能は、燐火も今まで見てきた。
これがこうもあっさり。
恐らくだが、何かしら仕掛けがあるな。
椅子を蹴って跳躍。
壁で三角跳びをしつつ、聖印を切る。
ダイモーンを砕く。
舌打ちした予母都志許売は、腕を短くすると。足下について、四足歩行になる。そして、獲物を狙う四足獣そのものの勢いで、突っ込んできた。
回避は無理だ。
そのまま、鉄パイプで突貫を受け流す。
震脚で衝撃を逃がすが、それでも凄まじい音がした。パワーにしてもスピードにしても桁外れだ。
これは雑魚とカウントしていい相手じゃない。
邪神が繰り出してきているとすると、一体一体がそれぞれ戦略的な目標を持って動いているカスタム個体だ。
古い時代の神話は、どうしても物語と堕している。
これは日本神話の中で、ほとんど存在に触れられなくなった冥界の者達も同じであるはずだ。
日本の神々は神社で現役信仰を受けているが。
仏教のあの世が有名になっている日本では、日本神話の冥界の者達は、あくまで物語の者達となって力を落としているはず。
これはからくりをあばかないと、極めて危険だ。
下がりながら、猛烈な食いつきが鉄パイプをがつんがつんとかみ砕こうとするのを、必死に防ぐ。
この鉄パイプはあまたの魔を祓ってきた神器だが。
それでも、激しい衝撃が何度も来る。
押し込んでくる予母都志許売。
だが、その脇腹に、セバスティアンさんが猛烈な蹴りをたたき込み。予母都志許売が一瞬動きを止めた瞬間。
イタリア語らしい気合いの叫びとともに。
カトリイヌさんが、刺突剣で予母都志許売の首を横から貫いていた。
しかし、にっと笑う予母都志許売。
両腕をふるって、二人を追い払う。カトリイヌさんは逃げ切れずにかすり、それだけで吹っ飛んで壁にたたきつけられていた。
「ふん、所詮は愚民を制御するために特化した信仰のやつばらよ。 相手にならぬな」
「貴方の力、少し強すぎますね。 からくりを暴かせて貰います」
「面白い、やって……」
鉄パイプを引くと、顎を蹴り上げる。
口だけになっている予母都志許売の顔が、ごきりと折れながら真上を向いた。
そのまま鉄パイプで連続して打撃をたたき込む。面倒小手、立て続けに。小手は両腕に計四回の打撃を入れた。
ぐう、と呻く予母都志許売。
これは、ひょっとしてだが。
懐に入ると、合気を入れる。吹っ飛んだ予母都志許売だが、態勢を立て直すと飛びかかってくる。
腕が長いが、まあどうにか出来る範囲内だ。
また懐に入ると、そのまま投げて顔から床にたたき込む。勿論柔道の技だ。激しい一撃に、予母都志許売の乱ぐい歯が何本か砕けた音がした。
やはりな。
こいつ攻撃特化で、防御に関してはそれほど考えていないんだ。
破壊力は圧倒的だが。
防御面は極めて脆弱だとみていい。
勿論、これだけでは殺せない。
魔は、物理攻撃だけで始末できるようなたやすい相手ではないのだから。
即座に起き上がってきた予母都志許売に、横殴りの一撃。
日女さんと菖蒲さんが来るまで、徹底的に攻める。
予母都志許売が、凄まじい怒りの咆哮を上げるが、両腕を立て続けにへし折り。人体急所に立て続けに合気をたたき込む。
人間だったら即死する地点にも入れるが。
流石は魔だ。
即時回復して、なんどでも襲いかかってくる。
「攻撃に全集中を! この個体は防御を捨てています!」
「わ、分かりましたわ……! ドミニオン!」
「分かりました」
カトリイヌさんのドミニオンが、頭上から槍をたたき込みに行く。それを回避する予母都志許売だが、セバスティアンさんのソロネから放たれた光の槍が本命だった。
全身を串刺しにされて、ぐうっと呻く予母都志許売。
蹈鞴を踏むが、それでもまだまだ動こうとする。
だが、その時。
燐火が渾身の大上段からの一撃をたたき込み。
乱ぐい歯だらけの顔面を、文字通り打ち砕いていた。
数秒の停止。
そして、床に倒れる。
辺りには、泡を吹いて気絶している神父や、壁でぶるぶる震えている神父。役に立たない連中だ。
拘束は難しい。
そのまま、徹底的に手足をへし折り続ける。
そのたびにぎゃっと声を上げる予母都志許売だが。八分後、日女さんが到着。今度は逃がさず、祓っていた。
予母都志許売も日本神話系の存在。
そして冥界にいないで地上に出ている。
伊弉諾が逃げ惑うしかなかったような力は流石に地上では発揮できない。完全に浄化され、消えていった。
呼吸を整える。
日女さんが、遅れてすまんと謝る。
限界が来て倒れたカトリイヌさんを、燐火が受け止める。
頭は打っていないようだが、病院に行かないとまずいだろう。
すぐにセバスティアンさんが手配してくれる。
日女さんも、既に本職として魔祓いをしているのだ。簡単にはいかないだろう。
「レポートはこちらで出しておきます。 今回は支援、ありがとうございました。 遅れていれば、何人か食われてしまったでしょう」
「いえ、問題ありません」
「それにしても、あんたと燐火が、カトリイヌもいたのに、こんなに大苦戦したのか」
「強かったですよ予母都志許売。 ただ……」
日女さんに展開しておく。
攻撃特化型の予母都志許売が出てきたのだと。
それを聞いて、日女さんは考え込む。
「予母都志許売は必ずしも伝承が多く残っている存在じゃねえ。 そう考えると、カスタマイズも容易なのかもな」
「だとすると、防御特化型とか、耐久特化型とかが出てくる可能性もありますね」
「ああ、だが共通しているのは、日本神話系の魔祓いなら対応できると言うことだ。 問題はダイモーンが融合している混合魔として出てきたと言うこと。 そして予母都志許売を使役していると言うことは……」
邪神が。
日本神話の古い冥界である、根の国と何らかの形で同盟を組んだのかもしれない。
そう説明されて。ケルベロスが嘆息した。
「古い時代、冥界はあくまで別の世界として解釈されていた。 地獄というものが作られるようになったのは後の時代でな」
「それは、そうなのかもしれないね」
「いずれにしても、別の世界である冥界そのものが敵となったのなら厄介だ。 北欧神話でも、冥界はラグナロクの際にまるごと裏切ることになる。 この国の神々の中で、ただ冥界だけの影が薄いとなると……」
狼王ロボは、最後に言っていた。
目的は、善悪の観念の逆転だと。
ひょっとすると、貶められた存在が、まるごと今の主流の信仰に入れ替わることを狙っているのかもしれない。
それが必ずしも悪いことだとは言い切れないが。
ただ途方もない混乱が起きる。
そして混乱の中で踏みにじられるのは。
決まって弱い人間なのだ。
杏美のことを思う。
杏美を、踏みにじらせるわけには、絶対にいかない。
中間試験が終わる。
多少の雑念があったからか、いくつかのケアレスミスをしてしまった。こればかりは仕方がない。
涼子もケアレスミスはする。
これについては、今でも同じだそうだ。
試験結果が帰ってきたが、予想通りの点数だった。全教科満点とはいかないか。
とりあえず家に戻ると、間違った地点の見直しと、ケアレスミスを減らすべく、チェック回数を増やせるようにする工夫をいくつかしておく。
淡々と勉強を進めていると。
小川先輩から、連絡が来ていた。小川先輩は空手部の部長になったが、冬の地方大会でなんと準優勝をもぎ取った。今ではすっかり空手部で認められる使い手だ。最近では燐火の家に、時々修練に来る。パパ活女とか陰口をたたいている輩はまだいるようだが、実績を出してそれをねじ伏せた。それもあって、今はとても毎日楽しそうである。次は全国に出る。そう気迫も充溢させていた。
「燐火っち、中間はどうだった」
「平均98点でした」
「おお、それは凄い。 とりあえず、中間も終わったし、どこかに遊びに行かない? 小川っちも誘うつもりなんだけど」
「近場であれば、時間次第でなら」
それだけ答えておく。
今のこの状況だ。
行けるとは、いえなかった。
外でルーチンをこなす。
柔道の動きも、丁寧にやっておく。
三回目の予母都志許売は攻撃特化型だったが、速度、防御、技術など。色々な特化型が出てきてもおかしくない。
ちなみに家の周りには、予母都志許売が喜びそうな果物がいくつか植えてある。
それもあって、全て無視していきなり家族を襲ってくるということはないし。結界も展開してあるので、まあ大丈夫だろう。
ただ絶対は、ないが。
剣道のルーチンも終えた後、しばし黙々と瞑想して精神を研ぐ。
それから、今度は菖蒲さんから連絡を受けた。
エヴァンジェリンさんの滞在しているホテルが、襲撃を受けたと言うことだった。
ハイペースだな。
そうぼやきながら、現地に出向く。
それほど豪華なホテルではないが、ガス爆発ということにして人を遠ざけてある。便利な言葉である。
なんでも公安も自衛隊も、人を遠ざけるときにガス爆発という言い訳をよく使うらしく。
ガス爆発でだいたいの事はもみ消せるらしい。
このため、ガス爆発は隠語の一つになっているのだとか。
勿論本当のガス爆発事件もあるのだが。
まあ今回は、それとは違うと言うことだ。
急いで中に入り、四階まで上がる。
目を回しているエヴァンジェリンさんが、階段近くで転がっていた。元々戦闘能力はそれほど高くない人だ。
これは仕方がないだろう。
菖蒲さんが、明王を展開して凄まじい攻撃を受け止めている。
雷撃か、これ。
現地に飛び込むと、菖蒲さんが冷や汗を流して、じりじりと押されているのが分かった。ちょっとこの火力、しゃれにならない。
「燐火ちゃん、相手は遠距離特化型よ。 でも速射性能が高すぎる。 動きを見切るまで接近は控えて」
「分かりました」
いや、あれは。
予母都志許売じゃない。
ばちばちと激しい雷を放っているそれは、明確に何かの蛇神だ。
思い出す。
伊弉冉と伊弉諾の逸話の際。変わり果てた伊弉冉の体には蛆が湧き、八柱の雷神がまとわりついていたそうだ。
その雷神は、予母都志許売から逃げ切った伊弉諾を代わりに追跡。
あわやのところまで追い込んだ。
つまり、予母都志許売より更に格上の存在か。
舌なめずり。
これは流石にまずい。
ルーンを駆使して必死に防いだのだろうエヴァンジェリンさんを一瞥。菖蒲さんが来るまで耐え抜いただけで凄い。
ともかくだ。
これ以上の狼藉、許すわけには行かなかった。
聖印を切る。恐らくダイモーンがいるはず。連続して、聖印をたたき込む。ばちばちと輝いている蛇神は、それをうっとうしそうにはねのける。効いてはいる。だが、一発二発で倒せるでもないか。
だが、連続する。
恐ろしいほどの低音で、蛇神が喋る。
口を動かしている様子はない。
恐らく、精神に直接話しかけてきているとみて良いだろう。
「侵略者の神の下僕が……」
「そういう貴方も、ダイモーンを受け入れているではないですか」
「うん? 貴様のことではない」
「……そういうことですか」
古代、聖徳太子の時代。
仏教と神道が争った時代があった。
蘇我氏と物部氏の戦いだ。
仏教と神道は、今でこそ神仏習合などをして、ともに仲良く歩めているが。信仰が二つあれば、どうしてもぶつかり合う。
それは仕方がないことなのだろう。
だから、恐らくだが、菖蒲さんを古い日本神話の神は、敵と見なしているとみて良いだろう。
それについては理解できる。
だが、負けてやるわけにはいかないが。
菖蒲さんが冷や汗を拭いながら、雷を纏う蛇神に言う。
「今ではともに歩む存在ですよ」
「大半の神々はな。 我ら根の国の関係者だけは違う。 仏教の地獄と六道輪廻の仕組みに全てを奪われ、今や物語の住人だ。 罪人だろうがなんだろうが、問題なく受け入れる根の国があっても良かろう」
「根の国に行った後、その人はどうなるんですか? 永久に根の国で暮らすと?」
ずばり燐火が言う。
そういうと、ぴたりと蛇神は黙っていた。
古い時代の神話の冥界は、これが問題である。
基本的に冥界という別世界の住人になったあと、後の神話では当たり前になった輪廻転生や生まれ変わりが存在しない。
ギリシャ神話では、冥界の勢力を増大させないためにゼウスが世を平穏にさせようとするし。
北欧神話では、冥界に墜ちた者は、ずっと冥界の住人である。
それでは、救いがない。
信仰の基本は救いが必要である。まあ罰を優先した一神教などの例もあるが、それでも救いを用意している。
救いが存在しないというか。
救いという発想が存在しなかった時代の冥界は、存在が膨れ上がり続けるばかりなのである。
「……貴様、それはおまえの年で自分で考えたのか」
「調べればそれくらいは分かります。 今の時代、色々と便利なので」
「そこにいる冥界の犬の入れ知恵であろう」
「残念だが燐火は一人でそれにたどり着いた。 この子はまだまだ教えなければならないこともあるが、おまえが考えているよりもずっと賢いぞ」
笑い混じりに返すケルベロス。
蛇神はしばし黙っていたが。日女さんの気配を感じ取ったのだろう。
すっと下がっていた。
「まあいい。 目標は達した。 我らは所詮手助けに来ているに過ぎぬ。 やれと言われたことはやったし、これ以上は我の私怨だ。 私怨を果たすのに失敗して実体化できぬようになっても面白くはない」
「伊弉冉尊によろしく」
「……」
消え失せる蛇神。
その圧倒的な偉容が消えた後は、不意に辺りが空洞になったようだった。
スプリンクラーが不意に作動して、水がばらまかれる。
あんな雷が何度も放たれていたのである。
あちこちちろちろと燃えている。
それが、一気に消火されていった。
ただ、それでもビル火災になると手に負えなくなるケースもある。とにかく、撤退である。
エヴァンジェリンさんを担いで降りる。
逃げ遅れた客についても、最後まで責任を持って残っていたホテルの経営者が、いないことを確認していた。
立派な人だな。
それだけに、この事件は残念だ。
ガス爆発ということにするらしいが、客が持ち込んだ違法なガス器具が原因という事にするようで。
この人の面子が保たれてくれるといいのだけれどと、燐火は思ってしまう。
ともかく、日女さんと合流。
襲い来た蛇神の事を話しておく。
やはり、燐火の予想通り。伊弉冉の体にまとわりついていた雷神で間違いないようだった。
「遠くからの気配でそれは分かっていた。 だとすると、厄介だぞ」
「そいつらは豊穣の神と一体化した自然現象そのものだ。 つまり、豊穣の神である伊弉冉の側近だと言うことだよ」
「主神の配偶神の側近……」
「かなりの高位の神格ですね」
日本神話では、いわゆる三貴神。天照大神、月読尊、素戔嗚尊の前の主神である伊弉諾と伊弉冉の夫婦は、追い立てられて主神の座を失ったのではない。天照大神が世襲する形で主神となっている。
このため、そもそもとしてオーディンを主神とするときに配偶神としてフレイヤから作り上げられたフリッグと伊弉冉では主神の妻としても格が違うし。
伊弉冉の側近で、豊穣神のそれぞれの役割の一端を担う神となってくると。
少なくとも、極限まで堕落したあの悪神化フリッグよりも手強いとみて良いだろう。
それも、そいつらが八柱いる。
そう考えると、確かに日女さんが厄介だというのもよく分かる。
エヴァンジェリンさんが目を覚ます。
とりあえず、軽く診察は受けてもらうが、入院は必要ないだろうという話だった。雷に吹っ飛ばされて気絶はしたが。雷はルーンで防ぎきったし、頭も打っていないからだ。むしろ音にびっくりして気絶したようなので。
診察が終わったエヴァンジェリンさんを交えて、カフェで話す。
「すまない。 年長者の天才たる私が、菖蒲と一緒にいたのに」
「あれは仕方がねえ。 物語に墜ちた存在ではトールと同じだが、ここは本場だ。 下手をするとトールより強いかもしれないしな」
「それほどか。 確かに私が気配を察して迎撃に出てから、攻撃も容赦がなかったし。 ルーンで一撃目を防いでから、立て続けの二撃目の破壊力と圧は尋常ではなかった」
むうと考え込むエヴァンジェリンさん。
とりあえず、今回のレポートは菖蒲さんが書いてくれるらしい。
そして、そもそもの問題だが。
恐らくだが、邪神は。
今回の二度の攻撃で、根の国の神々と連携していること。何よりも、この国に来ている異郷の魔祓いを狙っていること。
そして対処が難しい事。
これを示してきたのだ。
カトリイヌさんが連絡をよこす。案の定だった。
日本に来ているカトリックの魔祓いが、あらかた引き上げるらしい。日本在住の人員以外は、である。
ここのところの凄まじい戦いもあった。だが、予母都志許売の凄まじい戦闘力に、明確にあの教会に来ていた神父達が恐れをなしたのだ。
カトリイヌさん達は残ると言ってくれた。
だが、恐らくこれは、カトリックの魔祓いだけではすまないだろうな。そう、燐火は敵の狡猾さに舌を巻いていた。
既に完全に腰が引けていたカトリック系の魔祓いが撤退を開始します。
こんなんやっていられるか、というわけですね。
確かに対応が難しい古代日本の魔。それも手練れがいるのに一方的に蹂躙されたとなれば。
それは仕方がないのかもしれません。