魔法少女アギア・ケルベロス~俺は地獄の番犬ではない   作:dwwyakata@2024

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更に加速する邪神の攻撃。

一線級の魔祓いも次々に被害に遭います。

ちなみにこれらの作戦行動は、今まで魔獣をはじめとする同志達が集めてきた情報に基づいて行っています。

故に急所を的確に突き続けられる訳ですね。





2、立て続けの攻撃

トンファーを持っている黄泉軍と激しく刃を交える。

 

両手のトンファーはさび付いているが、刃をかわす度に激しい重さが手に来る。強いなこの人。

 

そう思いながら、燐火は十合ほど渡り合った。

 

相手の黄泉軍は、肉をつけてきているが、やはり正々堂々と渡り合ってきている。燐火がそれであれば、堂々と戦うことを知っているからだ。そして黄泉軍自身も、明らかに練り上げた武をぶつけられることを喜んでいた。

 

根の国は。

 

本当に何もすることがない場所なんだ。

 

この黄泉軍が、どうして仏教系のあの世にいかなかったのかは分からない。トンファーは確か沖縄武術だかの武器だから、少なくとも古代のひとじゃない。

 

何かの理由で、仏教のあの世に行くことを拒み。

 

そして根の国に来た。

 

そういう理由があるのだろう。

 

ガンと激しい音を立てて、古い上げてきた一撃を弾き、舞うようにして繰り出された第二撃をはじき返す。

 

満面の笑みだ。

 

これほどの武芸をぶつけられる相手。

 

本当に存在してくれていたのか。

 

そう考えているのが、表情にこれ以上もないほど出ている。

 

燐火は楽しいとは思わない。

 

淡々と捌いていく。

 

相手の技を、徹底的に吸収していく。

 

踏み込むと同時に、顎を砕きに真下から抉るような一撃を繰り出してくる黄泉軍。だが、その一撃を。

 

燐火はすっと紙一重でかわし。

 

第二撃の必殺の横からの一撃を、鉄パイプで防ぎつつ。

 

合気をたたき込んでいた。

 

ふっとんだ黄泉軍。

 

立ち上がるが、今のが致命打になった。

 

立ち上がれない黄泉軍に、歩み寄ると。

 

燐火は聖印を切って、ダイモーンを祓った。後は、近くで見ていた日女さんが来る。黄泉軍も、すっきりした様子だった。

 

「負けた負けた。 他の黄泉軍が強いと言っているから、どれほどと期待していたら、予想以上だった。 これだったら、練り上げてきた武が負けたとしても悔いはない。 おとなしく根の国に帰るさ」

 

「少しは手応えがあったようで良かったです。 それはそうと、あなたたちの背後にいる存在が何者かは話してくれませんか」

 

「それは出来ない。 俺にも仁義があるんでな」

 

「……分かりました」

 

日女さんが頷くと祓う。

 

それで黄泉軍は消えていた。

 

夏休みに入るや否やこれである。

 

既に宿題は終わらせてあるが、それでもこれほど連日来るとは思わなかった。それも我も我もと、試したい武器を持ってくる。

 

中には明らかに相手を殺すことを楽しんでいるようなゲスもいたが。

 

ほとんどは亜眼威眼の重厚な武人兄弟に教えを受けたものらしく。

 

皆、真面目な戦士だった。

 

誰もが得意を磨いてきていて。

 

それで、通用するか嬉々として挑んできていた。

 

一切卑怯な真似はしない戦士も多かった。

 

そうなると、燐火も正々堂々と立ち会わなければならない。それについては、絶対だと考えていた。

 

世の中では、如何にルールの穴を突くかが賢いみたいな思考方法があるそうだ。

 

そういう考え方もあるのだろうが。

 

燐火はそういうことをするつもりはない。

 

ちなみに日女さん達は、そういう事をしてくる相手と散々やり合ってきたようで。燐火の周囲に警戒網を張ってくれている。

 

燐火自身も、卑怯な手を平気で使う相手との戦闘は何度も経験があるし。

 

それで崩されるほど鍛え方がぬるくもない。

 

日女さんに礼をいう。

 

いつの間にか、背がほとんど並んでしまっていた。

 

日女さんも女子としては平均以上らしいのだが。

 

燐火の伸びが早すぎるようだ。

 

170は行くだろう。

 

そういう話も既にされていて。中三には到達できるかもしれなかった。

 

「本当に正々堂々は受けて立ち続けるんだな。 俺としてはあんまり感心できないんだが」

 

「そうですね。 燐火としても卑怯な相手に徹底的な武をぶつける方が楽です。 でも、不正なしでしっかり挑んでくる相手と、正面から戦うのであれば、それはそれで相手に敬意を払おうとも思います。 それが……学んだことです」

 

「いずれ限界が来るかもしれないぞ」

 

「分かっています。 いくつか考えておかないといけないですね」

 

どうしても勝てない相手と、正々堂々の戦いをすることになったら。

 

燐火は勝てずに、倒されることになるだろう。

 

最悪の場合を想定していなければならない。

 

ただ、魔が相手の場合は問題はない。

 

魔は生前よりも弱体化していて、人間化している。

 

英雄としてはヘラクレスさんのような超弩級の例外もいるし、今まで見てきた神格には、今の燐火が単騎で相手するのは厳しい奴もたくさんいる。

 

だが、少なくとも魔は違う。

 

魔は所詮、信仰のメインストリームから外れた存在だ。

 

場合によっては邪悪というレッテルを貼られ、必ず負ける存在とされてしまっている事も多い。

 

スルトのような例外もあるにはあるが。

 

あれは本当に世界中の神話を探しても珍しいケースなので、基準としなくても良いだろうと燐火は考えている。

 

いずれにしてもだ。

 

一仕事終わったので、戻ることにする。

 

明日、小川先輩から誘いを受けている。

 

遊びに行こうというのだ。

 

行くとしても遠くはいけないと話はしてあるが。それでも大丈夫だと場所を選んでくれたそうである。

 

まあ、それくらいの気分転換は良いだろう。

 

小川先輩も、空手の大会の直前だ。

 

前みたいに、鍛えすぎてしばらく鍛錬禁止とか言われることもないだろう。しっかり反省したはずだ。

 

小川先輩は、それが出来る人である。

 

家に戻る。

 

既に杏美は寝ていた。

 

今日はかなり走り回っていたようだ。既にだいぶ活発に走り回れるようになっているようである。

 

階段を上り下りする訓練を、そろそろしなければならないという話をしているが。

 

実際問題、現在は上ることは出来ても、降りることは難しいだろうと思う。

 

家に帰ると、ルーチンをこなす。

 

最近はルーチンを効率的にこなせるようになってきている事もある。

 

後は精神を研ぐ時間が増えた。

 

予想外の方向から攻撃を受けても対応できるようにする。

 

想定外の事態でも、心を乱さないようにする。

 

そのために、精神修養は必要だ。

 

これも才能だという。

 

出来ない者は、どれだけやっても出来ないのだそうだ。

 

それを考えると、燐火はできるだけ、恵まれているのだ。生まれがとにかく徹底的に運がなかった。

 

それだけだ。

 

ルーチンを終えて、風呂に入って。

 

それから夕食にする。

 

髪は基本的に短く切ってしまっているのだが、今後は伸ばすのも良いかもしれないと思い始めている。

 

菖蒲さんのように、女性らしさと強さを兼ね備えている人も普通にいる。しかも誰もが認めるほど菖蒲さんは綺麗である。

 

あれは実力に余裕があるから、だと見ていい。

 

実力に余裕があるから、髪を伸ばすとか、邪魔になるものがあっても問題にならないのである。

 

燐火もいずれは。

 

まあ、髪なんか伸ばしても、煩わしいだけだが。

 

杏美はもうおねむなので、久々に家族三人で食事にする。

 

おとうさんもここ数日忙しかったが、それでも今日は夕食の時間に出てきてくれていた。

 

忙しいときは防音室で配信をする合間に食事を済ませてしまうことも多いし。

 

生活音が配信に入らないように、防音室は二重になっていて、それで絶対に燐火やおかあさん、杏美の声が入らないようにもしている。

 

それだけ仕事に気を遣っているのだ。

 

滅多に一緒に食事が出来ないとか、そういうことを責める気もない。

 

たまにはわがままを言ってもいいと言われているが。

 

正直、そんな気にはなれなかった。

 

「燐火、中学の勉強はとても良く出来ているようだね」

 

「うん。 今は大学受験の勉強をしているし、ここで躓くわけにはいかないからね」

 

「立派だよ。 後は公務員になるとしたら、今のうちから対策をしっかりしておこうね」

 

公務員……正確には公安の秘匿部署だが。

 

それは流石に言えないので。公務員試験の一番難しい奴を受けることは既に告げてある。おとうさんもおかあさんも、一切反対はしなかった。

 

おかあさんが、いくつかアドバイスをしてくれるが。

 

勉強についてはもう学力的に追いつけないと苦笑いしている。

 

おかあさんは元々スポーツ少女で、警察もひらとして務めていたのだ。

 

勉強が出来るのなら、それこそ他の道も幾らでもあったのだろう。

 

「予定通り、明日は一日遊んでくるから、杏美の事はお願いね」

 

「任せておいて。 杏美がねーねがいないって泣くかもしれないけれど、ちゃんと帰ったら遊んであげるんだよ」

 

「はい」

 

最近は、ちゃんと二人には敬語でなくしゃべれるようになってきた。

 

杏美にはまだ少し丁寧に接してしまうが。

 

それでも長足の進歩だ。

 

後は笑顔でも作れるようにしたいが。

 

どうしても無理矢理笑顔を作ると、地上侵略をもくろむ魔王みたいな笑顔になってしまう。

 

笑顔は昔は攻撃の合図だったという話があるが。

 

それを彷彿とさせる笑顔だ。

 

それもまずいとケルベロスに言われているので。

 

死んでいる表情筋を動かす訓練も、少しずつやっているところである。

 

ともかく、今日のルーチン、タスク、ともに終わり。

 

杏美が起き出してきたので、食事を一緒に取る。

 

既に離乳食は終わっているが、それでもまだまだ同じものは食べられない。乳幼児ではないが、それでも体はまだとてももろいのだ。

 

おかあさんが寝起きで機嫌が悪い杏美をあやしながら、ちゃんと食べさせる。おとうさんもいるからか、杏美は機嫌を直して食べ始めた。

 

食べられることを褒める。

 

苦手なものは今のところない。

 

苦手にならないように、おとうさんがメニューを工夫しているからだ。

 

アレルギーがあるなどの体にとって危険な場合を除くと。

 

食べ物を嫌いになる理由のほとんどはトラウマが要因だ。

 

特に無理矢理食べさせることが原因になる事が多い。

 

このため、無理に食べさせたり、食べないことを怒るのではなく。

 

苦手そうな食べ物は先回りして、食べやすいように加工してしまう。

 

そうすることで、食べられないものを少しずつ減らしていく。そうして、杏美はなんでも食べられるようにする。

 

ただこれは、負担が大きい。

 

時々おとうさんが、頭を悩ませてメニューを考えている。

 

おとうさんのブラック企業時代は、自炊しないとやっていけなかったらしく。まずいがやすい食べ物を如何においしくするかの技術ばかり磨かれたそうである。

 

それもあっておとうさんはそういうのは得意だそうだが。

 

それでも限界がある。

 

料理の勉強は、今はいいと言われている。

 

燐火が本気で学問と武道をやっているのを、おとうさんとおかあさんは好ましく考えてくれている。

 

学問について落ち着いてから、そういうのを学べば良い。

 

おとうさんはそうも話してくれた。

 

そういう理解のある両親だ。

 

燐火は、どちらも裏切りたくはなかった。

 

さっさと休む。

 

杏美と一緒に寝る事も最近はあるが。杏美が眠った後は、ちゃんと距離を取るようにしている。

 

そうしないと危なくて仕方がないからだ。

 

まだまだ小さい上にあまり頑丈ではないのである。

 

下手をすると寝ぼけているときに壊してしまいそうで心配なのである。

 

それを話したら、ケルベロスに呆れられてしまったが。

 

今後子供を産んだら。一体どうするつもりか。

 

そう言われて、正直ぐうの音もなかった。まあそれがあるのは、あったとしてもずっと先になるだろうが。

 

 

 

小川先輩と遊びに行く。

 

遊びに行く先は、比較的近場の映画館だ。

 

映画館デートというらしい。

 

どうでもいい。

 

映画の内容については、とてもわかりやすいハリウッド映画である。こういうのも時代によって大分内容が変わるそうだが。今回のはとにかくわかりやすい内容で、変な政治的思想も入っておらず、何も考えずに見て楽しむことが出来た。

 

午後からは水族館に出向く。

 

小川先輩は、魚にはほとんど興味を示さないようだ。

 

ペンギンとかイルカとか見て喜んでいたが。

 

燐火は別に海の生物で、ペンギンやイルカの方が好きと言うことは別にない。

 

深海の生物にも魅力があることは日根見ちゃんから聞いて知っているし。そういう生物が実に興味深い生態を持っている事だって知っている。

 

最近だとクラゲなんかを展示して、それで工夫している水族館もあるが。

 

あくまで毒を持つ危険生物としてではなく、見て楽しむペットとして見るだけである。

 

クラゲの中には傘の直径が二mを超える超大型種が存在する。

 

円形で二mは凄まじい威圧感であるのだが。

 

キタユウレイクラゲという品種は、触手が五十mにもなる事がある。

 

クラゲは見て楽しむだけのものではなく。

 

非常に興味深い生物でもあるのだ。

 

中には、文字通りの不老不死を実現しているクラゲすら存在している。

 

年を取った後若返り、また年を取るというサイクルを繰り返している品種だ。

 

馬鹿な金持ちが喉から手が出るほどほしがっている不老不死を、あっさり実現している生物はとっくにいるのである。

 

だがその生物が、生態系の覇者でもなんでもないことを考えると。

 

水族館で色々な生物を見ていると、不思議な気持ちになれる。

 

小川先輩はイルカショーで大喜びしていたが。

 

イルカは明らかに飼育員を舐め腐っているのが一目で分かる。

 

ある程度頭が良いイルカは、実は性格が非常に悪いと日根見ちゃんから聞いている。

 

イルカを人間の友達みたいに持ち上げる風潮は、古くのドラマが起因しているものであるらしく。

 

元々は漁場を荒らすこともあって、嫌われることも多かったそうだ。

 

知能が高ければ、特別待遇しなければならない。

 

それは人間の理屈だ。

 

蛇などを調べたとき、知能なんか必要ない方向に環境適応した生物だと知った。

 

何よりも知能が最低限の昆虫が、地上でもっとも繁栄している生物であることを知っている燐火は。

 

イルカに勝手に感情移入して喜ぶ風潮を。

 

好ましいとは思わなかった。

 

「燐火っち、イルカ嫌い?」

 

「いえ、好きでも嫌いでもないですが」

 

「そうなんだ。 ショーの時、びっくりするくらい静かだったからさ」

 

「まあ、そうですね」

 

ギャルという格好で来ている小川先輩。

 

普段着で、無難にまとめている燐火。

 

この二人組はあまりにも浮いているようで、周囲からひそひそと声が聞こえてきている。どうでもいい。

 

水族館を出た後、カフェで食事にする。

 

地方大会で準優勝という成果を出した小川先輩は、家でも褒めて貰ったらしく。

 

学校でも表彰されたこともある。

 

パパ活女とか陰口をたたかれていたのも、減ってきているそうだ。

 

それでも陰口をたたくやつはいる。

 

燐火としては腹立たしいけれども。

 

小川先輩は気にしていないようである。

 

外でもやはり、色々とそういう視線は受ける。側にいると、それはよく分かってくる。

 

いくつか映画とか水族館の話をする。

 

小川先輩の感想はとにかく感覚的だ。

 

感覚的な快楽が受けるというのはよく分かる。だからそういうのに特化した創作は幾らでもある。

 

特に理由も無くヒーローが悪党をぶっ倒して回るような映画なんかはそうだろう。

 

それを否定するつもりは燐火はない。

 

ただ、燐火としては論理的な説明をする。

 

今日の水族館で見た生物について思ったことなどを述べていくと、ほうほうと小川先輩は興味深そうに聞いていた。

 

「日根見っちと同じように言うね。 でも日根見っちは動物をとても楽しそうに話すのに、燐火っちはなんというか、非常に冷たい印象だわ」

 

「そうですか? まあ笑顔なんて作りたくても作れないのもありますけれど」

 

「あー……、あー、うん」

 

咳払いすると、小川先輩は言う。

 

笑顔作れないの、何か理由でもあるのか、と。

 

まあもうそろそろ信頼しても良いか。

 

軽く話す。

 

昔いろいろあったのだと。

 

そう話すと、小川先輩も、いろいろあった側だ。

 

特に小川先輩の場合は、見かけからレッテルを貼られて、それで好き放題言われた。今も言われている。

 

その立場である。

 

燐火の苦悩は、他人事ではなく理解できるようだった。

 

「ごめん。 燐火っちのイカレた強さからも、ちょっと色々あるんだろうなとは思っていたけど。 不躾だったかも」

 

「良いんですよ。 悪気がないのは分かっています」

 

「部長として、ある程度出来ることはしておきたいんだよね。 来年は部長になってもらうつもりだし」

 

「そうですね。 厳しくなりすぎないように気をつけます」

 

ケルベロスに言われた。

 

後輩の空手部員に、厳しく接しすぎないようにと。

 

一年で入ってきた空手部員が、とにかくイキっている奴だった。小学校時代、空手。それもフルコンタクトを習っていたらしい。

 

図体がでかくなってきたこともあって、女子なんか余裕だろうと思っていたのだろう。

 

小川先輩の事も最初は舐め腐っていた。

 

で、燐火と組み手して。

 

一瞬でひねり潰されて。真っ青になっていた。

 

小川先輩もその後相手をして、手も足も出ない現実を見せると。その男子生徒は、この世の終わりみたいな顔をしていた。

 

ただし、空手部は辞めさせなかった。

 

幸い、悪行を重ねている輩ではなく。ただ周りがぬるま湯だったせいで、自分を強いと勘違いした輩だったので。

 

燐火としては、そこまで厳しくするつもりはなかった、というのもある。

 

しかしながら、厳しく接していたら。

 

小川先輩が、以降は自分が見ると言って、その生徒を引き離した。

 

これ以上は潰れる。

 

そういう判断らしかった。

 

今ではその一年は明らかに燐火を怯えた目で見ている。

 

別にそれで構わない。

 

ただ、小川先輩は、それを教訓にして、来年の一年生が潰れないようにという事を言っているのだった。

 

後は軽く話をした後、解散とする。

 

小川先輩は手を振って去って行くが。ケルベロスは、面白い奴だと言っていた。

 

「人間の悪癖である見た目で全てを判断することに対して、真っ向から喧嘩を売っている者だな。 精神的にはとても良心的でまともだ。 ギャルは遊びほうけていて頭も悪いと考えているような連中の固定観念をひっくり返して回っている」

 

「そうだね。 小川先輩の考えも分かる。 まあ、燐火も自分がやっている修練を他人にも強要するつもりはないかな」

 

「燐火がやっているのは実戦を想定したものだ。 空手部で教えてはいかん」

 

「……そうだね」

 

ただ、ケルベロスは言う。

 

部長になったら、一度だけ県大会に出ておけ、と。

 

変に目立つから嫌だなとは思うが、確かに実戦仕様ではない空手の大会で、相手を傷つけずにどれだけ勝てるかは試しておいた方が良いだろう。

 

今後は人間の悪党を、可能な限り無傷で制圧しなければならない場面も出てくるのである。

 

それを考えると、確かに加減を上手にするのは必要だ。

 

さて、問題は。

 

ここからである。

 

どうやら律儀に遊びが終わるのを待ってくれていたらしい黄泉軍が出現したようだ。多少疲れたが、あくまで精神的なものである。

 

すぐに着替えて、現地に出向く。

 

相手は女性の黄泉軍で、薙刀を構えて待っていた。

 

古めかしい鎧だが。

 

これは恐らくだが、比較的後の時代の死者だな。

 

顔色は悪いが、見るからに実際に戦場で刃を振るった女性だと分かる。

 

幾らでもいるのだ。

 

実戦に参加した女性は。

 

史書に記載がある数ですら、相当にいる。

 

あの凶猛な北欧文化圏ですら、高位の女性戦士がいたくらいである。日本でも、それは同じだ。

 

「かなりの腕前と聞いている。 勝負を申し込みたい」

 

「分かりました。 ただ、先に日本神話系の魔祓いを呼んでおきます。 勝負がついた後、迅速に全て終わるように」

 

「分かった」

 

相手も待ってくれる。

 

日女さんが到着してから、立ち会いを開始する。

 

性別に関係なく、本当に真摯に武に向き合う人はいる。この人も、間違いなくその手合いである。

 

だったら燐火も、全力で立ち向かわなければ無作法というものだ。

 

短いが、激烈な死闘が開始されていた。







水族館デート回です。

ちなみに水族館で何を見ますか。自分は魚をはじめとした純粋な水中生物ですね。

深海生物も好きです。今ではアイドルとして有名なダイオウグソクムシくんなんかは、いるのを知ると真っ先に飛んで見に行きます。



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