Fate/Grand Saviour 作:推しを救いたい人々
第四次聖杯戦争⋯⋯それは、“正義”とは何かを問う物語。
『救済を。遥かなる世界に』
『救済を。大いなる人理に』
『救済を。たとえ先がなかろうと』
『救済を。それが偽りだったとしても』
『救済を。星の意志たる象徴に』
『救済を。導かれし運命に』
男か女か、老人か子供かも分からない。何重にも重なった声が頭の中で反響する。耳をふさいでも意味はなく、今にも頭が割れそうであった。
『救済を。騎士たる象徴であり、人々の望みたる少女に』
『救済を。正義の心を捨てられなかった、誰よりも人らしい男に』
『救済を。器として存在し、一時の幸福を知ってしまった人形に』
『救済を。平和を知らず、与えられた役割しか持たぬ女に』
知らない光景が見えてくる。前には人々に称えられ、やがて血みどろになりながらも戦うことを辞めなかった少女の姿。
後ろには、言葉にするもの悍ましい戦場と天秤に自らの宝を量り続ける男の姿。
あったはずの光景が、端から存在しなかったように一瞬で切り替わる。
『救済を。魔術師として正しく、父として曲がりなりにも家族を愛した魔術師に』
『救済を。己の空虚な心を満たせず、最初から壊れてしまっている神父に』
『救済を。家族を失えども、魔術師として強い心を持った童女に』
また、知らない光景だった。仲睦まじい家族に見えるが、やがて炎に包まれて一人になる童女の姿と、それを見て心を満たす男がいる。
最後には炎が消え、灰すら残さずに何も残らなかった。
『救済を。誇りと過去と同じ過ちを犯したに騎士に』
『救済を。すべてを捨ててでも失いたくない存在と共に散った魔術師に』
『救済を。己を愛した男を裏切り、呪いに打ち勝てなかった女に』
また誰かが映り、その過ちを見せられていく。それはお世辞にも笑えるような話でも、納得出来るような終わりでもなかった。
またあっさりと光景が切り替わる。分かりきった展開だ。
『救済を。恋と愛が混ざり合い、最後には壊れてしまった男に』
『救済を。罪を償うことも、許しを請うことも出来ない狂った騎士に』
『救済を。悪の根絶を願いながらも、最後には悪と成り立てた残骸に』
ところが、最後には何も見えない。思考も纏まらずに意識が希薄になっていくのを感じる。強い光が目の前を支配した時、救済を求める声は聞こえなくなっていた。
夜の冬木の街中を走るタクシーに、獅子の鬣のようなボリュームのある黒髪の少年と、サングラスを掛けた青髪の野性味あふれる美男子の二人がいた。
「おう、坊主。見ろよ、たっけぇビルばっかだぜ」
「田舎者みたいに思われるからやめてよ」
「んなかてぇこと言うなよ。旅行客くらい、何処にでもいるだろうが」
「悪目立ちするって言いたいの。ただでさえ、その顔は目立つんだから」
「坊主はもっと堂々としてればいいんだよ。暗い顔で俯いても、良いことないぜ?」
「⋯⋯そんな気分になれないよ」
暗い声色で俯いてる少年と、外の景色を見ている明るい雰囲気の男の様子は綺麗に真逆だった。家族にしては顔が似ているようには見えず、友人というには年齢が離れすぎている。
どういう関係なのか分かりづらい客は、タクシー運転手にとっては割とあることだが、それにしても関係性が見えてこない客だった。
「お二人とも、観光ですか?」
「ん?まぁな。昔親戚がいたっつう所に行くついでに観光がしたくてな」
「そうですか、最近物騒な事件が起きていましてね。これから観光する人に言うのもあれですが、夜は気をつけて下さい」
「そんなに物騒な事件なんですか?」
一応、運転手は気をつけるように言っておきたかっただけだったが、突然俯いていた少年が話に食いついてきた。青髪の方の男に言ったつもりだった運転手は、その食いつきぶりに困惑しながら答える。
「えぇ、何でも連続殺人犯が夜な夜な彷徨っているとか。実際に被害にあった人もいるようですし⋯⋯」
「どれくらいの人が被害にあったとかはわかりますか?」
「⋯⋯どうでしょう?私もニュースで見たくらいですし」
「おいおい、坊主。兄ちゃんが困ってんじゃねぇか」
「⋯⋯ごめんなさい。変なことを聞いて」
「いえ、お気になさらず。不安にするようなことを言ったのは私ですので」
身を乗り出しそうになって聞こうとする少年を見兼ねたのか、青髪の男が少年の首根っこを掴んでたしなめる。首根っこを掴まれて冷静になったのか少年が謝罪するが、運転手は苦笑いを浮かべた。
「ところで、観光スポットとか美味い飯がある店とは知らねぇか?」
「そうですね⋯⋯『冬木大橋』とかどうでしょう。巨大な赤い鉄橋で、夜はライトに照らされて綺麗ですよ。後は、『お好み焼き・鍾馗』というお店がオススメですかね」
「へぇ、あんがとな兄ちゃん」
少しだけ重くなった雰囲気も消え去り、そこから雑談が挟まれながら1時間ほどタクシーに揺られ、目的地である冬木ハイアットホテルに到着した。
料金を払ってタクシーに降り、予約していたホテルの部屋に入った青髪の男は、凝り固まった肩を回しながらベットにドカッと座る。少年はそのだらしない姿に呆れながら、隣ベットにキャリーケースを置いた。
「だぁ~現代人の振りっつうのも、疲れんな」
「キャスターは現代人じゃなくて、田舎者の旅行客にしか見えなかったよ」
「てことは、見事に変装してたってことだろ?いいじゃねぇか」
「そうだね。さっきフォローもされちゃったし、マスターとして情けないよ」
「マスターは観光なんて、気分でココに来たわけじゃねぇんだ。それに、まだまだガキの歳でそこまで冷静なら大したもんだろ」
「歳はいい訳にならないよ」
自嘲気味な少年に、青髪の男⋯⋯キャスターは頭をポリポリとかくと勢い良く立ち上がり、マスターである少年に近づく。
「な、何?」
「マスター⋯⋯⋯」
キャスターの身長は180cmを有に越している。対して、少年は110cm程度しかない。キャスターの野生的な容姿も相まって上から見下されるだけでも、それ相応の威圧感があった。
「⋯⋯飯、食いに行こうぜ」
「えっ?」
「こういう時は飯を食うんだよ。日本には『飯を食わなきゃ戦はできぬ』っていうことわざがあるんだろ?今のオレたちにぴったりな言葉じゃねぇか」
「『腹が減っては戦はできぬ』ね。サーヴァントって、食事の必要あったけ?」
「細けーことはいいんだよ。良いホテル取ったんなら良い飯も食えんだろ」
「キャスターがそうしたいなら、別にいいけど」
口では仕方ないという風を装いつつ、足早に部屋を出ようとする少年。気を張り詰めていたので自分でも気づいていなかったが、少年のお腹はぐぅぐぅとなっていた。
「おし!じゃあ行くぞマスター!」
「子供に奢られる大人って何?」
「こればっかりどうしようもねぇだろ。聖杯は知識は与えても金なんざ一銭もくれやしねぇ」
「お祖母ちゃんのお金なんだから、無駄遣いはしないよ?」
「こんだけあって、困ることはねぇよ」
札束が入った財布をズボンポケットにしまうキャスターに、若干の不安を覚える少年。聖杯の知識があったとしても、現代の価値感から外れているだろうキャスターに財布を持たせるのは、大いに不安であった。
とは言っても、子供の自分がそんな大金を持ち運ぶのは些か不自然だ。タクシーやホテルの支払いもキャスターに任せる必要があり、そこら辺を地味に不便に感じていた。
「ところでよマスター」
「⋯⋯なに?」
部屋を出てエレベーターを待つ間、キャスターが声色を変えて少年に問いかけてくる。
「わざわざ魔術師の工房の下に泊まるのは、何か目的があるっていうことでいいんだよな?」
「そりゃあね。灯台下暗しってやつだよ。まさか、自分の工房の真下に結界も貼らずに泊まる馬鹿がいるとは思わないでしょ」
このホテルの最上階のワンフロアを貸し切り、魔術工房を創り上げた時計塔の中でも天才と呼ばれる魔術師⋯⋯ケイネス・エルメロイ・アーチボルトがいる。
かの時計塔の天才は様々なトラップを仕掛けており、一部が異界化するほどの鉄壁具合だ。並の魔術師では到底ケイネスに辿り着くことは出来ないだろう。
そんな真っ当な天才であるケイネス・エルメロイ・アーチボルトを思考を掻い潜るには、魔術的なアプローチよりも物理的なアプローチの方がいい。少年は、そこの盲点を突いたのだ。
「真っ当な魔術師なら、そんなリスクは取らねぇな。つーとあれか、タクシーで来たのも?」
「電車や新幹線は人目につくし、出入り口が限られてるからね。それに、もし乗ってる間に宝具でも撃たれたら、周りの人が大勢死にかねない」
「タクシーならバレない保証はねぇだろ?」
「そんなことないよ。タクシーなら魔術的な痕跡は一切ないし、仮にバレても運転手さん1人を守るだけで済む。何より、キャスターの魔術なら並の魔術師の目を掻い潜ることなんて簡単でしょ?」
「言ってくれるねぇ。ま、そこらの魔術師にバレねぇ自信はあるが、絶対とは言い切れないぜ?」
「聞いてないんだけど、キャスターは言ったよね。魔術師にバレない隠蔽くらい出来るって」
部屋には一切の魔術はかけていないが、キャスターはサーヴァントだと分からないように本人の魔術で隠蔽している。仮にも魔術師のサーヴァントであるキャスターの隠蔽を見抜くのは、そう簡単なことではない。
少年はそう考えて、こんな作戦をとったのだ。急に不安になるようなことを言われても困る。焦った少年は、エレベーターに乗り込みながらキャスターを問い詰める。
「おいおい、最大の障壁を忘れてるぜ?」
「障壁?」
「オレと同じサーヴァントだよ」
「スキルや宝具のこと?それなら仕方ないよ。誰が呼ばれるのかは分からないんだから、そういったスキルや宝具の類を持たないことを祈るしかないし、キャスターならそこら辺の察知も出来るんでしょ?」
サーヴァントは、生前の英雄としての逸話や伝説に応じた能力を具現化したスキルと宝具を持つ。キャスターの魔術は現代の魔術師のほとんどを軽く凌駕するが、同じ英霊たるサーヴァントにどこまで効果があるかは、現状では相手によるとしか言えない。
「応さ、仮に見破れても分かるようにはやってるが、問題はスキルや宝具・魔術でもなかった場合だな」
「他に何かあったけ?」
「オレたちサーヴァントは英雄の影法師たる英霊だ。そういう奴らな、理屈云々関係なく、魔術や幻術やらが聞かなかったり見抜いちまったりするんだよ。要は勘だな」
「なにそれ⋯⋯怖い」
そんな獣みたいなことを言われても⋯⋯それでは対策のしようがない。やっぱり、一番怖いのは理屈が通用しないヤツだと少年は改めて認識する。
「ま、そこら辺もオレの勘があれば大丈夫だろうよ」
「でもキャスターってさ、僕がいないと幸運値が低いんじゃなかったっけ?」
「⋯⋯⋯⋯」
「⋯⋯⋯⋯」
「⋯⋯⋯⋯」
「ちょ!頭を乱暴に撫でないでよ。生前から運が悪いのは事実でしょ!」
「うるせぇ、ガキンチョ。人には言っちゃいけねぇことがあんだよ」
『ランサーが死んだ!』
『この人でなしぃ!』
謎の声が聞こえた瞬間、キャスターが全身を猫のように震わせて狭いエレベーター内で辺りを見回す。ちょうどエレベーターが一階に着いたようで、扉が開く。
「着いたよ、今日はレストランで食べるんでしょ?」
「お、おう。ランサーじゃねぇから大丈夫だよな?」
少年は少し顔が青くなっているキャスターを訝しみながらも、ホテルにあるレストランで食事を済ませ、冬木での1日を終える二人であった。
「ん?」
同刻、遠坂邸にて。遠坂時臣に召還されたアーチャー⋯⋯英雄王ギルガメッシュは、何かに気づいたようにネオンの光に溢れた街を見下ろす。
サーヴァントとして、一応マスターである時臣の策でアサシンの一体を誅したところであった。消えていくアサシンを一瞥することなく訝しむように街を見下ろす英雄王に、時臣が念話を寄越した。
『いかがなされましたか、英雄王』
「なに、妙なモノが紛れ込んだにすぎん。貴様には関係のないことだ」
『⋯⋯左様でしたか』
時臣の納得していない雰囲気を感じとるギルガメッシュであったが、それを無視して強制的に念話を切った。
「フンッ、くだらん。万物の願いが救済に通づるなど、所詮は雑種の考えにすぎん」
しばらく街を一瞥していたギルガメッシュであったが、眉をしかめて辛辣な言葉を吐き捨てる。その言葉には様々な感情が混じり合っているようで、同時に英雄王としての一つの結論であった。
「しかしだ。幼童にソレを与えるなど、愚かなものよ。終幕を視るまでもない」
ギルガメッシュは嗤った。結末の分かりきった物語への期待などない。しかし、その願いの結末までの過程となる幼童の輝きが、どのような肴になるのかを嗤ったのだった。
【黒髪の少年】
名前 ■■ ■■
性別 男
年齢 5歳くらい
身長 大体110cm
好きなもの 母と祖母
嫌いなもの 自分の右腕
キャスターのマスターで、第四次聖杯戦争に参加することになった少年。本人曰く、『参加するつもりはあったが、こんなことになるとは思っていなかった』とのこと。
少年に魔術師としての自覚は薄く、辛うじて神秘の存在を知っている程度。その割には、何故か一部の魔術師や魔術、スキル、宝具について詳しかったりする。
【キャスター】
青髪の野性味あふれる美男子。髪を後ろで纏めていて、男性ならではの色気がある。マスターである少年のことは結構気に入っていて、聖杯にかける願いについても知っている。
聖杯戦争が始まる結構前に召喚されていて、付き合い自体はそこそこの期間ある。しかし、自身が召喚された理由から色々と面倒なことになると確信しているので、巻き込まれるであろう少年には同情があったりする。(本人には伝えていない)
ステータス
筋力 D 耐久 C 敏捷 C 魔力 A 幸運 B 宝具 B
【教えて!聖杯教室〜!】
???「みんなの願望器!聖杯ちゃんだよ〜」
少年「どうも、名前すらない少年です」
聖杯ちゃん「皆の疑問に答えるこのコーナーでは、色々なことを教えちゃうぞ★」
少年「少しでも印象を残すためにキッツい口調をしていますが、気にしないでスルーしてあげてください」
聖杯ちゃん「なんか、名前すらもらってない人がおかしなこと言ってて怖〜い」
少年「そんなに長い文章おまけに使えないんで、早く豆知識言って終わらせてください」
聖杯ちゃん「アハハッ後で■■してやろ〜。では、今回の豆知識!
少年は転生者や転移、憑依した訳ではないよ。立派な型月世界の住人なんだって〜」
少年「それでは、Fate/Grand Saviourをよろしくお願いします」