マジすか学園inオメガ   作:ヒメール

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3・人間かどうか

 当たり前に生きてきた時間の中で、人間というのを一度も考えたことがなかった。

 普通に食事をして美味しいと感じれば、また食べたいと思い。楽しいと感じたら笑いあったり、感動する瞬間があれば胸はジーンと熱くなる。

 けれど、これまでの生きてきた時間や感じてきた感情は自身が『アマゾン』という存在で打ち消された。

 信じたくない、夢であって欲しいとどれだけ思っても変えられない現実がそこにはある。

 健二は歩みを止め。無気力に壁に寄りかかり、腰を落とした。

健二(ずっと僕は人間のつもりで生きてきたつもりだった……本当の僕は……怪物なんだ)

 思えば、異形の姿で戦う自分じゃない姿が痛烈に蘇り、呼吸が早くなってくる。

健二「なんで……なんでこうならなくちゃいけないんだ」

 目から大粒の涙が溢れ、床に落ちていく。

 この感情をどこかにぶつけてたくてしょうがない。ぶつけてしまえば、異形の自分に飲み込まれ、本当の怪物に成り下がってしまう。

「人がどうかを考えるようになったら、その時点で君は人間じゃないんだよ」

 目の前から冷ややかな声でかけられ、健二は首を上げれば、ハンバーガーを呑気に食べる仁が見下ろしていた。

仁「だからこそアマゾンと戦い続け、勝って見せてくれ。その中で人間かどうかなんて考えるな、君は成功体だけという事を頭の片隅に置いておけばいいさ」

 その言葉を最後に仁はハンバーガーを床に置き、薄暗い廊下へ歩き出せば、示し合わせたようにアマゾンの気配を感じとり、健二は涙を流しながら無心にハンバーガーに齧りつき、むさぼった。

 

 

 それが現れたのは突然だった。廊下にあるドアのガラスをスズメバチの姿をしたアマゾンが突き破り、近くでたむろしていたヤンキー一人の腕に毒針を突き刺し、覆い被さったのだ。

 視界一杯に口を開けば、鋭く尖った歯に粘ついた唾液が顔に降りかかり、体中に神経毒が回っているせいで、泣き叫ぶことも足掻くこともできず戦慄することしかできない。

 抗うこともできず命の終わりが近づきかけた時、誰かが咆哮を上げ、覆い被さったスズメバチアマゾンの顔面にフルスイングの鉄パイプの強烈一撃が叩き込まれ、吹き飛ばした。

「立てるか!」

 助けたのはチームもんじゃのリーダー、ウーチンでスズメバチアマゾンを見据えたまま下がっていく。

 だが、下がるのも束の間、スズメバチアマゾンはすぐに立ち上がり超人的な脚力で近づき、突起から飛び出した毒針がウーチンに迫る。

「うん!」

 毒針はウーチンではなく、目の前に立ち塞がった健二の腕に突き刺さっていた。

ウーチン「お前……」

健二「早く逃げて!!」

 力を振り絞り、スズメバチアマゾンを蹴り倒しながら感覚が残る片腕で装着する。

 駆動音が自身の内に潜む何かが目覚めかせるように、低く響かせ左手のアクセラーグリップを握り、捻った。

《オメガ》

 目のような構造をしたコンドラーコアが血管が広がっていくように赤く輝き、禍々しい電子音声が轟く。

健二「うぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!アマゾン!!!」

 全身を緑色の炎が包み込み、真っ赤な複眼を覗かせながらスズメバチアマゾンに、飛びかかった。

 

 

健二「ぁぁぁああ!!」

 校舎からスズメバチアマゾンと飛び出した直後に、電光石火のごとく回し蹴りを脇腹に打ち込むべば、バギ!と何かが折れる音を響かせ、壁に吹き飛ばす。

 体制を立て直すよりも早く、健二は神経毒が体に回っているのを忘れ、本能に身を任せ、覆い被さり何度も拳を振り下ろす。

 だが、スズメバチアマゾンも負けてはいない。振り下ろされる拳を掴み、弾き飛ばした。

 弱っていると思っていた相手からの思わぬ反撃に、忘れていた神経毒が足にまで回っており、立ち上がることすらままならない。

「キャシャアアア!!」

 唸り声を上げ駆け出す。その直後、廊下の方から誰かが金属バットで頭を思いっきり振り抜いた。

カンドレ「イカノメ、何やってんだよ!!」

 金属バットを持って現れたのは、チームお好みリーダーのイカノメであった。

 持つ右手には包帯が巻かれていて、まだ痛むんだろうか、表情がやや引き攣っている。

イカノメ「よくも、仲間を襲ってくれたな!!」

 息も絶え絶えに叫べば、もう一度金属バットを振りかぶり、頭に叩きつける。スズメバチアマゾンはバットで殴られたぐらいでは意に介さず、突起から毒針を出し腕を伸ばした。

健二「くっぅぅぅ!!!」

 イカノメに突き刺さる直前に健二が盾になり、腹に突き刺さる。

イカノメ「お前……」

健二「早く……早く……逃げて………」

イカノメ「お前も同じじゃ……」

 問いかけに健二は感覚が消えていく中で、仁の言葉が蘇る。

 

「人がどうかを考えるようになったら、その時点で君は人間じゃないんだよ」

 

 その通りだ。普通の人間だったら自分が人間であることに疑問を抱かない、抱いたとしてもそれは自身が置かれた環境での存在でしかない。

 健二は普通の人間じゃない、今の置かれている状況を見れば一目瞭然だ。

 けれども、人間だとか怪物だろうが体は自然と動いてしまった。

 肉の匂いがしたとか、筋肉の僅かな動きに腹を空かせたとかの単純な衝動じゃない。

健二(助けなきゃと……思ったんだ……僕は人間かどうかあるか前に、この人を助けたいと思ったんだ!!)

 腹に刺さった毒針で痛みは完全に消え、意識は朦朧としてくる。

 生存本能のなせる技か無意識に、全神経を腕に込め、胸に拳撃を打ち込んだ。

 スズメバチアマゾンは鈍い音を響かせ、コンクリートにできた壁に真っ黒な血飛沫を撒き散らしながら、液状化していく。

 そこで健二の力は使い切り、視界は深淵の中へ吸い込まれていった。

 

 

 

健二「うん?」

 目を覚ました時、まず最初に茶色くなった天上が目に入り、次は腕や足の感覚を感じる。

 何が起こったのか分からないまま上半身を上げ、ベットから降りようとすれば、勢いよくカーテンが引かれ、夕陽をバックにオジュケンの姿が見えた。

オジュケン「良かったぁ~!目覚ましたんだね!!」

 元気はつらつな声が妙に頭に響き、頭を振るう。

イカノメ「起きたか」

 オジュケンの後ろから警戒心が完全に溶けてはいないイカノメが金属バットを肩に置き、顔を出した。

イカノメ「これ」

 ぶっきらぼうにサイダーを差し出してくれる。

健二「あ……ありがとうございます」

イカノメ「みんなを助けてくれてありがとうな。俺も助かったよ」

健二「いえ、ぼっ……僕は当たり前の事をしただけなので」

 言いながら喉の渇きに耐えられず、震えが残る手でキャップを開け、サイダーを一気に流し込む。

オジュケン「私達のチームの自己紹介してなかったね!」

健二「チーム……ですか?」

 一旦、冷静になって見るオジュケンの服は奇抜で、イカノメと共通の緑色ジャージを着ている。

オジュケン「私達はチームお好みっていうので、イカノメがリーダーなの!!あと、チームもんじゃっていうのもいるんだけど!!一年に二つのチームはいらないってずっといがみあってるの~」

 怒涛の速さで説明され、健二のぼやけた頭で理解するのには時間が掛かりそうだ。

 

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