新しい章の始まりとなります、どうぞ!!
《富久山蒼一Side》
あれから数日が過ぎ、トゥアールなどの追加が成される形で、兵藤邸での共同生活は幕開けた。
イッセーが覗きをやめることを堂々と宣言して眷属仲間を驚愕させたり、男率が増えたこともあって大浴場の男女分けを時間制にし、女子時間中のイッセー入浴は他の女子のことを考えて禁止になったりでちょっと騒がしくなったが、まぁそれはそれ。
大半のメンバーが人柄もよく、トラブルメーカーの制裁もまぁ日常茶飯事。必然的に気心が知れるというか、気の置けない関係になるというかなってないとやってらんないというか。
そんなわけで他人行儀度合が数日程度三割以下にまで削れた今となって……は
「ほーい、朝飯出来たぞー。豚汁と炊き込みご飯、漬物は沢庵と梅干な~」*1|
「純和風だねぇ。お前さん達は大丈夫かよ」*2
「だいぶ慣れたから大丈夫だよ。それにまぁ、俺達の世界は神祖が色々やってて旧日本文化を礼賛する宗教とかも広まってるから」*3
「日本文化には多少離れているから問題ない。……卵かけご飯もまぁ、食べられなくはないな」*4
大体こんな感じで気安い会話ができるようになっている。
ちなみに家事も持ち回りでできる奴は分担する形になっている……というか、家政婦とかそういう人達がいないのでそこはまぁって奴だ。
俺もまぁ、炊き込みご飯や豚汁は便利だからな。具だくさんだから栄養豊富だし。別に俺だけが作ってるわけでもないけど。
「いただきます!! 綺麗なお姉さん達が作ってくれたご飯……たくさん食べるぞぉ~!!」*5
「海外の人や悪魔の人もいるのに、凄い純和風だな……しかも美味しいし」*6
「ま、料理がアレな連中はさっさと追い出したからネ。ゼノヴィア共はアレンジ無しで基本やることから始めるヨロシ。……ふざけたもん食わそうとしたらぶっ殺すわよ」*7
「言ってくれるね。料理は愛情というではないか」*8
「それは「美味しくしよう」というモチベーションの話だ。そもそも料理といえるものを作れる技術が大前提だろうに……あのゲテモノピザは忘れんぞ……っ」*9
「……あの地雷は、その……もうやめて?」*10
「大丈夫。ここのご飯、基本的に上手な人が作ってる」*11
なんか一人二人増えているが、それはもういいだろう。
なんか最初っからとんでもないのが紛れ込んでいたり、その所為なのか訳ありな人が追加投入されてりしているがもういいだろう。考えるだけ疲れる。
「というか、禍の団もアホなことを考たんだな。例え無限を体現できない状態にしてでも、都合のいいオーフィスを作って象徴にしようとか……真面目にオーフィスを懐柔する策を考えた方がいいんじゃないか?」
信じられますか皆さん。禍の団の象徴であり、俺達の世界最強の対存在。
これのレベルをどうにかしようとした場合、余波で地球が壊滅的打撃を受けるレベルとされるドラゴン。マジで戦おうとするのなら、俺らの世界の名だたる神々がアッセンブルぐらいしないと話にならないだろう存在。無限を体現する最強ドラゴンその1。
それをあの英雄派、ハーデスと取引して有限に弱体化させたって話だ。
なんでも聖書の神様が向ける怒りによって、己と似た性質を持つ龍と蛇に特攻がかけられる
乗っかる禍の団も大概だな。象徴の大幅弱体化なんてするより、上手く懐柔するプランを立てた方がいいだろうに。
「そこは同感だな。戦闘能力が他を寄せ付けない最強だからって、それ以外の要素が必要じゃないわけでもないんだ。金に女に権威に娯楽、そういったものを使って宥めたりいなすというのも立派な交渉なのに、試してもいないみたいだしな」
「倒す倒せないでしか考えないとは馬鹿馬鹿しい。戦略や政略という物を理解していないのか」
と、アッシュとルルーシュも俺のボヤキに同意見。
実際、それで残った半分のオーフィスをこっちに保護されてるんだから大間抜けだろう。
無限を体現できるだけのスペックは失われたようだが、それでも基本性能なら下手な主神を越えている。オオポカをやってるとしか思えないんだがな。
「んまんま」
……見ている分には聞きわけのいい子供だから、尚更懐柔策が通用した気もするのが大きいわけだが。
「悪党なんて基本的に頭が悪ぃんだよ。だから馬鹿なことするんだろ、馬鹿なんだから」
ちゃっかり漬物を奪おうとしている銀さんがそんなことを言ってきた。
素早く肘で迎撃しつつ、俺は沢庵をパリポリと。
しかしまぁ、三日ぐらいしか経ってないのに人が集まりまくっていることで。
「というか、サクヤ嬢って確か、ネオブリキ野郎が制圧したホッカイドウブロックの領主の娘さんだろ? いっそのこと正体を明かして対抗馬……ってのは選択肢に入れなくてよかったのか?」
気になってたのでそこを聞くが、ルルーシュは首を横に振った。
「たまたまホッカイドウブロックにいた時に助けたんだが、彼女には影武者として育てられた親友がいてな。どうやらネオ・ブリタニアの連中は影武者の方を捕らえたのだが、その辺りを知っている連中を抱き込みながら気づいていないらしい」
ちなみに、ゼロが言っていた彼女というのがサクヤ嬢とのことだ。
実はルルーシュにとっては姪に辺り、また彼女の親戚とも顔馴染み。なのでたまたま見つけて助けてそのまま日本支部まで連れて行ってこっそり姿を消そうとしたらこの事件ってことだ。
「私の存在があれば、ネオ・ブリタニアに対抗する為の御旗になるのは分かっています。……でもサクラを、親友を見捨てることになるのは納得できなかったんです。……ごめんなさい」
「まあ、選択肢の一つぐらいだから気にするな。小さい子供に自分から親友を切り捨てる選択を強制するほど鬼じゃない。……ほら、とりあえず落ち込んでる時は一杯食べとけ」
ちょっと七割ぐらいで意地悪だったと反省しつつ、俺はサクヤ嬢に追加で炊き込みご飯をよそう。
「大切な友達の為ならしかたないネ! むしろ助ける為にこそ体張ってこそネ! 一杯食って体を作った作った!」
神楽は神楽でそう激励するが、お前は炊飯器から直接食べるな。エンゲル係数どうなってんだ?
とはいえ、だ。
「まぁこっちもある程度は連携体制が取れたようでよかったよ。俺も人間界に姿を見せたかいがあるかな……」
イッセーがそういう通り、こっちの方もある程度の連携体制は取れてきている。
まず、超合衆国という枠組みを主体とする形で、各世界の人達に対してある程度の協力体制を取ることを要望。そこに対し、何故か大半の異形側の世界が繋がってた異形側が裏をカバーする形で、更に補佐を入れた。
そこに総二ことテイルレッドを投入し、ゲストの形で進次郎ことウルトラマンをサプライズゲストに見せかけることで対応。異形側のまだ確認できてない部分に対する牽制も兼ねて、姿を見せられてしまったイッセーことおっぱいドラゴンも協力者とすることで、大規模な連携体制が瞬く前に形になり始めていると印象付ける形だ。こういう演出マジで大事。
もちろん超合衆国の象徴たるゼロも動いているしで、色々と立ち回っている。シャーデンフロイデの動きが見えないのは気にかかるが……まぁ準備期間ということだろう。
「あとそよ姫さんだっけ? 皆さんの世界の総理大臣にはお礼を言っとかないと。こっちの異星人関係で尽力してくれてるし」
進次郎がほっとした様子で言うが、神楽はそこに胸を張った。
「ま、お礼はしとくべきだけど当然のことネ。こっちは天人たくさん来てるシ、揉めない形にしないとグダグダになるだけヨ」
「地球人に気を使って偉そうにしないってだけで、下手な天人よりよっぽどありがてぇしな。へんな排斥運動でややこしくならねえうちに、オラつかない異星人様を呼び寄せて交流の糸口にするってこったろ? むしろそういう奴らがいてくれた方が、残された天人どもでアホなことする連中が抑えられそうで喜んでんだろうぜ、あの姫様」
坂田がそういうことを言うが、そっちはそっちで大変か。
「基幹技術力に圧倒的差がある以上、文明レベルの低い相手を下に見るのは無理もないしな。その上で良き隣人たろうとしている人達が排斥されるのは、オラついている連中の相手をしないといけない側からすると無視できないと」
「あ~なるほど。異形の中にも人間や他種族を見下してる奴って結構いるしな~。大王派とか吸血鬼の連中とか」
俺が自分なりにかみ砕くと、イッセーも味噌汁を飲み終えてからそうぼやく。
吸血鬼はなぁ~。色々なぁ~。
大王派はあれで人間との契約活動をしているってところもあるし、まだマシなんだよ。足並みは揃えられる。実権の多くは握っているが、一部を象徴として据えている最強戦力の魔王派側に握らせてるし。
だからまぁ、禍の団が協力しているシャーデンフロイデに、あからさまに協力するようなことはしないだろう。地球方面に関してはあっちの方が少数であるのが現状だしな。
「話を聞く限り、二大派閥同士の争いで勝つ為に和平を利用しているんだって?」
「ああ。現状の異形勢力は和平協調路線とはいえ、血で血を洗うような争いを経験している奴ら存命どころか現役な場合も多いからな。和平を嫌々渋々呑み込んでるだけの手合いも多いだろうし、下手に和平を拒絶すると後が怖いってところだと思ってる」
アッシュに話を振られたので俺が推測すると、イッセーも思い出したのか嫌な顔を押した。
「そのカーミラの使いってのが言ってたんだけど、「世界は純血の吸血鬼とそれ以外しかいない」とか断言してたからなぁ。あそこで堂々と言える辺り、結構きついぜ?」
「そう育ってきたのだから当たり前でもあるのだろう。生まれ育った環境というものは人格形成に大きな影響があるからな。……典型的な旧ブリタニア時代の思想持ちとは会話が弾みそうだ」
ルルーシュが言うと、政治的なボヤキになってることもあってエイトや進次郎はちょっと嫌な顔になってる。
「大丈夫なんですか、それ? それにほら……ギャスパー君を貸せって要望だったらしいですけど」
「確かに酷いよな。なんていうか、雰囲気が地球で犯罪をしている異星人と似た感じがするっていうか……もっと酷いような気がする」
実際そこが大きいだろうな。
正直和平に組み込んでもリスクが大きいが、断るにしても上手くやらないと、和平結んでいる側で余計なトラブルが生まれかねない。
絶対色々言ってきたりするやつ出てくるだろうし。あと安い取引だと思ってる連中もいるだろうし。
「賭けてもいい。下手にこの件断ると、絶対和平結んだ側の上の下ぐらいの立場から「いざという時同じように手を切られるのでは?」とかいう奴出てくる。あと大王派辺りは現在進行形で「若造の家畜一人で吸血鬼二大派閥の片割れを抱き込めるチャンスは逃せない!」とか言ってる奴いる」
「……実際ありえそうなのが大変ですわね」
「どの勢力にもそういったものはおりますから。大変ですわ」
レイヴェルと朱乃嬢が、俺のボヤキに苦笑いだ。
まぁ、だからって素直に言われてやるばかりではないわけで。
「それで、まずイッセー達の主と恩師が交渉に?」
「そうだ。アザゼル先生がカーミラと交渉して、リアス部長は木場を護衛につけてギャスパーの実家に話をしに行ったんだ」
アッシュにゼノヴィアがそう答えるが、だからこそ主がいないわけで。
女系派閥のカーミラと和平を結ぶか、それともこれをネタに男系派閥のツェペシュを抱き込むか。ワンチャン中継役となって両方と和平を結ぶ賭けに出るか。
どれをするにしても情報が薄いとみて動いているわけだ。
「面倒くさいわね。話を聞いてるとそのヴラディ家ってギャスパーに酷いこともしてるんでしょ? いつでも何とかできるように眷属総出の方が安全じゃない?」
愛香がそんなことを言うが、そうも言ってられんというかなんというか。
「若手としては異例の実力者揃い。それこそ神や魔王の出張る戦いからすら全員五体満足で生存しているリアス・グレモリー眷属総出でお家訪問とか、まとまるものもまとまらないぞ?」
「まったくだ。和平を積極的に推し進めている側が、そんな恫喝外交を速攻で取ってどうする。吸血鬼側の過剰な反応を誘発するばかりか、内側からも批判されるのが目に見えてるな」
「総力を挙げるにしても大義名分と段取りというのは必要です。これをおざなりにしたら上手くまとめられるものもまとまりませんよ?」
それなりに知見がある俺は勿論、統治者側のルルーシュやサクヤも反対意見だな。
「これだから貧乳蛮族は困りますねぇ? 胸が貧しいと知性も貧しいとあぁあああ胸がもげるぅーっ!?」
「じゃぁ満たす為にアンタの胸をよこしなさいよ!!」
……トゥアールはトゥアールで学習するべきだと思う。あと抵抗と力押しの余波で建材がミシミシ言ってるんだけど。
「人間界の戦争に耐える設計なんだけど、俺の家! ミシミシいうとか属性力使いすぎだよ抑えて抑えて!!」
「違いますこの蛮族はこれを素でできるんですぅー! もげるから助けてー!!」
「放してあげて、愛香。私が仙術でスマートに潰すから」
「いやぁああああああ小猫さんが参戦!? 貴方はそのままのロリっ娘でいるべきででででででえでででででー!?」
雉も鳴かずば撃たれまい。もうトゥアールは放っておいた方がいいような気がする。
「基本スペックが高いからこその身内の阿保騒ぎは一旦おいておくが、まぁ実際問題派手に動くわけにはいかないって話だ」
「そうなんですか? ろくでもないことしてるのはあっちなんだし、警察官が犯罪者にすごんだ程度で文句言う方がおかしいでしょ」
俺が指摘すると、なんかずれた感覚で愛香が反論している。
……胸を引きちぎろうとしながらこれができる辺り、なんかズれてるなこの子。
「警察官の摘発にも規則があるって話だ。それを無視して横暴働くような悪徳警官なんぞが蔓延る国家とかダメだろお前」
俺がマジレスすると、総二がそっと視線を逸らしていた。
このブルー、まさかやったのか……アルティメギル相手に……!?
「実際やめた方がいいだろうな。リスクがあまりに大きすぎる」
と、一通り食べ終えてお茶を飲んだアッシュが愛香を宥めに入った。
「世の中武力で強引に片付ければ問題なし……なんてことばかりじゃないんだ。軍事的に侵攻すれば大義名分があろうと被征服者から恨みを買うから、懐柔策にしても弾圧前提にしてもリソースはいる。まして和平を掲げる現魔王の妹がいきなり仕掛ければ、和平そのものの屋台骨が揺らぎかねない。何より、内側に大王派がいるのなら尚更だ」
その辺りのバランス感覚は本当に長けてるな。流石、交渉人を仕事にしているだけはある。
というより、もう大王派の辺りにまで鋭く踏み込んでいるのか。
「悪魔は魔王が死んだ後に、内戦の結果戦争継続を掲げる旧魔王側を追放した。だからある意味で和平政策には大きな反発や不満層は出てきていないけれど、裏を返せばそれを名目にして綱紀粛正を取ることが難しい。特に大王派側についている重鎮は血統において最高峰のバアル家を筆頭に、年季が違う老獪が多いしな。そして大王派の思想は血統や純度を重視する貴族主義。……言い方は悪いが、
「なるほどねぇ。やらかすようなら政争仕掛けて、更にカーミラやツェペシュと組んで挟み撃ちとかしかねないってか? やぁだねぇ~差別主義の貴族様は。えらい地位につくならそれだけの事をしろってんだ」
銀さんがさらりと茶化すが、まぁそういうわけだ。
「和平を謳う悪魔が、内乱で大揉めになったら和平そのものが砕け散って、現状だとマジで異形側を連携させることもできなくなる。ましてシャーデンフロイデに禍の団がいる以上、そう言った連中と大事をうかつに起こせばそこに流れるリスクもあるんだ。正義の味方は正義と断言できるやり方を考える必要があるって話でもある」
大義名分を掲げるからには、それを自分から保護にするのはリスクが大きいってことだ。余計な敵を作る余力はないなら尚更な。
「……え? 悪の組織をぶちのめし続ければよくないの?」
とりあえず、テイルブルーはお目付け役を用意した方がいいんだろうな。
「そんなんだからテイルブルーはツインテイルズで人気低いんですよぉー!? 後そろそろいい加減に視界が……あれぇ……貴方は宿敵ドラグギルティ……そしてティラノギルティ……~~~?」
「あの愛香ちゃんと小猫ちゃん。そろそろ本当にトゥアール死ぬからその辺で止めよう?」
顔が真っ青になっているトゥアールが痙攣し始めてるというか、臨死体験をしているので流石に新八が止めに入った。
ま、それはそれでだ。
「ま、世の中は色々な要素が絡み合っているから単純に解決できることばかりじゃないってことさ。ちゃんと考えられる人がきちんと協力してくれているんだし、少しは待っておかないとダメだからさ?」
アシュレイさんが柔らかく説明すると、とりあえず周りの面子も納得しているようだ。
「そうだな。強引な形でごり押しするなら、その後の面倒も視野に入れるべきだ。ゼロレクイエムですら結局、三年そこらでこの大騒ぎだ」
「ブリタニア帝国の復権は阻止するよう動いたんだけどな。ノーランドは懸念事項だったが、まさかここまでのことをしでかすとは」
C.C.とルルーシュがため息をつくが、今度はイッセーが立ち上がった。
「なら、俺達は備えておくだけですよね! ここ数日は情報整理とかお得意様のフォローとかで大変だったけど、いい加減特訓しとくか!」
おお~。
実に前向きで一歩一歩進む奴だ。こういうところは素直に褒めたい。
「グレモリー眷属は自主鍛錬が特徴って話は本当だったか」
「そりゃそうですって、富久山さん。特に俺は才能ないんだし、鍛えてないとやってらんないし」
そういうところは素直にいい所だと思うんだが、本人に自覚が薄いのは良いのか悪いのか。
割と結構な面子が感心しているからな。気づいた方がいいぞ。
「よかったらサクヤちゃん達もどう? どうするかはともかく、基礎体力はあればあるほどいいぜ?」
「え、でもどこでするのですか?」
困惑しているサクヤ嬢に対し、イッセーたちはちょっとニコリとしていた。
《観束総二Side》
こ、これは一体!?
「なんじゃこりゃぁあああああああ!?」
隣で銀さんが絶叫するけど、俺達は今真っ白い広い空間にいた。
なんていうか端が見えない。その……ヘクタールとかそういう単位を使いそうな広さだ。
「……これは一体? 地下空間というわけでもなさそうですね」
「エドさんが用意したX空間とか、そんな感じなのか……?」
トゥアールや進次郎さんも驚いているけど、すっごい広い。
というかトゥアールが驚くって、どんな凄い技術が使われてるんだ……?
「悪魔の競技であるレーティングゲーム用のフィールド関連を流用する形で用意されている、訓練用の空間ですわ。本来は正式に家を継いだりプロとして活動している上級の悪魔に与えられますが、リアス様はグレモリー眷属の戦果もあって、特別に与えられている一人ですのよ」
レイヴェルがそう説明するけど、つまりこれ……大人の上級悪魔は大抵持ってるってことか。
凄いなオイ。悪魔って……。
「よっし! 久しぶりに模擬戦でもしよっかなっと」
そう言いながら、イッセーさんは赤い鎧を身に纏う。
「あれ? 映像で見せた真女王とかじゃないんですか?」
「あれはあれで消耗が大きいからな。もちろん長続きする為の特訓もいるけど、普通に使える普通の禁手や、禁手を使うまでの生身のトレーニングの方が重要だろ?」
野原にさらりというイッセーさんだけど、確かにな。
武術でも基礎訓練は大事ってよく言うし、その辺りを大事にしているからか動きも結構しっかりしてる。
「ちなみに、眷属含めて自主トレを重視している上級悪魔はレアケースだ。なまじ家柄の格で自然成長の度合いが大きく変わる上、特性の有無すら左右されるからな。まともな努力だけだとどうにかできない壁が多すぎるのもあるわけだしな」
そういう蒼一さんも、体の調子を整えるようにぴょんぴょんと跳ねたりしている。
「だが基礎トレの蓄積は大事だ。普段の仕事に三割の余裕を残す為にも、するべき苦労はちゃんとしないとな」
富久山さんもやる気なのか。この人結構真面目なんだな。
ことあるごとに「三割」って感じで余裕を残したがってるから、もっと面倒くさがりだと思ってた。
「あんた面倒くさがりだと思ってたんだが、結構真面目なんだな」
銀さんも感心していると、蒼一さんは遠い目になる。
「銀さん。……楽する為には楽をする為の苦労はしないといけないんだよ」
切実な言葉だった。もの凄い切実な言葉だった。
「マージンを得るにはそれに見合ったポテンシャルが必要なんだ。……初っ端からブリタニアに併合された日本に落ちて、俺がどれだけ苦労したか……死ぬんだよ、しっかり鍛えて備えていても、人は死ぬんだよ……あっさりと……っ」
「大変だったな。あの頃のブリタニアは本当に酷かったからな」
ルルーシュさんが同情していると、蒼一さんは気を取り直したらしい。
「ま、人間はただでさえ怠けたがりで諦めたがりだからな。無理のない範囲で自分を鍛えて、無理のない範囲の仕事をやって、無理のない範囲の贅沢と貯金で俺は十分。……その為に必要な努力はきちんとやっとかないとゆとりない人生が約束されるわけだ。さて、自主トレするか」
人生の苦労がにじみ出ながら、蒼一さんはそういう。
と、そこにゼノヴィアさんが一歩前に出た。
「ならちょうどいい。少し手合わせを願ってもいいか? どうも手練れと聞いているし、木場のように魔剣創造を至らせていると聞いている」
そんなことをいうゼノヴィアさんに、蒼一さんは肩をすくめた。
「ま、それぐらいなら。……一応言っておくが、音に聞こえし聖魔剣と同列に語られても困るぞ……?」
と、そんなことを言って蒼一さんと、ゼノヴィアさんが模擬戦をすることになって……五分後。
「これ本当に大丈夫なんだろうなぁああああああっ!?」
銀さんが絶叫するぐらい、凄い攻撃の応酬がされてた。
というか、ゼノヴィアさんの振るうデカい剣だけど、威力凄いな。
そんなに力を込めてないだろう、グランドブレイザーかってぐらい威力が出てるんだけど。
「うふふ。ゼノヴィアちゃんはイッセー君に次ぐ、グレモリー眷属のパワーファイターですもの。エクス・デュランダルも私達の世界で指折りの聖剣を組み合わせた特注品ですわ」
ニコニコ笑顔で朱乃さんがそんなことを言うけど、これがいつもの光景なのかぁ……。
「……むしろこれを凌いでいる富久山の対応力を誉めるべきだな。グロースターでランスロットに挑むような猛威だろう、あれ」
ルルーシュさんも引いているけど、実際ヤバイ。
一応武術を学んでるから分かるけど、二人とも剣の腕前も凄い。ただ、剣の腕前だとゼノヴィアさんの方が上だろう。
そして武装でも上みたいだ。ゼノヴィアさんのエクス・デュランダルを前に、蒼一さんは魔剣を創り出しては砕かれる……どころか断ち切られるのを繰り返している。
更に、カーミラ・ギルティを相手にした時に見せた騎士を出したりしているけど、それも薙ぎ払われている。
「どうした! 己と騎士の動きが全然違う! 木場なら速さだけでなく技術の一部も盛り込めているぞ!!」
「普通は無理だからな!? それは木場祐斗が亜種なだけだからな!?」
そして言い返す余裕もある。
「……ちなみにどういうことだ? 神器というのと関係があるのか?」
「そういえば僕も気になるなぁ。どんな能力なんだろ?」
ルルーシュさんと野原が気になっているのを聞いたのか、イッセーさんがちょっと考え込んでた。
「富久山さんが使ってるのと木場は、イメージした魔剣を作り出す
「聖剣創造の正式な禁手については、アザゼル先生が試合で説明してましたわ。……こちらをご覧ください」
と、レイヴェルがタブレットPCに映像を映し出す。
あ、確かに剣を出したと思ったら鎧騎士が出てきて戦ってるな。
なんていうか……ドラゴンっぽい騎士だな。
「……ホモ同人が広まるだけありますね。その木場さんという方、絶対イッセーさんのこと大好きでしょう?」
「正直、モテモテなのに女の子の誘いを断って、俺に弁当を届けようとしてくるのはどうかと思う」
トゥアールにそう答えて、イッセーさんはちょっと俯いた。
よく分からないけど、料理上手な友達がお弁当作ってくれるって……ちょっと気まずくなりそうだな。
ただ、確かに富久山さんの騎士に比べると技も早さも段違いだ。
「聖剣創造の禁手は、基本的に聖剣の騎士団を創り出す
「まだ早さはともかく技術は再現し切れてないけど、自分が鎧の中に入って油断させて、一発かましたりもしてるんだよなぁ」
イッセーさんがレイヴェルさんの説明に補足するけど、なんていうか戦い方が上手いな。
「いわゆる戦闘巧者ってことね。戦ったら苦戦しそう」
愛香がそう呟くけど、確かにツインテイルズで言うと手札を色々使うブルー寄りだよな。
「ただ、裏を返せば普通は自身の能力を模倣させた騎士を創造することはできません。それに創造系神器は、基本的に同格の神器と比べて強度や出力で劣りますから……正面からのぶつかり合いには一手劣る神器ですわ」
レイヴェルがそういう通り、真正面からの競り合いを富久山さんは避けてるな。
逆に流したり逸らしたりすることが前提の動きだからこそ、ゼノヴィアさんを相手にできているところもあるけど。
というより、時々急に早くなったり、剣が伸びたりしてるような気がするんだけど。
「そしてゼノヴィアちゃんの持つエクス・デュランダルは、教会が持っていたデュランダルとエクスカリバーの聖剣二つを合体させたものですわ。どちらも聖剣としては最高峰であり、デュランダルは絶大な破壊のオーラ、エクスカリバーは七種類の特性を持ちます」
「ふぅ~ん。なんつ~か、ちょっと中二病じみた武器なんだな……やばくね?」
銀さんがそう言うけど、実際基本的に追い込まれてるな。
ただ、蒼一さん……戦えてるな。
攻撃は捌かれてるけど、自分の攻撃を回避してるし。
「中々やりづらいね。曹操を思い返す以上……何かを隠しているだろう!」
「なるほど分かったか……なら、堂々と明かしてやろう……っ!」
ゼノヴィアさんに言い返した蒼一さんは、ゼノヴィアさんの刃を
あれを素手でと思い、殆ど驚くけど―
「腕に何かあるな」
「手甲か?」
―C.C.さんと銀さんがそう呟いた。
そしてよく見ると、蒼一さんの左腕には、手甲っぽいのがついている。
雰囲気はイッセーさんの赤龍帝の籠手に似てるかな。
「あれは、
イッセーさんが驚くけど、なんだろうか。
「……木場と同じタイプ……ってことはないよなぁ……」
「ありませんわね。祐斗君の場合はかなり特殊かつ、同系統の神器だからこそ得られた奇跡といって過言ではありませんもの」
イッセーさんと朱乃さんが顔を見合わせているけど、なんだなんだ?
ただ、ゼノヴィアさんも警戒心を見せてるな。
「神器は、木場が禁手で後天的に得るようなパターンでもない限り一人一種。封印系の龍の手と創造系の魔剣創造を生まれ持つとは思えない。……神の子を見張る者の暗部か危険因子の関係者だったのか?」
「違う違う。俺はこれがあったからこそ
苦笑いをしながら、蒼一さんはゼノヴィアさんに苦笑いを浮かべている。
「生存率一割以下で、後遺症が無いか回復したのは七年経っていまだ七人。更に神の子を見張る者に協力的なのは俺を含めてたったの三人。そういう特殊な来歴なんでな、データ取の手当ても込みで高給取りだったりするわけ……で」
そして蒼一さんの手甲が輝いて……あ、カーミラギルティを地下から襲ったドラゴン!!
「これが龍の手側の禁手。中のドラゴンと連携とっての独立具現型って感じでな」
そして天高く舞い上がるドラゴンにつられて、ゼノヴィアさんは上を見る。
視線だけで、蒼一さんの警戒は解いてなかったけど―
「そして別にこれでやるわけじゃない」
―そんなことを蒼一さんが言った途端。ゼノヴィアさんのすぐ後ろが爆発した!?
「トラップか……だが!!」
一瞬だけ気を取られたゼノヴィアさんは、そのタイミングで切りかかった蒼一さんを迎撃。
ただ蒼一さんは二刀流でいなす様にして、交差して剣を止める。
今まで手加減してたのか!? 罅は入ってるけどまだもってる!?
しかもドラゴンも上から強襲するけど、ゼノヴィアさんはエクス・デュランダルのパーツを分解して、それが剣になって弾き飛ばし―
「いや詰みだ」
―その瞬間、まったく別の方向から四本の剣が突き出される。
それにゼノヴィアは分離させた剣で対応するけど、剣の持ち主二人が抑え込んで、ゼノヴィアさんののど元に突きつけられる。
「実戦なら刺さってそのまま即死ってところだ。今日のところは俺の勝ちってことでヨロシク」
「……参った。
お、おぉ。
「やるわね。一気に仕掛ける為に最初っから動きをほんの少し抑えて、他にも手札を隠してたのね」
「あ、そういえばさっきまでと動きってていうか走り方が変わってる気がする」
俺が声も上げられないほど感心していると、愛香とエイトが感心してた。
「動きの方は手加減じゃなくて、手札の切り替えね。さっきの話だと魔剣創造は武器の形状もだいぶ変えられるし、ある程度絞って最適な動き方を用意してるんでしょう」
「あと短距離走と長距離走みたいな感じで、戦い方に合わせて色々仕込んでるって感じだな。短期決戦用と長期戦用……あと撹乱とか防戦とか、だいぶ色々手札盛ってんだろアンタ」
そして城戸さんと銀さんもなんか色々見抜いてる!?
凄いな。今のでそこまで分かるんだ。
「れ、歴戦の猛者って感じですね」
「観束君、エイトは戦士の感覚じゃなくて記憶力だよ。滅茶苦茶凄いんだよ~。眼鏡に映ったパスコードを覚えたり、まったく知らない言語を発音まで耳コピしてしゃべったり」
凄まじいな……人間離れしてる。
「……そーじ。感心してるところ悪いけど、ツインテールが絡んだアンタの知覚もやばいわよ。学園祭でよく当たる占いにされたの忘れたの?」
愛香がなんか言ってくるけどそこまでか?
「見て感じたことを言っただけなんだけどな。……ツインテールはみんな違うから、見たら割と分かるんだけど」
「分かるかーい。変態とかガチのオタクの専門分野の簡単ってのは、それ以外にとっちゃ「何言ってんのお前」案件だっつーの」
銀さんが酷い!?
なんか酷いなぁと思ってたら……あれ、なんか光ったぞ?
「皆大変! 緊急事態!」
出てきてすぐに大声を上げたのは、イッセーさんの家にホームステイしてるイリナさんだ。
ツインテールを見るだけで分かる、ただの人間では出せないだろう、聖域といいたくなるような感覚。実際に彼女は後天的に天使になった人らしく、そういう意味でも神々しいのかもしれない。
そしてとってもフレンドリーな人で、俺達が気安くなったのもあの人のおかげだろう。ツインテールだからか付き合いやすいのかも。
ただ、そんな彼女がすっごい慌てていた。
「どうしたんだよイリナ。朝からミカエルさんの
幼馴染のイッセーさんが聞くと、イリナさんは凄い大変そうな顔だった。
「……く、く、クーデターが起きたわ!!」
………
クーデター!?
蒼一はD×Dで言うとテクニックタイプで、基本的にはグレモリー眷属のオフェンスより弱いけど、その分策でからめとるタイプだったりします。