ブロッコリーは正直触感も味も苦手ですが、やり方次第でだいぶ緩和できるんだなぁと思えております。この調子で少しずつ痩せるルートに向かいたい……っ!
では本編!
《アシュレイ・ホライゾンSide》
グレモリー領の観光名所を巡ったりしているが、蒼一は心ここにあらずになる時も少し見えているな。
まぁ、それも無理はないだろう。
リゼヴィム・リヴァン・ルシファー。初代魔王ルシファーと悪魔の母リリスとの間に生まれた、純血の魔王血族。
確認されている純血の魔王血族は、その殆どが禍の団として活動して討伐されている。その為現在生存が確定している唯一の魔王血族だということだ。
それだけでも十分すぎるほどに大きな影響力があるだろう。血統主義が民も受け入れているような環境で、その筆頭がテロリストの長になっているんだ。
それもただの王族じゃない。なんでも悪魔の大半を生み出したという、悪魔の母リリスが直接初代ルシファーとの間に産んだ子供だという。となると、もはやその精神的影響力は大きいだろう。
グレモリー卿が表情を変えるのも、サーゼクスさん達が忙しくなるのも当然だ。悪魔という社会にとって、最大級の影響力を持つ存在がテロリストになったんだから。
「……なぁ、蒼一く~ん? 辛気臭い面が隠せてねえんだが、そんなやばいのか?」
と、銀さんも分かっていたのかちらりと聞いてきた。
「……悪いな銀さん。誤魔化すつもりだが出来てなかったみたいだな」
と、蒼一もため息をついて腹をくくったみたいだ。
「間違いなくヤバイ。とんでもなくヤバイ。冗談抜きで冥界政府でクーデターが起きかねないぐらいヤバイと俺は思っている」
「そんなに? サーゼクスさん達って、冥界では人気だっていうけど」
総二がそう疑問を言うが、ことはそう簡単ではないということだ。
「一般市民がどう思っていようと、それらを管理する当主が裏切る場合もあるからな。それに、悪魔にとって魔王血族の看板は相応に重く……リゼヴィム個人の看板は更に重い」
ため息交じりでそう前置きする蒼一は、そのまま空を睨む。
そうでもしないとやってられない。そういうレベルなんだろう。
「俺も資料やデータでしか見たことはないが、現魔王政府がかつての内乱で旧魔王血族に勝てたもろもろの理由、その中でも最大レベルの一つが奴だ。他の大きな理由もこれによる連鎖発生の節があることを考えれば、最大最強レベルの要素と言っていいだろう」
「……つまり、リゼヴィムという奴が趨勢を左右する選択を取ったと?」
ルルーシュがすぐに何かを悟るが、蒼一は頷いた。
「俺も資料でしか知らないが、初代四大魔王を全員失った上で戦争を継続しようとする旧魔王血族に対し、反対したサーゼクス様達や大王バアル本家などが反乱を起こし、当時の旧魔王血族の殆どが討たれ、辺境に追放されたことで現魔王政権の地盤が生まれている」
蒼一の言葉に、ルルーシュも頷いていた。
「その辺りは既に把握している。それもあってか悪魔という種族は「和平に対する強い反発が起きる土壌がほぼ無い」という利点と「和平の流れを利用しての内部粛正が難しい」という難点を兼ね揃えている印象だな」
「戦争を続けない為に王族を追放した同士と言えますからね。一気に加速する和平に対しても、元々近い選択肢を取っていた以上は抵抗が生まれにくいのは同感です」
サクヤもそう続けるけど、聡明だな。
皇という家は彼らの世界において、日本を納める家柄らしい。英才教育は受けているんだろうけど、それを抜きにしても本人が聡明なんだろう。
それに、冥界の在り方もそれなら納得だろう。
現魔王派と大王派。方向性が真逆といえる二大派閥が、千年以上続いた戦乱に和平を結ぶばかりか各勢力にまで急激に広めるこの数か月。禍の団という受け皿まであるのに大規模なクーデターが起きるほどの歪みが起きないのは凄いと思っていたけど、そういう連帯意識があるのなら納得だ。
戦争継続を否定するのなら、和平成立は理想的な着地点の一つだろう。その点において手を取り合った実績があるのなら、そこで歪みは生まれにくい。
反面その点で繋がっていることもあって、和平の勢いを利用して政争のバランスを崩すことも難しいと。どちらも「種の存続」を重要視しているからか、旧魔王派達を利用して武力でどうにか……という発想にもならないだろうしな。安定した政権及びそれに基づく治世という点では、好都合ではあるだろう。
だけど、だ。
「そしてその戦乱において、リゼヴィム・リヴァン・ルシファーは早々に不干渉を決め、ルシファー一族は直接的な介入をしなかったとのことだ。そしてこれが、現魔王政権にとって好都合が過ぎたのは間違いない」
蒼一がそう続けるのは、リゼヴィム・リヴァン・ルシファーの影響力の高さだ。
「他の神話で例えるなら、リゼヴィムは主神と地母神の子供に位置するような奴だ。聖書において「リリン」として記されるあの男の影響力は非常に高く、奴が旧魔王血族と共に立っていたのなら……相当数の現魔王派から様子見の中立が出てくるだろうし、中立派も含めてリゼヴィムについたであろう悪魔も数多いと、神の子を見張る者では推察された論文がいくつかある」
なるほどな。
それだけの影響力を持つ存在が、不干渉を宣言した。これは他の魔王血族にとっては不都合というレベルじゃないだろう。
自分達の中で最も影響力のある存在が、肯定的な発言すらしてこなかったんだ。統治される側の存在にとって、大義名分がないと思う十分な理由だ。賛同した側にすら、動揺する者が多数いたとしてもおかしくない。
「加え、奴個人の戦闘能力もかなり高い。現四大魔王及びサーゼクス様の妻であるグレイフィア・ルキフグスとリゼヴィムを含めた六人が、当時の悪魔にいる魔王クラス以上の悪魔。その内、旧魔王派についたのは家の事情によるグレイフィア・ルキフグスだけだ」
戦力的にも大打撃だったってことか。
四人の高位戦力を相手に、一対一でまともに戦えるのが一人だけでは戦略的に不利だろう。これが半分になるのは戦術的にも戦略的にも大きな差になるだろう。
「付け加えると、サーゼクス様及び現ベルゼブブのアジュカ様、そしてリゼヴィムの三人は「悪魔という種族なのかも疑う」というレベルの力を持っていることから「超越者」と称されている。そんな存在が二人もいる敵勢力に対し、自分達に一人もいない旧魔王血族は素直に負けを認めて交渉に留め、上手く地位を維持するべきだったんじゃないかって思ったよ」
蒼一の言うことを聞く限り、それなら尚更だろうな。
それだけの戦力がいないとなると、士気の面でも大打撃だろうし、味方に付くことを躊躇するのも仕方がない。相手にばかり最強格がいるというのは、勝ち目を感じさせない理由としては十分だからだ。
数でも質でも士気でも民意でも負けている。これはもう、戦う前から決まっている争いだったのかもしれない。
「最も性格は極悪らしいがな。息子に対して孫の虐待をそそのかしたという実績があるクソ野郎だ」
「……え?」
進次郎が、信じられないといった顔になる。もちろん彼以外にも、同じように驚いている者は多いだろう。
ただ、納得している人もそこそこいる。
「……そういうことって、あるんですよ」
エイトが相当嫌なことを思い出したのか、顔が渋い。
「娘の未来の為なら死すら覚悟する父親も、孫の為に命を削ってでも戦える祖父も知っているけど、そうでない人もいる。……任務で、母親が実の娘を実験体にしてるなんてことを知りました」
「そういうことだよ。血の繋がりは後天的には得られないが、家族は血の繋がりで決まるようなものじゃないってことだ」
エイトに同意する蒼一は、盛大にため息をついた。
「厄介なことに、そういうことが違法にならない環境ってのは割とあってな。大王派にもそういうのがちらほらいる……というか現大王もそういうタイプ」
なるほどな。
サイラオーグについて含みがある話があった気がするけど、彼はその被害者なんだろう。
もっとも、貴族社会といった上流階級に限った話じゃないだろうけどな。
「どこの世界や業界にも、そう言ったことはあるってことか。いわゆる口減らしとか、親が子供を害と捉える状況は確かにあるからな」
「そういうこった。……そしてまぁ一番問題なのは、裏を返すとそういった小規模範囲にとどまっている男だったってことだ」
蒼一のその言葉に、殆どの人が困惑していた。
まぁ、真っ当な社会で育ってきている人が多いみたいだしな。十分すぎるほどに衝撃を受ける悪行だろう。
ただ、問題はそういう視点ではないってことだ。
「……つまり、リゼヴィムの行動は家庭内といった小規模にとどまっていて、世界規模を視野に入れる行動は今までなかったと?」
「そういうことだ、あやめ。リゼヴィムが放置されている理由は大きく分けて三つ。「排除するには強大すぎる」「排除しようものなら悪魔が暴動を起こしかねない」「デメリットとリスクを覚悟するほどの排除理由がない」といったものだ」
あやめが気づいて蒼一が認めるけれど、確かにそれは厳しいな。
「それは厳しい。今まで対策が取れないわけだ」
と、ルルーシュが俺より先に納得していた。
「どうしてですか? そんな連中、三大勢力としても放っておけないんじゃ?」
「そうでもない。言い方は悪いが異形社会は、個体差や血統差が激しい以上どうしても不平等社会になるだろうからな」
総二が反論するけど、実際そういうことはよくあるものだ。
根強い差別意識がある国家では、非差別対象に対する犯罪が多めにみられるケースはある。それどころか、治安維持側が不法に排除することを問題だと捉えないことだってある。
そしてリゼヴィムは、話を聞く限りもはや宗教的崇拝対象に近い存在だ。
「性格の悪さや家族に対する虐待程度では、民衆の潜在的な崇拝は消えないということだろう。むしろそれを理由に排除を試みれば民衆側からの反発が確実視されるうえ、強大ゆえに犠牲を覚悟しても倒すことが困難。核抑止論というわけではないが、リスクとリターンが釣り合わない上にダメージまで大きいと分かっているなら、動く方が少ないだろうな」
「多分な。まぁ、平等意識や公平意識が薄い世界ならよくあることでもある。……正しいだけで人は動かないってことさ」
ルルーシュと俺がそう言うと、蒼一も頷いた。
「そういうわけだ。圧倒的大多数は、見返りの無い善行なんてリソースが豊富で失う物がさほどない状況じゃないとできないし、両方満たしても大した善行なんてしない奴だってたくさんいる。……そんな奴らを多数抱えている勢力がそんなことをしたら、もう立ち行かなくなる」
そうため息交じりに一手から、その上で蒼一は更にため息をついた。
「だからこそどの勢力も、藪蛇を避けていたわけだ。……それが何で国際テロ組織の指導者になってるんだ。誰だ奴の数千年単位で入ってなかったやる気スイッチをオンにした馬鹿は……っ」
相当の事態みたいで、蒼一は割と遠い目になっている。
多分あれだ。カグツチがヴァルゼライド閣下を見出してしまったレベルの何かが起きているようなものなんだろう。
こちらの世界、アメノクラト程度なら複数同時に相手取って勝てるだろう強大な存在が結構いる、まさに神話の世界だからな。その中でも頂点格に近い……というより悪魔の三強、その一人がテロ組織を動かしている上にシャーデンフロイデの幹部なんだ。和平側からすると頭が痛い話だろう。
「で、どうすんだよオタクらは。アンタはエージェントだし、ツェペシュ領に行くってことになんのか? 大変だなオイ」
「冗談きついって銀さん。俺は確かにエージェントだし実力もある方だが、あんな頂点インフレなんかに参加できるか。死ぬわ確実に」
と、銀さんに蒼一は首を横に振った。
「お前アレよ。俺なんてあれだよ、アクノロギアに一蹴されたゴッドセレナにボコられたジュラに一撃で倒されたオルガ・ナナギアぐらいだよ。ゼノヴィアだってプロデビュー前の悪魔として見たら上澄みだけど、プロ全体で見れば上回る奴だってたくさんいるからな? 青木村とかそんなだよ」
「
なんか妙なことを言い合っているけど、とりあえず上には上がいるってことでいいんだろう。
蒼一もかなり強い方だと思っていたけれど、更に上には上がいるってことなんだろうね。
「ちなみにリゼヴィムはどれぐらい?」
「……まぁゼレフぐらいってところだろうか。ちなみに龍神クラスは五神龍がレイド組むレベルと思え。同格の激突は世界が余波で滅びかねないし」
大変だなこの世界。科学技術無しでこれだし、極晃無しだと新西暦じゃ勝ち目がないレベルだろう。
……それはそれとして、だ。
「まぁ気を取り直そう。ことがことである以上、俺達が勝手に動くと絶対に色々と迷惑が掛かるし纏まるものも纏まらない。……今日は相応のイベントがあるって聞いたけど?」
そこを確認すると、蒼一は頷いた。
「ああ。一度動くとどんどん動くのが異形社会の特徴みたいでな。……グレモリー家が凄いイベントを即興で立ち上げてすぐさま成立させたんだよ」
と、差し出されたチラシには―
―世界KMF展。異世界で育まれた人型兵器―
―そんなものが書かれていた。
おかしい。イッセーたちを別行動させているのにハイスクールD×D要素がかなり濃い……自分のD×D好きを舐めてた……!