《富久山蒼一Side》
「ざっけんなコラぁっ!? なんなんだお前らはよぉ!!」
半泣きで仕掛けてくる連中をぶった切り、俺は心から絶叫する。
こういう文句はさっさと口に出しておいた方が、心に余裕が生まれやすいってもんだ。愚痴はさっさと吐き出した方がメンタル的に楽だ。
というよりだ。どっから突っ込んだ案件だ。
というよりどれだけ切ったんだろうか。
なんか鎧付けた見たことのない銃持った連中は、明らかにヤバイ人体改造を受けている。ぶった切ったところを見て分かるレベルだ。
……切断面で改造されてることが分かる辺り、俺って本当に揉まれてるよなぁ。
とはいえだ。敵が明らかに多い。
砲弾が飛んでくるから店からさっさと離れつつ派手に動いているが、どうも様子がおかしい。というより、周囲が明らかに廃墟になっていたりしている。
なんだなんだ何があった? いや、明らかにおかしいことばかりなわけなんだが。
それはともかく、通信もあまり繋がらない。
一応一方通行で店の場所を伝えたりしているが、このままだと被害者が大量に出てくる。
時として死者が出ることを容認せざるを得ない仕事をしているとはいえ、無理なく少なく済むならそれがいい。その程度、三割程度の良心は持ったまま人生を送りたいと思っている。
偽善上等。売名だろうが何だろうが、人をきちんと助けているのならそれはそれで良いことだ。何もしない善意よりリターンが約束された偽善の方が、現世においては十分だ。損得勘定は人類で共通される利益とかどっかで呼んだ。
つってもだ……迷惑極まりないが明らかに違和感もある。
そう思った時だ。
「そこの人……大丈夫ですかって剣で切った!?」
「大丈夫か……え、アルティロイドを切った!?」
襲ってきたモケモケ戦闘員を振り向きざまにぶった切った後、なんかSFっぽい恰好の人達が現れた。
ただ、双方共に別口だな。
片方はSF的変身ヒーローで片方はSF美少女変身ヒロインだしな。明らかに別口だ。
そしてどっちも驚いている辺り、
まぁ方向性は色々あるんだ……が。
「ちぃっ! ウルトラマンとテイルレッドまで出てきたか……無人ナイトメアフレームとアルティロイド共に任せて一旦引くぞ!!」
他の連中が即座に引いている辺り、相当の強者扱いされてるな。
「ウルトラマン……?」
「テイルレッド……?」
「「……あれ、知らない?」」
めっちゃお互いに困惑しているな。
さて、どうしたもんかと思いつつ、とりあえず話を進めるか。
「ちなみに俺もオタクらのことはさっぱり知らない。ただまぁ、とりあえず……あの両方についてだが、知ってる方がいるなら先に説明してくれ。さっきから襲われてて困ってるんだ」
俺が話を振ると、変身ヒロインの方がモケモケ戦闘員を指刺した。
「あいつらはアルティロイド。……説明すると長くなるし頭も痛くなるだろうから必要なことだけ言うと、物理攻撃じゃ絶対に倒せない。……熊すら倒せる子と真っ向から渡り合える実力があっても、傷つけないように気を付けながら取り押さえられてしまうぐらいには倒せない」
「えっと、具体的だね?」
特撮ヒーローの方が困惑しているが、まぁそこはなんとなく分かっていた。
「ようはファンタジーとかオカルトよりなんだ。というわけでこれ張っといてくれ」
と説明しながら、俺はお札を取り出してぺたりと特撮ヒーローの方に張る。
「え、何ですかこれ!?」
「悪霊退治とかで使われるお札……の本物だ。とりあえずこれで物理攻撃でも倒せるようになるぞ」
「え、そんなことできるの!?」
困惑する特撮ヒーローに説明すると変身ヒロインの方が驚いてしまった。
ま、それはともかく。
「細かい説明は多分時間がかかりすぎるから後だ。問題のもう片方について、確実に言えることを説明するからよく聞け」
と、態勢を整え直している連中のもう片割れ側、人型ロボットについて俺が説明をするしかないだろう。
「あれはナイトメアフレームと呼称される人型機動兵器で、機体名は「グラスゴー」。武装としては手に持っている銃火器は分かるな? それと腕部の付け根にあるパーツはスラッシュハーケンというワイヤー付きのブレードアンカーで移動補助がメインだが呼び兵装としても使われる。それと両腕についているのはスタントンファといって、トンファー型の打撃武器であり電磁攻撃機能も付いている」
記憶をひっくり返しながら戦ってたので、ここまではすらすら言える。
「詳しいですね。どれぐらい強いか分かりますか?」
「互いに倒せる前提なら、アルティロイドよりは強いが…‥まぁ三体掛で挑めば余裕で倒せるレベル止まりだから気にするな」
と、分かりやすく俺が説明する。
とはいえ、問題はそこではない。
「ただし本来は有人機のはずだが、あの連中は無人と言っていた。そもそもあれは型落ちになっていて、すでに三世代ぐらい進んだ機種が実戦配備されているはずなんだ。……格上が来る可能性があると警戒だけはしておいて―」
「……そこの人、大丈夫ですか!!」
「―なんか来たな」
説明をしながら体勢を整え終わろとしていたので構えていたが、後ろから瞬く間に切り裂かれた。
……何事!?
《宮本絶花Side》
私は宮本絶花。
友達……というか先輩と東京に遊びに行くという、中学生らしいことができたと思ったら何ですかこの事態!?
急に人がいなくなったと思ったら、凄い数のよく分からない人達に襲われて何とか切り抜けていたら、漸く人を発見して何とかここまでこれた。
「そこの人大丈夫ですか……あれ?」
よく見ると、なんというか不思議な格好をしている人が二人もいる。
ちょっとお互いに呆気にとられてると、後ろから走って来てくれる先輩が追いついてきてくれた。
「絶花ちゃん早いね! ……あれ? ハロウィンはもう過ぎたような……?」
東京を案内してくれた先輩のアヴィ・アモン部長も呆気にとられてるとなると、異形の関係者でもないようなのかな?
これは、これはどういうこと?
と、困惑しているうち普通の格好をしている、
「悪いがそこのお二人さん、彼女達はこちら側の関係者みたいだからちょっと話を進めさせてくれ」
と、そう前置きしてから私達を手招きしながら声をかけてくれた。
「その恰好、駒王学園の生徒……しかも異形関係者とみたが、合っているなら一応危ないからこっち来てくれ。人型ロボットは爆発するから危ない」
爆発するなら危ないし、私達は三人に歩み寄った。
と、アヴィ部長が前に出て手を上げる。
「私は中道部三年でオカルト剣研部部長、アモン家のアヴィ・アモンです。こっちの子は部員の宮本絶花ちゃん。こっちを知ってまだ日は浅いけど、一緒にフレイヤ様とロックバトルしたこともあるんです!」
「ああ、例の邪龍復活騒動の……。俺は
と、その人は今のでよく分かったのか二人の方に振り返った。
あと神の子を見張る者となると、顧問のベネムネ先生が所属している堕天使の組織だっけ。私はあまりよく知らないけど、副総督直属ってことは会ったことがあるのかもしれない。
そう思っていると、富久山さんは二人の方に振り返るともの凄い言いづらそうにしていた。
「ウルトラマンとテイルレッドだっけ? ……これ真面目な質問なんだけど、遍くおっぱいを司る乳神って知ってるか?」
『なんだその素敵な名前の存在は!?』
ちょっと困惑していると、私の胸から声が響いて二人の方がぎょっとしていた。
ただ富久山さんは何か納得してたのか、うんうんと頷くとお二人の方に振り返った。
「……彼女はおそらく異能持ちで、それも古くから存在するものが封印されているタイプだろう、流してくれ。……で、大真面目なんだけど質問に答えてくれるとすっごい嬉しい」
「いや、おっぱいの神様ってなに……?」
ウルトラマンと呼ばれた人は首を傾げているけど、テイルレッドと呼ばれた女の子はちょっと考え込んでいた。
「いや、古代ツインテール文明の女神と会ったことはあるけどおっぱいを司る神様は……」
ツインテールの女神って何ですか?
私はついていけなかったけど、アヴィ部長は興味深そうだった。
「乳神っていうと、おっぱいドラゴンに加護を与えてくれた異世界の神様ですよね? ツインテールの女神様もいたんですか?」
「いやその辺はさっぱり。ただ、これでよぉく分かった」
部長にそういうと、富久山さんは天を仰いだ。
「……なんかいろんな異世界がたくさん絡んでる……これ大事中の大ごとだぁ………っ!! 三割ぐらいにしろよ糞ったれぇえええええ!!!」
すっご大変そうだった。
「……とりあえず、情報交換とかに落ち着いた場所も必要だろうから付いて来てくれないか? 実は酒飲んで帰ろうとしたらこの事態で、引き離す目的で暴れてたけど大丈夫か心配なんだ」
……その説明を聞きながら、私は周囲を確認する。
無人の兵器が爆散し、戦闘員も爆発して消え去った。
これまで何度か信じられないような戦いはしたことがあるけど、それとはまた異質な雰囲気がある。
この事態……どういうことなの……?
とりあえず、最低限の顔役となるもの達を集めるのが序章の役割です。