《富久山蒼一》
とりあえず走って店に戻りながら、ある程度の情報を四人に説明する。
この場においては俺が一番事情通だ。アヴィ嬢や宮本より年上の身として、そこの責任はとても面倒だが追わないといけない。あとある程度情報を共有しておかないと、荒事が再発した時に面倒になる。
「実は俺は、三年前までの四年ほど夢と現実の区別がつかないような記憶障害を患っていると診断されていた。だが、さっき言った乳神の存在が俺達の世界で
「三年前までってなると、多分俺がいる世界とは別の平行世界だな。あいつらはアルティメギルって組織の戦闘員で、幾つもの平行世界を侵略しているけど、俺達が一年ほど戦って首領を倒したばかりなんだ」
テイルレッドは比較的慣れている感じだったが、そもそも敵が平行世界規模で活動しているなら当然か。
「それってつまり、他にも経験があるってことですよね? どんな世界にいたんですか?」
アヴィ嬢の疑問も当然だな。
「怪人っぽい連中が二回ほどあったな。地球人扱いされたことがあるから、多分異星人案件だろう」
俺が簡単に説明すると。ウルトラマンとやらが少し心当たりがあるようだ。
「ならどちらかは俺の世界かもしれない。ただ、どっちかは断言できないですね……俺もまだまだ詳しくないし」
「まぁもう片方はそっちの世界じゃないだろう。……なんか人間の格好が江戸時代から抜けてないところが多かったし、俺がいた時は大量のメイドロボ軍団が都市を襲ってたし」
「それは多分違いますね」
すぐ納得してくれて助かった。
あとは、もう一つぐらいか。
「後は妙な連中に襲われたこともあるな。人間のことを「旧人類」と呼ぶ、痴女のような格好をした女に率いられた連中に殺されそうになった。……まぁどこの世界でも殺されそうになったりしたんだけど……三割ぐらいでいいからもっと平和な異世界体験したかった」
本当に酷い目に遭っているなぁ、俺。
四人ともすっごい俺に同情の視線を向けているし。
ま、それは置いておこう。
「まぁそこは置いておいて、警戒するべきはKMFだ。あそこは長くいたが、だからこそ違いがよく分かる」
KMFは中々に厄介な兵器だからな。何度も殺されそうになったから尚更分かる。
と、いうよりだ。
「本当にめちゃくちゃ違う世界だったからな。……北アメリカ大陸に民主主義国家であるアメリカ合衆国がなく、弱肉強食による競争原理を掲げる差別思想の貴族主義国家「新生ブリタニア帝国」って国があって世界侵略を真剣にやっていたし、征服された日本ではフルフェイスマスクのゼロって奴が黒の騎士団という抵抗組織を立ち上げたんだが、最終的に皇帝を殺して一躍世界の救世主に躍り出てたし」
「そうなんですか? その、こっちも異星人関係だと血なまぐさいことも多いですけど……そんなに?」
ウルトラマンもそれなりに苦労しているが、まぁあの世界はあの世界で苦労しているだろう。
「確か最後の皇帝がよく分からん流れで皇帝になってから殺されるまで、世界の人口推移が減少傾向になったとか」
あれ本当に酷い。
だがまぁ、そこは今問題にするところでははないだろう。
問題は、だ。
「ただグラスゴーは、俺の知っている範囲だと体感時間も考えて一〇年前に運用された第四世代だ。ゼロが皇帝を殺害した時には主力機は第七世代に機種転換が進んでいたし、最新鋭機として第九世代機が開発されていたと聞いている」
技術革新がやばいが、まぁそこは置いておこう。
「なのでもっとヤバイ兵器が出てくる可能性はある。手練れが乗った上位世代機なら、第四世代機なんて無双ゲームのように倒していくから警戒は怠らないでくれや」
そう言っていると店が見えた。
どうやら人が集まっているが、まぁ立ち食いソバ屋なんだがな。
「……立ち食いソバ屋?」
テイルレッドが困惑しているが、まぁ正直ちょっと趣味が悪い。
「昔ネカフェで「仕事中のサラリーマンがいる昼飯時に、高級スーツでお大臣装って酒飲むとめっちゃ酒が美味い」って書いてあって、ちょうど仕事が昼上がりかつ大企業との接触案件でTPO弁えてたんでな。……麻薬級だから二度としない」
隠さず素直に言い、ツッコミが入る前に蕎麦屋に近づくと、色々騒がしい―
「おらお前らぁ!! 周りの連中ぶっ飛ばしてやったんだから、おにぎりは全部よこすネ!! 腹が減っては戦はできぬアルよ!!」
「ちょっと待って、僕もちょっと頑張ったから少し食べグハァッ!?」
「野村ぁあああああ!!」
「……何をしているのかしら?」
「すんません! うちの副所長がほんとすんません!」
「神楽ちゃんストップ! 独占禁止! ウチのノリを押し付けないで!!」
―なんか増えてるぅ~~~~~~~っ!?
《???Side》
「あ、お帰り~。で……どうだった?」
「残念だけど断られてしまったんだよね。……マジで残念だよ……ぅう……」
「おいおい旦那ぁ、マジ泣きしなくてもいいじゃないっすかぁ」
「だってさぁ。あれだけの狂気があればもっと凄い未来が見れると思うんだよ。実際おじいちゃんの世界って、あの子のおかげでめっちゃ変わってんじゃん?」
「確かに基点にはなってんだよなぁ~。たまにいるよね、ああいうとんでもない連中って」
「だから期待してたし、頑張って説得したんだけどね……残念過ぎる」
「で、どうしたん? 殺した?」
「いや、こっちも面倒になりそうだったんで一旦帰ってきたんだよ。
「そっか。奴さんっていろんなことできるからな。蘇らせたかいがあったってもんだZE!」
「まったくだNE! 正直彼の狂気にはとっても期待してるんだ」
「確かにな! こっちも色々いじくったかいがある、頼れる味方だよ!」
《富久山蒼一Side》
とりあえずなんかごたついており、それを宥めるのに時間がかかった。
「うちの副所長が本当に申し訳ありませんでしたぁあああああ! ほら謝れぇ!! 国家権力っぽいのがいるから謝っとくんだよ誠心誠意ぃいいいいいい!!」
「とりあえず落ち着いてくんない? あとその子、意識飛んでない?」
眼鏡の半被を着た青年が、大騒ぎの原因だったチャイナドレスの少女を強引に土下座させているが……床に激突して失神しているな。
流石にちょっと可哀想なので指摘するけど、白目向いてないだろうか?
「なんかすいませんねー、ウチの副所長が。俺達ってツッコミで全力攻撃入れるのが日常茶飯事なんで、目に余るようならぶっ飛ばしちゃっていいですからぁ~」
めっちゃ他人事な雰囲気でいい加減なフォローを入れているところ悪いけど、その餡蜜メニュー表にあった奴だよな? 何時の間に食べてんの?
「アンタもちゃっかり餡蜜見つけて食ってんじゃねぇええええええ!! てめえは前所長だが今は平だろうがぁあああああああ!! 所長命令だ神妙にしろぉおおおおおお!!!」
……とりあえず、このなんか服装が文化違う三人は同じ事務所らしいな。
で、眼鏡が所長でチャイナが副所長で天然パーマが平社員と。
ま、適当に流しとこう。
「ま、意味不明バーゲンセールだから面倒なのはとってもよく分かるわぁ。俺もビール飲み直してぇ~。麻薬級にキマっててやめる気だったけど、今から一生懸命働いている途中のサラリーマンを肴に、一人優雅に天ぷらつまみにビール瓶で飲み干して〆にざるそば食べなおして~」
「アンタはアンタで真面目さがねえなおい!? さっきから意味不明事態なんですけど!?」
あ、愚痴が出たらツッコミがきた。
いや、だって……。
「仕事は分かってる全力の三割をリソースとして浮かしてやりたい派なんだよ、俺。というかな? 遍くおっぱいを司る異世界の神様の所為で比較的この事態に理解ができてしまっている俺の身になってくれ……分かってるこちら側で最年長が俺だから、矢面立たざるを得ないからマジめんどくせー……!」
「あ、現場の実働班だったんですか」
と、振り回されていた少年の方がちょっと同情心を浮かべている。
どうやらさっきの三人組とは別で、この蕎麦屋にKMFなどが寄ってきていたので頑張って対応してくれたらしい。後で蕎麦ぐらい奢っておいた方がいいかねぇ?
「っていうか意味不明なんですけど? おっぱいの神様が異世界でおっぱい!? どんな神様ですか!?」
眼鏡の少年に鋭い指摘を受けるが……俺に言われても正直本気で困る。
俺もそれ聞いた時、自分の正気を疑ったし。
「ちなみにそのおっぱいの神様のおかげで神様を倒せた上、それが絡んだのか接触者が前人未到を一月ぐらいでで二回も達成したという更なる意味不明事態が起きたりしてるんだ。……胃が痛い……!」
ヤバイ。なんかちょっと限界超えてるかもしれん。
「……お前に分かるか? 拠点でちょっと缶コーヒー飲んだら、最高幹部が思い付きで特殊配合カテキン50倍仕様をサプライズで仕込んできやがったりしてくる職場なんだぞ俺。おかげで丸一日眠れなかった……!」
うちの悪ノリについて愚痴がつい漏れるが、振り回されていた方の少年がうんうん頷いている。
「それぐらいならまだマシですよ。うちなんて自販機の飲み物にしびれ薬入りがランダムで入ってるから、ちゃんと調べないと急に痙攣して倒れることになるし……!」
「……ちょっと、分かるかも」
そっちの少年と通じ合っていたら、テイルレッドとやらがうんうんと頷いている。
「俺は母さんが学校の理事長を学生時代ペットにしてたなんて言われたりしてるんだ。……そしてうっかり再会しちゃって全裸の理事長が大真面目になんか真面目なこと言ってきたりして……服を着ろぉおおおおおおっ!!」
「そっちの嬢ちゃんも大変だなオイ。俺も知り合いの職場から助けを求められたらとんでもないお偉いさんが来ちゃってなぁ。王様ゲームで何とか楽しませようとしてたら全部命令される側に回っちゃってさぁ……全裸でパンツ買わせに行っちまったよ……やっぱお墓にたくさんお供えした方がいいかねぇ」
天然パーマがなんか凄いこと言ってるけど、そっちも大変だな。
いやぁ、こんな阿保みたいな展開で分かり合えるとか、異世界様様な気がしてきたぞ。
「あ~そっちも分かる分かる。少し前に拠点でお茶飲んでいたら、所属部隊を管理している組織の最高幹部が娘の鞭裁きを当時の総督と一緒に批評する謎番組が発生するし。その娘さんについてきていた別勢力のトップの義弟に最高幹部共がドリル付けようとしたり鉄球ぶつけようとしたり……悪乗りしてそんな流れにした女最高幹部含めて、全員一回しばき倒したい……っ!!」
「「ベネムネ先生がごめんなさい!」」
涙が浮かんで来たら、つい色々言いすぎてアヴィ嬢と宮本嬢を困らせてしまった。
あ、やっぱりいっぱいいっぱいかもしれない。
「……俺も分かるな。事情があって付き人に影武者を頼んだんだが、訳の分からない天然を発揮して何十股交際みたいな状態になり、生徒会長の発案した突発イベントを利用して一斉清算をする為に走り回る羽目に……っ!」
「ちょっと分かるかもな。俺も気づくと時々訳の分からないトラブルに巻き込まれることはあるし。……一時期失神癖が付いたというかなんというか……っ」
あと避難所じみた形になって集まっている人達が、なんかものすっごくうんうん頷いている。
さて、となるとだ。
「ちなみにそこのメタルヒーロー君はなんか無いのぉ? なんか流れ的に絶対あんだろ?」
「え、お、俺ですか!?」
あ、天然パーマがウルトラマンに話を振ってきた。
ただ一生懸命首を捻って―
「……なんか明らかに人間離れした身体能力を誤魔化すのが大変だったんだけど、その原因が昔父さんの体に宿って宇宙人から地球を守ってきた宇宙人の影響だったり……と、か……?」
「あ、なんかゴメン。餡蜜食べる?」
―真面目にシリアスな展開だった。天然パーマが思わず真面目に慰めようとする勢いだった。
というか脱線がそろそろ酷い。話を切り替えるタイミング的なのがやっぱりほしいんだ。
そう思った時、蕎麦屋の扉がノックされてから開いた。
「ひ、人がいるならすいません……水を、水をください……っ!」
そう言って入ってきたのは、ボロボロの制服を着た茶髪の少年……って―
「赤……乳龍帝!? いや違った赤龍帝であってた!?」
「あ、おっぱいドラゴンだ!!」
「イッセー先輩じゃないですか!?」
俺が動揺して変なボケをして、アヴィ嬢が天然でいらんこと言って、宮本嬢が一番普通の対応をしてくれた。
『『『『『『『『『『……え?』』』』』』』』』』』
そりゃ困惑しますよねぇ!?
とりあえず、最低限の面子はそろえたぜー!!!