甚爾と闘也、最強のふたり   作:サイドベント

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潜入、遭遇

 

 

 

『もしもし甚爾兄ちゃん?』

 

『んだよ……2時間前に出てったばっかりじゃねえか。どうした?』

 

『いや、面白いこと思いついてさ。でも一人じゃ無理そうだから手伝って欲しくて』

 

『へえ……いいぜ。ただし俺は高えぞ』

 

『ふふふ……たんまり払うよ』

 

『わかった。んで、俺は何をすりゃいい?』

 

『高専結界への侵入』

 

『ん?』

 

『僕の式神……サムス*1っていうんだけどね。かの……いや、()の能力で高専結界を分析してみたら、ちょっと時間はかかったけど色々わかってね』

 

『へえ』

 

『まず、フリーな出入口を"1つだけ"設けることで、外部からの攻撃には滅法強い性質を持たせてる。その分内部からの攻撃には弱いんだけどね。バランスってやつかな。ま、これは予想通りだよね。ただ問題なのが、その出入口の場所が定期的に変更される仕様になってるんだ。しかも、これを突破したとしても、結界内部全域に呪力感知のアラート機能があるって感じで。まだわかんないけど、この分だと天元さんの根城とかも配置変更の仕様がありそうだよね。いやあ、調べれば調べるほど盤石な拠点。流石だよね。天元さんの結界術の技量の高さがわかるよ! あ、こんなのまるっと無視して全部ぶっ壊せるよ? でも流石にこっそりって訳にはいかなくてさ。というか壊すと無駄に被害も増えそうだし、それは僕の望むところじゃなくて。それでさ、いざ侵入できて、解析しながら天元さんを探すってなったら時間が必要じゃん? 流石に侵入を察知された状態でそれは難しいなぁってなったんだけど……ここで発想の転換。木を隠すなら森の中理論でさ、"逆にアラート鳴らしまくったら良い"んじゃないかって。一旦中に入ってチャフでも撒けば、対応する側も混乱してくれて結構時間稼げると思うんだ。でさでさ! 侵入自体は甚爾兄ちゃんなら楽勝じゃない? つまり、僕と兄ちゃんが組めばすっごくスマートにいくんじゃないかなって』

 

『ハッ……ノッてきてんじゃねえか』

 

『でしょ? なんか思い出すよね。あの時も二人で"今やろうぜ!"のノリで家出したもんね』

 

『そうだな……面白え。お前らしくなってきたじゃねえか。詳しく聞かせろよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『待たせたな……こちらスネーク。配置についた。スニーキングスーツは有効だ。アラートがそこら中で鳴り響いている影響も有るだろうが、誰も俺に気付かない』

 

蝿共(ようとう)を集める手間が省けて便利だな……チャフってのは。じゃ、あとはお前らに任せて俺は帰る。今週は朝からガキ共の通学路の見送り当番なんでな』

 

 

スネークから借りた二つの無線機のそれぞれから、二人の声が交互に聞こえてくる。

 

なんかちょっと面白いな。

多分甚爾兄ちゃんも楽しんでるよね。

隣にスネークいるのにわざわざ無線で話してるし。

 

無線機ってなんかワクワクするなぁ。

携帯電話より不便だけど、つい使いたくなるよね。

 

 

「オッケー、スネーク。ありがとね甚爾兄ちゃん」

 

『おう。依頼料の振込忘れんなよ。こういうラクな仕事ならいつでも大歓迎だ』

 

「ふふ……そんなこと言えるのは甚爾兄ちゃんくらいだね。じゃ、奥さんと恵くんによろしく」

 

『おう』

 

 

さてさて……ちょっと無法なコンボ開発しちゃったかもしれない。

 

あれだけ見事な天元さんお手製の高専結界ですら、甚爾兄ちゃんの特異体質の前では無力だった。

 

これはつまり呪術界において、甚爾兄ちゃんの侵入を拒める拠点は存在しないってこと。

 

そして侵入してもらった後は、僕が甚爾兄ちゃんに設定したワープポイントに向けて式神をワープさせることができる。

 

どんな堅牢な拠点も、内部から僕に好き放題荒らされちゃうって寸法。

 

今回は潜入&陽動が目的だからスネークだけど、内部を荒らすだけが目的ならそれこそもっと向いてる式神もいる。

なんなら僕が直接出向いてもいい。

 

いやあ……もしかして僕たちって世界の敵なんじゃない?

 

奥さんと恵くんに迷惑かからないように、このコンボの多用は控えないといけないかもね。

 

 

『こちらスネーク。敵地で長考とは随分と余裕だな。準備はできたのか?』

 

「おっと、ごめんよ。こっちも準備万端。じゃ、侵入経路作りと時間稼ぎを頼むね」

 

『やれやれ……ここは呪術的に世界最高峰の警戒レベルの拠点だぞ? いくらスニーキングスーツがあると言えど、動けばカムフラージュ率は下がる。まったく簡単に言ってくれるな』

 

「でも、できるんでしょ? だって伝説の傭兵だもんね」

 

『フ……今日は良いものも見れた。あの男、ただの主夫にしておくには惜しい……が、俺は任務に私情は持ち込まない。完璧にこなしてみせよう』

 

「頼もしいね」

 

『さて、今から30秒後に指定ポイントを含む12箇所を爆破する。爆破が完了次第、俺は高専敷地内の監視の目を散らせることに徹する』

 

『つまり、そこからは俺の直接的サポートは無しだ』

 

「うん。僕は混乱に乗じて、とにかく最奥への到達を目指す。任せてよね」

 

『ああ。これは罪なき少女を救うための戦争だ。健闘を祈る……オーバー』

 

「そっちもね。オーバー」

 

 

さて。

今回は高専の最奥、天元さんの根城への潜入ミッションだ。

 

甚爾兄ちゃんは"ぶん殴れ"って言ったけど、流石に最初はお話からだよね。

 

隠しルートを発見して天元さんのとこまで行く。

そしてしっかり話をする。

 

……いいね。

 

シンプルな目標。

高い難易度。

 

そして何より……自分の力を試せるこの瞬間が好きだ。

 

あれだけ気合い入れてくれたスネーク自身が見つかることはないだろうから、僕がうっかり見つからないようにしよう。

 

さて。

タイマー残り5秒。

 

 

 

ーー3、2、1。

 

 

 

ミッションスタートだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……攻略がうまくいき過ぎてる。

 

サムスのスーツのヘルメット部分を纏って、解析能力をフル回転させつつ快足を飛ばして、最短経路を通ってきた。

 

だとしても、障害らしい障害が一つもないのは……おかしくないかな?

 

隠すことに特化しているからこそ、侵入されれば無防備に近い。

結界自体はそれでバランスが取れてるけど、それを人員でカバーするのがマストだよね。

 

 

「最低でも巡回の警備がいて然るべきだと思うけどなあ……配置しないってことを含めて、結界外殻の強度の底上げに回してるってことなのかな」

 

 

うーん。

わからない。

 

高専は呪術界の要。

そんな重要拠点なら、もっと大勢の護衛がいると思ったのに。

 

 

「……罠?」

 

 

一瞬そう思って、否定する。

 

罠にしては効果が薄過ぎる。

 

そもそも高専敷地内を侵入者に彷徨かれるだけで都合が悪いのに。

 

高専忌庫にはウチの実家の所有の物を含めて、やばい呪具が大量にあるし。

探られたら痛いお腹しかないよね、ここには。

 

じゃあ、むしろこれは――

 

 

「……ああ、誘導なのか」

 

 

なるほどね。

 

結界をスルーされたのは予想外。

だけど、その後はまだまだ掌の上って感じか。

 

そりゃそうか。

結界に秀でた術師は、自分の結界内部の構造を簡単に作り変えられる。

 

僕も領域展開中は気軽にステージチェンジするし。

天元さんレベルならもっと自由自在だろうね。

 

そう考えれば……ま、普通にバレてるよね。

 

なのに今こうして僕は活動できている。

野放しにされている。

 

ゾクっとした。

ここは天元さんの腹の中。

 

僕は今、生殺与奪権を握られている。

 

 

「……ここで普通なら形振り構わず撤退。でも、行くしかないか」

 

 

なんてったって同化の期日が近い。

 

つまり撤退の選択肢はハナからナシ。

それなら最適解は前進だ。

 

僕は解析能力により多くの呪力を割り振って、僅かな違和感も見逃さないようにした。

 

その上で、全力で駆ける。

 

そうして全速前進した僕が辿り着いたのは、何の変哲もないトイレ。

 

構造、普通。

材質、普通。

特筆すべき呪力反応ーーアリ。

 

当たりだ。

 

その扉を開けた瞬間にーー

 

空間が切り替わる。

 

 

「……おお。そう来るか」

 

 

中は大きな昇降機付きの広間。

明らかにこの扉の中にある部屋じゃないだろってサイズ感。

 

 

「乗ったら床が抜ける仕様なんてのは……うん、無いね」

 

 

それでも慎重に一歩、また一歩。

昇降機に乗り込んだ。

 

すると、昇降機が下降開始する。

 

 

「……ボタン押してないけどな」

 

 

そして……長い。

 

体感時間と感じる重力から推測するに、相当深い。

高専の地下がここまで掘られてるとは思わなかった。

 

……長過ぎないか?

 

 

「……まさか生き埋め!?」

 

 

あまりに長い下降に、罠の可能性がよぎってーー

 

ポーン、という軽い音と共に扉が開いた。

 

普通に最下層に到着したらしい。

 

 

「……はは」

 

 

これはもう確信していい。

 

 

天元さんは、僕を迎え入れてる。

 

 

動機はわからないけど、追い出そうとする気は無いらしい。

 

昇降機の扉を出て、正面の通路を抜けた瞬間。

 

言葉を失った。

 

広大な空間を縦に引き裂くようにそびえ立つ、大樹。

 

巨大だ。

陳腐だけど、そう言うしかない。

とにかく大きい。

 

この樹は何千年という時間を生きてきたのかな。

 

その大きさから、不死の術式を持つ天元さんという存在の大きさを連想する。

 

 

「まいったな……対等に話がしたかったけど、ちょっと畏れ多くなってきた」

 

 

そして見えるのは、大樹の周囲を取り囲むように並ぶ家屋のような建物たち。

 

 

「……神殿って感じだ」

 

 

静謐。

その雰囲気に、思わず息を吐く。

 

 

「どうやら本当に歓迎されてるみたいだね」

 

 

敵地に来た感覚がしない。

ここは戦場じゃない。

 

聖域だ。

 

ここに入れてもらえたことに安堵を覚える。

 

僕は殊更に落ち着いた気持ちで、大樹に引き寄せられるように歩き出す。

 

その途中、ヘルメットが感知した。

 

大樹の根の中に()()がある。

 

解析を続ける。

 

幾重にも折り重なった太い根の、さらに深い場所にあるものを探っていく。

 

解析を"拒絶"するんじゃなくて"躱される"この感じ…… 初めて高専結界を解析した時と似ている。

 

厳重に"隠されている何か"が、そこにある。

 

もしかして……この空間の核?

だとしたら無闇に暴いちゃダメかもしれない。

 

だけど止めない。

好奇心は止められない。

 

厳かな雰囲気に呑まれかけていた自分はどこへやら。

僕はもう、そういう人間なんだ。

 

もう一段、解析を深めようとした瞬間――

 

声が響いた。

 

 

「初めましてだね。禪院の麒麟児」

 

 

……ああ。

 

僕は解析を打ち切ってゆっくり顔を上げる。

 

 

「闘也だよ。麒麟児なんて大層な呼び方はやめてほしいな」

 

 

声は震えなかった。

 

思い出せ。

今日僕はここに何をしにきた?

 

 

天内理子を……救いに来たんだ。

 

 

よし。

 

顔を上げ切って、視線を向ければ一人の女性がいた。

 

思ったよりも普通の外見だ。

 

目を引くのは白髪。

それ以外は、年老いてはいるけど……それだけ。

 

人間は500年生きても、そんなに姿形を変えない*2らしい。

 

 

「君のことはこれまでもよく見ていた。私に用があるんだろう?」

 

 

心臓は静かだ。

緊張はある。

でも恐怖はない。

 

――ここからが本番だ。

 

 

「そうだね。あなたと話がしたかったんだ」

 

「天元さん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
超凄いスーツを着た超強い女性。でも本人は女性扱いされることは好まないぞ! 気をつけよう!

*2
原作において「同化失敗してから急速に老いた」との言。つまり同化直前までは人間の姿の範疇だったと本二次創作では予想

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