私が訓練場に戻ると休憩時間だったようでイチカさんが出迎えてくれた。
「ナナ~聞いたっすよ~。お手柄だったみたいじゃないっすか~」
「えと、ありがとうございます。でも私なんかがいなくても、剣先先輩なら...」
「そんな謙遜しなくていいんじゃないっすか?どんな形でも2日目でいきなり功績を上げたんすから、ナナは私ら一年生の希望の星っすね!」
なんだかものすごく持ち上げられてるな...ほんとに私いらなかったんだけど...
「こらこら、その子けがしてんでしょ?救護騎士団に連れてかなきゃなんだから、あんま引き止めちゃだめだよ。」
「あぁ、そうっすね。ナナ、ごめんっす」
「い、いえ...大丈夫です」
指摘されたとたん傷口を自覚してジンジンと痛んできた。
「君、救護騎士団の場所はわかる?」
「いえ、すみません。わからないです。」
「あやまんなくていーの。初めてなんだからわかんなくて当然でしょ?じゃあ、私案内するからイチカちゃん先に訓練戻ってて。」
「りょーかいっす。ナナ、またあとで!」
手を大きく振るイチカさんにつられて私も小さく返す。
「イチカちゃんと仲いいんだね~。いいことだ!」
「あ、ありがとうございます。仲良くしてもらってて...」
それから先輩について行くと病院のような作りの施設にたどり着いた。
「やっほ~、さっき制圧ん時に一人ケガしちゃったから見てあげてくれない?」
「わかりました。こちらへどうぞ。」
私が案内を受けて診察室に入っていく途中に先輩と救護騎士団の人との会話が聞こえてきた。
「聞いた話だとツルギちゃんが出撃したんだとか...あの子も結構ケガしたんじゃない?」
「ツルギちゃん、ケガしまくってても平然としてるからねぇ...勝手に治ってくし。まああの子がここに来るような事態になったらよっぽどのことだからね。」
えぇ...剣先先輩、それで遮蔽なしに接近戦してたんだ...
「...なんだか四方八方から囲まれた様なケガですね。あなたの教育係はツルギさんだと聞いていますが、彼女の戦闘スタイルを真似しませんように。彼女がおかしいだけですので。」
「あ、いや...これは...その、はい...」
どうやら剣先先輩の戦闘スタイルの真似をしていると思われていたらしい。
全然違う理由なんだけど、私のあの間抜けな戦場でのぼっ立ち歓喜をさらけ出したくないし...黙っていよう。
「...はい、これで終わりました。先程も言いましたがツルギさんの戦闘スタイルを真似てケガを増やすことがないように。あまりケガをされると貴女も救護対象になりますからね。」
「あ、ありがとうございました...」
えっ何どういう事!?救護って何かの隠語なの?
怖い!ほんと怖い!後ろに置いてあるショットガンも盾もなんか怖く見えてきた!
「...どうかされまたか?」
「いっイエナンデモアリマセン!!
では失礼します!ありがとうございました!!」
「えっあっちょ...」
なんかやばい気がする。ここはさっさと退散するのが吉とみた!
それから受け付け口で未だ雑談をしていた先輩と一緒に訓練場に戻って訓練を再開した。
...剣先先輩ケガ治ってる...何で???
それから訓練を頑張っていると少し経ってチャイムが鳴り響く。
気がつけばこんな時間か...
「今日はここまでだな。」
「剣先先輩、今日はありがとうございました!」
「あぁ...その、大丈夫か?何か悩みがあるなら私が相談に乗るが...」ニコォ...
「ひっ、だっ大丈夫です!ほんとに!だっ...大丈夫ですから〜〜!!」
こっわ!人殺す目してた!あの不良に向けてた視線と同じだあれ!!
「...ダメだったか...笑顔の練習、するか...?」
それから私はイチカさんと合流すると周りにいた同級生もそこに集まって来た。
「ナナちゃんってあなただよね?聞いたよ大活躍だったんだって!?」「そうそう!あの怖い先輩に物怖じせず一緒に戦ったんだって!」「凄いよねー私だったら絶対無理!!あのツルギ先輩と並んで戦うとか!!」
私も無理だよぉ!!なんかめっちゃ誇張されてるよぉ!!
イチカさーん助k...って何ニヤついてんだ!!
「ごめんっすごめんっす。いやー友達が褒められてると嬉しくなるもんなんすよ。
ほらほらみんな落ち着いて!ナナが困ってるっすよ!」
うっ...そういう理由なら許してやらんでもないけど...そこぉ!チョロいとか言うな!!
それはそれとして...ようやく解放された。そしてみんなは私が弁明する前にそれぞれ謝罪を口にするとさっさと解散してしまった。
待ってぇ!私ほんとに何もやってないんです!
...やばい。このままだと私の評価がとんでもない事になりかねない。せめてイチカさんくらいには理解してもらわねば。
「...本当に違うんですよ?剣先先輩が大暴れしたところに私が他所からペチってやっただけなんです。」
「あっはは!ペチって。
さっきも言ったっすけどそんな謙遜しなくていいんすよ?もっと自信を持って自分の功績を誇っていいんすよ。」
「他人事だと思ってぇ...」
うぅ...なんか胃が痛くなってきた...
「うーん、本当に思ってるんすけどねぇ...」
ううん...今日は色々あった...あり過ぎだ...
私今まで誰かと戦ったことすらなかったんだけど...
銃くらいなら流石に撃ったことはあるけど、人に向けたのなんて初めてだし...
...あの銃弾の雨、痛かったなぁ。私が撃った相手、痛そうだったなぁ...
気絶までしたんだから、相当痛かったんだろうなぁ...
あ、ダメだこれ泣く。
「ごめんなさい...私なんかが戦場に向かったばっかりに...私なんかが痛めつけちゃって...私なんかが...グスッ」
心の中では自分を責め立てる声と弁明する声が鳴り止まない。
お前がいなけりゃ、お前がいたから、お前が悪いんだ。
私は悪くない、あいつらは不良だ、私がいなくても剣先先輩が。
こういう場合は大抵責め立てる声が勝つものだ。
いや、大抵というのも違うだろう。何せ擁護の声が勝ったことなど過去一度も無いのだから。
「ごめんなさい...グスッ、ごめんなさいぃ...」
自己嫌悪は鳴り止まない。やがて寝る時間になっても止まることはなく、ベッドの上、静かな部屋にただ私の啜り泣く音だけが響いていた。
「ナナ〜おはようっす〜...ってなんすかその目のクマ!腫れ上がってるし!」
「あはは...昨日の興奮で眠れなくて...」
嘘だ。ベッドにバスタオルを持ち込んでまで夜通し泣き続け、全然眠れなかった。
赤く腫れ上がった目にクマは多少の化粧で隠せるものではなかった。目の腫れは眠れなかった程度では説明がつかないが、イチカさんは何かを察したのか詳しいことは聞いてこなかった。まあこちらとしては助かるのでむしろ嬉しいことだ。
「お待たせっす。ナナは今日はサンドイッチなんすね。」
「うん。寝られなくて体調良くないから喉を通りやすいものをね。」
「あ〜...そうなんっすね...」
やべっせっかく気使ってくれたのに選択肢ミスっちゃったよ。ほらーイチカさんも気まずそうな顔してるよ...ごめんねぇイチカさん...
「え、えと!イチカさん昨日の訓練はどうでした!?私途中で抜けちゃったので!」
「あ、ああ。昨日と変わらず武器に慣れるための的当てとリロードの訓練っすよ。ほら、私は違うっすけど、普段使いの物と武器を変えた子って結構いるっすから。」
「ほえー私もそうですけど、そういう人って結構いるんですね。普通に少数派だと思ってました。」
「その子たちに話を聞いたら、憧れてる先輩がいるだとか、今までの武器が実は合ってないように感じてたとかそういうパターンが多いっすね。」
おう、真面目な理由だな。被弾出来んじゃね!?とか考えてショットガン持ってる私が情けないや...
ん、イチカさんも食べ終わったし、そろそろ準備しますか。
「ご馳走様でした。」「ご馳走様っす。」
それから学校の準備をして二人で登校した。
そのまま退屈な授業で時間を潰し(めちゃくちゃ眠かった)、放課後になる。
私はイチカさんと一緒に訓練場に向かう。
「じゃあ今日の訓練は少し変わって対人戦闘訓練なのだが...大丈夫か?クマがすごいぞ。」
「やっぱり気付きますよね...でも大丈夫です!(めっちゃ眠いけど!)」
「そうか、では私たちと戦闘訓練を行う相手の元に行くぞ。」
剣先先輩に連れられて演習場に着くとそこに居たのは昨日救護騎士団の元に連れていってくれた先輩とイチカさんだった。
「お、私の相手はナナなんすねー。よろしくっす。」
「う...イチカさんですか...自信はありませんが、よろしくお願いします!」
「やっぱ二人は仲良いのもあってやる気満々だねぇ。じゃ、私はツルギちゃんな訳だけど...お手柔らかにね?」
「先輩も相当強いでしょう。手加減なんて出来ませんよ。」
剣先先輩に少しアドバイスを頂いて配置につくと間もなくして演習開始の合図が鳴る。
とりあえず最初は相手の位置を把握すること!私はショットガンだからアサルトライフル持ってるイチカさんとは相性最悪。こっちが先に見つけて気付かれないうちに接近しないとそもそも勝負にならない、誰だこの対戦カード考えたの!
さて、イチカさんはどこかな...遮蔽物に隠れながら周囲を伺いつつ、私は演習場中央に向けて進んでいく。
...イチカさんどこだ?全然見当たらないんだけど。
そのまま前に進もうと思った瞬間、隣の演習場から奇声と轟音が聞こえてきた。
「きははあぁ!!」「うわちっか!ちょ、こっち来んな!」
BOOOOM!!!
「うわぁ、すっごい戦闘音...」
「そうっすねー。私のとこの先輩も相当強いっすけど、ナナんとこの先輩は規格外って聞いてるっすからねぇ。」
確かにあの先輩は物凄いからなぁ、戦闘中の迫力とか...ん?
隣を見るとイチカさんがいた。
「うわぁ!なな、なんで隣に!?」
「あはは!戦闘中に余所見してちゃダメっすよ?それに隠れてるつもりでも、結構見えてるっす。隠れるならただ縮こまるだけじゃダメっすよ?」
うぐぐ...同級生の筈なのになんか先輩感が拭えない...
でもこの距離ならショットガンを持ってる私の距離!
そう思って銃を撃とうとするが、何故か引き金を引けなかった。
イチカさんは飛んでくるであろう弾丸を避けようと予め横に飛んでいたが、飛んでこなかったために少し怪訝な表情を浮かべ、そのまま遮蔽物の後ろに隠れた。
そのまま流れるように遮蔽物から銃口だけを出して私を狙ってくる。
「うぴゃあ!」
私も咄嗟に遮蔽物に向かうが、左腕に一発食らってしまった。痛いけど、今は演習の途中だ。しかも対戦相手は間近にいるから、油断はできない。
今隠れている遮蔽物は大きいコンテナ、つまり右回りか左回り、どちらから来るのか...
私はこの2日間で完全に慣れきってしまったリロードをノールックで行いながら、コンテナの左右を覗き込むがどちらからもイチカさんの姿は見えない。おそらく向こうは迎え撃つ気なのだろう。
それならこっちから行くまで!先手を打った方が圧倒的に有利だって剣先先輩も言ってた!
私はコンテナからイチカさんが飛び出して来ないかを警戒しながら、少しずつ右回りに歩みを進めていた。耳を傾けてみるも音は一切しなかった。隣の戦場がうるさすぎるだけかも知れないけど、もしかして動いてないのかな?
私はイチカさんがいるであろう角を飛び出して決め撃ちをする。しかしそこにイチカさんはいなかった。そのまま逆側の角を飛び出したが、そこにもいない。
まさか噛み合って逆サイドにいる?
...いない、まさか。
やばい!上!?
咄嗟に上を見た私の予想を裏切って銃弾は私の背中に当たるのだった。
「えっ?」
「いや〜咄嗟に上を警戒するのは正解っすけど、ちょっと自分の考えに囚われすぎっすね。」
「...こ、降参です。」
そのまま銃口を向けられた私は両手をあげて降参を選択した。
まさか、最初からコンテナから離れてたのか...完全に騙された...
くそう...手も足も出なかった...
「お疲れ様〜いやー疲れたねぇ。」
「お疲れ様っす。隣の戦闘音、エグかったっすよ?」
「ツルギちゃんと演習やるとだいたいこうなるからね。2人も今のうちに覚悟しときなよ?いずれやることになるんだから〜」
「うぅ...遠慮したいです...ただでさえイチカさんに手も足も出なかったのに...」
「いや、映像を見させてもらったが十分動けていた。
あの攻防はイチカの方が経験豊富だっただけだ。イチカはコンテナに隠れたあと、わざと音を立ててリロードしたりコンテナに武器をぶつけたりしてから動いていた。あれはコンテナ周りにいるぞというミスディレクションだ。勘違いしてしまうのも仕方の無いことだろう。
ナナ、お前も経験を積めばもっと上手く動けるようになるさ。」
剣先先輩に褒められた!
「ありがとうございますっ!が、頑張ります!」
しかし、イチカさんそんな事もやってたのか...
私がイチカさんの方を見るとイチカさんはこちらにウインクを飛ばしていた。...かっこいい。
それにしても経験か...私ほんとに一切ないもんな...数をこなすしかないのかな...
それから演習を終えた私たちは2人揃ってパトロールに出た。どうやら今日から訓練をしながら、パトロールや現場対応などの通常業務をおぼえていくことになっているらしい。
「あの、剣先先輩...先輩の方の演習ってどんな感じだったんですか?」
剣先先輩の戦い方は絶対に参考にならないけど、聞いていて損な事ではないでしょう。
私の質問に剣先先輩は私の方にチラリと視線を向けてそのまま周りを見渡しながら話し出した。
「リリカ先輩...私の演習相手だな。
彼女が最初に突っ込んだ私にアサルトライフルで弾幕を貼ってきたが、私がそれをそのまま耐えて走り抜け接近そのままリリカ先輩が逃げながら手榴弾をばら撒きつつ、私がそれを耐えつつでずっと鬼ごっこをしていた。
あとはリリカ先輩の手榴弾のストックが無くなったから私がそのまま突撃して終わり...という感じだったな。」
こんな参考にならんことある???
ていうかそれであんなうるさかったのか...
「...あの、私の演習映像見ていたんですよね?
私はどうしたら良かったでしょうか?」
「まずは最初に接近を許してしまったのが痛かったな。
相手に先に見つけられてしまうとこちらの視線を読まれて潜伏されやすくなってしまう。だから先に見つけた方が勝ちやすくなるんだ。まあ、潜伏の仕方は今度教えよう。」
この人潜伏できるの?そんなの関係ねぇって言いながら意気揚々と全部ぶっ壊しながら突撃しそうなんだけど...
「あとはコンテナでの攻防の時に音以外の、気配や痕跡などだな。それらで相手の位置を探る...もしくは相手に策略を巡らせる前に、突撃して制圧してしまう...辺りだろうな」
「うぅ...どれも今の私には出来ません...」
「だから言っただろう、経験値の差だと。お前はあの場でやれる最善の手を取っていた。」
さすがにあそこまで手玉に取られてなんにも出来ずに終わりは悔しい!私もイチカさんに一矢報いたい!
その後のパトロールは特に事件もなく終わった。
道中出会ったスケバン達に剣先先輩が思いっきり威嚇していたけど。多分あの子達は当分何も出来ないだろうな...
後ろから見てただけの私もオーラで足が竦んで動けなかったし。
「今日はありがとうございました。また明日もよろしくお願いします。」
「あぁ。お前の動きは日増しに良くなって言っている。その調子で訓練に励むといい」ニコォ
「ぴ」
「固まってしまった...とりあえずイチカのところに届けるか...」
「お〜い!そろそろ起きるっすよ〜!」
「はっ!!私は何を!!」
「あ、起きた。おはよう...は遅いっすね。」
「あれ?ここは...」
「私の部屋っすよ。なんか固まったってツルギ先輩が連れてきたんでそのまま車で寮まで運んでもらったんすけど、ナナの部屋に勝手に入るのは良くないんでね。」
「あぁ、そういう...ご迷惑おかけしました...」
どうやら剣先先輩の顔が怖すぎて私はそのまま気絶してしまったらしい。仕方ないよね。だって怖すぎるもん。
どうやって表情筋動かしたらあんなに目が吊り上がるんです?
ていうかここイチカさんの部屋か...なんか凄い片付いてて、いい匂いするし...ちょっとドキドキする...
「あの、その、ありがとうございます...そろそろ自室に戻ります...」
「いや、ナナ今日は何時もみたいに買い物行ってないから、夕飯無いでしょ。ここで食べてくっすよ。」
「えっ、あっ!...ありがとうございます。」
「気にしなくていいんすよ。それじゃあ準備するんで、テレビでも見てて寛いでるといいっすよ。」
それじゃあお言葉に甘えて...手伝おうにも私料理からっきしだからね...
それから少し待っているとイチカさんが大皿のカルボナーラを2皿持ってきてくれた。
「んん!!おいひい!!」
「嬉しいっすけど、落ち着くっすよ。料理は逃げないっすから。」
...なんかイチカさんが子供を嗜めるみたいな口調になっててちょっと恥ずかしい...大人しくゆっくり食べます...
「いやー美味しかったです!ご馳走様でした!」
「お粗末様っす。喜んでもらえたなら良かったっす。
...ところでナナ...なにか悩みがあるんじゃないっすか?」
「...え?」
なんで急に?私なんかあったっけ?あーいや...朝のやつか...
「朝も言いましたけど、あれは興奮して眠れなかっただけですよ。」
「...そうっすか...大丈夫ならいいんすけど...」
「まあまあ良いじゃないですか!心配しなくていいですよ!そんな事より、今日は色々ありがとうございました!そろそろ部屋に戻りますね!おやすみなさい!!」
「...おやすみっす。」
ふー...やっぱ流石に怪しまれちゃうよね...でもあんなこと言えるわけないじゃん。
まあいいや!お風呂入って、SNS見て寝よう!
「...心配するに決まってるじゃないっすか。私を撃てなかった時...あんな、苦しそうな顔をして...」
タイトル決め結構迷うなこれ。その話の内容に関連付けるのが正解なんだろうけど、ひとつの話で1話が終えられるわけじゃないからね...
そして私はこの手の主人公の心理描写がメインの書き方初めてなのでそれも難しい...
現状なんにも考えてないんだけど、ナナのメモロビいる?
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いる。
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いらない。
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どっちでもいい。