どうか私を、終わらせて   作:めめ師

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真夜中の散策

「あはは...き、来ちゃいましたね...」

「どうですか?もう既に楽しくないですか?禁じられた行為をしているというこの背徳感、そして同時にみんなで一緒にしているからこその安心感、このふたつが合わさって...!」

「それはよく分からないけど、まあハナコが楽しそうなのはわかるよ。」

 

むしろ私は普段からブラックマーケットに遊びに行くっていう推奨されないことをやってるからなぁ...

 

「なるほど、深夜の町はこんな感じなのか。思ったよりも活気がある。」

「そうなんですよ、24時間営業の店も多いですし。」

「あれはスイーツショップ?24時間開いていることろがあるのか...あ、喫茶店も開いてる。」

 

ふーん...結構開いてるところあるんだな...あ、あそこ今度イチカと行こうって話してたとこだ。

 

「うぅ...結局乗っちゃったけど、こんなところ万が一ハスミ先輩に見られたりしたら、すっごい怒られそう...」

「あら、そうなのですか?ハスミさんは後輩たちに優しい方だと聞いていましたが...?」

「も、もちろん優しいわよ!それに文武両道、さいしょくけんび...?で、品もあってすっごい先輩なんだから!」

「私がいた時ははハスミ先輩が怒ってるところなんて見たことないね。むしろツルギ先輩のインパクトがさ...私の教育係、ツルギ先輩だったから...」

「あぁ...」

 

コハルが納得したように呟いていた。

 

「"そういえば、前にハスミが本気で怒るとすごかったって..."」

「う、うん...前にいっかいあって、私もその場にいたんだけど...

机の上のティーポットとかを崩して、割ってゲヘナの恨み言をずっと叫んでて...」

 

ハスミ先輩が...?なんか想像できないような...できるような...

 

「あら...それは激しいですね。一体何が...?」

「エデン条約の件で、ゲヘナの首脳部と会議をしたときで...

 

"私は、今度こそダイエットをします!!"って...

 

ゲヘナの首脳部の人にデカ女って言われたからって...」

「「「「......。」」」」

「それで、会議自体ダメになって...それ以来ハスミ先輩、あんまりご飯も食べないから心配で...」

「そんなことがあったのですね...ゲヘナの方々に怒るのも分かります。無理もありません。」

「"ハスミ、大丈夫かな..."」

 

えぇ...いや、デカ女とか言われたのはたしかにゲヘナが悪いけど...そんな怒る?

むしろハスミ先輩の身長とか胸とかハスミ先輩のでかいを構成する要素って憧れる対象だと思うんだけど...

 

「でも、ハスミ先輩は色んな意味で強いから大丈夫!あれからずっと、自分との約束を守って頑張ってるし...!」

「あ、ここにもスイーツ屋が。」

「なんだか食べ物の話をしていたらお腹が減ってきましたし、ここでなにか食べましょうか?」

「あ、ここの限定パフェすっごい美味しいんですよ!?24時間やってるとは知りませんでした。」

 

へー。今度イチカも誘ってきてみようかな。

トリニティ自治区はカフェとかスイーツ屋とか多くて回るのも大変だな...

 

「あはは...真夜中にスイーツ屋さんだなんて。緊張もありますが、なんだかすごくワクワクしますね。」

「たしかに。」

「いらっしゃいませ。6名様でしょうか?ご注文をどうぞ。」

「えっと...あ、限定パフェってまだありますか?」

 

ヒフミが店員のロボットにそう尋ねるとロボットは大袈裟な動きと一緒に喋りだした。

 

「ああ、申し訳ございません...限定パフェはちょうど先程、別のお客様が3つ購入されたのが最後でして...」

「あ、そうでしたか...」

「1歩遅かったね。まあしょうがないよ。他のを頼もう。」

 

そうして私たちがメニュー表を開こうとした時...

 

「あら?せ、先生...?」

 

困惑したような声が聞こえた。なんか聞いたことある声...っていうか...

 

「"ハスミ...!?"」

 

先程噂をしていたハスミ先輩がそこにいた。

...しかも、そのテーブルの上には限定パフェが3つも贅沢に並べられていたのだった。

 

 

「先生、それに補習授業部の皆さんにナナ...」

「ハスミさん、奇遇ですね‪♡あら、真夜中にパフェを3個も...たしかダイエット中だと伺いましたが?」

 

夜中に合宿所を抜け出してスイーツ屋にやってきた補習授業部と、ダイエット宣言を無視してパフェ3つを頬張っているハスミ先輩。

どちらもやましい行為をしているのだが、だからこそ、ハナコがハスミ先輩に先制攻撃をしかけた。

 

「はい、心中お察しいたします。真夜中に襲ってきた悪しき欲望に導かれて、ここまで来てしまったのですよね?」

「え...?い、いえこれはその...」

「そうして欲望のままめちゃくちゃにしてしまった後、理性を取り戻した頃にはもう、取り返しがつかないほどに乱れて...」

「"夜中ってお腹が空くよね。"」

 

そう。これは精神攻撃の戦いなのだ。こちらのやましい行いをつつかれる前に、こちらが口撃を仕掛けてしまおうと。その点ハナコは状況に対して完璧な回答を導き出した。流石は才媛兼露出狂、浦和 ハナコである。

加えて先生がすかさずハスミ先輩のやましい行いを肯定するような言葉をかけ、自分のフィールドを、話題を維持するのに相応しい状況を整えた。流石はキヴォトスの先生である。

 

「せ、先生...こほん。その、自分のことを棚上げするようですが、補習授業部の皆さんはそもそも、合宿中の外出が禁じられていたはずでは...?」

 

それに対してハスミ先輩はこちらの罠にハマることなく、自分のルール違反に対する罪悪感を我慢して、こちらのやましい行いをつついてきた。

この盤面に置いてこれ以上ない完璧な回答であった。

これにはこちらも打つ手なしと言ったところか...

 

 

.........私は何を言っているんだ...普段寝てる時間まで起きてるから深夜テンションになってしまっているのだろうか...

私はひっそりとみんなの後ろで赤くなった顔を隠していた。

 

「......ここはお互いに、見なかったことにするとしましょうか。」

 

うん。そうしよう。それが一番だ。

 

「コハル、お勉強頑張っていますか?」

「あ、えっと、それは、その...」

「"コハルは最近、成績がすごく上がってるよね。"」

「は、はい、そうです!コハルちゃんはこのまま行けば全然合格できるくらい、頑張っていて...!」

「それは何よりです。言ったではありませんか。コハルはやればできると。」

「えへへっ。は、ハスミ先輩の期待を裏切りたくないですから。」

「...はい。引き続き応援していますよ。早く正義実現委員会に戻ってきて、一緒に任務が遂行できる時を心待ちにしていますから。」

「はい、頑張ります...!」

「それと、ナナは...」

 

その時、ハスミ先輩のポケットに入ったスマホから電話が鳴った。

「...?こんな時間に、連絡?

はい...イチカ?どうしましたか?......問題?...襲撃...ゲヘナの風紀委員会...それとも万魔殿がついに本性を...!?誰であれ、きっとエデン条約を邪魔しようとする意図に違いありません!規模は何個中隊ですか!場所は、その施設はどこですか!?」

 

それからハスミ先輩が電話をしていると...何処からか爆発音が聞こえてきた。

 

「近いな。爆発音からして、ここから1km以内のところか。」

「えぇっ!?」

「...皆さん。突然のことですみませんが、皆さんの力が必要です。お願いできますでしょうか?

今はエデン条約を目前に控えて、色々と過敏な時期です。この問題が傍から見て"トリニティの正義実現委員会とゲヘナ間の衝突"と捉えられてしまうと、状況が不利になることは想像に難くありません。

つまり、補習授業部とシャーレが一緒に解決してくれる...そういう意図が望ましいのです。先生、お願いできますでしょうか?」

「"うん。よし、じゃあ補習授業部一同出発。"」

「了解した。先生の指示に従う。」

「えぇっ!?い、いきなり戦闘ですか!?」

「ふふっ...まあ、先生がそう仰るのであれば‪♡」

「あっ...わ、私も?ハスミ先輩と...一緒に...?」

 

そうしてみんなが出撃準備をしていた。

お腹空いたし、私補習授業部じゃないし、ここでパフェ食べてていい?ほら、ハスミ先輩の限定パフェ残ってて勿体ないしさ...?

 

「"...もちろん、ナナもだよ。"」

 

ダメらしい。

 

 

私たちが件の現場に到着すると既に辺りは火の海、そして犯人である美食研究会(ゲヘナの部活の1つらしい)の4人が正義実現委員会の部隊と撃ち合いをしていた。

 

「アズサ!」

「分かった!」

 

私は到着するなり相手の方へとグレネードを投げつけ前に出る。

そこを狙ってきていた犯人の1人をアズサが撃って牽制をしてくれた。

最初に投げつけたグレネードは金色のマグロを大事そうに抱える生徒の足元に落下する。

 

「いやー!やめてー!」

「新手ですか...なかなかに手強そうな...」

 

犯人が何かを話しているようだが、私はそれを無視して突っ込んで行った。

こちらの戦力としては正義実現委員会のみんなに加えて、ハスミ先輩、コハルがいる上にアズサ、ヒフミ、ハナコと圧倒的にこちらが有利だった。

しかし、辺りには正義実現委員会の生徒が多く倒れており、今回の事件の犯人が一筋縄ではいかないことを示している。私は油断することなくAn Endを構え、グレネードを投げ込みながら相手の側面に回り込む。

グレネードの爆発を回避しようと遮蔽物の裏にしゃがみこむ赤髪の生徒に向けて発砲。虚をつくことは出来たらしいが、相手も防御姿勢を取っていたため大したダメージにはならなかったらしく、そのまま撃ち返されてしまう。

 

私は遮蔽物の裏に隠れ相手が撃ち終わるのを待った。銃声が終わったのを確認し、そのまま撃ち返そうと遮蔽物から身を乗り出すと、既にそこには金色のマグロを抱えた生徒しかいなかった。

そしてその生徒も瞬時に走り出し、ものすごい速さで走り去ってしまうのだった。

 

「はっや!!」

『くっ...小癪な...!敵は散開しました!各部隊、すぐに追撃を!』

 

私はそのまま、1番私に近い所にいた銀髪の美食研究会のリーダーと思しき生徒に狙いを済まして走り出した。

 

「待ちなさい!大人しく捕縛されて下さい!」

「そう言われて簡単に捕まってあげる訳がありませんわ!」

 

犯人はそう言って真っ直ぐ走っているのだが...どうにも足が遅い。

私はそのまま犯人に追いついて後ろから腕を掴み、走る勢いのままに組み伏せた。

 

「あぁ...捕まってしまいましたわ...無念...」

「えぇ、と...とりあえず犯人グループのリーダー確保!」

 

そのまま抵抗することのない犯人に呆気にとられながらも、インカムに向けて報告を告げる。

 

私は捉えた犯人をそのまま先程の広場まで引き摺って運んだ。

 

「ありがとうございます、ナナ。お手柄ですね。」

「あー、まぁ...普通にこの人足遅かったので。」

「あら、辛辣ですわね。」

 

犯人がしれっと会話に混ざってくるが、私もハスミ先輩も無視をすると犯人は大人しくなって正義実現委員会の子達に引き渡されるのだった。

 

 

その後、ツルギ先輩が犯人のうち2人を片手で引き摺りながらやってきた。

 

おう...よくツルギ先輩にやられた犯人のことを潰れた缶ジュースと呼んでいるのを聞いていたが、言い得て妙だな...ツルギ先輩に引き摺られ、そのまま後輩たちの元にぽーんと投げ捨てられた犯人の様子はまさに潰れた缶ジュースであった。

 

後輩たちはその様子に驚くこともなく、流れるような作業で犯人を持ち上げて運んでいくのを見るに、もはやいつもの事...なのだろう。

私が正義実現委員会にいた時よりもツルギ先輩の凶暴さにはさらに磨きがかかっているらしかった。

 

「お疲れ様でした。先生、そしてナナと補習授業部の皆さん。お陰様で自体を無事に収拾することができました。」

「あ、あはは...途中からはもう、無我夢中という感じでしたが...」

「正義実現委員会の戦術を目の前で見ることができて、いい勉強になった。」

「や、役に立てのかどうかは分かりませんが...」

 

ハスミ先輩のお礼に補習授業部のみんながそう返していた。

...私の方は犯人が遅くてなんの苦労もなく捕まえられたからな...

 

「ところで、あの方々はこの後どうなるのですか?」

「本来ならば私たちの方でこの後の処遇を決めるのですが...今回は時期が時期ですので、ゲヘナの風紀委員会に託そうかと...」

「あぁ...何とか条約ですね。ゲヘナとの友好の...」

「えぇ、エデン条約です。それを考えると、この先私たちが能動的に動くのは少々避けたいところです。

...ですので、風紀委員会への引き渡し。この部分を先生にお願いできませんでしょうか?シャーレが生徒を引き渡す、この形でしたら、私たちにとってもゲヘナ側にとっても、政治的な憂慮がだいぶ減るのです。」

 

ハスミ先輩は近々結ばれるエデン条約のためにゲヘナの生徒へ何かしらの罰則を科すことを避けたいようだった政治的なところは私には全く分からないけど、やっぱり想像通りかなりめんどくさいものらしい。

 

 

 

その後、トリニティ自治区郊外にて、風紀委員会の搬送車両を待つことになった。

少し待っていると搬送車両が見えてきて、そこから1人の生徒が降りてくる。

 

「お待たせしました、死体はどこですか?」

 

...死体???

 

「...失礼。死体ではなく負傷者でしたね。たまに混同してしまって。

えー...納品リストには、新鮮な負傷者3名と人質1名...と書かれていましたが。」

 

納品リスト、新鮮な...目の前のゲヘナ生は何やら言い回しがいちいち物騒というか...アブない言動が目立つ。

 

私がその様子に困惑していると搬送車両からもう1人の生徒が降りてきた。先生の反応から、知り合いらしい。

 

「知り合いでしたか、風紀委員長。」

 

...風紀委員長なんだ。

まあ、確かに一見背が低く不良に舐められそうな外見をしているが、よく見ると後頭部あたりから生えているらしい角は禍々しく、開けばその身体の倍くらいはありそうなほど巨大な羽や、肩から提げた真っ黒な中に薄紫色の淡い光を放っている大きな銃は、治安最悪と名高いゲヘナにおける治安維持組織のトップである風紀委員長の名に恥じないほどの威圧感を放っていた。

 

その後、特に問題もなく美食研究会の受け渡しは完了し、物騒な言い回しの生徒とゲヘナの風紀委員長は搬送車両に乗り込んでそのまま走り去っていった。

 

「...今の人、かなり強かった。」

「強い、かどうかは分からないけど治安最悪のゲヘナで風紀委員長やってるって言うのに説得力のある佇まいではあったね。」

 

搬送車両を見届けたあと、ボソリと言ったアズサに、私も同意して思ったことを呟くのだった。

 

 

 

「...なんだか、怒涛の一日でしたね。」

 

私たちは深夜、ようやく合宿所に戻ってくるとヒフミが疲れた様子を隠さずに言う。

 

「そうだね。軽い気持ちで外に行っただけなのに、こんなことになるなんてね。」

「まさか、夜のお散歩がこんなハードになるだなんて...」

「うん、でも楽しかった。」

「えへへ...」

 

そんな中、コハルはさっきから、というか美食研究会との戦闘が終わってからずっと、顔がニヤけるのを抑えられないような、どこか浮ついた様子だった。

 

「コハルちゃんは、あれからずっと嬉しそうですね?やはり、ハスミさんをしっかり手助けして共闘出来たからですか?」

「そうよっ、悪い!?ハスミ先輩と一緒に戦えるのなんて、初めてだったし...私が役に立てたなんて、嬉しい...!えへ、えへへっ...!」

「まあ、憧れの人と一緒に戦えて、褒められたら誰でも嬉しくなるものだよ。私も気持ちはわかるしね。」

「あら、ナナちゃんにもどなたか憧れの方がいらっしゃるのですか?」

「憧れ...とはちょっと違うけど、私もイチカ...親友と一緒に戦っている時は、嬉しくなっちゃうからさ。」

 

こういうことを言うのは少し気恥ずかしかったけど、それでも私は、イチカを親友だと思っているし、イチカも私を親友だと思ってくれている...と、思っている。

イチカとは1番長い時間を共にしているし、何度も共闘をしている。一対一の勝負では未だ勝てたことはないけど、私はそんな彼女の隣に並び立てるように、いつも必死で戦っているのだから。

 

「私はイチカの隣に...立てることを願ってるから。」

 

未だ自分を否定することは辞めないけれど、その上で彼女には感謝してもしきれない分を、返せるように。

イチカの願いを、叶えてあげたいから。




久しぶりにイチカの話題を出せてホッとしてます。
ストーリーをなぞるだけのパートはどうにも筆が乗らなくてね...
会話にちょこちょこナナを混ぜてはいるけど、どうしても会話だけのタイミングとかもできて、本編読むのとなんら変わんなくね?ってなる部分ができちゃう...
どうにかできないもんか...

現状なんにも考えてないんだけど、ナナのメモロビいる?

  • いる。
  • いらない。
  • どっちでもいい。
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