どうか私を、終わらせて   作:めめ師

37 / 38
幻のGW4話目です。急遽ここまでは書いておきたくなりました。


プロローグ

私がトリニティに戻ってから数日。

ここ数日はずっと、各所に謝りに回っていた。

 

正義実現委員会のみんなからは、たくさんの心配の言葉と、たくさんの応援の言葉と、少しの叱責。

仕方ない、と言うよりは当たり前のことだと思う。むしろ、怒ってくれた人がいることに感謝しておくとしよう。

 

 

 

補習授業部のみんなからは全員まとめての力強いハグを。もう離さない、逃がさないと言わんばかりの抱擁を貰った。みんな沢山泣いてくれていて、アズサやハナコすらも泣いてくれていた。私もつられて泣いてしまって、たくさん謝った。

 

 

 

アビドスのみんなからは心配の言葉と叱責の言葉と...番号の振られたレジ袋。

また一緒に、なんて言われたけど、銀行強盗なんてもう懲り懲りだ。

でも、この袋は大切な思い出として保管しておこう。

 

 

 

ブラックマーケットのみんなからは心配の言葉とハグと...記念写真と、怒りのゲンコツ。めっちゃ痛くて結構なたんこぶになったが、まあ悪いのは私なので受け入れる。

そして、辛いなら私達でもいいから頼れと。頼もしい言葉。あの人たちもしっかり年上なんだなと実感した。

 

 

 

先生からは、労いの言葉とお説教。

とは言っても仲間を頼ることの大切さと、友達がいかに大切なのか、実体験を交えたお話だった。

ありがたいお話ではあったんだけど...

もう、それは、私も痛いほどに実感してる。

 

 

 

私は仲間に恵まれた。私の周りには、たくさんの優しい人たちが。私を肯定してくれる人達が。

 

自己否定は、未だに止まない。

自己嫌悪は、ずっと続いている。

 

でも。

 

「ナナ。」

 

私には、あなたがいるから。

 

「...うん。」

 

前に進める。

私の苦しみも、願いも、全部全部。

忘れられなくても。

 

あなたが私を引っ張ってくれるから。

 

私は前に、進めるんだ。

 

 

ありがとうイチカ。

 

大好きだよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これだけみんなが助けてくれているというのに、私からは何も返さないなんてありえないと思い立った私は、正義実現委員会の校舎、委員長室まで来ていた。

 

「ナナ、大丈夫なのですか?」

「......」

 

そこに居たのは、ツルギ委員長とハスミ副委員長。

 

「えぇ。覚悟は決めてきました。

もう、逃げません。

...今更、な事だとはわかっています。でも、どうかあなた達のために、私のために。やらせてください。」

 

委員長用の机の上に置かれた紙には、こう書かれていた。

 

部活動入部届

正義実現委員会

 

「......」

「ナナ、あなたが大丈夫だと言うのなら、私は止めません。頑張りなさい。」

「...ありがとう、ございます。」

 

ハスミ先輩からの言葉に感謝をしつつ、私が来てからずっと黙ったままだったツルギ先輩の方をちらっと見る。

表情は、読めない。

...あれはどういう感情なの?

 

「...いいだろう。やってみせろ。」

 

数秒経って、ツルギ先輩から発せられたのは、そんな言葉。そして書類への印鑑。

 

「ありがとうございます。」

 

本人の何を考えているか分からない表情も相まって、無愛想に見えるが、私はツルギ先輩なりの優しさを感じた。ツルギ先輩は、私が戻ってきてからずっと、私を遠巻きに見つめているだけだった。

正義実現委員会に謝りに行った時も、私が謝罪をした瞬間から震えだして、「わきゃーッ!!」という謎の奇声と共に壁を壊して飛んで行った。イチカと顔を見合せて笑ったのは記憶に新しい。

 

ツルギ先輩が口下手なのは、既に知っている。

そんな先輩からの「やってみせろ」は、私には激励の言葉に聞こえて、実際のところは分からないけれど、それでも私にとっては心温まる言葉だった。

それを聞いて、より一層頑張ろうと、思えた。

 

「それでは、これを。...本当はエデン条約が締結されたら、こちらから誘うつもりだったのですが。」

 

そう言ってハスミ先輩から渡されたのは、正義実現委員会の黒い制服。

名前の刺繍とか手続きとか準備が必要だろうから数日かかると思っていたのに、すぐに渡されたため、びっくりしながら受け取ると、なんだか妙に懐かしい感じがした。

 

「これって...もしかして...」

「信じていましたよ。いつかきっと、戻ってきてくれるって。」

 

これは、私が正義実現委員会にいた頃の制服そのものだった。綺麗に畳まれて、シワひとつない手入れされた制服。

私はそれを知ると、途端に涙が止まらなくなった。

 

「ごめん...なさい...!あり...がとう...ございます...!」

 

泣き崩れる私を、ハスミ先輩は優しく撫でてくれていた。

私が涙を止めて顔を上げた時、ツルギ先輩は相当焦っている顔をして目を泳がせていて、つい吹き出してしまった。

 

 

 

「どう?」

「うん...似合ってる。」

 

早速とばかりに更衣室で着替えた私は、一番にイチカに見せに行った。私の復帰を最初に知るのは、イチカが良かったから。

 

「...ナナ、おかえり。」

「...イチカ、ただいま。...待っててくれて、ありがとう。」

 

私たちはまた抱き合って、お互いの感触を確かめる。

うん。イチカは、私を認めてくれてる。

分かりきったことの、それでも確かめたいことの、確認。きっとこの先、何度も繰り返す、飽きることのない動作。

それから私たちは手を繋いで外へ出る。

 

「あーーー!!ナナ先輩、委員会の制服着てるーー!!!」

 

そんな声に振り返ると、後輩たちがこちらに走ってきていた。

 

それから後輩に、同級生に、先輩に囲まれた。

イチカが解放してくれないと、数時間はこのままだったんじゃないかと恐怖する。

とりあえず今日は、初日ということで、私は特に仕事はなし。

みんなの元に挨拶に回っていた。

 

 

そうこうしているうちに、訓練とパトロールが終わって終礼の時間。

 

「改めて、この度正義実現委員会に所属になりました。

篠崎 ナナ、2年生です。

...みんな、本当に色々と、迷惑をかけてごめんなさい。心配してくれて、探してくれて。...見つけてくれて、ありがとう。もう、大丈夫です。

これから、よろしくお願いします。」

 

盛大な拍手を送られた。

「よろしくお願いしまーす!」とか「もう心配させんなよー!」とかの野次も飛んでくる。

つい、目が潤んでしまったけど、何とか耐える。

 

だって、笑って。笑顔で、みんなの隣に立ちたいから。

 

「ナナには、以前手伝って貰った時と同じ部隊を、率いてもらおうと思います。」

「「「「よろしくお願いしまーす!!」」」」

 

そう言って前に出てきたのは、連邦生徒会長がいなくなって治安が悪化した時に私が率いた子達。

話を聞くとこの子達の部隊だけ、部隊長が決まっていなかったらしい。

理由は考えるまでもなく、私の為。

 

「みんな、待たせちゃってごめんね。これからよろしく。」

「「「「はい!!」」」」

 

 

 

正義実現委員会に入って初日で部隊長なんて異例の出世だろうなぁとか考えながら、私が帰宅の準備をしていると、イチカが話しかけてきた。

 

「ナナ、この後ちょっと良いっすか?」

「うん、いいよ。」

 

イチカのその口調、久しぶりに聞いたなーと思いながら私は返事を返す。

 

その瞬間、周りの空気が一変した...気がした。

 

「え、ついに!?」

「キマシタワー!!」

「イチナナ!?ナナイチ!?どっちだとしても、幸せなら、OKです!」

 

何を言ってるかは、聞こえなかった。

 

「う、うるさいっすよ!」

「イチカ?」

「もう!早く行くっすよ!」

「わっ...」

 

イチカに手を引っ張られて正義実現委員会の校舎を後にする。去り際に聞こえた指笛がやけに上手だなーって思った。なんで鳴らしてるのかは、わからなかったけど。

 

 

私たちは、校内をふたりで歩き回っていた。

 

「ナナ、戻ってきてくれて良かった。」

「イチカのおかげだよ。

...あなたが私を引っ張ってくれているから、私は前に進めてる。」

「そっか...それなら...うん、良かった。」

 

ふと、なんでもない道の途中、電灯の下でイチカは止まって、そこにあったベンチへ座る。

私も促されるように隣に座った。

 

「トリニティに入学して、ナナに出会って。色々あったよね。」

「...うん。私は何度も躓いて、下を向いた。

...その度にイチカが立ち上がらせてくれて、私は前を向けたんだよ。」

「ナナの支えになれたのなら、何よりだよ。」

 

そこで、言葉は止まる。

イチカは、私に身体を寄せる。

私も同じようにした。

 

「ねぇ、ナナ。大好きだよ。」

「...私も、大好きだよ。イチカ。」

 

どちらともなく、二人の間で手が繋がれた。

お互いの体温を確かめるように。絶対に離すことのないように。離れないように。強く握る。

 

「ナナ、私と付き合ってください。」

 

ゆっくりと零したイチカの言葉に、私は迷いもなく返す。

 

「...こちらこそ、よろしくね。」

 

暗闇の中、照らされたベンチの上。

2人の少女がお互いに身を寄せあって、座っている。

 

2人とも、幸せそうな顔で。

 

 

あなたはわたしを引っ張って。

わたしはあなたの隣まで走って。

 

2人並んで。

きっと、これからずっと。

そうやって、進んでいく。

 

 

何度でも言おう。

 

大好きだよ、イチカ。

私を見つけてくれて、ありがとう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「きゃー!先輩たち尊いー!!」

「しっ!静かに!気づかれるでしょ!」

 

そんな2人を遠くから見守る影が...1、2、3、4...沢山。

その多くは黒い制服を身にまとい、保護色の様な形になっている。

そんな中で一際大きな影。

 

繰り広げられる青春模様に打ち震えている者と、それを抑えようと必死で口を塞いでいる者。

 

「ツルギ...!抑えてください...!」

「...っ!...ッッ!!」

 

 

キャラクターを模したカバンを掲げている者、飾られた翼を動かしている者、ずり落ちた制服を戻している者、何故かスクール水着の者。

 

「ナナちゃぁん...良かったですぅ...!!」

「ヒフミ、抑えて。これ以上行くとバレる。」

「ナナ先輩...戻ってきてよかった...グスン」

「あらあら...うふふ♡」

 

 

彼女たちもまた、2人の、これからの、()()()()()()青春の物語を彩っていく。




ようやくここまで!!来ました!!
終わりになんてさせません!ずっと続いていくんです!

メモロビも残ってるし、他にも書きたいのがありますので。もう少しお付き合いいただけると幸いです。
とか言いつついつ投稿できるかは分かりません。
モチベのままに書き上げるかもしれないし、他の作品に集中するかもしれません。
予定は未定。不明が予定です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。