チート嫌いのイセカイ人 ~女神のスキルを丸裸にされた俺、美人幹部達に鍛えられ魔王軍の万能ジョーカーとして五人目の四天王になってしまう~   作:CarasOhmi

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#16 勇者パーティー in 温泉宿

 ――はぁ~~っ

 

 私たちは、猪妖魔(オーク)たちの亡骸を穴に埋め終えて、口々にため息を漏らした。

 ともあれ、これで一段落。

 

 ジーンさんも、メルさんも、私や勇者様が依頼の度に、山賊や妖魔の亡骸を埋葬するのを見て、私たちの帰りが遅くなると困ることも多いと、彼らを埋めるのを手伝うようになった。

 カトレアさんも、「埋葬」という表現には抵抗を示していたけれど、勇者様にそれを伝えた時「衛生的にも、腐乱死体を放置はしない方がいい」という話をされて、穴を埋めるのは手伝ってくれるようになった。「主のもとに行ける命ではないから、儀礼的な埋葬はしない」と断言しているけれど。

 

 それでも、皆が勇者様の気持ちに寄り添って……くれているのかは定かではないけれど、彼の苦労を分かとうとしてくれるようになったのは、とても良いことだと思う。これからも、共に困難を乗り越えていく仲間として、お互い歩み寄れたらいいなと、私はそう思っている。

 

「あー、もう血と泥でベタベタ……早く流したいわ……」

 

 彼女たちの服は、今回の依頼に際してひどく汚れていた。けれど、私も旅の中で多くの家政魔法を学び、汚れ落としや衣類の清潔を保つ術も身につけた。これも、勇者様の力あってのもの。

 本当に、勇者様には、感謝に尽きない。

 

「それでエリス、今日の宿は水浴びできるスペースあるの……?」

「ええ、事前に調べて、共同温泉のある宿を見つけて予約おきました」

 

「えっ、温泉!?」

 

 三人は口を揃えて私を見た。

 やはり、みんな女性……清潔さや身だしなみには気を使いたいのが本心みたい。

 

 ……正直、私もこんな良い宿を見つけられるとは思っていなかった。

 いつもだったら、せいぜい井戸を伴う仕切り付きの水浴び場があるかどうかといった安宿しか取れなかったと思う。

 けれど、今回は国軍の関わる案件ということもあり、潤沢な予算と口利きを頂いた。国軍の保養施設として建てられるも、民間に払い下げられた宿屋。それが今日の宿。

 

「時間制で男女が入れ替わるようなので、いつまでも入っていられるわけではありませんが、旅の疲れを取るには丁度いいと思いますよ」

 

 勇者様もまた、その話を聞いて、朗らかな笑顔を浮かべる。

 なんだかんだ、勇者様もきれい好きで、王都に滞在している間は、毎日公衆浴場に入って、身だしなみを整えているみたい。髪には別の石鹸を使ってるのか、王都滞在中の彼の黒い髪は、さらさらしていて、いい匂いもする気がする。お花の入った高級品かな。

 

 ………………

 

 ……いけない。

 私、なんか、ヘンタイみたいなこと考えてる……やめやめ。

 変な所見せてたら勇者様にも、嫌われちゃうよ。

 

「じゃあ、俺はしばらく街をぶらついてから宿に帰るよ。みんなは、ゆっくり体を休めてな」

「……その汚い服で?」

 

 ……ジーンさんの指摘通り、勇者様の服も、激戦の末に返り血や泥で随分と汚れている。

 

「……しばらく使って、マントもずいぶん穴だらけになったし、新品の調達も兼ねてって感じ。白いマントは汚れも目立つし、今度は暗い色の物が欲しいな……」

 

 マントの汚れにため息をつく勇者様を見て、カトレアさんが口を開いた。

 

「白マント……出立の時に支給されたものですよね。あれって儀礼用に用意されたものですから、冒険の中でまで律義に使うものじゃないですよ?」

「えっ……」

「何か、こだわりがあるのかと黙ってましたが、単に知らなかっただけなんですねぇ……」

「もっと早く知りたかったな……」

 

 ……うん、もっと早く、私から教えるべきだったなぁ。

 白いマントで闘う勇者様が、清廉なイメージでカッコよくて、ついつい言いそびれちゃったんだよね……。

 

「まあ、新しいマントを整えて、外面だけでも綺麗に覆い隠してれば、店主も気を使ってくれるかもですね。裡までは見えないものです」

「腹黒呼ばわりかよ……。まあ、そんな清廉な人間じゃねぇけどさぁ」

 

 ……十分、清廉で、やさしい人だと思うんだけどなぁ。

 

 

   * * *

 

 

「ふぅ、疲れたぁ……風呂風呂っと」

「こんな疲労困憊で冷たい水浴びなんてしたら、風邪ひいてしまいますよ……」

「まったくだ……本当こんな良い宿、よく見つけてくれたよ、エリス……」

 

 脱衣場で服を脱ぐ私を見て、ジーンさんが……いや、三人とも、目を見開き固まっていた。

 

 

「デッッッッッッッッ……!?」

 

 

「……?どうかされました?」

「……い、いや、何でもない。気にしないでくれ」

「?」

 

 身体に何か付着してたのかと、両腕や胸元を見渡す。けれど、特におかしなところはない……と思う。

 皆の怪訝そうな視線を尻目に、私は脱いだ服を畳んで、かごの中にしまっていく。

 

 

 

「あどけない表情とは不釣り合いな、暴力的なスタイルですねぇ……」

「なんというか、自分の持ってるモノに無自覚なのって、装ってるでも、天然でも、腹立つわね……」

「……天賦の才能は、往々にして理不尽ってことじゃないですか?」

「……お似合いだわ」

 

 

   * * *

 

 

「はぁ、生き返る……」

「エリスさんの持ってた花の入った石鹸?髪洗うのにいいですね。下手な香水ベタベタつけるより、においも誤魔化せそう」

「……まあ、数日風呂入れない道程だと、香水使うしかないけどねぇ。ちゃんと入れる状況ではこれぐらいがちょうどいいわ」

「身だしなみにも気を遣うあたり、私らみたいな荒くれものとは、ワケも違うってこったな」

 

 ……勇者様が使ってそうだからと買った石鹸だということは、黙っておこう。

 

「……というか『勇者様』に、綺麗な所見せたいからでしょ」

「っ!」

「あー、そういう……」

 

 そういうわけじゃ……。

 部分的にはそうだけど、そういうつもりじゃ……。

 

「……まあ、なあ。正直旅してても思うけど、アイツの女神の加護、エリスに集中してるよな。力も魔力も、私らより遥かに伸びてるというか」

「色恋を、危険な冒険に持ち込むのはどうなんでしょうね……」

 

 ……勝手な推測で話さないで欲しい。勇者様は、真面目で責任感もある人なんだから。

 私のことを大事にして、特別に力を与えてくれてるのかもって思うと……、それは少しうれしくもあるけど、それでも真面目な戦いの場で、そういう不公正をやる人じゃない。そのぐらい、私にもわかる。

 

「どういうルールなのかは解からないけど……振り分けだとしたらエリスを贔屓してるし、自動だとしたら……思い入れのある子に重点的に力が割り振られるシステムなんじゃない?」

「あー。その場合、『エリスからカイト』なのか、『カイトからエリス』なのか、どっちなんだろうなぁ」

「うーん、『エリスからカイト』じゃない?……そもそもあの男、性欲あるの?こんな美人を旅に連れて、下心みせないとか、不気味よ」

「は?」

「は?」

 

 ……あまり考えてなかった。

 私の力の振れ幅って、私の勇者様への想いが現れてるの?

 ……最初に、【水源魔法(アクエリアス)】の高圧噴射を見せた、あの時から?

 ……全部、勇者様に、筒抜け……だった?

 

 ~~~~~~~~っっっ!!

 

「……あー、仮定の話だから。あんま照れないでよ。ちょっと気まずいわ」

「………………」

 

 ……非戦闘員(よわいもの)いじめ、反対。

 

 

 

「……みなさんは、どうなんですか?」

「……?加護なら、冒険初期よりはましだけど、エリスと比べたら誤差みたいなもんだよ」

「違うでしょ。この場合、『みんなは勇者様を好きじゃないんですか?』よ」

「………………」

 

 ムキになって否定したかった。

 けれども、それも気になる私は、顔の下半分を湯船に沈めて、歪んだ口元と、赤くなった顔を隠した。

 

「あー、無い無い。私はマッチョな男が好みなの。私より筋肉ついてない男は対象外」

「私は……金持ちかしらねぇ。研究予算や設備を引っ張って来れる男なら、配偶者として文句ないわ」

「……それは恋愛じゃねぇだろ」

「そんな初心(ウブ)でピュアな考え方してる女が、宮廷魔術師としてのし上がろうなんて考えないわよ」

「……確かに。カトレアは?」

 

 ジーンさんはカトレアさんに視線を移す。彼女は、冷ややかなため息をつき、返事を返した。

 

「私は聖職者ですよ?貞淑を是とする僧侶(クレリック)が、男にかまけたりするわけないじゃないですか」

「……つまんねぇな」

 

「……まあ、仮に聖職を退いて家庭に入るとしても、カイトさんはありえませんね。信仰を捨てるわけでも無し、偉大なる主を軽んじるあの方とは、生活の上でも折り合いが悪いと思います」

「……あいつがこの世界来たのも、女神様の導きじゃねぇの?」

「そのはずなんですけどね。……あの人、女神像を見るたび鼻で笑ってる無礼者ですよ?……人格までは否定はしませんが、それでも神への敬意の無さという一点では心底軽蔑してます」

「……まあ、気難しいお前に認められるだけ、人格はまともなのかもな」

 

 ……三人とも、勇者様は恋愛対象じゃないんだ。

 少し安心したような、魅力が伝わっていないのが残念なような、複雑な心境。

 けれど、それでも、間違いなく彼女たちから勇者様への信頼は築かれているようで、その事には安心した。

 

 やがて、ジーンさんは私の肩に手を回し、顔を近づけてにやりと笑う。

 

「……ってなわけでさ、エリスは遠慮なくアイツと仲良くすりゃいいよ。酒の肴にもなるし、エロい話も大歓迎だ」

「そ、そんな……」

 

「私らも、女神の加護が貰えるとしても、アイツと恋仲は御免だしねぇ。超有能なメイドがついてるだけで十分よ」

「実際、助かってますしね。エリスさんは、これからもあの人と仲良くしてもらえると助かります」

「……生贄に差し出してるみたいだな、それ」

 

 ……ひどい言いよう。

 

「……まあ、最初指名された時、冒険者でハーレムでも作る気なのかって、寒気がしましたけどね」

「ああ。やっぱ、そう思うよなぁ……下心見せてたら、ケツにロングソードぶち込んでたぜ」

「……それでもやっぱり、性欲の薄さは不気味ね。もしかして、今ごろ女買いに行って発散してるんじゃない?」

「あ、あぁー、それはあり得るかなぁ……」

「……身体を綺麗にして帰って来たら、クロでしょうね」

 

 ……勇者様は、そんな人じゃないのに。

 

 

 

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