【完結】司令官(プレイヤー)の顔がわからない低レアさんの苦悩 作:ソシャゲ低レアさん
物語構成・設定・最終調整は作者によるものです。
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私は連日、ポポラの特別メニュ──お仕置きの見学に来ていた。
どんな内容を課しているのか、純粋に気になったからだ。
それに、監督役のケーラも同じ訓練をこなしているはずなのに、彼女は訓練後も普段と変わらず動けている。
ある日の訓練中、いつも通り一人だけついている介護役のシエルに、そのことを聞いてみた。
「ケーラちゃんは、自分ができないことを人に強要する娘じゃないんです」
シエルはそう言っていた。
⸻
訓練の合間の休憩中、私はケーラに声をかけた。
少し離れたベンチでは、訓練で完全にダウンしたポポラを、フィアが甲斐甲斐しく世話している。
「ケーラ」
声をかけると、彼女の肩がびくりと跳ねた。
だが、
「連日の訓練でも、だいぶ動けているようだな」
「あ、ありがとう……ございます」
「……今の動きなら、討伐任務に出ても問題ないな。このまま頑張ってくれ」
「は、はい……わ、わか、りまし……た」
私はそう言って、ケーラの肩を軽く叩くと、
そのまま視線を向けることなく、訓練場を後にした。
──そして、その日。
ケーラの
⸻
わたしは、訓練で倒れているポポラさんに飲み物とタオルを渡していた。
ポポラさんはベンチに横たわり、声を出す余裕すらなさそうだ。
「……」
その様子を横目に、わたしはケーラさんの姿を探した。
いつの間にか司令官さんは退出していて、
ケーラさんは、出口の方へ、どこか覚束ない足取りで歩いていくところだった。
「ケーラさん?」
少し気になって、わたしは後を追った。
出口に差し掛かったその時──
ドサッ。
鈍い音がして、思わず足を速める。
暗い廊下の先で、ケーラさんが倒れていた。
「ケ、ケーラさん!!」
慌てて駆け寄り、抱き起こす。
目は固く閉じられ、かすかな呻き声だけが漏れていた。
「ケーラさん、しっかりしてください!!」
こうしてはいられない。
わたしはケーラさんを抱え、医務室へと走った。
⸻
「ド、ドクターさん!! た、大変です!!」
医務室に飛び込むと、ドクターさんが振り返った。
「っ!? 急いで、ここに寝かせて!!」
指示に従い、ベッドに横たえる。
急いだせいで体が大きく揺れてしまったはずなのに、それでもケーラさんは、目を覚まさなかった。
診察を始めたドクターさんの白衣の袖を、思わず掴んでいた。
「ド、ドクターさん……ケーラさんは、大丈夫……なんですか?」
「……一先ず、様子を見ましょう。フィア、悪いけど第4班の人たちを呼んできてくれる?」
その言葉に、わたしは頷く。
「そ、その後、司令官さんも呼びますか?」
わたしの問いに、ドクターさんは即答した。
「司令官には、私から伝える。だから、貴女は第4班を連れてきて」
「……分かりました」
そう言って、わたしは医務室を飛び出した。
その直前に見えたドクターさんの表情が、
ひどく険しかった気がしたけれど──
きっと、気の所為だ。
──
医務室を出て、廊下を走る。
靴音がやけに大きく響いて、胸の奥がざわついた。
すれ違った隊員たちが、何事かという顔でこちらを見るのが分かる。
さっきまで、普通に訓練をしていたはずなのに。
ほんの少し前まで、歩いていたはずなのに。
——わたしが、ちゃんと見ていれば。
そんな考えが浮かんで、慌てて首を振る。
今は、第4班を呼ばなきゃ。
それだけを考えなきゃいけない。
──
「ケーラ!!」
フィアに呼ばれ、私たちは一斉に医務室へ駆け込んだ。
扉を開けると、カーテンで仕切られたベッドの向こうから、ドクターが顔を出す。
私は思わず詰め寄った。
「ドクター!! ケーラの容態は!? 大丈夫なの??」
「ラニちゃん、落ち着いて。そんな勢いだと、ドクターさんが何も言えないわ」
エルフィーに制され、はっとして一歩下がる。
「ご、ごめん……」
ドクターはカーテンの外へ出てくると、手にしていたバインダーで軽く私の頭を叩いた。
「心配なのは分かる。でも、ここは医務室よ。静かにお願いね?」
そう言って、出口へと歩き出す。
「……隣の部屋で話しましょう。大丈夫、ケーラの容態は安定しているから」
私たちは顔を見合わせ、ドクターの後について行った。
「安定している」
その言葉に、胸を撫で下ろした──はずなのに。
どうしてか、不安は消えてくれなかった。