【完結】司令官(プレイヤー)の顔がわからない低レアさんの苦悩   作:ソシャゲ低レアさん

14 / 23

※本作は執筆過程においてAIを補助的に使用しています。
物語構成・設定・最終調整は作者によるものです。

AIの使用はNGという人はブラウザバックをお願いいたします。

お気に入り登録、しおり、評価、感想ありがとうございます


第十三話:言葉にしない選択

 ⸻

 夕方から夜に切り替わる頃、私は業務を終えようとしていた。

 端末を閉じ、席を立つ準備をしていた、その時だった。

 

 短い通知音が、静かな執務室に響く。

 

 差出人は、ドクターだった。

 

(……何かあったのか?)

 

 そう思いながらメッセージを開き、次の瞬間、思考が止まる。

 

【ケーラ隊員につき、過労による入院が必要と判断しました。

 これに伴い、ポポラ隊員の特別メニューは中止とします】

 

(……ケーラが、過労で……入院?)

 

 意味を理解しきれないまま、反射的に医務室へ向かおうと身支度を始める。

 だが、その途中で、再び通知音が鳴った。

 

【なお、医務室判断により、当面の間、ケーラ隊員との面会はお断りします】

 

(……面会、謝絶……?)

 

 画面を見つめたまま、膝から力が抜ける。

 私はそのまま、椅子に座り込んだ。

 

 そこから再び動き出せたのは、

 日付が変わっていることに気づいてからだった。

 

 ──

 

 ──翌日。

 

 医務室の前で、私たちは足を止めていた。

 

 エルフィーを先頭に、第4班の三人。

 そして、その少し後ろに、フィアが立っている。

 

 ノックをすると、すぐに扉が開いた。

 

「どうぞ」

 

 ドクターに促され、私たちは昨日と同じ、隣の小部屋へと案内される。

 

 ソファーにエルフィーが座り、

 私たちは、用意されていたパイプ椅子に腰を下ろした。

 

 ……その場に、司令官の姿はなかった。

 

 誰も、口には出さない。

 けれど、その不在だけが、やけに重く感じられた。

 

 少し遅れてドクターが部屋に入ってくる。

 扉が閉まる音で、空気が切り替わった。

 

「……待たせたわね」

 

 ドクターはそう言って、私たちを一度見回したあと、

 ソファーに腰を下ろした。

 

「まず、ケーラの容態だけど」

 

 その一言で、空気が張り詰めた。

 

「意識はまだ戻っていないわ。

 ただ、状態は安定している。今は、深く眠っているだけ」

 

 その言葉に、ほんの少しだけ肩の力が抜ける。

 けれど、胸の奥の不安は消えなかった。

 

 ドクターは続ける。

 

「倒れた直接の原因は、過労。

 それに加えて──過度なストレスが重なっていた」

 

「……ストレス?」

 

 エルフィーが小さく聞き返す。

 

 ドクターは頷いた。

 

「ただし、常に強いストレスを受けていたわけじゃない。

 特定の状況でだけ、負荷が一気に跳ね上がっていた」

 

 その言い方が、妙に引っかかった。

 

「本人も、それを自覚していた節があるわ。

 無意識に距離を取ろうとしていたし、

 同時に“避け続けること”にも、罪悪感を抱いていた。

 

 ただ、このストレスの正体は──

 本人が言葉にできるものじゃない。

 説明しようとすると、

 余計に負担がかかるタイプのものよ」

 

 ドクターが私たちを見据える

 

「その“状況”に、心当たりはある?」

 

 その問いに、私たちは言葉を失う。

 無意識のうちに、エルフィーの肩に手を置いていた。

 

 エルフィーは一度、深く息を吸う。

 

「……これは、あくまで第4班の憶測です」

 

 そう前置きしてから、続けた。

 

「ケーラちゃんは、司令官さんを避けていたのではないでしょうか」

「ええっ!?」

 

 フィアが思わず声を上げる。

 一方で、ドクターは何も言わず、エルフィーを見据えていた。

 

「そう考えるようになった出来事が、いくつかあります」

 

 エルフィーは、一つずつ言葉を選ぶように話し始める。

 

 ──顔合わせのときの、異様な緊張。

 ──訓練中の途中離脱。

 ──ポポラへの説教が、途中で中断されたこと。

 

「その全てに共通していたのは……

 司令官さんが、ケーラちゃんの近くにいたという点です」

 

 話し終えても、ドクターはすぐには反応しなかった。

 

 沈黙。

 

 その中で、私はふと、あることを思い出す。

 

「……ドクター、ひとつ聞いていい?」

 

 ドクターがこちらを見る。

 

「司令官との顔合わせの次の日、

 ケーラを検査したわよね。あの時の結果……」

 

 唇を湿らせてから、続ける。

 

「『精神的に不安定』って、判断してたわよね?」

「「「……!?」」」

 

 エルフィーたちが、息を呑む。

 ドクターは手元の資料をめくり、小さく頷いた。

 

「……そう、だったわね」

 

 ドクターはそれ以上、説明しようとしなかった。

 その沈黙が、答えだった。

 

「……やっぱり」

 

 思わず、声が漏れる。

 

「ドクター」

 エルフィーが静かに言った。

「あなたは、ケーラちゃんから“何か”を聞いているんですね」

 

 ドクターは、私たちを一人ずつ見たあと、

 小さく息を吐いた。

 

「……ええ

 ただし、それは──

 今、ここで話せるものじゃない」

 

「どうしてですか?」

 

 エルフィーの問いに、ドクターは首を横に振る。

 

「話せば、整理できるものじゃないからよ。

 むしろ、言葉にしようとすることで、

 ケーラ自身を追い詰めてしまう」

 

 その言葉に、胸が詰まる。

 

「ケーラの状態は、一般的な症状とは明らかに違うわ。

 原因も、経過も、はっきりしない。

 

 だからこれは──

 本人が、自分のペースで向き合っていくしかないの」

 

 沈黙が落ちる。

 耳が痛くなるほどの無音。

 その中で、リリが小さく尋ねた。

 

「……リリたちは、何もできないの?」

 

 ドクターはリリを見て、姿勢を正す。

 

「いいえ

 ……あなたたちは、司令官がいない時のケーラを知っているでしょ? 

 その時、彼女は──本当に、辛そうだった?」

 

 思い返す。

 

 談笑した時間。

 一緒に食事をした時間。

 訓練で笑った時間。

 

 どれも、穏やかで、楽しそうな表情だった。

 

 気づけば、頬を熱いものが伝っていた。

 エルフィーの肩も震えている。

 リリも、フィアも泣いていた。

 

 私たちはまた、抱き合って泣いた。

 

 ──

 

「まったく……二日も泣き腫らすなんて」

 

 ドクターに渡された濡れタオルで目を冷やしながら、そう言われる。

 呆れた口調とは裏腹に、声は穏やかだった。

 少し落ち着いた頃、ドクターが尋ねる。

 

「これから、どうするの?」

 

 エルフィーが私たちを見て、頷く。

 

「ケーラちゃんを支えたいです。

 ケーラちゃんが抱えているものを、少しでも軽くしたい」

 

 ドクターは一人ずつ私たちを見てから、大きく頷いた。

 

「……分かった。あなたたちなら、支えられるかもしれない」

 

 微笑み、そしてすぐ真剣な顔に戻る。

 

「あなたたちの推測通り、ケーラは司令官を避けている」

 

 一度、息を吸う。

 

「特別メニュー中の見学も……

 自分から歩み寄ろうとした結果だったのかもしれないわね」

 

 ……ケーラらしい、と思ってしまう。

 でも、それで倒れてしまったら──意味がない。

 

「私は診察しかできない」

 

 ドクターは頭を下げた。

 

「ケーラを支えること、お願いしてもいい?」

 

 私たちは顔を見合わせ、頷く。

 

「「「「はい!」」」」

 

「ありがとう。目を覚ましたら連絡するわ」

 

 ドクターはそう言って医務室へ戻っていった。

 

 私たちは顔を見合わせ、少しだけ笑う。

 

「会議室で、これからのことを話し合いましょう」

 

 先を歩くエルフィーの背を追いながら、私は思う。

 

 ──ケーラも、ここにいればいいのに。

 

 そう願いながら、私は歩き出した。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。