【完結】司令官(プレイヤー)の顔がわからない低レアさんの苦悩 作:ソシャゲ低レアさん
物語構成・設定・最終調整は作者によるものです。
AIの使用はNGという人はブラウザバックをお願いいたします。
お気に入り登録、しおり、評価、感想ありがとうございます
目を開けると、白い天井が飛び込んできた。
しばらく、その天井をぼんやりと眺めていると、
ベッドのカーテンが、ひとりでに開いた。
「……目が覚めたみたいね」
そう言って、顔を覗き込んできたのは、ドクターさんだった。
「ドクター……さん?」
「おはよう、ケーラ。貴女、三日も眠ってたのよ」
「……三日?」
その言葉が一瞬理解できなかった。
まさか、三日も眠り続けていたなんて……
「お、おきなきゃ……」
そう思い、体を起こそうとする。
けれど、その様子を見ていたドクターさんは、ため息をつき、
手にしていたバインダーで、私の頭をこつん、と叩いた。
「寝ていなさい。どうせ起きられても、まだ入院よ」
私は、そのまま再びベッドに沈んだ。
ドクターさんは一度、カーテンの奥へと姿を消す。
しばらくして戻ってくると、
ベッドのそばに椅子を置き、腰を下ろした。
「ケーラは、どこまで覚えているの?」
私は、記憶を辿るために、再び天井を見つめる。
「……ポポラの特別メニューの監督をしてました。
たしか、フィアもいたと思います。
訓練の途中で、司令官さんが来たことが分かりました。
それで、休憩になったときに……
司令官さんが、近くにいて……」
そこまで言った瞬間、
頭の奥が、ぎゅっと締め付けられるように痛んだ。
「……っ!?」
思わず、頭を抱える。
その様子にすぐ気づいたドクターさんは、
何も言わず、氷嚢を私の頭の上に乗せた。
「無理に思い出す必要はないわ。
フィアに聞いた状況と、ほぼ同じことが分かっている」
「そう、ですか……」
そう答えながら、頭を冷やしていると、
医務室の扉が開く音がした。
「ケーラちゃん!!」
名前を呼ばれて、
反射的に体が強ばった。
次の瞬間、
視界いっぱいに、リリの顔が迫ってきた。
「心配したんだよ!!
倒れたって聞いて、生きた心地しなかったよ~!!」
「ごめんね、リリ……」
私は体を起こし、
泣きじゃくるリリの頭を、そっと撫でた。
すると、視界の端に、影が差し込む。
顔を上げると、そこにはラニが立っていた。
無表情で、じっと私を見下ろしている。
その目が、怒っているのか、泣きそうなのか──分からなかった。
「……ケーラ」
「ラニ……ごめっ──」
謝ろうとした、その瞬間だった。
頬に、鋭い衝撃が走った。
乾いた音が、小さく響いた。
頭の中が、真っ白になる。
ラニの振り抜かれた手が、まだ宙に残っている。
「……ばか、ケーラ」
そう言うと、ラニは私に抱きつき、
そのまま肩に顔を埋めた。
ラニの体が、小さく震え始める。
肩口が、じんわりと暖かくなるのが分かった。
私は、ラニの頭にも手を伸ばし、
ゆっくりと撫で始めた。
「ラニも……ごめんね?」
「……」
返事はない。
けれど、抱きしめる力だけが、強くなった。
「ケーラちゃん」
「……ケーラさん」
気づけば、エルフィー班長とフィアも、そばに立っていた。
「エルフィー班長、ごめんなさい。
フィアも……ごめんね?」
そう言うと、二人も、迷わず抱きついてきた。
三人の重みで、
私はそのままベッドに押し倒される。
しばらくの間、
私は、みんなの頭を撫で続けていた。
──「ごめんね」と、何度も謝りながら。
⸻
やがて、四人は私から離れ、
ドクターさんに渡された濡れタオルで、目を冷やしていた。
しばらくして、全員が落ち着いたのを見計らい、
ドクターさんがデスクに腰を下ろす。
私たちは、ベッドの周りを囲むように、椅子に座った。
私は、
私は、深く頭を下げた。
「ごめんなさい……
まさか、倒れてしまうなんて……
心配と、ご迷惑をおかけしました」
「……何があったの?」
エルフィー班長が、静かに問いかけてくる。
「……多分、疲れてたんだと思います。
その疲れが、一気に出ちゃったのかなって……」
そう答えると、
みんなの表情が、一斉に険しくなった気がした。
それに気づかないふりをして、
私は言葉を続ける。
「連日、ポポラのお仕置きメニューをやるとは思ってなくて……
さすがに、訓練後のストレッチだけじゃ、
疲労が抜けきらなかったんだと思います」
軽く笑って、付け足す。
「いや~、次の課題が見つかりましたね」
けれど、みんなの顔が見られなくなり、
私は視線を布団へと落とした。
「というわけで……
疲労が抜けるまで、入院になると思います。
そうですよね、ドクターさん?」
ドクターさんを見ると、
なぜか頭を抱えていた。
それでも、ため息交じりに答えてくれる。
「……はぁ。ええ。
ケーラ隊員は入院です。
検査を行って、疲労が抜けたと判断できたら退院させます」
「ありがとうございます……
まだしばらく、迷惑をおかけしますが……
今後とも、よろしくお願いします」
そこまで言って、
再び頭を下げた。
誰も、何も言わない。
ただ、時間だけが、静かに過ぎていった。
やがて、椅子が軋む音がする。
「……ケーラちゃん」
エルフィー班長の、
いつもより低い声だった。
私は、顔を上げられなかった。
「ケーラちゃん、顔を上げて?」
恐る恐る、顔を上げる。
エルフィー班長の──
いや、みんなの背後に、
鬼のような何かが見えた気がした。
「ケーラちゃん。
誰も、迷惑だなんて言ってないよ?」
「……」
「なのに、どうしてそんなこと言うの?」
「えっと……」
私は、視線を逸らした。
すると、エルフィー班長が、
私の肩を掴み、無理やり覗き込んでくる。
「ケーラちゃん。
本当のこと、言って?」
「ほんとの……こと?」
「ケーラちゃんと、司令官さんに、何があるの?」
「えっ!?」
思わず、声が裏返った。
まさか、ここで司令官さんの名前が出るなんて。
「し、司令官さんとは……
何も、ないですよ?」
無理やり笑みを浮かべて、そう答える。
けれど、本当に笑えていたかは、自分でも分からない。
「嘘」
そう呟いたのは、ラニだった。
ラニは、私を睨みつけながら続ける。
「ケーラ、明らかに司令官を避けてる」
「さ、避けてなんて……」
私は、ラニを見ることができなかった。
「司令官との顔合わせ。
訓練の途中離脱。
説教の中断……
それ以外にも、司令官がいるときは、おかしかった。
普段通りにしてるつもりだった?
全然、できてなかったよ?」
「……」
私は、何も言えなかった。
掛け布団を掴む手に、力が入る。
その時だった。
私の手の上に、
そっと、別の手が重なる。
フィアだった。
「わたし……
ケーラさんが抱えているものを、知りたいです
ケーラさんには、いつも助けられてきました。
だから、今度はわたしが……
ううん、今度は、わたしたちが助けたいです。
支えたいです」
「そうだよ!!」
リリも、泣きながら声を上げる。
「リリも、ケーラちゃんを助けたい!!
だから、お願い!!
本当のこと、言って!!」
フィアとリリの言葉に、
私は、エルフィー班長とラニを見る。
二人は、黙って頷いてくれた。
……言っても、いいのだろうか。
……これを言ったら、重荷にならないだろうか。
口を開けては、閉じる。
それを、何度も繰り返す。
ドクターさんが、静かに私を見て、頷いた。
「……本当に、支えてくれますか?」
「「「「もちろん!!」」」」
即答だった。
私は、涙が溢れたまま、頭を下げる。
「ありがとう……ございます」
次の瞬間、
みんなが、私の頭を撫で始めた。
⸻
私は、気持ちを落ち着かせるために、
何度か深呼吸をした。
「……実は、私……」
意を決して、口を開く。
「司令官さんの顔が、分からないんです……」
「顔が、分からない?」
エルフィー班長が、不思議そうに繰り返す。
「はい。
司令官さんの顔のパーツが、認識できないんです
顔の位置を見ると……
黒と白の、ぐるぐるに覆われていて……
どんな顔なのか、分からなくて……」
「……」
誰も、遮らない。
私は、その沈黙に感謝しながら、続けた。
「でも……
司令官さんに見られている、って感覚だけは、
はっきり分かるんです
それが……
知らないうちに、プレッシャーになっていたみたいで……
多分、それが限界だったんだと思います」
「……司令官を、問い詰めるべきかしら?」
ラニの言葉に、
私は慌てて首を振る。
「違う!!
司令官さんは、悪くない!!
私が、勝手にプレッシャーを感じてただけで……
本当に、司令官さんは悪くないの!!」
「……ごめん。もう、そんなこと言わないわ」
ラニは、そう言ってくれた。
私は、ゆっくり頷く。
「私は……司令官さんを責めるつもりは、毛頭ないよ。
司令官が隊員に気を配るのは、当たり前だし……
悪いのは、私の方……」
そう言うと、
エルフィー班長が、優しく頭を撫でてくれた。
「……今まで、よく頑張ってきたね。
今度は、私たちも支えるから」
私は、思わず小さく笑ってしまった。
「今までも、十分支えてもらってましたよ」
私は、顔を上げる。
「司令官さんと会った後でも……
みんなが、そばにいてくれたから、大丈夫でした。
もし、一人だったら……
もっと早く、潰れていたと思います。
本当に……みんな、ありがとうございます」
みんなの笑顔を見て、
胸の奥が、少し軽くなった気がした。
それでも──今は、それを一人で抱えなくていいと思えた。