【完結】司令官(プレイヤー)の顔がわからない低レアさんの苦悩   作:ソシャゲ低レアさん

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※本作は執筆過程においてAIを補助的に使用しています。
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十五話:当たり前だと思っていた

 ケーラが倒れたと連絡を受けた、翌朝。

 私は医務室の前で、立ち尽くしていた。

 

 連日、ケーラの様子を見ていた。

 それでも、まさか倒れるほど疲労が蓄積しているとは、思ってもみなかった。

 

 面会謝絶とは言われていたが、

 せめて容態だけでも確認できないかと思い、ここまで来た。

 

 けれど──

 医務室をノックしようとした手は、上がっては下がり、

 今の自分が会っていいのか、分からなくなって、

 結局、そのまま扉に触れることはなかった。

 

 私は何もできないまま、執務室へと戻った。

 

 ──

 

 その日の業務は、()調()()進んでいた。

 

 一通り仕事を終えて一息つくと、

 応接用の机に、いつの間にか温かいお茶が置かれていた。

 

「司令官さん、お茶が入りましたよ~」

 

 今日の秘書を務めるシエラが、そう言って微笑む。

 机の上には、お茶だけでなく、煎餅などのお茶菓子も添えられていた。

 

 私はソファに移動し、礼を言う。

 

「ああ、ありがとう」

 

 一口飲むと、少し肩の力が抜けた気がした。

 その様子を見て、シエラが小さく笑う。

 

「ふふ、お口に合ったみたいですね~。

 お茶菓子もありますから、遠慮なさらないでください」

 

 そう言って、彼女も向かいのソファに腰を下ろし、

 お茶を啜った。

 二人の間に、穏やかな時間が流れる。

 

 ──と、思った矢先だった。

 

「司令官さん、何かありましたか?」

 

 冷や水を浴びせられたような気分になった。

 私は平静を装い、答える。

 

「何かって、なんだ? 

 特に、何もないが……」

 

 シエラは、心配そうな目で私を見つめている。

 

「今日の業務中、時々上の空でしたよ? 

 それに、端末に通知が来るたび、急いで確認していましたし。

 何か、緊急の連絡でも待っているんですか?」

 

「……よく見ているな」

 

 私がそう言うと、シエラはぱっと笑顔になった。

 

「そりゃ、司令官さんを独り占めできる絶好の機会ですもの~。

 じっくり観察しないと、もったいないじゃないですか~」

 

 思わず、噴き出してしまう。

 

「シエラも、そんな冗談を言うんだな」

「冗談じゃないんだけどな~」

「ん? 何か言ったか?」

「ううん、何でもないですよ~」

 

 そう言いながらも、シエラの表情は一瞬だけ不満げだった。

 だが、すぐにいつもの顔に戻る。

 

「それで、何があったんですか?」

 

 今度は、はっきりとした真剣な目だった。

 私はため息をつき、口を開く。

 

「シエラは、ケーラの現状を聞いているか?」

「ケーラちゃんですか? 

 今朝、過労で入院したって連絡は入りましたけど……

 それ以降の情報は、何もないですね」

「……そうだよな」

 

 私が知っていることと、変わらない。

 

「ケーラちゃんと、何かあったんですか?」

 

 私は項垂れ、手を組んだ。

 

「いや……何もない……

 ……と思っているのだが……ただ……」

「ただ?」

「……ここ連日、ケーラの様子を見ていたのに、

 疲労が溜まっていることに、まったく気づかなかった……」

 

 ふと、思いついたように尋ねる。

 

「シエラは、私と話しているときのケーラについて、

 何か気になったことはないか?」

 

 シエラは顎に指を当て、考え込む。

 

「う~ん……

 あ、司令官さんと話しているとき、

 いつも緊張しているみたいで、珍しいな~とは思ってました」

「……そう、なのか」

 

 私は、さらに深く項垂れた。

 資料には確かに、「人見知りをしない」と書かれていた。

 だから、緊張させないように距離を取っていた──つもりだった。

 だが、いつの間にか、

 それが()()()()()()()だと、思い込んでいた。

 

「……だったら、連日の見学は、

 ケーラにとって酷なことだったのでは……」

 

 思わず、顔を手で覆う。

 

 その瞬間、シエラが私の頭を抱きかかえた。

 気づけば、いつの間にか隣に移動していたらしい。

 

「それは、違うと思いますよ~?」

「……?」

「見学の許可は、ケーラちゃん自身が出していたって、

 私も聞いてますし。

 それに──おそらくですけど」

 

 シエラは、そのまま私の頭を撫で始める。

 

「司令官さんに歩み寄ろうとしていた結果、

 だったのかもしれませんよ~?」

 

 私は、その手を振り払う気になれなかった。

 そのまま、胸の内を吐き出す。

 

「……ケーラは、限界が来る前に、

 一言くらい言ってくれると思っていたんだ……

 でも……」

「でも、実際は、何も言ってくれなかったのね~」

「ああ……」

 

 言い淀んだ言葉を、シエラは自然に継いでくれた。

 

「私は……ケーラ自身を、見ていなかった……」

「……だったら、聞いてみればいいじゃないですか?」

「えっ?」

「ケーラちゃんが、

 どうして司令官さんに緊張するのか、って」

「で、でも……

 以前、エルフィーたちに、詮索するなと言われて……」

「でも、入院するまでになったんですよ~? 

 原因が分からないままだと、

 また同じことを繰り返します」

「……それは、そうだが……」

 

 シエラは、私の頭を撫でるのをやめ、

 顔を真正面に持ってくる。

 

「ケーラちゃん本人に聞かなくても、

 ドクターさんや第4班のみなさんに、

 事情を聞くことはできると思いますよ~? 

 もちろん、ケーラちゃんの許可をもらってから、ですけど」

 

 そう言って、ウィンクをしてみせた。

 

「……シエラは、すごいな」

 

 話を聞いてもらったことで、

 心が少しだけ軽くなったのを感じる。

 

「ふふふ。

 この調子で、司令官さんのこと、虜にしちゃおうかな~」

 

 私は立ち上がり、シエラの額を指で軽く弾いた。

 

「いた~い!?」

「馬鹿なことを言ってないで、仕事をするぞ」

「司令官さん、ひど~~い!!」

 

 そんなやり取りをしながら、業務を再開する。

 聞こえないだろう距離で、私は小さく呟いた。

 

「……ありがとう」

 

 シエラの動きが、一瞬止まったように見えた。

 しばらくして、背後に回った彼女が言う。

 

「ふふ。どういたしまして!」

 

 その瞬間、私は机に突っ伏し、

 しばらく顔を上げられなかった。

 

 ──

 

 翌日の夕方、ドクターからメッセージが届いた。

 

【ケーラ隊員が本日意識を回復しました。

 約三日間の睡眠状態が続いていたため、

 現在は経過観察として、数日間の入院措置を取っています】

 

 画面を見つめ、

 私はようやく、安堵の息を吐いた。

 すぐに、返信を打つ。

 

【承知しました。

 今回の入院に至った経緯について、

 可能であれば事情を伺いたいと考えています。

 ケーラ隊員本人が不在でも問題ありません。

 本人の許可が得られ次第、

 ご説明いただける方をご手配いただけますでしょうか】

 

 しばらくして、再びメッセージが届く。

 

【ケーラ隊員本人に確認した結果、

 事情説明について了承を得ました。

 本件の説明は、私が担当いたします】

 

 それを読んだ瞬間、

 私は思った。

 

 ──ようやく、前を向ける。

 

 逃げずに、聞こう。

 ケーラが、何を見て、何を感じていたのかを

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