【完結】司令官(プレイヤー)の顔がわからない低レアさんの苦悩 作:ソシャゲ低レアさん
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第十七話:怖いまま、進む
入院中、司令官さんがドクターに、私の事情を聞きに来たらしい。
そのとき、ドクターがこっそり通話を私に繋いでくれていたので、
私は、司令官さんの反応を知ることができた。
相当、ショックを受けていたみたいだった。
だから私は、
ドクターさんに「司令官さんの様子を聞いた」という体で、
フォローのメッセージを送った。
【司令官さん、お疲れ様です。
ドクターさんから、私の事情をお伝えしたと伺いました。
今回の件は、司令官さんのせいではありません。
私は、司令官さんを責めるつもりも、怒るつもりもありません。
ただ、お互いの折り合いが悪かっただけだと思っています。
これから、この症状と向き合っていくつもりです。
もし、ご協力をお願いすることがありましたら、
その際は、どうぞよろしくお願いいたします】
しばらくして、司令官さんから返信が届いた。
【ケーラの気持ちは分かった。
私を恨まないでくれて、憎まないでくれてありがとう。
協力できることがあれば言ってくれ。
喜んで手伝わせてもらおう。
今は、ゆっくり休んでくれ】
端末を閉じて、私は素直に休むことにした。
ちゃんと、話は通じたのだと、そう思えたから。
──―
それからの入院生活は、思ったよりも退屈ではなかった。
第4班のメンバーやフィアをはじめ、
よく遠征を一緒にする人たちが、お見舞いに来てくれたからだ。
一度、ポポラが騒ぎすぎて、
ドクターさんに医務室から叩き出されていたけれど、
ポポラらしいな、と呆れて笑ってしまった。
そして、退院した日。
私は──いや、私たちは。
司令官さんの執務室に向かっていた。
⸻
「ケーラちゃん、本当に大丈夫?」
エルフィー班長が、心配そうにこちらを見る。
ラニやリリ、フィアも、同じような表情だった。
私は、一度だけ深呼吸をする。
「大丈夫……ではないかもしれないです。
ですが、ここで止まっていたら、
司令官さんにも、みんなにも迷惑をかけてしまいます。
それに……」
少しだけ、笑ってみせた。
「ダメそうでしたら、支えてくれるんでしょう?」
みんなは顔を見合わせて、頷いた。
「「「「もちろん!」」」」
そして、執務室の前に立つ。
もう一度、深く息を吸ってから──扉をノックした。
「どうぞ」
入室許可が下りる。
私は扉を開き、そのまま一息に言った。
「司令官さん、第4班所属、ケーラです。
本日、退院しましたのでご報告に参りました。
ご迷惑をおかけして、申し訳ありませんでした」
視線は、司令官さんの顔に向けられない。
机の上を見つめたまま、立っていた。
司令官さんの視線を感じて、思わず肩が跳ねる。
体が、勝手に動いてしまった。
それでも──
逃げ出さずに、ここに立っている。
けれど、その視線は、すぐに逸らされたのが分かった。
視線を感じないまま、声だけが聞こえてくる。
「お、おう……報告ありがとう、ケーラ。
病み上がりだが、これからどんどん遠征任務にも出てもらう。
こちらこそ、よろしく頼む」
「は、はい!
こちらこそ、よろしくお願いします!!」
そのまま、沈黙が落ちた。
「「……」」
誰も、何も言わない。
「ぷぷっ」
小さな笑い声が聞こえた。
声の方を見ると、リリが口を押さえて肩を震わせている。
「リリアーナ?
どうかしたのか?」
司令官さんが尋ねると、リリは笑いを堪えながら答えた。
「だって~。
司令官さんもケーラちゃんも、何も言わないんだもの!
お互い、言いたいことがあるなら、言えばいいのに……っ!」
「はいはい。
言いたいことは分かるけど、さすがに時期尚早よ」
ラニがリリの口を手で塞ぎ、司令官さんに向き直る。
「司令官。報告は終わったから、退室するわね?」
「あ、ああ……構わない」
呆気に取られたような声で、退室許可が出た。
「ケーラさん、行きましょう?
司令官さん、失礼します」
「し、失礼します」
フィアが私の手を取って、出口へ向かう。
扉が閉まる直前、もう一度だけ、司令官さんの視線を感じて、
私はまた、少し肩を跳ねさせた。
⸻
フィアに手を引かれて辿り着いたのは、小会議室だった。
「ケーラちゃん、まずはよく頑張りました」
エルフィー班長がそう言って、頭を撫でてくる。
「あ、ありがとうございます……」
されるがままになりながら、私は少し落ち込んでいた。
「で、でも……
あの態度は、さすがになかったですよね……
司令官さんも、びっくりしてたみたいですし……」
「う~ん。今回は、あれでよかったことにしましょ?」
「……はい」
ラニが、腕を組んで考え込む。
「でも、これからどうするの?
何かしら対策は必要よね。
司令官と話さないといけないのは変わらないんだし」
「でも、ケーラちゃん。
今日は、しっかりしてたと思うけど?」
リリの言葉に、私は首を振った。
「あれは、私が一方的に捲し立ててただけ。
会話、ほとんど放棄してたし……
それに、司令官さんの顔、一切見てなかった……」
「さ、さすがに、常にあれは……ですよね?」
「うん」
フィアとそんなやり取りをする。
「それに、視線を感じると、
やっぱり体が緊張しちゃって……」
「あ~、確かに肩、跳ねてたね。
あれはもう反射みたいだったし、
我慢しろっていうのも無理でしょ」
後ろから見ていたらしいラニに、私は頷いた。
その様子を見ていたエルフィー班長が、手を叩く。
「じゃあ、まずは問題点を洗い出しましょ?」
ホワイトボードを引っ張ってきて、話し合いが始まった。
⸻⸻
【問題あり】
・司令官さんの顔が分からないこと
・司令官さんの視線
【問題なし】
・司令官さんが近くにいること
・司令官さんの声
・司令官さんとメッセージのやり取り
⸻⸻
「こうして見ると……
面と向かってやり取りしなければ、
特に問題はなさそうだけど……」
「そ、それは隊員としてどうなのでしょうか……?」
「正直、あまり褒められたものじゃないけど……
事情が事情だから、ある程度は許容されるでしょう?」
「いや……それでも、あんまりやりたくないかな~」
「報告をメッセージだけって、味気ないしね~。
司令官だって、無事かどうか確認したいだろうし……」
「それに、私だけ特別扱いもよくないですし……
『メッセージだけでいい』って言い出す人、
出てきそうですよね。主に……ポポラとか……」
「「「「あ~~」」」」
全員が納得の声を上げた。
「それに……
ある程度会っておかないと、
症状が良くなってるのか、悪化してるのかも、
分からなくなりそうで……」
私がそう言うと、みんなが心配そうな顔になる。
「それは……そうだけど……」
「無理されるのは、嫌なんだけど……」
エルフィー班長とラニの言葉に、私は頷いた。
「分かってます。無理はしません。
司令官さんと会うときは、必ず一人じゃなくて、
事前に誰かについてきてもらいます」
そう言うと、みんな安心したように笑った。
そうして私たちは、
これからどうしていくかを、ゆっくり話し合っていった。
完璧な答えは出なかった。
けれど──
立ち止まり続けるつもりは、もうなかった。