【完結】司令官(プレイヤー)の顔がわからない低レアさんの苦悩   作:ソシャゲ低レアさん

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※本作は執筆過程においてAIを補助的に使用しています。
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第十九話:待つ、進む

 執務室から、フィアとケーラが退室した。

 思わず、深いため息が漏れる。

 

 フィアの遠征報告自体は、特に問題なかった。

 だが、ケーラとは──あの症状をドクターに説明してもらってから、

 元々あった距離感を、はっきりと意識できるようになり、

 結果として、さらにぎこちないものになってしまっていた。

 

 今までのケーラを、思い返す。

 

 ──目が合わない。

 ──すぐに顔を逸らす。

 ──視線を向けると、身体が反応している。

 ──同席すると、すぐにいなくなる。

 

 視線を向けると、身体が反応してしまう。

 それが原因で体調を崩すのなら、避けたいと思うのも無理はない。

 

 自分のせいで相手の体調が悪くなると聞けば、

 できるだけ負担にならないよう行動する。

 それは当たり前のことだと思っていた。

 

 だから、ケーラを見かけても、すぐに離れるようにした。

 

 ──誰かと話している時も。

 ──荷物を運んでいる時も。

 ──訓練を見学している時も。

 

 だが、その行動は、ケーラに気づかれてしまっていた。

 

 メッセージで「責めるつもりも、怒るつもりもない」と送られてきた時も驚いたが、

 それを面と向かって言われた時は、正直、言葉を失った。

 

 視線を向けるたびに身体を強張らせる姿を見るのは、正直つらかった。

 それでも──私の顔をまっすぐ見て言葉を伝えたケーラを、

 私は心から、立派だと思った。

 

 その後、フィアの袖を引いていたのを見て、

 すぐに退室したことを思い出す。

 限界だったのかもしれない。

 

「……ケーラは、前に進み始めたんだ」

 

 小さく、そう呟く。

 

「……なら、私も立ち止まったままでいるわけにはいかないよな……」

 

 ケーラが前に進み始めたのなら、

 私も、立ち止まったままでいるわけにはいかない。

 

 そう思えたことで、

 少しだけ、心が軽くなった気がした。

 

 そうして、再び机の上の書類を片付け始めた。

 筆の進みが、先ほどよりもわずかに早くなった。

 

 ⸻

 

 通路を歩いていると、前方から二つの人影が近づいてくるのが見えた。

 

 二人とも荷物を持っている。

 一人はラニだとすぐに分かったが、

 もう一人は──明るい通路にも関わらず、暗視ゴーグルを着けていた。

 

 歩き方がふらついていないところを見ると、

 赤外線型とはいえ、かなり扱い慣れているらしい。

 

 すると、ラニがこちらに気づいた。

 

「司令官。お疲れ様」

「司令官さん、お疲れ様です」

 

 その声で、ゴーグルをしているのがケーラだと分かった。

 

「ご苦労様。ラニと……ケーラ、だよな?」

「は、はい……ケーラです」

 

 確認するように視線を向けた瞬間、

 ケーラの肩が跳ねたのが分かり、慌てて目を逸らす。

 

 二人の荷物には蓋がなく、

 中には大量の暗視ゴーグルが入っていた。

 

「その暗視ゴーグルは、どうしたんだ?」

 

 ラニが肩をすくめる。

 

「整備課の連中にね。

『定期メンテナンスするから持って来い』って言われたのよ」

「ついでに、不具合がないか確認中です」

 

 そう言って、ケーラは自分の着けているゴーグルを指さした。

 

「なるほど。

 整備課にも、しっかり確認しておいてくれ」

「分かったわ。じゃ、そろそろ行くわね?」

「失礼します」

 

 そう言って、二人は整備課の方へ歩いて行った。

 

 ⸻

 

 その後、突然リリアーナが執務室にやってきた。

 

「司令官さん! これ、かけてみて!!」

 

 差し出されたのは、黒縁の眼鏡だった。

 

「……どうしたんだ? この眼鏡は」

「ふふん! 

 司令官さんも、たまにはおしゃれした方がいいと思って! 

 簡単にできるおしゃれとして、この伊達メガネを選んだの!! 

 

 ……本当は鼻メガネにしようとしたんだけど、

 ハロウィンじゃないからやめたげたの!!」

 

 思わず、苦笑する。

 

「眼鏡は、結構上級者向けのおしゃれだと思うんだが……」

「そお? 

 いいから、リリが選んだこの眼鏡、かけてみて! 

 絶対似合うから!!」

「おい、無理やりかけさせるな。

 弦が目に刺さるだろ……」

 

 押し付けられた眼鏡を受け取り、試しにかけてみる。

 リリアーナは、じっと私の顔を見てから、満足そうに頷いた。

 

「うん! やっぱり似合ってる!! 

 よし、これで基地内を散策だ!!」

 

 そう言って、手を引かれる。

 

「分かった、分かったから、あまり引っ張らないでくれ」

 

 こうして、リリアーナと一緒に執務室を出た。

 机に、急ぎの書類が残っていなかったのが幸いだった。

 

 基地内を歩いていると、

 いろいろな隊員から声をかけられた。

 

「どうしたんですか?」

「似合ってます!」

 

 中には、顔を赤らめてぼんやりしている隊員もいたが、

 体調を確認すると「大丈夫です」と言って、早足で去っていった。

 

 首をかしげていると、リリアーナが言う。

 

「司令官さんって、罪な男だよね~」

「……どういう意味だ?」

 

 そう聞くと、リリアーナはため息をつき、

 何か残念なものを見るような目を向けてきた。

 

「ん~、何でもないよ? 

 ……ただ、背中から刺されないように気をつけてね?」

 

 そう言い残して、先に歩き出す。

 

「どういうことなんだ……」

 

 そう呟いても、リリアーナは振り返らなかった。

 しばらく歩くと、前方からフィアとケーラが談笑しながらやって来た。

 リリアーナが駆け寄る。

 

「あ、ケーラちゃん、フィアちゃん! お疲れ様~」

「リリ、お疲れ様」

「リリさん、お疲れ様です」

 

 私に気づいた二人は、敬礼をした。

 

「司令官さん、お疲れ様です」

「二人とも、お疲れ様」

 

 そう言うと、敬礼が解かれる。

 フィアが、私の眼鏡に気づいた。

 

「司令官さん、その眼鏡、すごく似合ってますよ!」

「ああ、ありがとう。

 リリアーナに勧められてな」

「はは。でも、本当に似合ってます」

 

 そんなやり取りの最中、

 ケーラから視線を感じた。

 

 そちらを見ると、やはり身体を強張らせている。

 だが──視線は、私の眼鏡に向いていた。

 

「ケーラ、どうした?」

 

 そう声をかけると、ケーラは言いよどむ。

 

「い、いえ……ただ……」

 

 そう言って、俯いてしまった。

 これ以上見つめるのは酷だと思い、視線を逸らす。

 

「司令官さん、わたしたちはそろそろ失礼します。

 リリさんも、またね」

「司令官さん、リリ、失礼します」

 

 二人は、そのまま立ち去っていった。

 私はリリアーナに尋ねる。

 

「さっきのケーラの反応、どう思う?」

 

 リリアーナは顎に指を当てて考える。

 

「う~ん……

 何かに気づいたけど、まだ自分の中で整理できてないから、

 言わなかったんじゃないかな?」

「……そうか」

 

 去っていく二人の背中を見つめていると、

 バシッ、と腰の辺りを叩かれた。

 振り向くと、リリアーナが真剣な目をしていた。

 

「今は、まだ言えないだけ。

 でも、自分の中でちゃんと整理できたら、きっと来てくれるよ

 

 それまで、待っていてあげて」

「ああ……そうだな」

 

 そう答えると、リリアーナは笑顔に戻る。

 

「それに! 

 今はリリたちがいる!! 

 ケーラちゃんが、また一人で潰れることはないよ!」

 

 胸を張るその姿に、私は微笑んだ。

 

「ああ、それは頼もしいな……」

「でしょ!! 

 さあ、まだまだ回るよ~~!」

 

 そう言って、リリアーナは先へ進む。

 私は振り返らず、その背中についていった。

 

 その背中を追いながら、

 私は初めて、

「待つ」という選択を、前向きなものだと思えた。

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