【完結】司令官(プレイヤー)の顔がわからない低レアさんの苦悩 作:ソシャゲ低レアさん
物語構成・設定・最終調整は作者によるものです。
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あの話し合いの後から、
司令官さんを避けるための“逃げ方”については分かった。
けれど──
司令官さんの顔が見えないことと、
視線に反応してしまうことについては、
ほとんど何も進展していなかった。
ある時、ラニと一緒に整備課から頼まれて、
暗視ゴーグルを取りに行った。
倉庫でそれらをまとめている最中、
ふと、思った。
「この暗視ゴーグルって、赤外線型だったよね?」
そう聞くと、ラニは少し不思議そうな顔で頷く。
「そうよ? 夜間任務なんかで、ケーラも使うでしょ?」
私も頷きながら、
思いついたことをそのまま口にした。
赤外線型は、視界がモノクロになる。
表情や色の情報が減る分、
視線も、ただの“向き”として見えるかもしれない。
「視界がモノクロになるなら、
司令官さんと会った時、どうなるのかなって思って」
「……試してみる価値はあるわね。
ここから整備課まで着けて行ってみる?
司令官に会えればラッキー、
会えなければ、また今度って感じで」
「でも、勝手に使っていいのかな?」
「運ぶついでに、不具合がないか確認中ってことにすれば問題ないわ」
「……そっか。それなら、不自然じゃないね。
うん、そうしてみる」
そうして暗視ゴーグルを着けたまま通路を歩いていると、
司令官さんと遭遇した。
けれど──
モノクロの視界でも、
こちらに視線を向けられているという感覚は、
何ひとつ変わらなかった。
司令官さんと別れた後、
暗視ゴーグルを外す。
変化がなかったことを伝えると、
ラニは小さくため息をついた。
「そう簡単に治るわけないでしょ?
私たちも手伝うから、焦らないの!」
そう励まして、ラニは先に進み始めた。
けれど、その耳が、ほんのり赤くなっているのが見えた。
思わず吹き出しそうになり、
慌ててラニの後を追いかけた。
──
フィアと談笑しながら通路を歩いていた時だった。
リリと、司令官さんに出会った。
敬礼をしたが、咄嗟に、視線を地面へ落とす。
フィアが、司令官さんのかけている眼鏡を褒めている。
少し気になって、恐る恐る見てみると──
目のあたりが、分かってきた。
いつもそこにあるはずの、ぐるぐるが、
ほんの少しだけ、薄くなっている気がした。
消えたわけじゃない。
でも、前みたいに、
“見えない”ほど濃くはなかった。
もう少しだけ、ちゃんと見てみようとした、その瞬間──
こちらの視線に気付いたのか、
司令官さんが、私を見た。
驚いて、身体が反応する。
それでも──
いつもの、押しつぶされるようなプレッシャーは、
すぐには、来なかった。
司令官さんが「どうかしたのか」と声をかけてきたが、
私は曖昧に答えるのが精一杯だった。
そっとフィアの袖を引き、
その場を離れる。
──
後日、みんなの都合がついた時に、
会議室に集まった。
私は、司令官さんが眼鏡をかけていた時のことを話す。
・目のあたりが、分かったこと
・視線を感じても、いつものプレッシャーとは違ったこと
口にしながら、
それが何を意味するのか、
自分でも、まだ分かっていなかった。
エルフィー班長が、静かに言う。
「もしかして……
司令官さんの顔と、ケーラちゃんの視線の間に
“何か”が挟まると、
症状が緩和するのかもしれないわね」
それに、ラニが反論する。
「でも、それなら、
暗視ゴーグルをつけていた時も
症状が緩和してないとおかしくない?」
「……たぶん、違うんだと思う」
言葉を選びながら、私は続けた。
「暗視ゴーグルは、視界を“置き換えて”るだけで、
司令官さんがこちらを見ているっていう事実は、
はっきり分かってしまう……
でも、眼鏡の時は……」
少し考えてから、口にする。
「司令官さんの目は、完全には見えなかった。
でも、隠れてもいなかった。
だから、視線として受け取る前に、
“人の顔”として、見られた気がする」
それが良かったのか、
それとも、余計にプレッシャーに感じたのか。
その時の私は、
まだ自分でも、はっきり分かっていなかった。
エルフィー班長が、静かに補足する。
「暗視ゴーグルは、
ケーラちゃんが視界を遮るためのもの。
でも、司令官さんの眼鏡は、
司令官さん側に“何かを足した”ものよね」
ラニが腕を組む。
「……つまり、
見る側が変わった、ってこと?」
私は、小さく頷いた。
「なるほどね……納得したわ」
そう言って、ラニは軽く息をつく。
「なら!
司令官さんに、ずっとメガネかけてもらう?」
リリが、元気よく言った。
私は、すぐに首を横に振る。
「さすがに、そこまではしてもらわなくてもいいよ……
慣れない眼鏡をずっとかけるのも、
負担になると思うし」
「……司令官さんは、
あんまり気にしないと思うけどな〜。
むしろ、ケーラちゃんのためなら
喜んでかけそう」
唇を尖らせるリリに、
私は何も返せず、
小さく笑うだけだった。
少し沈黙が落ちた後、
フィアが、遠慮がちに手を挙げる。
「……フェイスガードを
つけてもらうっていうのは、どうでしょう?」
全員の視線が、フィアに集まった。
「完全に隠すわけじゃないですけど……
目のあたりが薄くなるなら、
顔全体も、少しだけ和らぐと思うんです。
それなら、ケーラさんも……
司令官さんを、
プレッシャーの“視線”としてじゃなくて、
ただの“人”として、
受け止めやすくなるんじゃないかなって」
エルフィー班長が、ゆっくり頷く。
「……試してみる価値は、十分ありそうね」
ラニも考え込む。
「暗視ゴーグルみたいに遮断するわけでもないし、
眼鏡より、もう一段クッションが入る……
理屈としても、悪くないわ」
リリが、ぱっと顔を上げた。
「じゃあ、次はフェイスガードね!
今度も私が、司令官さんにお願いしてみる!」
私は、少し驚きながら、
みんなの顔を順番に見た。
「……みんな、ありがとう」
そう言うと、
胸の奥に、ほんの少しだけ、
前に進めたような感覚が残っていた。