【完結】司令官(プレイヤー)の顔がわからない低レアさんの苦悩   作:ソシャゲ低レアさん

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※本作は執筆過程においてAIを補助的に使用しています。
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第二十一話:緩やかに、結び直す

 みんなと一緒に、執務室へ向かう。

 リリはフェイスガードを持って、楽しそうに少し前を歩いている。

 私は、ぼそりと呟いた。

 

「大丈夫かな……」

 

 それを聞いたラニが、隣に並ぶ。

 

「不安になる気持ちは分かるわ。でも、あまり思い詰めないこと。

 うまくいけばラッキー、くらいでいいのよ」

「……分かってる、けど」

 

 今度はフィアが静かに近づいてきた。

 

「確信は持てませんけど……

 一応、眼鏡という実績はあります。

 今回も“少し緩和できれば十分”だと思いますよ?」

「フィア……ありがとう」

 

 エルフィー班長も振り返る。

 

「フェイスガード一枚で駄目なら、

 眼鏡と組み合わせる手もあるわ。

 私たちは最後まで付き合うし、

 司令官さんも、きっと付き合ってくれる。

 だから、一人で抱え込まないでね?」

「……はい!」

 

 みんなと顔を見合わせ、もう一度前を見る。

 

「準備はいい? 入るわよ」

 

 扉の前で班長が言う。

 私は深呼吸をして、大きく頷いた。

 

 ノック。

 返事。

 

 私たちは執務室へ入る。

 

 私はラニの後ろに隠れるように歩く。

 視線は、やっぱり床へ落ちていた。

 

「どうしたんだ? こんなに揃って」

 

 困惑した司令官さんの声。

 

「司令官さん! 今度はこれを着けてみてください!」

 

 リリが元気よく差し出す。

 

「……フェイスガード? どういうことだ?」

 

 エルフィー班長が前へ出る。

 

「実は、ある実験をしたくて。

 司令官さんに、これを装着していただきたいんです」

 

「実験?」

 

 班長がこれまでの経緯を説明する。

 

 ・以前、眼鏡をしていた時に目元が少し見えたこと

 ・いつものプレッシャーを感じなかったこと

 

 説明を聞き終えた司令官さんは、静かに息を吐いた。

 

 その瞬間、視線を感じる。

 私は無意識にラニの裾を掴んでいた。

 

「……分かった。協力しよう。

 リリアーナ、貸してくれ」

「はーい!」

 

 フェイスガードを装着する。

 

 ──その瞬間。

 

 さっきまで胸を押していた重さが、わずかに軽くなった気がした。

 恐る恐る、ラニの影から覗く。

 

 ぐるぐるは、ある。

 けれど──薄い。

 

 顔全体を覆っていた濃さが、やわらいでいる。

 輪郭が、分かる。

 

 胸の奥のしこりが、少しずつ溶けていく。

 

「ケーラ、どうだ?」

「……司令官さんの、顔の輪郭が……分かります」

 

 私はラニの後ろから、横へ出る。

 視線がついてくる。

 でも、押しつぶされない。

 

「……プレッシャーが、ありません」

 

 一歩、近づく。

 エルフィー班長の隣へ。

 

「……ぐるぐるが、薄いです」

 

 さらに近づく。

 

「目の位置が……耳が……鼻が……口が……

 ちゃんと、そこにあります」

 

 気づけば、机の前まで来ていた。

 私は深く、頭を下げる。

 

「今まで、ひどい態度を取ってしまって……

 本当に、申し訳ありませんでした」

 

 視界が滲む。

 床に、雫が落ちる。

 

「どんな罰でも、受けます。

 本当に、申し訳ありませんでした」

 

 静寂。

 

 誰も、何も言わない。

 私の荒い呼吸と、鼻をすする音だけがやけに大きく響いていた。

 時間の感覚が、分からない。

 

「ケーラ」

 

 名前を呼ばれ、肩が跳ねる。

 

「顔を上げてくれ」

 

 恐る恐る顔を上げる。

 

 フェイスガード越しの司令官さんは、

 はっきりとは見えないけれど──困っているように感じた。

 

「私は君を咎めるつもりも、罰するつもりもない」

「……え?」

「君の症状は病気のようなものだ。

 しかも私の着任がきっかけだ。

 戸惑って当然だし、こうして適応しようとしている。

 それを責める理由などない」

 

 視線が、真っ直ぐ向く。

 それでも、さっきほどの圧はない。

 

「罰など与えたら、今度は私が罪悪感で倒れそうだ」

 

 そう言って、司令官さんは立ち上がり、頭を下げた。

 

「無理をさせた。倒れさせてしまった。

 本当に申し訳ない」

「や、やめてください!」

 

 私は慌てて言う。

 

「私は、責めていません! 

 怒ってもいません! 

 司令官さんは悪くないです!」

 

 見上げる。

 

 目は、まだ強い。

 でも、怖くない。

 

 司令官さんが吹き出した。

 

「私も同じだ。

 今までの態度を責めるつもりもない。

 あれは、君は悪くない」

 

 言葉が、詰まる。

 

 胸の奥が、いっぱいで。

 何かを返さなければいけないのに──

 声にならない。

 

 視線だけが、交わる。

 

 ──そのとき。

 エルフィー班長が、ぱん、と手を叩いた。

 

「はい、ここまで! 

 お互い謝ったんだから、この件は終了!」

 

 私と司令官さんは目を合わせ、小さく頷く。

 

「今後とも、よろしくお願いいたします」

「ああ。こちらこそ」

 

 差し出された手を、握る。

 

 ──ちゃんと、見える。

 

 司令官さんの顔が、そこにある。

 そして私は、目を逸らさなかった。

 

 ────

 

 後日。

 

 私は一人で、司令官さんの執務室の前に立っていた。

 送信済みのメッセージを、指先でそっと確認する。

 これで大丈夫。

 

 深呼吸。ノック。

 

「どうぞ」

 

 扉を開ける。

 

「司令官さん、お疲れ様です。遠征の報告に参りました」

 

 顔を上げる。

 フェイスガード越しの輪郭が、そこにある。

 

「ご苦労。書類を」

「はい」

 

 差し出した報告書に、視線が落ちる。

 その目の強さは、前と同じはずなのに──胸は静かだ。

 

「問題ないな。怪我人もいない。よくやった」

「みんなが頑張ってくれました」

 

 引き出しが開く音。封筒が差し出される。

 

「カフェテリアのスペシャルスイーツのチケットだ。参加者全員分ある」

「……本当ですか? ありがとうございます!」

 

 封筒を受け取り、頭を下げる。

 

「では、失礼します」

 

「ああ。気をつけてな」

 

 扉を閉めかけて──ふと、足を止める。

 

 ほんの一瞬だけ、振り返る。

 

 フェイスガード越しの輪郭が、そこにある。

 

 視線が合う。

 

 強い目。

 それでも、怖くない。

 

 ──目は、逸らさない。

 

 静かに扉を閉める。

 

 廊下に出ると、胸の奥が、少しだけあたたかい。

 

 完璧じゃない。

 それでも、私は今日もここに来られた。

 

 次も、きっと来られる。

 ──司令官さんのいる、この場所へ。

 

 そう思いながら、私はみんなのもとへ駆け出した。

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