【完結】司令官(プレイヤー)の顔がわからない低レアさんの苦悩   作:ソシャゲ低レアさん

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※本作は執筆過程においてAIを補助的に使用しています。
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第七話:そこにいたはずなのに

 朝からリリアーナが執務室に突撃してきた。

 

「今日はリリが秘書やりま~す」

(……朝から元気だな)

 

 そうして午前中は一緒に業務をしていたのだが、午後になって書類の運搬を頼んで以降、彼女は戻ってこなかった。

 

「……どこかで油でも売っているのか?」

 

 そう思い、探しに出ることにした。

 食堂、カフェテリア、売店、訓練場、武器倉庫。

 その場にいた隊員たちに聞いて回ったが、誰もリリアーナを見ていないという。

 

(もしかして、居住区か?)

 

 そう考え、居住区へ向かう途中、通路脇のベンチに人影があることに気づいた。

 ベンチに座り、本を読んでいる人物。

 

(あの子なら、何か知っているかもしれない)

 

 近づいてみると、その人物がケーラだと分かった。

 

「……ケーラ?」

 

 声をかけると、彼女は目を見開き、

 身動きが取れないまま、慌てた様子で本を顔の前に掲げた。

 

「お、お疲れ様、です。し、司令官さん」

 

 その反応に思わず苦笑しつつ、用件を切り出す。

 

「読書の邪魔をしてすまない。リリアーナをどこかで見なかったか?」

「えっ? リリ……ですか?」

 

 今日の秘書であるリリアーナが、書類の運搬に出たきり戻ってこないことを伝えると、ケーラの手にしていた本が一瞬だけ下がった。

 直後、彼女は勢いよく立ち上がる。

 

 ──ゴン、という鈍い音。

 続いて、「ぐへっ……」という情けない声。

 足元を見ると、ベンチの下で頭を押さえ、うずくまるリリアーナの姿があった。

 

「……」

 

 無言でリリアーナを見下ろすケーラ。

 

「い、いてて……ケーラちゃん、急に何~~?」

「何じゃないでしょ!! 今日秘書だって聞いてないんだけど!! 

 こんなところで昼寝してたらダメでしょ!!」

「あ……」

「あ、じゃないでしょ!! 

 司令官さん、この子、早く連れてってください!」

 

 そう言ってリリアーナをこちらに押し付け、ケーラは本を胸に抱えたまま居住区の奥へと歩いていった。

 

「し、司令官さん……ゴメンナサイ……」

 

 気まずそうに俯くリリアーナに、ため息をひとつ。

 

「説教は後だ。とりあえず執務室に戻るぞ」

「司令官さ~ん、本当にごめんなさ~~い!!」

 

 ふと、ケーラが去っていった方向を見たが、

 そこに彼女の姿は、もうなかった。

 

 ⸻

 

 通路を歩いていると、前方から楽しげな声が聞こえてきた。

 見ると、ラニとケーラが両手に荷物を抱えて歩いてくるところだった。

 

「ラニ、ケーラ、ご苦労様」

「あら、司令官。お疲れ様」

「司令官さん、お疲れ様です」

 

 ラニはいつもの調子でこちらに視線を向け、

 すぐに何事もなかったように荷物へ意識を戻した。

 

「その荷物は?」

「武器整備課よ。

『どうせ暇だろ』って言われて、倉庫から運ばされてるの」

 

 ラニが肩をすくめると、ケーラは苦笑する。

 

「ラニ、先に届けてくるね。整備課の人たち、待ってるだろうから」

「え? ちょっ、ケーラ?」

 

 制止する間もなく、ケーラは早足で去っていった。

 

「……そんなに急ぎだったのか?」

「いいえ。立ち話の数分くらいなら問題ないはずだけど」

 

 ラニは私を一度見て、少し考えるように間を置いた。

 

「司令官、ケーラと何かあった?」

「何もない」

「……そう」

 

 私とラニは、揃って首を傾げた。

 

 ⸻

 

 訓練場の近くを通りかかると、中から怒号が響いてきた。

 

 急いで中に入ると、第4班と第6班の姿がある。

 怒鳴っているのは、全身ピンク色の人物だった。

 顔も服もペイントで覆われ、誰なのか判別がつかない。

 

 怒られている側は、案の定ポポラ。

 

(また、ポポラ案件か……)

 

 エルフィーが必死に宥めているが、効果は薄い。

 集団の外で困った様子のシエラに声をかけた。

 

「何があった?」

「あら~。司令官さん、お疲れ様です」

 

 そのやり取りで、全員がこちらに気づいた。

 第4班と第6班の、見知った顔が揃っていた。

 

「……もしかして、ケーラか?」

 

 問いかけると、ピンク色の人物は無言で頷いた。

 ケーラは私の方を見ないまま、淡々と言った。

 

「ペイント弾を落とすために、シャワー室に行ってきます」

 

 一拍置いて、今度は低い声で続ける。

 

「……ポポラ。あとで、覚悟しておいて」

 

 そう言い残し、ケーラは足早に訓練場を後にした。

 

 ポポラは安堵したように息を吐く。

 第4班は、去っていくケーラの背中をじっと見つめていた。

 

「……一体、何があった?」

 

 フィアが恐る恐る説明する。

 

「ポポラちゃんが……ペイント銃を勝手に改造してしまって……」

「改造?」

「命中率を上げようと思ったみたいで……

 当たったかどうか分かりやすくするために、塗料を増やしたらしくて……」

 

 ミレイがため息をついた。

 

「ポポラの火力が想定以上だったのよ。

 純粋な性能差ね……ケーラが不利になるのも無理はないわ」

 

 ペイント弾そのものの威力ではなく、

 中身の塗料が異常な量になっていたらしい。

 

 頭が痛くなる。

 

「ポポラ、後で執務室に来い。反省文だ」

「えっ、そこまで!? ペイント弾だよ!?」

 

 一蹴する。

 

「銃の無断改造は重大な規律違反だ。

 実弾だったらどうなっていた?」

「ごめんなさい!!」

 

 土下座するポポラ。

 

「反省文提出。

 それと明日から一週間、ケーラの特別メニューを受けろ」

「ま、待って! それだけは!!」

 

 そう言うとポポラは顔を上げたが、真っ青に染まっていた。

 やり取りの最中も、エルフィーはケーラの去った方向を見ていた。

 

「何か気になることが?」

「……さっきのケーラちゃん、様子がおかしかったんです」

 

 エルフィーは一瞬、言葉を探すように視線を伏せた。

 

「いつものケーラちゃんなら、あの程度で訓練を中断しません。

 不利な状況ほど燃える娘ですし、ポポラちゃん相手なら尚更です。

 それに……ポポラちゃんの説教を途中で切り上げるなんて、

 ケーラちゃん、今まで一度もありませんでした」

 

「……そうか」

 

 胸の奥に、見過ごせない違和感が芽生えた。

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