【完結】司令官(プレイヤー)の顔がわからない低レアさんの苦悩 作:ソシャゲ低レアさん
物語構成・設定・最終調整は作者によるものです。
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夜。
寮の食堂へ水を取りに行くと、扉の隙間から光が漏れているのが見えた。
消灯時間も近い。少し怪訝に思う。
(まったく……誰かの消し忘れかしら?)
そう思いながら中を覗くと、エルフィーが一人、席に座っていた。
顎を手に乗せ、何かを考え込んでいる様子だ。
目の前には湯呑みが置かれているが、湯気はとっくに消えている。
──横顔が、少し怖かった。
「……エ、エルフィー?」
声をかけると、彼女ははっとしてこちらを向き、いつもの柔らかな笑顔を浮かべた。
「ラニちゃん、どうしたの?」
「水を飲みに来ただけよ。それより……こんな時間まで何してたの?」
「こんな時間? …………えっ?」
エルフィーは時計を見て、心底驚いたような声を上げた。
「気づいてなかったの? ……大丈夫?」
問いかけると、エルフィーは一度視線を落とし、小さく頷いた。
「ラニちゃんは最近……ううん。
〇〇司令官さんが来てからの、ケーラちゃんについてどう思う?」
「ケーラについて……ね」
正直、違和感はあちこちにあった。
顔合わせのときの緊張。
荷物運びの途中での離脱。
訓練の中断と、説教の途中退席。
今までのケーラを思い返し、エルフィーの言葉と重ねる。
「……ケーラは、〇〇司令官を意図的に避けてる?」
エルフィーは神妙に頷いた。
「……やっぱり、ラニちゃんもそう思うよね」
そう言って、彼女は頭を抱え、大きく息を吐いた。
私はエルフィーの正面の席に腰を下ろす。
「……エルフィーは、どうしたい?
どうするべきだと思う?」
真正面から見つめると、エルフィーは視線を受け止め、顔を上げた。
「前に司令官さんに聞いた時、司令官さんは“何もしていない”って言ってた。
今までの行動を見てきても、隊員に不当なことをする人じゃない。
なら……」
言葉を詰まらせ、苦い表情で続ける。
「……なら、ケーラちゃんに聞くべきだと思う」
「……」
「でも、私は……ケーラちゃんが話してくれるのを待ちたい!」
エルフィーの表情には、はっきりとした覚悟があった。
「エルフィー
「ラニちゃん……!」
私たちは目を合わせ、静かに頷き合った。
「じゃあ──」
そう続けようとした瞬間、消灯時間を知らせる放送が流れた。
エルフィーは出鼻を挫かれたように、言葉を失う。
「明日、リリも交えて詳しく話しましょ。
リリへの連絡は私がするわね」
そう言って水を飲み、私は食堂を後にした。
──
翌日。
ポポラの特別メニュー(お仕置き)を監督するケーラを除いた第4班は、小会議室に集まっていた。
「集まってどうしたの〜?ケーラちゃんもいないし」
リリが呟く。
頭が痛くなりかけたが、エルフィーが代わりに事情を説明した。
「〇〇司令官さんが着任してから、ケーラちゃんの様子がおかしいことについて。私たちで、どうするか決めたいの」
「どうするって?」
リリの頭上に疑問符が浮かぶ。
「ケーラちゃんが司令官さんを避けている件に、言及するかどうか」
「えっ? それ、聞く一択じゃないの?」
あまりにあっさり言われ、思わず声を荒げた。
「おバカ! 少しは考えなさい!!
ケーラなら、気軽に話せる内容ならもう話してるはずでしょ!
それでも何も言ってこないってことは、只事じゃないのよ!!」
思わず、睨みつける。
「じゃあ、リリは何か聞いてるの?」
「ううん。何も……
っていうか、ケーラちゃんって司令官さん避けてるの?」
私とエルフィーは同時に頭を抱えた。
事情を説明すると、リリはぱっと顔を明るくする。
「あ! そういえば一回だけ、司令官さんがいたときに、いつの間にかケーラちゃんがいなくなってたことあった!」
「……やっぱり」
少し考えた後、リリは言った。
「でもさ、それなら直接聞かないと分かんなくない?」
「「……」」
確かに、その通りだ。
だが、聞いてもどうにもならない可能性の方が高い。
だから、踏み出せない。
「私は聞くのに反対。
まだケーラ自身、理由を整理できてないと思う。
整理できたら、きっと話してくれる」
そう言うと、リリは不満げな顔をした。
「でも、いつになるか分かんないじゃん!
一緒に悩むことだってできるでしょ!!」
「それで余計に追い詰めたらどうするの!」
睨み合う二人の間に、パン、と手を叩く音が響いた。
「はいはい。二人とも、意見は分かったわ」
エルフィーが仲裁に入る。
「エルフィーはどう思ってるの?」
「正直、ラニちゃんの意見に賛成かな」
「なっ!?」
リリが立ち上がる。
「……だから、期限を決めるのはどう?」
「期限?」
「二週間。
それまでにケーラちゃんから何もなかったら、私たちから聞く」
沈黙の後、私とリリは頷いた。
──そうして話がまとまった、その直後。
会議室の扉が勢いよく開いた。
息を切らしたフィアが、そこに立っていた。
「た、大変です……!」
「フィアちゃん、落ち着いて。何が──」
「ケ、ケーラさんが……倒れました」
その瞬間、視界が暗転した。