石流龍(石流龍じゃない)の肉体を手に入れた   作:和尚我津

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仙台結界(コロニー)突入前の乙骨の行動。
対300点プレイヤー用の攻撃術式として十劃呪法を取得するため高専に立ち寄る。家入立ち合いの下、遺った下半身を取り込む。→家入からの案内により、高専に保管されていた分身術式を取り込む。→高専から出る前東堂と遭遇。

以下不義遊戯(ブギウギ)取得時の経緯。

「聞いたぞ乙骨、死滅回游に参加するらしいな。俺も参加したいのは山々なんだが、流石にこの腕ではな。口惜しいことだ。このような大事な時に超親友(ブラザー)の力に成れぬとはな……そこでだ。貴様に俺の不義遊戯を託すこととした。受け取るがいい。義手を付けるのに邪魔になった部位をそぎ落とし食べやすく丸めた特製肉団子だ。量は少ないが縛りを設けることで数回は使うことができるだろう。味付けに関しては保証しよう。遠慮なく喰らうがいい……ふっ、そう案ずるな。俺は横恋慕する田舎のヤンキーのように腐った男ではない。惚れた男がいる女に手料理を喰わせるような不粋な真似などするわけがあるまい。そもそも俺の手作り料理は高田ちゃんと超親友(ブラザー)専用と決まっているから、お前らが喰う機会は未来永劫訪れることはない。残念だったな。後ろから色々と指導させてもらったが、この料理を作ったのは俺ではなく三輪だ。感謝なら俺ではなくアイツに言え。ああ、ラッピングに関しては俺だ。片腕ゆえ聊か不格好であることは痛恨の極み。だがこの包装紙(ラップ)に描かれている花、つまりは虎杖(ブラザー)に包まれた俺の術式を取り込むことで貴様のステージは確実に一段昇ることになる。その力と俺の不義遊戯で超親友(ブラザー)を助けてやってくれ。良い、(みな)まで言うな。俺の不義遊戯は必ず復活する。それまで乙骨、お前は超親友(ブラザー)義兄弟(ブラザー)となって超親友(ブラザー)を導いてもらうぞ」

このあとメチャクチャ嫌そうにしてリカちゃんが特製肉団子を喰った。
マジで美味くてムカついた。


長い長い長すぎる

「マジでっ!? 乙骨も負けたのっ!?」

 

 栃木県のとある立体駐車場が跡地。

 術師による賭け試合(ファイトクラブ)が行われていたそこに、東京高専の学生たちが集まっていた。

 

 日本、東京、五条悟、夜蛾学長の現状、事件解決後の秤金次への協力契約を経て、話はついに死滅回游に移行した。

 そこで出た話題に、秤は驚愕の声を上げる。

 

 五条悟の封印という報告の後、立て続けに届いた乙骨憂太敗北という爆弾情報。

 

 五条悟の封印を聞いた時と比べて驚きが強いが、これは五条悟封印という事実を未だ上手く呑み込めていないためだ。

 彼からすれば、急に太陽が消滅したと言われているようなものだ。

 

 その点乙骨は何だかんだ未熟であり、言ってしまえば身近な存在だ。少なくとも無限の彼方にいる存在ではない。

 ゆえにその敗報はより具体性を持って秤に届いた。

 同年代の有名人が前触れなく亡くなったときと言えば、伝わるだろうか。

 

「確証はないですが、恐らく」

「試合中にも聞いたけど、パンダには正直信じられないなぁ」

 

 伏黒は言いにくそうに肯定する。

 驚愕というラインは超えているが、手放しで唯一尊敬できる先輩が負けることに少なからぬショックを受けていた。

 級友として乙骨と学生生活を共にするパンダも信じられないという気持ちを隠さない。彼の強さは良く知っている。五条悟と比べたらそりゃあ弱いが、それでも特級術師。彼が負ける姿を想像できていなかった。

 

 実を言うとこの中で一番衝撃受けているのは、実際に乙骨の手で殺され、彼の強さを実感した虎杖だった。

 衝撃が強すぎて、一周回って冷静になっているだけで。

 

「ここに到着するちょっと前に、コガネのアナウンスがあったんだよ」

「アナウンスぅ?」

「ああ。コガネ! 悪いけど今日追加された2つの総則(ルール)についてもう一度教えてくれ」

『しゃーねーな! 面倒だが行くぜい悠仁!』

 

 コガネの口調がフランクなものから機械音声じみた形式ばった物に代わる。

 

総則(ルール)12! 泳者(プレイヤー)は他泳者(プレイヤー)の名前、所持得点(ポイント)総則(ルール)追加回数、滞留結界(コロニー)の情報を取得できます!

総則(ルール)13! 泳者(プレイヤー)は100得点(ポイント)を消費し、泳者(プレイヤー)の1名の情報を隠蔽または捏造できます! なおこの隠蔽または捏造は100ポイント消費するか、実行者本人の意思によってのみ解除できます!

 

「……なにこの総則(ルール)?」

 

 黙って話を聞いていた星綺羅羅が疑問の声を上げる。パンダも秤も声には出さないが同じ気持ちだ。

 

 一つ目は理解できる。

 敵の所在把握、危険人物の特定。使い道は多岐に渡る。

 

 分からないのは二つ目だ。せっかく開示した情報をわざわざ伏せるような総則(ルール)を組んでどうするのか? しかも追加で100得点(ポイント)も消費しなければならない。

 

 相反するようなルールに、詳細を知らない3名は首をかしげる。

 

「あ。もしかして二つの総則(ルール)は、それぞれ別の奴が追加したのか?」

「いえ、同タイミングでの総則(ルール)追加だったのでそれはないかと」

 

 パンダがもしやと発言するが、伏黒にすぐ否定された。

 

「話が見えねぇな。結論をさっさと言えよ」

「見た方が早い。虎杖頼む」

「コガネ。総則(ルール)を追加したことのあるプレイヤーだけを表示してくれ」

『はいよ』

 

 宙に投影されたウィンドウ。そこにリストアップされた人は一名。

 

 総則(ルール)追加回数は脅威の5。

 現在の所持得点(ポイント)は掟破りの999,999,999

 所在は仙台結界(コロニー)

 その名前は『石流龍(乙骨憂太の仲間たちに告ぐ。得点(ポイント)を掛けたオレとの勝負に乙骨憂太は負けたが、気を失う最後の瞬間まで立ち向かう乙骨の気合にグッときた。それに免じてどんな手を使ってもいいからお前らが死滅回游に求めるいくつかの総則(ルール)のうち一つでも追加できたら、残りの総則(ルール)追加等に必要なポイントを融通してやる。だからお前らもビッと気合入れろよ。ちなみにお前らが警戒している300点プレイヤーはオレのことだからビビる必要はもうないぞ。どんどん結界(コロニー)に突入しろ)

 

「「「ん?」」」

 

 秤、綺羅羅、パンダの目が点になる。

 

 もう一度コガネの情報をじっくりと見る。

 彼らが気になった箇所は2点。

 一つはあり得ないほど圧倒的な所持ポイント999,999,999

 もう一つはあり得ないほど長い人名『石流龍(乙骨憂太の仲間たちに告ぐ。得点(ポイント)を掛けたオレとの勝負に乙骨憂太は負けたが、気を失う最後の瞬間まで立ち向かう乙骨の気合にグッときた。それに免じて――

 

「いや長い長い長い! 長すぎるだろっ! パンダは四文字以上の名前は覚えられないんだ!」

「それウチらも大体アウトじゃん」

 

 パンダがツッコみ、そのツッコみに綺羅羅がツッコむ。

 

「え? つまり乙骨ちゃんはこのイシナガレリュウってのに負けたの?」

『コイツの名前はイシゴオリリュウって読むんだぜ、兄ちゃん』

(あ、本当に男なんだ)

 コガネと綺羅羅のやり取りに場違いな感心を得た虎杖。

 

得点(ポイント)がバグり散らかしてやがるな。カンストしてんじゃねーか」

「戦うにしろ逃げるにしろ、強敵を知ろうとすれば得点(ポイント)は必ず参照されます。必然、嫌でも目に入るようにしたんでしょう」

 それを横目に秤と伏黒の会話が続く。

「なるほどな。2つ目の総則(ルール)は連絡手段の代わりに追加されたのか」

「はい。恐らくは文面の通りに乙骨先輩はコイツと得点(ポイント)を掛けて争って……負けたんだと思います」

「にしちゃあ随分と贅沢な得点(ポイント)の使い方じゃねぇの」

 

 秤の言う通り。このメッセージを送るだけでも、石流龍は300ポイントを消費しているのだから。

 

「実は乙骨ちゃんが勝利してってパターンは……ないか」

「こんな総則(ルール)を追加するぐらいなら、まず通信を認めさせるような総則(ルール)を追加しているはずですからね」

「え? ていうか憂太生きてる? 死滅回游って相手を殺すことが前提だよな?」

「それはもう最初に確認したから安心していいよ」

 

 大量に得点(ポイント)を消費しての無駄な総則(ルール)、阿保みたいな文章、乙骨であればやるはずのない事柄ばかりだった。

 確たる証拠がない。しかし乙骨が負けたという事実を上級生3人組は受け止めた。

 

「条件付き協力者。そう考えるのが一番いいかもしれませんね」

「てかなんだコイツ。総則(ルール)追加回数5回とかヤバすぎだろ。得点(ポイント)同様これもフカシか?」

「いえ、それはマジです」

「マジなんだ」

 

 石流の他に総則(ルール)を追加した泳者(プレイヤー)の名前はない。

 情報を隠蔽するために100得点(ポイント)消費する奇特なプレイヤーが居るはずもなく、必然として全ての総則(ルール)追加は石流龍という男が行ったのだと理解する。

 

 300点どころの話ではない。一人で500、いや名前による伝言を含めれば600もの得点(ポイント)を稼いでいる泳者(プレイヤー)。メッセージを読む限り更なる得点(ポイント)を隠し持っているのは明白。どう考えても危険なその泳者(プレイヤー)は、しかし東京には居ない。

 

「悪いことばかりじゃない。要注意泳者(プレイヤー)は仙台に居ることが分かったし。100得点(ポイント)泳者(プレイヤー)が東京第1結界(コロニー)に居ることも分かった――これからの行動を決めましょう」

 

 方針を決めるに足る情報は出揃ったと判断した伏黒は、死滅回游攻略に向けて動き出すことを改めて宣言した。

 

 天使がいる東京第2結界(コロニー)は、索敵可能な伏黒とパンダ。

 

 100得点泳者(プレイヤー)が滞留する東京第1結界(コロニー)は、最強戦力である秤を投入。

 だが必要なのは倒すことではない。協力を仰いで該当泳者(プレイヤー)総則(ルール)を追加してもらうこと。一癖も二癖もあることが予想される人物に対して最適な人材として、人たらしの虎杖をあてがう。

 

 星綺羅羅は外部でのバックアップ。

 

 死滅回游攻略に向けて指針と配置は決まった。

 

 特級術師たる乙骨すら敗北したという魑魅魍魎渦巻く呪いの坩堝に向けて、あとは飛び込むだけ。

 

 彼らの戦場は、すぐそこまで迫っていた。

 

 

 

 

 虎杖悠仁の内部、

 目は通した。耳にも入った。しかして記憶に留めることはなく。

 

 呪いの王、両面宿儺に彼の名前が刻まれるまで、あと少し。

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