石流龍(石流龍じゃない)の肉体を手に入れた   作:和尚我津

13 / 27
いつもご感想および誤字報告ありがとうございます。この場を借りてお礼申し上げます。
本日から再開いたします。
なお毎日更新はできない可能性がありますので悪しからず。


出来る事ならあります

泳者(プレイヤー)による死滅回游への総則(ルール)追加が行われました!! 総則(ルール)15! 泳者(プレイヤー)は任意の得点(ポイント)を他泳者(プレイヤー)に譲渡することができます!

「続けて、乙骨に100点譲渡」

『承知しました。泳者(プレイヤー)乙骨憂太に100得点(ポイント)譲渡いたします』

「これで良し」

 

 原作と同じく死滅回游離脱の総則(ルール)が追加されたため、約束通り得点(ポイント)の融資――死滅回游離脱に必要な100点や、それを渡すための譲渡の総則(ルール)追加などを実行した。

 

「どうして乙骨さんに渡したんですか? 直接伏黒くんに譲っちゃってもいいんじゃ?」

「お前さんは会ったことのない奴から100万ポンっと渡されたらイヤだと思わないか?」

「いいえ全然バッチコイです! 誰から貰おうとお金はお金ですから!」

「そうか。喜ぶ奴も割といるわな。これはオレの例えが悪かった」

 

 いくら貧乏苦学生とはいえ少しは警戒心を抱いた方がいいぞ……オレに頭掴ませてるようじゃ無理か。

 東京結界(コロニー)側も状況は理解しているだろうから、オレが直接渡した所で特に気にすることはないだろうけど、乙骨から貰った方が安心は安心だろう。

 実は乙骨との約束が縛りに該当しているかどうか分からないから、ビビって乙骨にしか渡してないというのが真実なんだが、ダサすぎるからクールに黙っておくぜ。

 

「あとは僕から伏黒くんに100点を譲れば……」

「伏黒の姉貴が助かるって寸法だな。たしか津美紀とかって名前だったか?」

「そうそう。あ、泳者(プレイヤー)ってことは情報見れるんだよね? コガネ、伏黒津美紀さんのデータ出してみて」

『は? いちいち指図するなクソガキが』

「えっ口悪い」

 

 無駄に個性的なコガネにも舐められている三輪に悲しい過去が。一生刀を振るえない縛りで振るった一閃がノーダメっていうのは凄く悲しいよな。

 まあ所詮は死滅回游の端末。口ではどう言おうが泳者(プレイヤー)に請われれば表示せざるを得ない。

 

 宙に映し出される伏黒津美紀の情報。得点(ポイント)0で総則(ルール)追加回数0で、それだけ見ればなんともまあ綺麗なもんだ。

 中身が平安生まれのどす黒いナニカに入れ替わってるなんて想像つかないな。

 しかし危なかったな、情報開示に『覚醒型か呪物型か』の記載できるかどうか試さなくて良かった。

 組み込んでたらいつか、最悪この時点で受肉してたってバレるし。

 まあその情報開示もしてたら、万は病院で待機せずにどこかの結界(コロニー)で虐殺しまくってたろうけど。

 

 そんなことを思っていると、おずおずと三輪が手を上げる。

 

「あのー、今更言うことじゃないとは思うんですけど、離脱の総則(ルール)って必要でしたか? 参加特典(ログインボーナス)のおかげで時間制限とかなくなったと思うんですけど」

 

 マジで今更が過ぎるな。総則(ルール)追加してから言うんじゃないよ。

 

「滞留結界(コロニー)の欄を見てみろ。空白だろ? 結界(コロニー)に侵入してないってことは、まだ死滅回游参加を表明していないってことだ。それだと総則(ルール)1と2に抵触して死ぬ可能性があるんだよ。つまりこの津美紀って姉ちゃんは一度どっかの結界(コロニー)に入る必要があるわけだ。そんでお前さんは忘れているかもしれんが、結界(コロニー)内部は基本的に戦場だ。だからさっさと結界(コロニー)外に出てもらいてぇ。かといってオレみたいな血の気の多い奴がまだ居るだろう状況で、出入り自由の総則(ルール)を追加すると、その後の管理で体制側が色々と大変なことになるんだよ。だからオレみたいな死滅回游版あしながおじさんが居るんだったら、厳しい条件付き入退場の方が丸いって寸法だ」

「……なるほど!」

「なんで外様のオッサンの方がお前より状況理解してんだよ」

「え、エヘヘ」

 

 笑って誤魔化そうとするが真希の圧に目が泳いでいる。

 情報アドについては許してやってくれ。オレの情報源(ソース)単眼猫(この世の神)だから。

 

「加えて言えば、出入りについては死滅回游の総則(ルール)じゃなくて結界の総則(ルール)だろうから、追加したところでどうなるのか分からない、っていうこともあるよ」

 

 乙骨の補足が入るが、多分もうすぐその仮説が真か偽か証明されることになる。望んだ形ではないだろうけど。

 

「覚醒型はまだしも、そこのオッサンみたく呪物型は根っからの呪術師だからな。そいつらがうじゃうじゃ居る内は安易な開放は取れねぇ。羂索みてぇな呪詛師が居ればもう最悪だ」

「そっかー……一応聞いときますけど、結界(コロニー)から出れるようになったとしても、石流さんは暴れたり無差別呪術テロを起こしたりはしませんよね?」

「当たり前だろ? 大量虐殺を好んでやるタイプじゃねえぜ、オレはな」

「……そうかよ」

 

 ん? なんだその反応……あ。

 そういや今の真希って真依ちゃんオーダーの、禪院全員全滅マラソンの完走直後か寸前だったっけ? 確かフィジギフ覚醒したのって今日の昼ぐらいだから、エレンもビックリなスピードで駆逐してるやん。

 そんな誤字でも比喩でもない大量虐殺者の前で、『虐殺なんてするわけないじゃんw いやオレはね?w』と、意図せず煽るような発言をしてしまったわけかオレは。

 三輪も地雷踏んだことに気づいて『しまった!』って顔をするんじゃあないよ。お前が始めた話題(ものがたり)だろうが。

 

「あ、そうだ! 石流さんの反転術式受けていきませんか?! 場所変わりますんで! もうほんとにスゴいんで! 真希さんの火傷跡も多分あっさりと治っちゃう――」

「あー、そいつは恐らく無理だ」

「――んじゃないかと……思ってたんですけど……む、無理なんですか?」

 

 うん無理。

 

 これは呪物になって修行している時に気づいたことだが、反転術式――より正確に言えば『正の呪力を用いた回復』は、肉体ではなく魂に作用する技術である。

 詳しい説明は省くとして、魂が保有する『万全な肉体の情報』に、生身を近づけるのが反転術式による回復だ。再現の方が表現としては適切だがな。

 

 それを踏まえてフィジギフについて考えてみる。

 降霊術でパパ黒を降ろした時のように、フィジギフは魂より肉体の方が情報としての強度があり、魂の方が上書きされる。恐らく成長して肉体が完成した段階――真希なら天与の暴君として覚醒した状態の肉体が、そのまま『万全な肉体の情報』として魂に保管されているはず。火傷跡もそのままに。

 つまり天与の暴君として完成する前ならともかく、成った以上はもう魂が火傷跡を身体の一部として認識しているから治しようがないということだ。

 じゃなきゃフィジギフ単体の回復能力で時間はかかったとして火傷跡ぐらいなら消えているはず。それがないということは、そういうことなのだ。

 

「えー、あー、そうなんですか」

 より一層ザックリとした説明となったが、それを聞いて思いっきりテンパる三輪。

 話を逸らせようとした結果、女性にとってデリケートな部分に思いっきり踏み込んで空振ったわけだからな。

 大丈夫、まだ2アウトってところだ。3アウト制なのかは知らん。

 

「真希さん。伏黒くんにたった今得点(ポイント)を渡したから、ここから出て津美紀さんを助ける手筈を整えてくれる?」

「……おう、任せろ」

 

 そんな気まずい空気の中、乙骨が自然と真希に任務を与えて、退席を促した。

 おいおい、何サラリと気遣い見せてんだ乙骨イケメンかお前。いいぞもっとやれ。

 

「アンタは早く出てっていいよぉ、じゃあねぇ」

「はいはい、邪魔して悪かったな」

 

 本音なのか気遣いなのか分からんリカちゃんの悪態を背にして、真希は闇に沈みつつある仙台結界(コロニー)を去らんとしていた。

 三輪は助かった。

 

「おい三輪、その前にちょっとツラ貸せ」

「ひゃい!?」

 

 やっぱダメかもしれんね。

 

******

 

 そんなこんなで11月13日、時間は15時過ぎ。

 

「あ! 津美紀さんが東京の結界(コロニー)に入りましたよ! 多分そろそろじゃないですか?」

 

 先ほどから出しっぱなしにしている伏黒津美紀の情報(ウィンドウ)に変化が訪れたようで、三輪が集まれと言わんばかりに声を上げている。

 真希に絞められたはずなのに変わらずピンピンしている。そのメンタリティやはり呪術師か。

 

 釣られるように近づくオレと乙骨。しばらくすると伏黒津美紀の得点(ポイント)に100点加算される。

 それを見た乙骨もどこかホッとしたような雰囲気を醸し出した。

 

「どうやら結界(コロニー)内でも無事に伏黒くん達と合流できたみたいだね」

 

 懸念していた結界(コロニー)突入直後の初心者狩りも乗り越え、あとは離脱を宣言するだけ。

 それで伏黒津美紀という人物は呪い呪い合う世界から抜け出すことができる。高専生徒の殆どはそう考えているだろう。

 

 ――それが叶わないことを知っているのはオレと津美紀()本人、羂索と……多分宿儺も察してはいるはず。

 

 オレたち3人のコガネが同時に現れ、揃ってベルを鳴らす。

 死滅回游が始まってから幾度も聞いてきた、総則(ルール)追加の合図。

 

泳者(プレイヤー)による死滅回游への総則(ルール)追加が行われました!! 総則(ルール)16! 泳者(プレイヤー)結界(コロニー)を自由に出入りすることができます!

 

 突如として追加された総則(ルール)に戸惑う二人。

 

「これは、一体どういう?」

「え? 突然なにやってんですか石流さん?」

「いやオレじゃねえよ」

 

 なんか総則(ルール)追加=オレの仕業みたいに決めつけてやがる。実績を鑑みれば否定しにくいけど、今回は違うし実行者も既に表示されている。

 

「見てみろ。伏黒津美紀の情報を」

 

 コガネが表示し続けている伏黒津美紀の情報(データ)。そこには『得点(ポイント)0点 総則(ルール)追加回数1回』と表示されていた。

 

「津美紀さんが総則(ルール)追加している? 何かミスっちゃったのかな……?」

「――石流さん、得点(ポイント)を使って泳者(プレイヤー)間で連絡を取れる総則(ルール)を追加してくれませんか?」

 

 困惑しっぱなしの三輪を放置して、乙骨はすぐさまオレに総則(ルール)追加を要求してきた。

 直感か経験か、コイツはもう尋常ならざる事態が起きていると予感しているらしい。

 

「確かにオレは融資するとは言った。だがそれは必要な分に関してだけだ。今この瞬間、お前らにとってその総則(ルール)は絶対に必要か?」

「僕の取り越し苦労で不要な総則(ルール)になったのなら謝ります。別の結界(コロニー)得点(ポイント)を稼いで補填もします。ですからどうか早急に――」

「分かった分かった。コガネ! 総則(ルール)追加だ! コガネを介した泳者(プレイヤー)間での通信を許可しろ!」

 

 再度鳴り響く、総則(ルール)追加の鐘の声。

 

泳者(プレイヤー)による死滅回游への総則(ルール)追加が行われました!! 総則(ルール)17! 泳者(プレイヤー)死滅回游専用端末(コガネ)を介しての通信が可能となります!

「コガネ! パンダに通信繋いで! 早く!」

 

 総則(ルール)を追加されてすぐさま乙骨は通信を試みる。

 

 異常事態ということを察したのだろう。乙骨だけでなく三輪もまた表情が呪術師のそれに変わっていた。

 二人にとってはやけに長く感じたであろう数秒のコールの後通信が繋がり、テレビ通話のようにパンダの姿が表示される。

 

 場違いな感想だとは思うが、パンダの見た目はマジでパンダだった。

「いきなりゴメン! そっちで一体――」

『――伏黒が宿儺に乗っ取られた!』

 白と黒。そこに赤が滲んでいなければ、だが。

 

 その有様に息を飲む乙骨と三輪。

 二人を無視して伝えられた情報は、極めて簡潔だった。

 

 宿儺による虎杖の乗っ取りではなく、まさかの伏黒。

 高専側にとっては想定外(オレにとっては予想通り)の事態。

 

 現地では恐らく色々あったのだとは思う。ずたずたに引き裂かれているパンダの姿。周囲を見ても、血塗れで横たわるスーツ姿の男。もぎ取られた片腕。果てはバラバラの死体まで。

 伏黒津美紀()という存在の発覚から向こうにとっては情報の洪水だったろうが、それでも一番大事な宿儺の復活についてを端的に伝えてきた。

 

「現状は!?」

『虎杖と宿儺が一緒だ! 秤も追ってる! アイツらがヤバい!』

 

 こちらも予想通り、伏黒の抵抗によって高専の学生連中は全員生存している。

 だがそれが何のプラスにも思えないぐらい、最悪の状況。

 

「くそっ!」

「東京に居れば宿儺と闘れたわけか。ミスったなぁ」

「そんなこと言っている場合ですか! わ、私たちはどうすれば!?」

「どうもこうも仙台(ここ)からじゃあな……コガネ、一応聞いとくが結界(コロニー)間での瞬間移動(ワープ)みたいなことは出来るか?」

『不可能です。総則(ルール)7には抵触していませんが、死滅回游の機能から著しく逸脱しています』

「だよなぁ」

 

 ダメ元で聞いてみたが、まあ流石に無理か。

 結界(コロニー)内を飛ばすのとは訳が違うからな。これが出来るんなら死滅回游はデスゲームから一転して物流インフラに早変わりするからマジで永続は可能なんだが、そう美味い話はないよな。

 

「駄目だな。ここからオレたちが出来ることなんてねえよ。諦めろ」

「僕は今から東京に向かいますっ!」

「分かって言ってんだよな? どれだけ急いだ所で着いた時には全て事後だぜ」

「分かってますよそんなことはっ!!」

 

 声を荒げる乙骨は、だからこそ理解しているのだろう。仙台(ここ)からオレたちに出来ることはない、と。

 単純に距離が遠すぎるし、瞬間移動できる憂憂(タクシー)も近くにはいない。

 ライブビューイングよろしく戦闘を傍観するか、今の乙骨のように間に合わないことを承知で移動を始めるかの二択であり、そのどちらを選んだところで東京での戦いになんの影響を及ぼすことはない。

 

「あります! ここから出来る事、あります!!」

 

 ――そう思ってたところに、まさかの三輪が第三の選択肢を提示してきた。

 

「乙骨さんの――なら――」

 

 正直、期待半分で話を聞いてみたが……なるほど。

 たしかにそれなら、ここからでも東京の戦いに介入できる。

 仮に原作と同じ状況で戦っているのであれば、宿儺をここで倒すことすら可能となるかもしれん。

 

 だがいいのか? もしかしたら本当に宿儺がここで負けてしまうかもしれない。

 せっかく江戸時代からここまで積んできた研鑽が、全て無用の長物になるかもしれない。

 両面宿儺を倒すために過ごした時間が、全て無駄になるかもしれない。

 

 ……いや違うな。あくまでオレの目的は、石流龍という男がどれだけ優れているかを証明することだ。宿儺を倒すのは、最強を証明する(もくてき)のための手段に過ぎない。

 

 オレ個人の欲求として、万全な宿儺をタイマンで倒したいというのは、ある。噛ませ犬として処理された石流龍(オレ)自身の禊という意味も含めて。

 

 ――だが別に必須ではない。最強が宿儺だから闘おうとしているだけで、最強の座が五条悟に移ったのならそっちに喧嘩を売ればいい。

 呪物期間含めて長く生き過ぎて、目的が少しブレてしまったようだ。

 

 そう考えると、別に宿儺がここで負けようが構わんな。

 この程度で終わるような最強ならば、結局その程度ってことだもんな。

 

 なによりも、三輪のアイデアは乗る価値があった(おもしろそうだった)

 

「――ということなんですが、イケそうですか?」

「……面白れぇ。乗ったぜ三輪ちゃん!」

「はい。試す価値はあります。やりましょう!」

 

 同意は一瞬。

 各々が今できることをやり始めた。

 

 三輪は巻き込まれないように、遠く離れてコガネによる連絡網を構築していき。

 オレは乙骨に並ぶように立ち、出来ることを見つけ冷静さを取り戻した乙骨と共に、掌印を組んだ。

 

「領域展開、呑天武座」

「領域展開、真贋相愛」

 ――仙台に再び、オレたちの領域が展開された。

 

 

 

 




三輪「得点(ポイント)譲渡の総則(ルール)追加するなら、参加特典(ログインボーナス)不必要だったのでは?」
石流「闇金ウ〇ジマくんの登場人物みたいな奴が一人も居ないのなら、他者依存の得点(ポイント)リレーもアリ」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。