「あ~あ、これで石流も終わりかぁ」
「そうだな。もう少し早く宿儺様の元へと向かうべきだったか」
羂索と裏梅は観戦をしながら、呪霊に乗って一路仙台
今から石流との戦闘へ助太刀に入るわけではない。主人がそれを望まないことを裏梅は知悉している。
問題としているのはその後の話。消耗著しい両面宿儺に向かって、高専陣営の者たちが襲い掛かってくることが予想される。
襲撃それ自体は問題ではない。例えどれだけ疲弊していようが、自分が知る最強であれば、ものの見事に返り討ちにしてしまうだろうと考えている。
ただ、石流という男を召し上がった後につまらない敵が膳に乗っては、楽しんでいた主人の興が削がれてしまう。そのことだけを懸念していた。
有象無象であれば手ずから処す。『浴』の準備の不始末については後ほど叱責を受ける。裏梅はその考えの下、移動していた。
「貴様は別に着いてくる必要はなかったのだぞ?」
「あのね? 私が居ないと君も移動できないってこと、分かってる?」
「
「全然良くないし……まあ私も向こうの方に用事があるから、もののついでに運んでいるだけなんだけどね」
「つまり貴様は高専の奴らとは……」
「頑張ってね~」
軽薄な態度にもはや怒りすら湧いてこない。
そもそも羂索など端からアテにしていないのだから、裏梅からしても問題とは思っていなかった。
「お?」
「ほう?」
裏梅のコガネは宿儺の
あたり一面廃墟へと変貌した仙台市内。
元より2匹の怪物以外、人っ子一人いない仙台
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両面宿儺の最終奥義。
ガソリンを代用して放たれた一発目、オレがそれを凌げたのは領域を展開していたから。
あらゆるエネルギーを喰らう領域効果があったおかげで生き残ることができた。
だから、何もない素の状態――領域無し、術式なしの状態で生き延びれるとは、露ほども思っていなかった。
如何に石流龍と言えど、熱と、圧力と、あと何かその他諸々で死ぬものだと。
――と、思ってたんだが、意外と生きてるもんだね。
流石は
ま、
……秤の真似をして
反転術式での回復でも戻ることのない、完全なる捨て身。さらに縛ることで出力を高めた反転術式を右半身にだけ集中させたおかげで、何とか命を繋いでいる。
多分ナナミンよりひでぇ有様なんじゃねぇかな。左半分だけ真っ黒な気がする。おいおい髙羽とペアルックじゃねぇか。
トータルで1.5ナナミンぐらいのダメージかな。これは死んどけよ、人として。
いかんな。くっそタバコ吸いたくなってきた。こんな瀕死の状態でも求められるニコチンちゃんってもしかしてヒロインか?
そういやなんで秤は左腕捨ててんのに普通に治ってんの? 完全に捨てたオレがバカみたいじゃん。
お。右腿のポケットに新品残ってた。頑丈だね、このズボン。取り出したはいいものの片手じゃ封が開けられない。
あー、なんか痛み感じなくなってきてプカプカしてきた。脳内麻薬って奴がドバドバ出てる感じ。痛みはプカプカ、タバコをプカプカ。
脳汁に、溺れ脳味噌、プカプカと。季語がねぇな。
やべぇ、思考がとっ散らかってんなー。
つーかあれだ。一回死んでるせいかな、もう死んじゃってもいんじゃねって思えてきたな。
このまま逝けたら、さぞ気持ちいいんだろうなぁ。
……まあ、そのまえに、
「ク、クハハ! クハハハハっ!! お前は一体どこまで頑丈なのだ!? 石流龍!」
「ハッ……見ての通り……ピンピンしてるよ……」
領域の中央に鎮座していた厨子。領域の崩壊と共に消滅していき、その内部から両面宿儺が現れた。
なーる。その内部がシェルターだったのね。お前も爆発巻き込まれてるやんけって原作でも疑問だった部分が知れてラッキー。
爆心地、瓦礫の町の中央で相対するが、その姿はなんとも対照的だ。
最後の領域展開が効いたのか、両面宿儺の呪力量は目算、最大値の2割以下。だがその玉体に一切の瑕瑾なし。
他方オレ。セルフセンターマンとなった、生きてるだけの焼死体。満タンだった呪力量も反転術式を限界超えてぶん回し続けたせいで一気に半分以下。
100人中100人が思うだろうな。宿儺の勝ちだって。
オレは違うけど。
「俺の奥義を喰らって生き延びた者など居らんというのに……クククッ、それを2回も耐えるとはな!」
一頻り呵々大笑とした後――。
「天晴だ。石流龍。その歯応え、生涯忘れることはないだろう」
――右下腕の貫手で心臓を貫かれた。
まるで原作でのラストのような軽さ。
自分の心臓を貫かれる瞬間がスローで見えたが、まるで他人事のように何も感じなかった。
腕が引き抜かれると同時に、右上腕の手刀が、首に迫る。
トドメの一撃が、オレに迫る。
放っておけば勝手に死にそうな男に、手ずからトドメを刺してくれるなんて、存外優しいな。
けど悪いな――オレはまだ、出し切っちゃいねぇんだわ!
すぐさま術式の回復を実行――脳に致命的な、回復不能なダメージが入るのが分かる。
「っ!」
背中から呪力を放出し、迫る手刀を潜り抜けて、宿儺の左側から抱き着く。これで左両腕を封じる。
同時に、心臓を反転術式で回復――できない。脳のダメージによるものか。
このままじゃあ心臓を回復できず、遠からず死ぬ――
脳へのダメージは結界術を司る部分にまで及んでいる。
簡単な結界術しか張れず、まともな領域展開を行うことは不可能だろう。
それは分かっていた――
無論、片腕では掌印を組めない――
「領域展開、吞天武座」
「っ! 『捌』!」
宿儺の右両腕がオレの頭を潰すように執拗に殴り、術式を回復させたのか、超近距離からの『捌』が連発される。
反転術式の使えない今、『捌』は致命傷になる――
角度と位置が悪いからな。呪力強化を最大限にすれば、脳を殴り潰すのは間に合わない。
「はあぁっ!」
「うぁっ……」
限界まで頑張ったが、これ以上もう無理。宿儺が拘束を外し、閻魔天印を組む。
無理をした結果、ほとんど強度のない外殻だからな。内側からの呪力攻撃は吸収できるが、外部からの攻撃では多分すぐに壊れる。
でも、ちょっとだけ遅かったな――
領域そのものを捨てる縛りを結んだから、これが縛りとしてどれほどの価値を持つかは知らんが、どうせ使えなくなるんだ。とにかくぶっこめ。
あとは右手に握りしめた、この
「っ! 鵺・渾――嵌合獣・顎吐!」
いくぜ宿儺。これがオレが放てる、最後の一発。
「――極ノ番、