石流龍(石流龍じゃない)の肉体を手に入れた   作:和尚我津

27 / 27
本日2話投稿のうち2話目、かつ最終話となっております。


それぞれの未来 ~裏~

 東北地方のとある山中。人が踏み入れないであろう中腹の洞窟。人がかろうじて入れる程度のスペースしかなかったそこは今、雪崩呪霊の生得領域が展開し現実以上の広さを確保している。

 羂索が縛りに縛った結果、原作で陀艮や少年院の呪霊が展開していたような、ただそこにあるだけの領域となっている。

 中にいるのはオレと雪崩呪霊、そして羂索の三人のみ。

 声をかける羂索には面倒そうな顔が張り付いていた。

 

「確認だ。君を呪物化したのち、この雪崩の自然呪霊を使って、残った君の遺体を冷凍保存する。一つ、未来で受肉した君が宿儺を倒す。二つ、私が君の術式に興味を抱く。この二点を達成した場合、私は保存した遺体を解凍後、その体に乗り移る。先の条件を達成できなかった場合、君の遺体は適当に処分してよい。これが縛りの内容でいいかい?」

「両者はこの契約に関する一切を他者に開示しない。それも加えてくれや」

「やれやれ。呪霊確保に協力してくれた恩はあれど、そこまでやってやる義理はないと思うんだけど?」

「飲まないのなら此処で殺すぞ」

 

 ダメなら仕方ない。羂索もその程度だったということで、ここで原作を終わらせよう。

 

「君じゃあ私を殺せないと思うけどねぇ?」

「戦闘用の肉体じゃねえんだろ? それでもなお、オレ相手に勝てると?」

「……まったく、私の術式のことと言い、一体誰から聞いたのかな?」

「強いていえば、単眼猫から」

「なんだい、その呪霊は?」

 

 残念。人間なんだよなぁ……いや待てオレ本人見たことないし、呪霊である可能性がワンチャン?

 

「しかし、一体何のためにここまで縛る? 例え全ての条件を達成したとて、私が君の遺体を利用するだけ。それに何の利益があるのかな?」

「利益はあるさ。オレにとってはな」

 

 オレの目的は極めてシンプル。期せずして奪い取ってしまったこの石流龍(オレ)(石流龍じゃない)を噛ませ犬にさせないこと。この男の真価を世界に、ひいては第四の壁の向こうに居る読者や作者に示すこと。

 

 そのために、両面宿儺という最強を倒すと決めた。

 

 けど思ったわけよ。宿()()()()()()()()()()()()()()

 術師には呪術師と呪詛師、この2種類が居る。この()()で存在感を出すべきではないかと。

 一般的には味方サイドに当たる呪術師として両面宿儺という最強を倒すことで、石流龍(オレ)のスゴさを示すだけでは片手落ち。明確な敵役として呪詛師(敵サイド)に回った時にも活躍してこそ、やっとオレが望んだ真価の証明になる。

 だが何の理由もなく闇落ちなんてしてしまったら、それは石流龍(この男)の価値を損なうことになる。理由なきキャラぶれはキャラを殺すぞ。夏油傑? アレは理由ありまくりじゃん。

 

 名誉を損なわず敵役に回る方法は何かないのか? と考えた末に辿り着いたのが、目の前のコイツ。正確には()()()()()()()()()()()ことだった。

 ここで重要なのは敗死して肉体を奪われたわけじゃなく、4()0()0()()()()()()()()()()()()という点。これならば石流龍の瑕疵にはならない。むしろ最悪の呪詛師が遺体を長い間隠し続け、秘密兵器として扱っていたという事実が、石流龍の価値を更に高めることに繋がるだろう。

 

 最強と謳われた両面宿儺を倒した、真に最強の呪術師。

 その生前の肉体を羂索という黒幕に操られて現れる、最悪にして最強の呪詛師。

 

 呪術師の石流龍(オレ)と呪詛師の石流龍(けんじゃく)。味方と敵の両方が矛盾なく存在する、最良の手法ではないだろうか。

 羂索が呪詛師()として頭角を現し始めたときには、呪術師(味方)であるオレは役目を果たしてこの世を去っているだろうが、別に構わない。既に肉体を奪ってしまっているんだ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。百年後の荒野で立っているのが自分である必要はないって、それ原作で一番言われてるから。

 大事なのは()()()()()。それだけだ。

 

 完璧な計画と言っていいだろう。これで石流龍のスゴさを、余すことなく伝えられる。

 

「その利益が何かっていうのは、教えてくれないのかい?」

「今言う必要はないだろ。どうせ未来で知ることになる」

 今ここで馬鹿正直に伝える必要はない。成功すれば羂索が肉体から記憶を読み取って自然と知るんだから。

 

「お前がオレに興味を抱かなければ意味がねえ縛りなんだから、気にすることはねぇだろ? 賭けとしては相当そっちが有利だぜ」

「確かにね。正直言えば私は君の術式を全く評価していないよ。興味が微塵もそそられない面白みのない術式だ。術式反転で周囲の呪力を吸い上げることは確かに脅威だが、その程度。呪術としての可能性をまるで感じないし、だから賭けだとしても正直負ける気はしない――それはそれとして、不明瞭な他人との縛りは嫌いなんだ」

「ハハハッ! 散々な言われようだな。お前の掌が返されることを祈っとくぜ」

 

 宿儺撃破はマスト。あとは未来のオレがコイツに興味を抱かせるかどうかだが、『呪力の放出』という術式が狙い通りの拡張を遂げるなら、オレの術式に興味を抱く可能性は高い。

 

 常人なら思いついてもやらないが、()()()()()()()()のが羂索という存在。まさに最悪の呪詛師に相応しいムーブ。

 そんなヤバい奴の前で石流龍の術式のスゴさ……いや、ヤバさを示せれば、オレの想像通りの方法で使おうとするはず。もしかしたらそれ以上にヤバく使ってくれるかも。

 

 

 羂索の興味が引けないのであれば……石流龍(オレ)もその程度の男だった、という話だ。

 

 

 そんなこんなで、羂索との話し合いは上手くいった。最終的には脅したけど。

 さて、この時代でできる事は全て終わった。

 羂索が乗ってくれるかは不明だったが、ちゃんと望み通りの縛りを結べたことだし、下準備としてはボチボチ。

 紆余曲折はあったがここまで漕ぎ着けることはできた。

 であるならば、あとは呪物化して時を待ち、成すべきことを為すだけだ。

 いざ行かん、平成の未来に! 原作の世界に!

 ……その前に修行パート、行っとくかぁ!

 

 

 

 

 

 

 これにて、石流龍(かれ)の記憶は終わり……か。

 

 

 

 ……クッ! クククッ! アーハッハッハ!

 いやいやいや! こんなのもう、笑うしかないでしょ!

 まさか君の正体が異世界からの転生者だったなんてね! どこの『なろう』だよ!?

 仮に『なろう』だとしても、そこはスライムとかにしときなよ! 転生したら石流龍だった件についてとか、それ絶対流行らないから!

 あー、おなか痛い。

 

 彼の肉体と完全同化するまでの暇つぶしがてら記憶を読み込んでいたが、その内容は想像だにしていなかった。

 まさか私たちが生きているこの世界が『呪術廻戦』とかいう漫画で描かれていたものだったなんて、そんなの誰が予想できるだろうか?!

 

 この世界は上位存在たちの遊び場である……なんて想像をしたことがないわけじゃあない。だがそれはあくまでツマラナイ哲学的な思索に過ぎなかった。証明できないことについてアレコレ時間を使うのは非効率の極みだしね――だというのに! まさかこんな形でここが漫画の世界であることを証明されるなんて、予想できるわけないじゃないか!

 しかも私たちの創造神が単眼猫ってなにさ! 

 というか原作の私の死に様ちょっと酷くない!? ボーボボからのお笑いバトルの果てに、って黒幕の最後としてはどうなの!? 超面白そうでちょっと羨ましいぞ原作の私!

 

 

 ああ――全く以って愉快だっ! インスピレーションが溢れ出して止まらない!

 

 

 死後の世界とか魂の輪廻とか、そんなチャチなものじゃない! 彼の魂は、それらすら超えたより大きな枠組みが存在することを、この世界より上位の世界の存在を証明した!

 それだけじゃない! 彼の魂が、漫画(こちら)の世界に流れこんできた、すなわち干渉できたということは、反対に読者(あちら)の世界に干渉もできるということ!

 読者(あちら)の世界に行けるのか? もっと別の魂を漫画(こちら)の世界に呼び寄せることは出来るのか? はたまた全く別の世界に行けるのではないか?

 不可能ではない! 第四(せかい)の壁を跨ぐ扉は、必ず存在するのだから!

 

 何が必要となるか見当もつかないが、エネルギーの確保は必至。上から下に降りてきた彼はともかく、私が下から上に昇るには途轍もないエネルギーが必要だというのは目に見えている。

 

 このエネルギー確保において、彼の術式は極めて有効だ。

 

 正直見縊っていた。面白みのない術式だと。

 だが今は違う! 彼の予想通り、私はこの術式に可能性しか感じていない!

 術式の拡張により、呪力とエネルギーを等しく扱うことで、最終的には物質を呪力(エネルギー)に変換し放出することが出来る。

 

 

 つまりは彼の想像通り――()()()()()()()()()()()()()()()()()()と言うことだ。

 

 

 僅か1グラムで原爆の1.5倍もの呪力(エネルギー)を生み出せるのなら、地球質量を全て呪力に変えたときの呪力量は、どれほどになるのだろうか!? 想像するだけでワクワクする!

 こんな面白そうなこと、試さずには居られないだろっ!

 

 空前絶後の、まさに天文学的な呪力量。それがあれば一体どのようなことができるのだろうか!? 読者(あちら)の世界への扉を開けることも出来るかもしれない! 人類そのものをより上位の存在として進化させられるかもしれない! いや、地球の呪力を全て使った、地球総呪霊とでも呼ぶべきものを作ってみるのもアリか!?

 今思えば、一億総呪霊程度で喜んでいた自分が恥ずかしいよ、全く。

 地球全ての呪力化となると流石に一朝一夕では不可能だろうから、何百年もの下準備は必要だろうけど、それはいつものことさ。いや、天元の結界術も利用できることを考えると数十年単位で済むかもしれない。

 

 そうそう! 忘れちゃいけないのが宇宙人!

 

 宇宙人!? 宇宙人ってなんだよそれ!? 斜め上過ぎるだろっ! 『呪術廻戦』とかどう考えてもダークファンタジー作品じゃん!? そこによくそんなSF要素ぶち込めたな!? よくやった単眼猫! ドンマイ原作の私!

 

 第1話時点で彼が亡くなったのか、作品の続きの記憶は存在しないが、そっちの方が楽しめるから私的には助かる。

 まさか地球を飛び出せる機会に恵まれるとは。やっぱり人間、長生きしてみるもんだね。

 宇宙船の技術がどれほどのものかは分からないが、他天体に行けることは確実。

 となると、地球以外の星も呪力に変換することも十分視野に入れられるな。

 いや、更に術式を拡張していけば、この宇宙そのもの(真空エネルギー)を呪力に変換できるやも? 果てにはビッグバン染みた事を起こすことも……? 改めて物理学を学びなおす必要が出てきたな……!

 

 地球の外。宇宙の外。世界の外。

 ああ、夢が広がっていく。

 千年生きてきて、これほど楽しみに思ったことは初めてだ。

 

 心から感謝するよ。読者(あちら)の世界から流れ着いた、名も知らぬキミ。

 

 他ならぬこの私が保証しよう。石流龍はこの世の何よりも優れた存在であったことを。

 代わりと言ってはなんだが、キミの望んだとおり今度は敵役として、石流龍(この男)の凄さを世界に、いや宇宙に知らしめてやろう。

 

 皆も待っていてくれ。私は必ず読者(そちら)の世界に行ってみせるよ

 

 おっと。やっと同化が完了したようだ。

 身体を延ばし調子を確かめるが、万事恙なく齟齬もなし。肉体面・呪力出力共に夏油傑より明確に上。流石は両面宿儺にすら勝利した個体。彼の言う通り極めて優秀。ありがたく使わせてもらうとしよう。

 この瞬間も読者(きみたち)から見られているかもしれないからな。折角の第一声は……そうだな。ここはキミが石流龍として始まった時と合わせてみようか。

 

「――パンパカパーン! 私は石流龍(石流龍じゃない)の肉体を、手に入れた!」

 

 ああ全く、石流龍(キミ)は本当に、最高だよ。

 

 

 ――史上最強と謳われた両面宿儺の術式が刻まれ、己が使命を果たさんとする『不老にして最強の呪術師』虎杖悠仁。

 ――史上最強を下した男の肉体と術式を手に入れ、己が欲望のままに突き進む『不滅にして最凶の呪詛師』羂索。

 遠い未来(68年後)両者(親子)は文字通り地球の命運を掛けて激突する。

 

 だがそれはまた……別のお話。




これにて本作は完結です。
番外編も少しだけ書きたいと思っています。
感想には全て目を通しております。暖かい声援や厳しいご意見など、沢山のお声をありがとうございます。
誤字報告も誠にありがとうございます。
重ね重ねになりますが、応援ありがとうございました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

禪院らしい呪術師(作者:円字L 美異津)(原作:呪術廻戦)

禪院家に生まれた麒麟児。呪力量は莫大、出力も文句なし。でも術式は微妙。▼性格は傲慢、差別主義、でも努力は怠らない。▼目標、"最強"


総合評価:4091/評価:8.23/連載:3話/更新日時:2026年01月31日(土) 22:20 小説情報

殴る方の加茂(作者:分真鷲太郎)(原作:呪術廻戦)

パッとしない方のノリトシ君を、魔改造してみました


総合評価:5656/評価:8.62/連載:5話/更新日時:2026年05月14日(木) 19:00 小説情報

努力しない禪院、だが、最強(作者:禅院炉)(原作:呪術廻戦)

ボクは特別なんやって。▼相伝の術式に、一級術師20人分の呪力量。それを操る才能もあって、百回に一回ぐらいの確率で黒閃を出せる。努力とか雑魚のすることやね。直哉君は顔だけのカスや。


総合評価:5134/評価:7.63/連載:33話/更新日時:2026年03月26日(木) 01:00 小説情報

吐瀉物に愛を込めて(作者:マウスブン)(原作:呪術廻戦)

五条が最強に成ったあの夏、夏油傑は絶望の淵で気付く。「呪霊が不味いなら、調理すればいい」と。そのコペルニクス的転回が、悲劇の運命を斜め上に変えていく。呪いを捌き、スパイスで煮込め。


総合評価:7103/評価:8.83/完結:9話/更新日時:2026年01月20日(火) 21:30 小説情報

僕は強くない。でも、僕は強い。(作者:Mr.♟️)(原作:呪術廻戦)

禪院の血筋です。▼オリ主物、地雷だと思ったら▼そっとブラウザバックお願いします。▼オリ主:禪院 雅


総合評価:4650/評価:8/連載:12話/更新日時:2026年05月14日(木) 00:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>