石流龍(石流龍じゃない)の肉体を手に入れた   作:和尚我津

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次話は翌日18時ごろ投稿予定です


期待しても、よさそうだな

 オレが石流龍(オレ)のために、両面宿儺を喰らう。そう決意した。

 決意したが、流石に今のスペックじゃあ、誤用の方の役不足だ。

 

 思い描いた最強の石流龍(オレ)に至るには、まだまだ足りない物が多い。

 

 呪力操作および効率の向上。呪力出力と瞬発力の強化。術式の拡張と研究。戦闘経験の蓄積。黒閃による呪力の核心。結界術の研鑽。領域展開や極の番の習得。簡易領域や落花の情といった他の領域対策も身につけておきたい。可能であれば魂の輪郭の知覚もしておきたいが、流石に欲張りすぎるか。

 

 身に着けるべき、習得しておきたい数多のスキルたち。中でも必須と言える物を一つ上げるのなら、それは間違いなく()()()()だ。

 宿儺と戦うのならば無傷であるのは不可能。コレなくして宿儺を倒すなど夢のまた夢だ。何より、

 

 そして、この先には……。

 

 とにもかくにも、まずは反転術式の習得だ。

 

 だが一番の問題は――。

 

「覚えようと思って覚えられるものではない、っていうのがなぁ」

 

 作中でも反転術式は限られた人間にしか使えない高等技術であるという点。

 習得は個人のセンス頼りであることから、技術とも呼べない代物かもしれない。

 作中最強格はほぼ全員使えていたが、むしろ使用できない者は最強格たる資格がないと言った方がいいな。

 

 拡張術式次第ではあるが、使えないまま最強に至ることも恐らく可能。アリっちゃアリだが『反転術式が使えないのに最強とか(笑)』と嘲笑う読者共(やつら)の顔が目に浮かぶ。

 やはり反転術式はマスト。

 

 あの五条悟であっても、死の淵で呪力の核心を掴んでやっと習得した能力。

 一朝一夕で身に着けれるものではないだろう。

 

 焦るな。まだ時間はたっぷりあるのだから、気長に習得していけばいいのだ。

 

 ――そう、思っていた。

 

 

******

 

 

 数えで15になった。

 反転術式、未だ習得ならず。

 

「いやムズ過ぎんだろ!」

 

 (マイナス)(マイナス)を掛けて(プラス)にする。

 

 理屈は分かる。スゲー分かる。中学の数学で習うレベルだからなぁ……。

 だが呪力に呪力を掛けるっていうのはどういうことだぁ!?

 呪力に呪力をぶつけても呪力にしかならねーだろうがぁ!

 舐めやがってこの概念、超イラつくぜぇ……!

 

 というように、完全にギアッチョ案件であった。

 

 輪郭が掴めてないようで掴めてない。

 進捗で言えば、「手応え? まぁ……あるかも?」くらい。

 人によっては手詰まりと表現する奴も居ないことも無いこともない、という感じだ。

 

 

 一方、他の部分ではそれなりに成長している。

 呪力の基礎的な部分はかなり上昇した。特に作中でも売りであった呪力出力と、赤ちゃんの頃から鍛えていた呪力操作の向上は著しい。

 術式に対してもかなり理解を深められたと思う。ある程度の術式拡張も出来た。

 

 結界術の研鑽も順調。簡易領域はパクった……もとい見て覚えた。それを足掛かりに領域の概要も掴んだ。たぶんもうちょっとで展延まではこなせそう。構成要素の問題から見送ったが、領域展開も可能という確信はある。

 ただし落花の情は使える奴が近くに居ないから習得できていない。仕組みとしては呪力へのプログラミングらしいんだけど、呪力へのプログラミングってどういうことだぁ!?(二度目のギアッチョ)

 

 戦闘経験の蓄積と黒閃についてなんだが……こちらはまあ微妙。

 

 というのも、やっぱこのボディが優秀過ぎるんだよな。

 フィジカルがそもそもゴリラだし。呪力で強化したらスーパーゴリラだし。だから近接戦は大の得意だし。遠距離戦もエゲツねぇ呪力出力と術式のおかげで当然ながら超得意だし。攻撃を喰らっても呪力強化が乗ったイカれたフィジカルのおかげで今の所ほぼノーダメだし。今のオレ完全にゴリラ廻戦してるわ。

 

 ぶっちゃけ苦戦した経験が殆どないんだよね。

 特級相当の呪霊と1回戦ったことあるけど、それすら『ちょっとだけ手強かったな、ちょっとだけ』という感じだ。負け惜しみから出てきたセリフならまだ良かったんだが、ガチのマジで言葉の意味そのまんま、というのが大問題。

 手こずらないということは歯応えがないと言うことであり、引いては戦闘時間が短くなって、黒閃を撃つチャンスも結果的に減る。という状況になる。

 

 黒閃は鍛錬でも出せるらしいんだが、今度はオレと鍛錬できる実力者が傍に居ないことが問題に。

 量産型術師が相手の場合、100%という高い確率で術式不要の無為転変を発動させて相手を挽肉に変えてしまう。流石にアカンでしょ。

 

 つまりは手詰まり。

 

 これはマズい。非常にマズい。

 今のオレに五条悟ほどの実力はない。間違いなく勝てない。だというのに五条悟のような境遇に陥るとか、これは由々しき事態だ。戦える相手が居なくなった状況は完全に戸愚呂弟。後に仙水や雷禅が控えているという意味でも。

 

 原作曰く『骨のある相手とも戦った』らしいが、それは一体どんな奴で、いつ戦ったのかも不明。

 何より、それが今のオレを満足させてくれる相手か――呪力の核心を掴ませてくれる相手なのかは分からない。

 分からないが、作中で彼が反転術式を使っていなかった以上、彼と同じような人生を歩んだとて反転術式は身に付かないだろう。

 

 畢竟、今のオレに必要なのは、原作の石流龍が経験していないであろう、生きるか死ぬかの瀬戸際に追い込まれるような、強者との戦闘経験だ。

 無論、反転術式は死の淵まで追い込まれれば必ず使えるようになる、という代物ではない。五条悟と同じような目にあったからと言って全員が習得できるわけではないだろう。

 だがそこまで追い込まれて習得できないのようであれば、元より宿儺に挑む資格なし。

 オレが石流龍という男を見誤り、過大評価していたという笑い話だ。

 

 どうせこのまま進んだら噛ませ犬で終わるんだ。

 ならば、今死んでも問題ないだろ。

 

 故に、オレは石流龍(オレ)が戦わなかった、あの男と戦うのだ。

 

「やあアンタ。腹は減ってないかい? 付いてきなよ……満足させてやるから」

 

 一見、ただの浪人。

 腰に差すべき二刀は一振りのみで、代わりに棒を持っている貧乏侍。

 時代が時代。いい年しても禄にありつけない、一山いくらの冴えないおっさん。

 何も知らない奴が、何も見えない奴が見たら、気にも留めない立ち姿。

 

 ――だが、立ち昇る呪力が、そこに込められた圧が、否が応でも伝えてくる。

 触るなキケン、()()()()()()

 

 だからこそ、触れる価値があるのだ。

 

「……ふむ。期待しても、よさそうだな」

 

 生憎、この時代の名前だと馴染みがないからな。

 内心こう呼ばせてもらうぜ。

 

 ――雷神、鹿紫雲(かしも)(はじめ)

 

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