「いやー、すぐに見つかってラッキーだわ。派手にやってくれてて助かったぜ、マジで」
時は11月1日が深夜4時過ぎ。つまりは死滅回游が始まってから4時間程度の序盤も序盤。そこで目的のブツが見つかったのはまさに幸運。
練習台と得点源、ゲットだぜ!
戦利品となるビニール袋もついつい振り回すのも仕方ないってね。
まあいきなり河川敷で怪獣大戦争おっぱじめてるんだから、見つけられない方が難しいっちゅう話なんだけど。
ルンルン気分でタバコに火を灯す。
原作で吸ってた銘柄が分からなかったから、とりあえずコンビニにあるのは全種類持ってきたけど、吸い続けていればいずれ当たるでしょ。
「貴様、喰ラウ。必ズ、殺ス」
右手のビニール袋から怨嗟の声が届く。
即座に中身ごと近くの壁に叩きつける。
「喧しいんだよクソデケェ害虫が。それ以上病原菌撒き散らしてオレのQOL下げようとすんなら今すぐ祓うぞ」
途端、うめき声すら上げなくなった。
おっとイカンイカン。このままじゃマジで死んじまう。
江戸時代から考えていた死滅回游ライフハックの為だ。我慢しろオレ。
「グッ……コロ、ス……!」
「おう良かった生きてた。まあこれからしばらくの間――お前自身はほんの少しだが、一緒に生活することになるんだから、仲良くやろうや――黒沐死」
さあて、ゴキブリ式無限得点バグ、始めるぞ〜!
******
11月9日。高専地下、薨星宮。
天元とその下に集まった虎杖悠仁や伏黒恵といった術師たちが、死滅回游攻略に向けて話し合っていた。
『
方針が固まり各々が動き出そうとした、まさにその瞬間、虎杖に憑いていたコガネが場違いなベルを鳴らし、追加された
未だ
この
「これなら、人を殺さずとも点を増やすことができるんじゃ?」
「その通りだが、実際に活用できるかというと、かなり厳しい
伏黒の言葉に疑問符を浮かべる虎杖を見て、兄――脹相が助け舟を出す。
「
「羂索が呪霊をいくらか
「そもそも、術師同士の殺し合いをさせたいのであれば、一級呪霊を参加させる意味は薄いですよ。覚醒型であれ受肉型であれ、蟲毒であれば自然と強者だけが残っていきます。殺し合いを活性化させるのが狙いだとしても強い術師であれば一級呪霊は敵になりませんし、
九十九由基、乙骨憂太という二人の特級術師も、
「じゃあなんで追加した奴は、わざわざ100点も消費してこんな
「狙いはわかりません。案外、人を殺さない
「だったら、そいつとは協力関係が結べるんじゃないのか?」
禪院真希の疑問に伏黒は希望的観測を提示し、虎杖はさらに希望を重ねる。
しかし、伏黒はその希望に否を突き付ける。
「分かって言ってんだろ虎杖。こいつは
「……っ」
「
伏黒はあえて言及しなかったが、術師ではなく非術師を対象に点を稼いだ可能性もあった。数は非術師の方が多く、何より
術師のみを狙った相手。非術師相手に荒稼ぎした相手。
どちらも危険であるが、より『ヤバい』のは後者であろう。
「追加された
リンゴンリンゴン。
コガネがまたしても鐘を鳴らした。二回もだ。
『
『
新たに追加された二つの
「コガネ、この新しい
『おうっ! あったりめーだろうが!』
「……伏黒、これって、そういうことだよな?」
「……ああ、そういうことだな」
0時0分を超えると点数が変動する、新たな
これにより殺し合いを強制させる
事実上、
「でも、なんで参加料の方の
「死滅回游の永続性と呪術的な足し引きの問題だろう。1つ目はあまりに
最終的に±0にすることで呪術的な問題をクリアしたのだと天元は語る。
へぇーと感心した声を上げつつ、どこかホッとした雰囲気を放つ虎杖を横目に、伏黒は思考を走らせる。
「乙骨さん。どう思いますか?」
「……そうだね。最初に追加された
同じく考えを巡らせていた乙骨と意向をすり合わせる。
「何か気になることがあるってのか、憂太?」
「……真希さん。さっき追加された
「あぁ? そりゃタイミング的には同じ
真希の気づきに、九十九が同意するように頷く。
「居るね。確実に。一人で300点も稼いだ
「なるほどな。方法は分からんが、一つ目の追加
脹相の言葉が全てだった。
彼らは知った。
その者は同時に、僅か十日弱で
敵か味方か。善か悪か。正体がまるで分からない、極めて危険な術師の存在を、彼らは知った。
「その術師と遭遇した場合、どうなるのかは私にも分からない。殺し合いの
それでも行くか?
言外の問いに、虎杖たちは間髪入れず是を返した。
危険な術師が居ることなど百も承知。例え想像すら及ばない危険が待ち受けていたとしても、彼らがやることは変わらない。
彼らは
そこに何が待ち受けていようとも。
危険極まる術師の存在を知りながらも、彼らは怯むことなく、むしろ一層強く決意を抱いたのだった。
――彼らが言う危険な術師は今、仙台
******
「ったく、お前が
『特級呪霊の撃破を確認。5
このデケェだけのクソ害虫が。生意気にも歯向かってきやがってよぉ……!
呪霊×害虫とかいうクソにクソを掛けたような存在如きが。反転術式よろしくプラスの存在にでもなったつもりか? 烏滸がましんだよ!
苛立ちをそのままに頭を蹴り飛ばす。正の呪力付きで。
当然、特級だろうが呪霊である以上耐えられるはずもなく、そのまま消失反応を出しながら消えていく。
子供となる呪霊のみを残して。
そいつの目の前に、ちぎり取った右腕を置くと、間髪入れずに喰い始める。まだ呪胎でナリは小さいがそこは呪霊。あっさりと全てを食い尽くす。
反転術式で腕を生やしつつ、ゴキブリ呪霊がすくすく育つ気色の悪い光景を眺める。
これこそがオレ考案のゴキブリ式無限得点バグ。
初日から最高に最低な永久機関を完成させ、これまで
必要となる
……だというのに、このゴキブリ糞呪霊がぁ……っ!
殺されるのはもうゴメンだとばかりに命令を無視して、その結果縛りを破ったペナルティで消滅しやがった!
縛りによる自死は撃破に含まれず
幸いなのがこのゴキブリ呪霊は、本当の虫のように機械じみた本能で動いているという点だ。
意思疎通は殆ど出来ないが、目の前に餌があったら喰うし、子供を作れるなら作る。
だからn沐死が命令無視して自死した時も、(n+1)沐死の呪胎は確保していた。
されど従来のままやろうとしたらn沐死の二の舞になるはず。
十分なポイントは溜まったと思うが、念には念を入れたいところ。
ダメ元でコガネに呪霊撃破による
これはこれで呪霊に不利なルールでは? と思ったが、
とはいえ無駄に
でも雑魚の頭を蹴り飛ばしても全く爽快感がないのよな。やっぱり。ついでに言えば呪霊といえどゴキブリを触ったことでテンションはさらにダウン。なんだコイツ呪いか? クソがよ。
「あ、あの……石流さん」
「あぁん? どうかしたか?」
苛立っている最中に話しかけられたら、そいつにもイライラを向けちゃうことってあるよね。
たぶん見るだけで人を殺せそうな視線だったのだろう。その男は怯えを隠そうともしない。
この仙台
職務のために初回限定の脱出機会を不意にして
真面目に働く奴は嫌いじゃないんだけどね。
「さ、先ほど
「ああ。オレが追加した。それが?」
イライラしている姿はクールとは言い難い。石流龍の価値を下げる行いだ。反省反省。
こういう時は一服するに限る。石流龍はクールに吸うぜ。
「……い、以前
あー、言ったねそんなこと。
メインキャラ以外のこととか正直あんまり気にしてないんだけど、今のオレは味方サイド、いわば光の術師ムーブをするって決めてたから、それっぽいこと言ったんだったわ。
「ああ。それがどうかしたか?」
「……組織内部の術師の方から、その件は一体どうなったのかという問い合わせが、多数来ています」
「はぁ。さっきの
なんだそりゃ。メンド臭い。
人を殺す覚悟もない雑魚がなんかイチャモンつけてきてたようだ。術式剥ぎ取られて死ぬのは術師だけだから、別に死んでもいいんだけどなぁ。
後天的といえど術師になった奴はやっぱダメだな、性格が。
「まだあと10日ぐらい残ってるだろうが」
「もう10日しか残っていない。彼らはそう受け止めています」
宮本は名前すら聞いたことないモブ以下補助監督だが、怖気づきながらも言うべきことはビシッと言ってくるのは美徳だな。
にしてもモブ術師どもめ。あと10日もあるのにビビるのは余りにメンタルが小市民過ぎるだろ。
まあ烏鷺やらドルゥヴみたいな好戦的な
そんな奴らの面倒も見なきゃいけないとはな。光の術師ムーブをするのも楽じゃないぜ。
ガン無視して見捨てるってのも選択肢としてはあるが、それもまた難しい。
オレは
石流龍は、一般人を巻き込んで殺したとしても気にしない。戦闘中に迷いが生まれることもないだろう。
オレも同じ……つもりではある。実際、巻き込んで殺したこともあるし、それに対して何か気にしたつもりもない。必要とあらば殺すことも辞さない。じゃなきゃ石流龍(本物)の魂を磨り潰すことなどできん。
だが、もしかしたら、万が一。
瞬き、一瞬、刹那より短い時間であったとしても、オレに迷いが生じる可能性はある。元は一般人のオレのメンタルを、オレはそこまで信用していない。
そしてオレが今から戦おうとしているのは、その僅かな気の迷いが致命的な隙になりかねない、最強の術師。
正直。戦闘中であれば気にしない、または気が回らない可能性もある。というか目算ではそちらの方が比較にならんほど大きい。
だが禪院家のツラがアカン人みたいに、一瞬だが気を取られる可能性も、0ではない。
つまりはどちらもありうる。それだけだ――だったら、さっさと
やっぱ理想的なのはタイマンなんだよね
「まあいいぜ。ちょうどその
「あ、ありがとうございます! 石流さんっ!」
「いいからさっさと持ち場に戻りな。物資は限られてんだ。テメェが上手く差配しなきゃ飢え死ぬ奴らも出てくるかもしれねぇぞ?」
「はい! あの、その、重ね重ねありがとうございます!」
「いいから去ね去ね」
手で払うようにして宮本を外に追い出す。なんども振り返りながら、ペコペコと頭を下げまくる。その姿はまさに営業マンそのもの。そのリーマンメンタルで呪術師はやっぱ無理があるだろ。
補助監督っつうのは、なんというか『普通』だよな。殺し合いは無理。ただ見えない聞こえないと言い張って知らんぷりも出来ない。どっちつかずの中途半端。つまりは普通。
呪術師なんざ『殺し合い上等』か『オレが良ければ全て良し』のどちらか、若しくは両方の性質を持ち合わせてなきゃやってられんぞ。
つまりは宿儺と羂索、そして五条悟が呪術師としての鑑ってことだな。どれ選んでも
まーいっか。やれやれ、それじゃ
お~いコガネ~。これこれこういう
……え、ダメなの?
え? 両方を一つの
……よーし! これで公言通り、術式剥ぎ取りデスペナを無効化する
……そのために200
クソがよ。
次話は翌日18時ごろ投稿予定です。