ヒアンシーが提案した「七夕」の催しは、短冊に願いを書き若木へ結ぶという形で黄金裔たちへ共有された。キャストリスの静かな賛同を皮切りに、ケリュドラの許可、アグライアやセイレンスらの実務的提案が重なり、企画は一気に現実へと傾き始める。
一方でファイノンの沈黙と若木の存在には、誰も言葉にしない微かな懸念が滲む。夢は語られるだけのものから、具体的な準備へと移行してゆく。
願いを結ぶための祭りは、もう絵空事ではなかった。紙の厚み、紐の強度、会場の導線、読み書きの補助、秘密を守るための規則までが次々と挙がり、星の降るドームの広間には、朝の澄んだ光と同じくらい明るいざわめきが満ちている。
その賑わいから少し離れた場所で、ファイノンは若木のそばに立っていた。柱へ寄りかかるでもなく、腕を組んで様子を見るでもなく、ただ自然にその場にいる。薄い葉陰が白い髪へ落ち、葉の揺れに合わせて頬の上を細く動く。その姿は、嵐のあとに波の名残だけを抱いた静かな海面のようで、遠目には揺らぎなど何ひとつないように見えた。
彼は皆の話を聞いていた。耳だけでなく、視線の動きや、時折わずかに上がる口元で、誰が何を言ったかを一つずつ受け取っていることが分かる。
キャストリスが秘密の願いについて話したときには瞼をゆっくり伏せ、ケリュドラが規則の必要を挙げたときには、納得したように小さく頷いていた。サフェルが仕事が増えていると騒げば、笑いをこらえるように肩の線がわずかに緩む。
それはあまりにも普段通りだった。少なくとも、広間の多くの者にはそう見えた。若木を運んだ直後の呼吸の揺れも、ヒアンシーが胸の奥へ記録した微かな違和感も、朝の光と賑わいの中へ薄く溶けてしまったようだった。けれど、消えたのではない。ただ、見えない場所へ沈んだだけなのだと知っている者もいる。
キャストリスは時折、会話の合間に彼の方へ視線を向け、アナイクスは本棚の前で腕を組みながら、若木とファイノンを同じ思考線上に置いて観察しているようだった。
それでも、話し合いは進めなければならない。祭りが本当に始まるなら、誰かの不安だけを中心に据えて止まることはできない。むしろ、こうして皆が仕事を分け合い、仕組みを整えていくことこそが、誰か一人に全てを背負わせないための手順になる。ファイノンはその流れを見ていたからか、若木の鉢から指を離し、柔らかな調子で会話の輪へ声を投げた。
「賛成票が、キャストリスさんの一票、カイザーの一票、アグライアとセイレンスさんとサフェルさんで三票だね。トリビー先生たちは……三人だけど、まずは代表で一票かな。反対意見や、何か改善点があれば今のうちってことになるけど、モーディスは?」
何でもないような声音だった。議場を仕切るための硬さも、英雄として場を導く重さもない。ただ、散らばり始めた意見を拾い、数を並べ、次に聞くべき相手へ言葉を渡す。
彼にとってそれは、剣を振るうことよりずっと平凡で、火種を背負うことよりずっと軽い作業に見えるのかもしれない。だが、その軽さが場を助けた。賑やかに広がった話題が、一度、皆の見える場所へ置き直される。壁際に立っていたモーディスは、腕を組んだまま短く答えた。
「異論ない」
「じゃあ、賛成もう一票追加だ」
「お前はどうなんだ、救世主」
問い返す声に、若木の葉が風で揺れた。救世主という呼び方は、まだこの場の中で重いものだ。けれど、モーディスの口から出ると、戦場での呼号というより、少し乱暴なあだ名のようにも聞こえる。
エスカトンでは珍しくなかった呼び名を前に、ファイノンは責められたようにも、持ち上げられたようにも受け取らず、問いかけに対していつものように蒼い眸を瞬かせた。
「僕かい? うん、いいんじゃないかな。みんなでやるなら、きっと楽しいよ。みんなのことを見てるヒアンシーだからこそ思い浮かんだことだろうし、僕は協力を惜しまないよ」
真っ直ぐな言葉だった。飾りも、含みもない。ヒアンシーは記録板を抱えたまま、思わず頬を緩めた。裏表のない人間からの褒め言葉は、いつだって真正面から澄み渡る。受け止める側が照れて身を縮めたくなるほど、余計な濁りがない。
「えへへ……ありがとうございます、ファイノン様」
「ってことで、賛成もう一票追加だね。僕を入れて……七票かな。イカルンもさっきから手伝ってくれてるし、相棒の一票も入れるなら八票だ」
足元でイカルンが誇らしげに鳴いた。ヒアンシーは慌てて「相棒枠です!」と補足し、サフェルが「とうとう獣票まで導入された」と笑う。
ケリュドラは「民意の範囲をどこまで拡張する気だ」と言ったものの、その声音にはどこか愉快さが混じっており、本気で叱責する意図までは含まれていなかった。トリスビアスはそのやり取りを面白がるように軽やかに手を打ち、セイレンスはイカルンが誇らしげに胸を張る様子を見て、緊張の糸をそっと緩めるように小さく息を吐く。
「列車組からも、開拓者さん、三月さん、丹恒さんで三票いただいていますよっ。詳しい準備に入ったら、また連絡をくれるそうです」
「なるほど。じゃあ、十一票だね。……あれ、でも今日は投票で決めるというより、みんなに相談する会だったかな」
「フン、今さらだな」
モーディスの低い返しに、広間のあちこちで笑いが起きた。ファイノンは少しだけ眉を下げ、困ったように笑う。
成年した男性であり、幾度も世界の終末を越えた存在であるにもかかわらず、その瞬間の彼は、妙に幼く見えた。票を数え、途中で目的を見失い、照れたように頬を緩める姿は、重すぎる神話の外側にいる一人の青年そのものだった。
アグライアやアナイクス、トリスビアスといった、かつて彼へ学びや作法を与えた者たちの目には、その幼さが別の色を伴って映ったようだった。アグライアは口元へ手を添え、叱るでも笑い飛ばすでもなく、柔らかく眺めている。トリスビアスは懐かしいものを見つけたように目を細め、アナイクスは表情の大半を理性で整えたまま、しかし視線だけはほんの少し長くファイノンに留めていた。
ヒアンシーは、その空気に少しだけ安心した。先ほどの呼吸の揺れが消えたわけではない。けれど、今の彼には無理も、気負いも、急いで何かを背負いに行くような硬さも見えない。
最近、モーディスと競争する姿を見かけないからどうしたのだろう、と気にしすぎているだけかもしれない。背負っていた重荷が肩から降りたことで、ただ少し緩やかになっているだけなのかもしれない。そう思えるだけの自然さが、彼の笑みにはあった。
だから、ヒアンシーは胸の中で、ひとまず大丈夫という札を置くことにした。確定ではない。診断でもない。ただ、今すぐ止める状態ではないという、医療者としての仮置きだった。彼女は短く息を吸い、話を本来の議題へ戻そうと記録板を見直す。
「では、皆さんのご意見を踏まえて、まずは開催場所、対象の方々、必要な準備物を整理して……」
「では、エリュシオンのファイノン」
ヒアンシーの声へ重なるように、アナイクスが口を開いた。呼びかけられたファイノンは、若木のそばから顔を上げる。朝の光に蒼い眸が明るく見えた。
「なんだい、アナイクス先生?」
「第一に、私のことはアナクサゴラス先生と呼びなさい。第二に、過半数を超えた以上、実行は決まったも同然です。票数を数えるよりも、いつ、どこで、何をして、誰を対象とするのかなど、具体的な企画を練るべきでしょう」
言葉の順番は厳格で、指摘はもっともだった。だが、第一と第二の重みが明らかに均等ではない。名前の問題を冒頭へ置くあたり、アナイクスはまだその件を諦めていないらしい。ファイノンはきょとんと瞬き、少しだけ首を傾げた。
「あれ、でもアナイクスでいいって言ったの先生だろ?」
「状況と文脈があります」
「鉄墓の中で聞こえてたよ。僕は肉体も魂も燃え尽きて、一部を残して真っ白になってたけど、そんな状態でも、聞こえてたのは聞こえてたんだ」
言葉は、あまりにも軽かった。ファイノンがきょとりと瞬かせた直後に放たれた言葉を受け、彼らに途轍もない衝撃が奔る。
水差しの側で杯を整えていたヒアンシーの指が止まり、イカルンが転落した。ぽてんっと哀れに転がった翼獣は、慌てながら再び浮上したが硬直したままの相棒の周囲をまわって嘶く。
サフェルの尻尾の揺れがぴたりと止まり、先ほどまで短冊の紙質を指で確かめていたアグライアの手が、紙の端に触れたまま動かなくなった。ケリュドラは片足を組み替えかけた姿勢で止まり、セイレンスの横顔から風に耳を澄ませるような穏やかさが一瞬だけ引いていく。キャストリスは膝の上の指をぎゅっと握り、手袋の布が小さく皺を作った。
そもそも、本人の許容量が広すぎて、地雷を地雷だと認識していないから起こる事象なのだが、アナイクスは、どうしてこの生徒は
ファイノンだけが、自分の言葉で場の温度が変わったことに遅れて気づいたように、蒼い眸をまた一度瞬かせた。彼にとっては、名前の呼び方を説明するための補足だったのだろう。本人が言った内容の重さと、言ったときの声の軽さが、あまりにも釣り合っていなかった。
アナイクスは、蒼穹にも勝るその眸をきょとりと瞬かせた生徒を見つめ、ほんの短い沈黙の中で、明らかに言葉の優先順位を失った顔をした。
鉄墓の中で肉体も魂も燃え尽きて、一部を残して真っ白になっていた。そんな状態でも聞こえていた。名前呼びの件へ反論するために差し出す情報としては、あまりにも致命的なものが混入している。
黄金裔たちは、アナイクスを責めることができなかった。彼が「そこではなく名前の話をしています」と返さなかったことも、いつものように皮肉で斬り返さなかったことも、誰も指摘できなかった。そもそも、今この瞬間に名前呼びだけへフォーカスを当てて言葉を返すことができる者がいたなら、それは相当の豪胆か、あるいは相当の鈍感である。
「……貴様は」
モーディスが低く言いかけ、途中で言葉を噛み殺した。彼の腕は組まれたままだったが、指が上腕の布を強く押していた。怒鳴りつけるには、相手の顔があまりにも何でもない。黙るには、言葉の内容があまりにも重い。その中間で、戦士の声は喉の奥へ引っかかったようだった。
「ファイノン様」
ヒアンシーの声は、医療者のそれになりかけた。体温、脈、呼吸。問診、休息、確認。いくつもの手順が彼女の中で一斉に立ち上がったが、彼は怪我の報告をしたわけではない。
過去の状態を、ただの事実として言っただけだ。今すぐ処置を求めているわけでも、痛みを訴えたわけでもない。だから彼女は、最初の一音を口にしたところで自分の声を留め、代わりに杯を机へ置く動作を丁寧に終わらせた。
キャストリスは、ほんの少しだけ顔を伏せた。彼女の睫毛が影を落とし、紫の瞳が紙片の上へ沈む。触れれば死を与えてしまう手を持つ彼女が、誰かの燃え尽きた魂について何を思ったのか、外から断定することはできない。ただ、重ねた指先が白くなるほど力を込められていた。
トリスビアスは、先ほどまでの柔らかな笑みを残したまま、目だけを細めた。その微笑みは消えなかった。消さなかった、と言うべきかもしれない。子どもを安心させるときのように、あるいは不用意に場を凍らせないための灯りのように、彼女は口元の穏やかさを保っていた。だが、赤い髪の下で揺れる瞳は、ファイノンの肩と呼吸の間隔を静かに見ていた。
鉄墓の中で肉体も魂も燃え尽きて、一部を残して真っ白になっていた。改めて聞くと、それはとんでもない事態だった。
オンパロスを守るために自分の一部以外をすべて燃やし尽くしたということであり、同時に、その場所へ彼一人を立たせてしまったということでもある。誰かが代われたのかと問えば、答えは簡単ではない。
意志だけなら燃やせた者もいるだろう。命を投げ出す覚悟を持つ者なら、この場にいくらでもいる。だが、オンパロスが救われるまでの長い時間、燃え尽きながらなお燃え続けるという条件のもとでは、覚悟の強さだけでは足りなかった。
アナイクスなら、もし自分を燃やすことで目的が達成できるかと問われれば、用途による、と答えたかもしれない。ケリュドラなら、民と盤面のために最善を選ぶだろう。モーディスなら、敵を殺し道を拓くために躊躇しなかったかもしれない。キャストリスなら、死に近い場所へ手を伸ばすこと自体を恐れなかった可能性がある。
だが、誰もがその力に取り込まれず、終末までの間ずっと自分であり続けられたとは限らない。むしろ、多くは途中で砕け、逸れ、あるいは別のものへ変質していた可能性が高い。
そうなれば、オンパロスは救われなかった。鉄墓は封じられず、復活の機会を得て、やがて宇宙そのものへ届く災厄となっていたかもしれない。だからこそ、彼以外には成し得なかったのだという結論は、称賛と同じ形をしていながら、あまりにも残酷だった。
「聞こえていた、というのは」
アナイクスが、ようやく声を戻した。いつものように皮肉を刃にして投げるには、場の空気が重すぎたのだろう。声は理性的で、しかしわずかに早い。
「聴覚器官が機能していたという意味ですか。それとも、魂ないし火種に類する残存部位が、外部情報を知覚していたという意味ですか」
「うーん……どっちだろう。耳で聞こえた感じじゃなかったけど、先生がそう言ったのは分かったよ。だから、アナイクスでいいんだと思って」
「論点が戻りましたね。戻さなくていいところから戻りましたね」
呼び名にこだわりを滲ませるアナイクスの返しに、わずかな笑いが生まれかけた。だが、その笑いはすぐに喉の奥で止まった。
ファイノンが困ったように頬を掻く姿があまりに普段通りで、だからこそ、誰も安心しきれない。笑って流したいのに、流してはいけないものが足元に沈んでいる。床の石が朝の冷たさを残しているせいだけではなく、広間全体の温度が少し下がったように感じられた。
「先生、怒ってる?」
「怒ってはいません。呆れてはいますが、それ以上に検証すべき情報が増えました」
「そっか。ならよかったの?」
「よくありません」
即座に返された言葉に、今度こそサフェルが吹き出した。完全な笑いではなく、緊張から逃げるためにこぼれた息に近かったが、それでも空気に細い亀裂を入れた。アグライアはその機を逃さず、短冊を机へ戻しながら静かに口を開く。
「ファイノン。今の話は、後ほどヒアンシーとアナイクスが詳しく確認するべき内容です。ですが、今は七夕の話を続けましょう。あなたが協力を惜しまないと言ってくれたことは、皆が聞きましたから」
声は優雅で、決して荒くない。けれど、そこで区切るという意思は明確だった。ファイノンは少しだけ目を丸くし、それから素直に頷く。
「うん、うん? イベントの話だよね……? ああ、でも必要ならあとで話すよ」
必要なら、という言い方に、ヒアンシーの眉がわずかに下がった。彼にとって、自分の身体や魂のことは、必要があると判断されて初めて話すものになりがちだった。本人が辛いから話すのではなく、誰かの治療や検証に必要なら話す。その順序が、まったく彼らしいから困る。
だが、今この場で踏み込めば、祭りの話は止まってしまう。ヒアンシーはアグライアの区切りを受け取り、記録板を胸元へ抱え直した。
心配は消えない。むしろ増えた。けれど、増えたからこそ、企画を前へ進める意味がある。彼が自分を燃やす話を何気なく挟んでしまうなら、自分を燃やさないでいられる時間を、具体的に増やしていくしかない。
そのとき、ケリュドラが短く息を吐いた。
「まったく、報告の順序がなっていない。肉体も魂も燃え尽きたという情報は、呼称問題の補足に挟むものではないぞ、エリュシオンの勇者よ」
「ごめん、カイザー。次から気をつけるよ」
「次があってたまるか」
モーディスの低い声が重なり、今度は広間に小さな笑いが戻った。先ほどまでの凍りついた沈黙とは違う、恐る恐る手を伸ばすような笑いだった。
ファイノンも、その笑いに合わせるように穏やかに微笑む。その顔に無理があるかどうかを、ヒアンシーは一瞬だけ見極めようとしたが、彼は相変わらず読みづらいほど自然だった。
アナイクスはこめかみへ指を当てた。戦慄いている、とまでは言わない。少なくとも表面上はそう見せない。けれど、視線の奥で計算が走っているのは明らかだった。
鉄墓内部で肉体と魂が燃え尽きた状態でも外部情報を知覚していた。残存部位が一部。真っ白。千年待たせたことを「あれぐらいなら慣れてる」と言った青年。永劫回帰の単位が一年程度ではなく、もっと長大な時間幅を含んでいた可能性。そうした断片が、学者の脳内で危険な形に接続されていく。
―― もしそれが数年ではなく、数百年でもなく、数千年単位で繰り返されていたのだとしたら。
アナイクスのまぶたが、ほんの一瞬だけ重く落ちた。次に目を開けたとき、彼はいつもの硬い理性を取り戻していたが、指先が腕へ戻るまでにわずかな遅れがあった。その微細な遅れに気づいた者は多くない。だが、気づいた者は、彼が言葉にしない何かへ辿り着いたことだけを察した。
「具体的な話へ戻しましょう」
アナイクスは、意識してそう言ったように聞こえた。
「催しの対象を市民全体へ広げるなら、動線、記録、混雑、天候、治安、救護、筆記補助、未成年者への対応を分けて考えるべきです。さらに、願いを木へ結ぶというのであれば、樹木の耐荷重、枝への負荷、紐の素材、紙の湿度変化も検討対象になります」
「あ、はい! ええっと、動線、記録、混雑……」
ヒアンシーが慌てて書き留めると、イカルンが机の上へ前足をかけ、記録板の端を押さえた。先ほどまでの重さを払うように、広間の空気はまた実務へ戻り始める。
完全に元通りにはならない。ファイノンの言葉は、床石の隙間へ水が染み込むように、それぞれの胸のどこかへ残った。それでも、残ったまま進むことはできる。むしろ、進むために残すしかないものもある。
ファイノンは若木のそばで、皆の声を聞きながら微笑んでいた。何事もなかったかのように、けれど、誰かが求めればすぐ手を貸せる位置に立っている。
手を伸ばせば枝に触れられる距離。声をかければ輪に戻れる距離。誰かの重荷を引き受けるには近すぎて、ただ休むには少し遠いその位置が、今の彼をそのまま映しているようだった。
ヒアンシーは小さく息を整え、記録板の端を指で押さえた。今は、彼をその場所から無理に引き剥がさない。ただ、次に話すべきことを話し、必要な役目を皆へ分ける。祭りを作る手順そのものが、彼一人だけを中心に世界を回さないための練習になるのだと、彼女は自分へ言い聞かせるように顔を上げた。
「では、次に……願いを結ぶ木について、お話ししてもよろしいでしょうか。今回は、アナイクス先生にもご相談して、実物を用意していただいたんです」
その言葉に、いくつかの視線が若木へ向いた。朝の光の中で、細い枝が風に揺れている。まだ頼りない。けれど、上へ伸びようとする力は確かにある。
その若木のそばでファイノンが首を傾げ、アナイクスが腕を組み直したことで、重く沈みかけた話し合いは、ようやく次の具体的な議題へ足を踏み出した。
すごいやり直した↑の改修工事しまくった本文の原文を発掘しました。今から見ると、わりと雑コミカルなので没案をちょっと供えます。
これわりとマシな方のネタメモですね……。地の文にキャラ視点じゃなくて、己のツッコミと感情を盛り込みがちなの反省ですな。でも、オンパロスって情報量が、とにかく多いッ!
このシーン:
「あれ、でもアナイクスでいいって言ったの先生だろ?」
「状況と文脈があります」
「鉄墓の中で聞こえてたよ。僕は肉体も魂も燃え尽きて、一部を残して真っ白になってたけど、そんな状態でも、聞こえてたのは聞こえてたんだ」
※以下ネタの殴り書き
アナイクスは、蒼穹にも勝る澄んだ
そのことを黄金裔の仲間たちは責められるはずも、そもそも名前呼びのことだけにフォーカスを当てて言葉を返すんじゃないというツッコミを入れられるはずもなかった。
鉄墓の中で肉体も魂も燃え尽きて、一部を残して真っ白になってた。改めて聞くと、とんでもない事態である。よく頑張ったと褒めねばならない。是が非でも。
自分の一部以外をすべて燃やし尽くすほどにオンパロスを守ってくれたことであり、そこまで彼一人だけに背負わせて消耗させたこともであるのだ。涙腺ナイアガラの滝かよ。
彼のように自分を燃やせるか、と聞かれたらアナイクスは「用途による。」と答えるだろうし、他の面々は燃やせたとしてもオンパロスが救われるまでの期間中も燃え続けてしまうのであれば、取り込まれてしまう可能性が高く。そうなれば復活して宇宙は終わりを迎えていただろう。サフェルさんが、ラスボス前で褒めてくれてたもんな……。
つまり、彼以外は
と思ったところで、――おや、もしかして永劫回帰って1年単位ではなくて、数千年単位だったりしますか。アイデアロールは成功したが、SAN値チェックに失敗したアナイクスは戦慄く。えらいこっちゃや。