宇宙ってあるのかな?   作:MarchM

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【思想家】がカンストしたことで、現時点でのジョブ構成は【数学者】【天文学者】【哲学者】【思想家】の四つになった。

合計レベルは200に達している。

 

さらにエンブリオも進化を遂げ、到達形態はⅢとなった。

MPのステータス補正はBからAに向上。

進化のペースが早いと感じたが、この世界のエンブリオ進化速度は個人差が大きいらしい。そこまで気にする必要はないだろう。

 

スキル面の変化は特になく、前回と同様の補正と変化だけが起きていた。

むしろ、増えすぎない方が癖がなくて運用しやすい。

 

現在のステータスは、SPとMPしかまともな数値を持っていない。

特にMPはエンブリオの補正効果により+150%増加しており、総量は17000を超えている。

 

そんな中、次の下級職は【芸術家】を選択した。

この職はSP特化型で、習得スキルは《批評》と《器用》。

 

《批評》は思考加速しながら、自分が生み出した対象に対してプラス評価をすると、その対象の性能が向上し、マイナス評価ならば性能が減衰する。

《器用》は一時的にDEXをブーストするスキルだ。

 

エンブリオがある今となっては、戦闘職を増やすつもりはなく、そして下級職の構成はずっと前から決めていた。

戦闘対応はエンブリオに任せ、自分の個性や趣味を反映したジョブを揃えている。

 

なお《批評》スキルは、自分が創り出したものへの評価に限定されるが、エンブリオのスキルによる現象も対象に含まれていることが判明。

自分の作り出す宇宙現象は芸術なのだ。それほど美しい。

 

さらに、動作停止状態で武器を持っていない場合はジョブにセットしていなくてもスキルを使えるらしい。

 

図書館での知識吸収がほぼ完成に近づいたため、【物理学者】取得を目的にドライフ皇国に赴くのも悪くないと思っている。

幸い、ドライフ皇国は北方に地続きで、移動は比較的容易だ。

ただし、【芸術家】をカンストさせてから考えるつもりだ。

 

図書館にはティアンだけでなく、マスターもいるが数は少ない。

そのため自然と知的交流は限られていたものの、マスターとティアンの間での学問的な認識の違いは非常に興味深いものだった。

 

一方は「魔力」を前提とした学問体系、もう一方は魔力を一切介在させない科学的な体系。

このような前提の差異があるため、議論はいつも白熱する。

その対話から多くを学び、思考の幅を広げられた。

 

そうした経験を通して、俺はこのゲームで実現したい目標が徐々に輪郭を帯びてきた。

当初は単なる暇つぶしだったが、いまでは理想を追求するために全力を尽くす覚悟ができている。

どんな困難があっても、理論的に徹底的に理想を追い求めるつもりだ。

 

ちなみに王国には、あらゆる技術開発や学問研究を司る直属の集団が存在するらしい。

当然のことだが、ぜひ彼らと交流し、自分の知識をさらに深化させたいと思っている。

 

狩りの時間は、レベル上げと同時に様々な攻撃パターンの試験場でもあった。

例えば、放射線、宇宙線、中性子線など、通常防御が難しい攻撃や、マイクロブラックホールの生成、重力操作を伴う隕石攻撃、さらにはガンマ線バーストも試みた。

 

大規模な攻撃はまだMP不足で発動できなかったが、威力や範囲を限定すれば実用範囲内で使えることが分かった。

 

特に対人戦で有効そうなのは、重力操作、隕石攻撃、放射線放出だ。

範囲を絞ることでMP消費を抑えつつ発動可能だ。

 

放射線放出はモンスターに浴びせると、〈被爆〉という状態異常を引き起こす。

この異常は一秒ごとにHPが指数関数的に減少し続ける。

人間が浴びれば人体の設計図である遺伝子がバラバラに破壊されることにより細胞複製が停止、免疫不全で死に至る凶悪な現象だ。

 

人間の設計図が壊されるのだ。「人間である事」が破壊されるとも言える。

実際に放射線事故で砕かれた染色体を見るとなんとも言えない恐怖が湧き出てくる。実際に調べて見た方がいい。

 

そして数十メートルの範囲攻撃が可能で、MP効率も良好。

モンスターの大量殲滅に非常に適している。

モンスターのレベルが低いのも有るだろうが、驚異的な効果を発揮している。

 

隕石攻撃は、時速最低30km/sの小石サイズの隕石を、

《宇宙顕現》Lv3の半径300m以内から発生させ、惑星大気の抵抗を無視して目標に衝突させる。

 

運動エネルギーはE = ½ m v²で計算され、手榴弾級の威力を発揮する。

衝突点はプラズマ化し消滅し、深さ1cm、直径数メートル〜十数メートルのクレーターを形成する。

 

現状の全MPを使えば隕石の直径は1mとなり、1キロトンのTNT爆発相当の威力を持つ。

蒸発範囲は直径10メートル、衝撃波は数百メートルに及ぶ。

 

さらに、これが予備動作や前兆なく、いきなり300m以内のあらゆる場所から出現し、銃弾の数百倍の速度で飛来するため極めて理不尽な攻撃手段となっている。

 

つくずく反則級のスキルだ。

 

これらの実験は〈旧果樹園〉で行われたため、また〈DIN〉新聞の一面を飾る謎現象となるだろう。

 

数日間のレベル上げの末、【芸術家】もカンストさせた。

一切芸術的活動をしていないのにカンストしたことには多少の後ろめたさを感じるが、まあ気にしない。

 

こうして、残る下級職は最後の【物理学者】のみとなった。

 

適職診断カタログを覗くと、なんと上級職の【文化人】が表示されていた。

複合文化系統の上級職らしく、就職条件は【哲学者】【芸術家】【思想家】の三つのジョブをカンストさせ、かつそれらの分野に一定以上の見識を持つことのようだ。

 

ログアウト後にwikiで検索してみたが情報は見つからなかった。

条件が難しくてまだ誰も就職していないのかもしれない。

 

それでも、【哲人】よりも【文化人】の方に強く惹かれたため、早速就職してみる決意をした。

 

【文化人】(カルチャー) SP極特化職

『行動総体』(オーディナリー) 奥義

自らの持つ哲学、思想、芸術観に沿った行動をする際に思考加速し、行動結果に対して毎回成功/失敗判定が出される。

成功判定時、次回のHP、MP、SPを用いるいかなる行動も使用コストが半減する。

失敗判定時、次回のいかなる行動も使用コストが倍増し、全ステータスが半減する。

パッシブ。

『深層対話』(ディープダイアローグ)

自発的に体を動かさず、手に武器を持っていない状況においてのみ発動可能。

SPがある限り思考加速(100倍)を制限時間なしで使用可能。

アクティブ。

 

三つのジョブの思想、哲学、芸術が紡ぎ出す統合スキルは、まさに完成形とも言える。

そしてスキルの思考加速効果によって、時間という最も貴重な資源を誰よりも長く、自分のものにできるのはまさに強みだ。

 

MP消費の効率化も含めて、複雑な計算処理が可能になり、無駄なエネルギーを削ぎ落とせることで、まさに理想的な戦闘環境を実現している。

 

さて、そろそろドライフ皇国へ遠征をする準備をする時だ。

やることはただ1つ。王国周辺にいる<UBM>を一体殺すことだ。

 

ドライフ皇国への遠征に際し、まず目標となるのは王国周辺の〈UBM〉討伐だ。

その決意はシュウとの会話から生まれた。

 

シュウは既に第4形態にまでエンブリオを進化させ、〈UBM〉を複数体討伐済み。

彼によれば、貫通力に優れた隕石攻撃は、伝説級〈UBM〉にも相性次第で致命的な一撃を与えられる威力を持つとのこと。

 

そんなわけで、アルター王国の出国記念に一体相性の良いUBMにチャレンジすることにしたのだ。

特典武具も魅力的だが、俺は同格以上の敵と戦ったことがないため、良い経験になるだろうと踏んでいた。

 

〈UBM〉は意外と倒されないままの状態でいることも多い。人命や物流に支障がなければ積極的に賞金首にしないためである。

〈マスター〉も未だにサービス開始から数ヶ月の状態で、上級エンブリオに達しているのも極小数。

王国には一部の「規格外」にも討伐し回ってる人はいないのだ。

 

残念なことに把握済みの〈UBM〉には良さそうなモンスターがいなかったが、金稼ぎのためにギルドで事務仕事をしていたおかげで、ギルド職員の覚えが良く、賞金首リストに入る予定のUBMの情報を早い段階で得ることができたため、すぐにその時は訪れた。

 

その<UBM>は、伝説級【電脳雷雲 サンダービート】。

上空の分厚い雲に乗りながら雷を落としまくるモンスターである。

なにか複雑な能力がある訳では無い。

ただ手の届かない上空からありえない密度の雷撃を放ちまくる異形の電脳生物である。

雷に対する完全耐性を持つ絶属性の使い手か、同じ空をフィールドとしているプレイヤーでないと対処は不可能だろう。

 

そんなクソみたいな<UBM>だが、俺には倒せる自信がある。

無重力状態になって高度を上げて隕石を当てればいいからだ。

敵は生物の弱点である脳みそを露出しているグロい生き物だから隕石貫通で1発である。

その間の雷も、磁場を作成すれば無効化できるのだ。

 

そんな感じで目撃情報のあった場所に行く。

 

数時間かけて飛んで行ったが、ようやく黒雲が山を覆い尽くす明らかに<UBM>がいるであろう場所を見つけた。

雷撃範囲は半径500mほどのようなので、ギリギリ範囲外の場所から雷雲の頂上付近まで上昇する。

空気はあるので窒息することは無い。

 

早速、太陽コロナによる磁場を計算して周囲に発生させる。

これが周囲の荷電粒子に影響してローレンツ力を働かせ、粒子の運動方向を曲げる。

これにより、正負の電荷が分離しにくくなり、電場の形成が抑えられる。

 

電荷分離が弱まるため、雷雲内部の電場強度は絶縁破壊に必要な閾値に届かない。

空気中の絶縁体としての性質は維持され、雷の放電が発生しにくい環境が生まれる。

実際に、周囲の静電ノイズや電場変動も著しく減少していた。

何度も発生していた放電は、自身の方向のみだが、磁場の影響で途中で断ち切られた。

雷鳴は止み、雲はただの厚い水蒸気の塊に戻ったかのように静まり返る。

 

ようやく中心に近づく。

発生しない雷に違和感を持ったのか、ついに姿を表した。

どんどんと近づいてくる俺の存在に怒り狂いながら、必死に雷雲を発生させて雷を放とうとするが、俺の周囲半径300mにおいてはもはや発生させることは出来ない。

 

そうして俺と〈UBM〉との距離が300mになり、〈UBM〉の目の前に出現した1発の隕石により呆気なく打ち倒された。

 

 





“Culture is the totality of human behaviors that are learned and transmitted.” Marcel Mauss
「文化とは、学ばれ、伝えられる人間の行動総体である。」
マルセル・モース

“Culture is ordinary.” Raymond Williams
「文化とは日常である。」
レイモンド・ウィリアムズ

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