A,少しトレセン学園に通ってました、あと前作はカロリー高すぎるくせに需要がない()
"私は大丈夫"
"責任は先生がとるから"
"それが大人のやるべきことだから"
上手く笑えなくなったのはいつからだろうか。
私が先生という生物になってしまったのはいつからだろうか。
背負うことに慣れ、生徒を守るために奔走するのにも慣れ、終わりの見えない業務を送る日々。
全て投げ捨て逃げ出したいと考えたことも少なくは無い、しかしその考えが浮かぶ頃には既にその膨れ上がった責務に押しつぶされてしまってどうすることも出来なくなっていた。
屋上に吹く夜風が心地良い、唯一先生という仮面を脱ぐことが出来るタイミング、D.Uの街並みもこの時間になると寝静まっており昼間は鳴り響く銃声も鳴りを潜めている。
こっちに来てから何度も戦闘の指揮を執ってきたが未だに銃声や爆発には慣れない。
1発でも流れ弾が飛んでこようものならそれだけで致命傷にもなりかねないこの体、先生という生徒を導く立場になったことに対する不安だけでなく銃弾飛び交うこの世界をこれから生きていかないといけない恐怖。
正直言って疲れた、元々私は先生になれるような器ではない。
睡眠時間を削り今まで無理やり動かしてきた体も、生徒を守る一心で誤魔化し続けてきた恐怖も、何もかも既に限界を超えていた。
寄りかかっていた手すりから下を見下ろす、キヴォトスの皆ならまだしも私には十分な高さ、シッテムの箱もオフィスに置いてある…
頭を振り嫌な思考を払拭する。
何を考えているんだ、そんなことをすればあの子たちはどうなる。
彼女たちを支えると決めたのは私だ、彼女たちを守ると決めたのも私だ。
自分一人守ることすら出来ないのに何を馬鹿なことを言っていたんだ。
あぁ…私にもそんな支えてくれる存在がいたら…
「またリン行政官にでも怒られたんすか?」
背後からの声に背筋が伸びる。
キヴォトスでは聞かない男性特有の低い声、シャーレを自由に出入りできる人物で男性となると彼しかいない、すぐに仮面を付け直し笑顔を作り出す。
「あれ、ルイ?今日はもう帰ったんじゃないの?」
日下部ルイ、少し前からシャーレでアルバイトを始めたおそらくキヴォトスで唯一の男子生徒。
未だに謎の多い生徒でヒナから聞いた話によると七囚人と共に指名手配されていた傭兵で指名手配されている割には何故か各校とも関わりがあり、ヒナとも交流することが多いが所属している学園や年齢と言った情報は無いとの事。
最近コーヒーや柴関ラーメンの硬め超濃いめ超多めが好きなことを知ったがわかったのはそれだけ、逆に言えばそれ以外の情報については何一つ得られていない、日数の割に恐ろしい程に進展がない。
もしかしたら意図的に距離を置いているのではないかとすら考えていた、それ程までに彼とは距離を感じていた...しかし今そんな彼が目の前にいる、既に帰ったと思って油断していた。
「忘れ物したんでオフィスに行ったら先生がいつも肌身離さず持ってるタブレットが机の上に置きっぱなしになっていたんで念の為探しに来たんすよ、お月見でもしてたんですか?」
「そうなんだよ、仕事がある程度片付いたから気分転換に月でも見ようかなって…」
「今日は雲で月どころか星も見えませんよ」
嵌められたと気が付いたが着いた時には既に遅い。
逃げようにも出入口はルイの背後、そうでなくても彼から逃れる術を私は持ち合わせていない、どうにか言い逃れるしか…
「いやぁ天気予報見てなかったからさ、仕方なくD.Uの街並みでも見てのんびりしてたんだ」
「タブレットも持たずにですか?あれが無いと弾丸を防げないのに随分の不用心ですね」
「ほんの少し休憩するつもりだったからね、それにこんな時間に私を狙ってくる人なんて…」
「前に飛んで来た弾に驚いて転んだ時に腕の関節を痛めたのは誰ですか、おかげでシャーレの業務ほとんどボクやらされることになったんすよ?」
「あはは、あの時はごめんって…」
思考を回し続ける、話を逸らせ、隠し続けろ。
私は先生だ、先生を演じろ、私を隠して。
「てか相変わらず下手な演技っすね」
目の前が暗くなる、全身の血の気が引いていくのを感じた。
この短い会話のどこで失敗した?いや、彼は相変わらずと言った…シャーレ補佐として一緒にいる時間も長いがいつから気が付いていた?
「何を…」
「別に無理しなくていいっすよ、他に誰かいる訳でもないですし」
「無理なんてしてないよ、先生は大人なんだしこれくらい全然…!」
「なら普段からそんな作り笑い浮かべないで普通にしてたらどうです? 見てるこっちが疲れるんすよ」
「…いつから気付いていたの?」
「最初からですよ、仕事中でも怪我した時もいつでもあんたは笑顔だった、ドMなのかなとも思いましたがどうやら違うようなんで」
「でも、それだけでなんで…」
「まぁ色々やってたんでそういうのはすぐわかるんすよ」
頭を掻きながら横に並ぶルイ、そのまま手すりに寄り掛かり真っ直ぐD.U地区の町へと視線を向けた。
出入口付近はフリーになった、言い訳し逃げることは出来る…しかし、不思議と足は動こうとしない。
心地の良い夜風に身を任せ私もそのまま横で手すりへと寄りかかる。
「仮面を被ってる人なんてなにか後ろめたい事がある奴ばかりだと思ってたんですけどあんたは違う…いや、何かを隠してるって点では同じかもしれないっすけど」
「隠してることなんて無いつもりなんだけどな…」
「この期に及んでまだ仮面を外さない気ですか?まぁ、そんな長い関係って訳でもないですけどこれだけ近くに入れば検討は着きますよ、弱い自分を隠したくて距離を取っていたとか...違いますか?」
自分は彼のことを好きな食べ物程度しか把握出来ていないのにこの短時間でここまで知り尽くされているのはなぜ?心でも読まれているのだろうか?
それとも、心に壁を置いて距離を置いていたのは自分だったのか?
だとしたら自分は大切な生徒になんて事を…やっぱり私がここにいる資格なんて無いんだ。
「その様子を見るに図星のようですね...全く、あんたがそんな悩みを抱えてるなんて知ったらあいつらだって…」
「わかっているよ...でも、私には荷が重すぎるんだよ…ルイが来るまでは書類の山が消える日なんて来なかったし、当番の子達にもいっぱい迷惑かけちゃってる」
「背負い過ぎなんすよ、責任も仕事も、自分のキャパなんてとっくに通り越してるのに勝手に背負ってこうして押しつぶされて…ほんとバカですね」
「でも!私がやらなきゃ…」
「あーもう面倒くさい!何言ってもダメなら俺があんたが背負ってるもん勝手に背負う、あんたが何を言おうがもう知らない!俺があんたの…いや、先生の横に並び立ってやる…だから」
「自分1人でどうにかしようとすんな、仕事が増える」
「…ふふ、そこはもう少しロマンチックな愛の告白でもするところじゃないの?」
「残念ながらそんなロマンチストじゃないんでね、ご希望なら白スーツと満開のバラでも用意しますか?」
「止めてw絶対似合わないからw」
「さっきまで傷心中だったとは思えないくらい普通に失礼っすね」
「はぁ…そう言われたんじゃ頼らせてもらうしかないね…言っておくけど私って結構めんどくさいよ?」
「何を今更…横に並ぶって言った以上はついて行ってやりますよ」
「ふふ、そう♪」
「ちょっ、何抱きついてるんすか!」
「言ったじゃん、めんどくさいって♪」
誰かが一緒に歩んでくれる頼もしさを知った私をまた独りにするのか、人に頼ることを覚えさせたのは君じゃないか。
私の責任は勝手に背負って行ったくせに自分は独りで背負うつもりなのか、そんなことは絶対に許さない。
絶対に離さない。
日下部ルイ
所属:シャーレアルバイト
年齢:⬛︎年生⬛︎歳
誕生日:⬛︎月⬛︎日
身長:⬛︎⬛︎⬛︎cm
体重:⬛︎⬛︎kg
好きなもの:味の濃い食べ物(new!)、強い人
嫌いなもの:事務作業、弱い人
武器:クリーナー(H&K HK416)