シリウスシンボリ
「コーナー、ここだ。
悪いが抜かせてもらう!」
その声と同時に、
シリウスが俺の横へ滑り込んできた。
外ラチ沿いを走る俺のすぐ隣。
肩が触れそうな距離。
呼吸の音が聞こえるほど近い。
真剣勝負で隣に敵が来る――
こんな経験、今まで一度もなかった。
怖い。
本当に怖い。
けれど――
刺すような空気が、なぜか心地よい。
(これが……“勝負”か……)
胸の奥が熱くなる。
---
シリウスシンボリ
「食い下がってきた!?
私が引き離せない!?」
驚きと興奮が混ざった声。
シリウスの目が、横目で俺を捉えている。
(離されない……!
まだ……まだ行ける……!)
足は悲鳴を上げている。
肺は焼けるように痛い。
視界が揺れる。
でも――
シリウスが隣にいる。
その存在が、俺を押し上げる。
(逃げるだけじゃない……
これは……戦ってる……!)
恐怖と興奮が混ざり合い、
身体の奥から何かが湧き上がる。
その時だった
---
???
「止まりなさい!
非公式レースに参加しているウマ娘は全員拘束します!」
突然、トラック全体がライトで照らされた。
眩しさに目がくらむ。
生徒会の監視部隊だ。
シリウスシンボリ
「チッ……生徒会の奴らが動いたか。
せっかくの勝負に水を指しやがって!」
シリウスは舌打ちしながらも、
その目は冷静だった。
そして、俺を鋭く見据える。
シリウスシンボリ
「ゼロバンゲート、逃げろ。
ここは私が引き受けてやる。」
---
(逃げろ……?
でも俺が逃げたら、また関わった子が……
スピカの時みたいに……)
胸が締めつけられる。
俺のせいで、誰かが貶められるのは嫌だ。
でも――
シリウスの声は、迷いを許さなかった。
シリウスシンボリ
「何してる!?
早く逃げろって言っただろ!」
その声は怒鳴り声ではない。
“背中を押す声”だった。
---
俺はシリウスに言われるがまま、
トラックの外へ向かって走り出した。
ライトの光が背中を追う。
生徒会の足音が迫る。
でも――
シリウスがその前に立ちはだかる気配がした。
(……ありがとう)
トラックを抜ける瞬間、
俺は振り返って深く頭を下げた。
---
シリウスシンボリ
「…?
礼を言う…だと?
ふふ……アッハッハッハ!!」
その笑い声は、
嘲笑でも侮蔑でもない。
“気に入った”
“またやろう”
そんな意味が込められた、
獣のような豪快な笑いだった。
ライトに照らされたシリウスの背中は、
まるで巨大な壁のように見えた。
ーーー
生徒会ウマ娘
「あなた……シリウスシンボリ!?
なぜこんなことを?」
ライトに照らされたシリウスは、
まるで何事もなかったかのように肩をすくめた。
シリウスシンボリ
「馴染みかと思って顔を見に来てやっただけさ。
一緒に走ったのは……そうだな。
女同士のオフザケってところだ。」
生徒会ウマ娘
「オフザケで済む話じゃありません!」
シリウスはその叱責を軽く受け流し、
周囲を見渡す。
シリウスシンボリ
「さて……聞きたいことがあれば話す。
新聞部、来てるんだろ?」
新聞部ウマ娘たちがビクッと反応する。
シリウスはゆっくりと顎をしゃくった。
シリウスシンボリ
「私が負けたって書け。
アイツは本物だ。」
その言葉は、
ただの強がりでも、
負け惜しみでもない。
“強者が強者を認めた”
その重みがあった。
新聞部ウマ娘
「し、シリウスシンボリが……負けを認めた……?」
生徒会ウマ娘
「ちょ、ちょっと待ってください!
あなたほどの実力者が……?」
シリウスは笑わない。
ただ静かに、確信を持って言い切る。
シリウスシンボリ
「私が言ったんだ。
それで十分だろ。」
ゼロは臆病で、自分を信じられない子でした。
そんな彼が、スピカとの混乱のレース、
そしてシリウスシンボリとの真っ向勝負を通して、
初めて“挑むことの楽しさ”を知ります。
ゼロを次の段階へ押し上げる役目。
その大仕事を任せられるのは、
静かで強く、そして誠実なシリウスシンボリだけでした。