ゼロバンゲート〜枠外からの挑戦者〜   作:茶坊主(ぽんぽん)

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皇帝杯 開幕

シリウスシンボリが負けた――

その報道は、ゼロバンゲートの存在を“興味”から“恐怖”へと塗り替えるには十分すぎた。

 

ウマ娘

「シリウスシンボリさんに勝てるウマ娘なんて、学園に何人いるの……?」

 

ウマ娘

「候補に上がる人は全員否定してる。

 ヤダ……私、怖い……」

 

ウマ娘

「次は何をしてくるんだろう……」

 

噂は瞬く間に広がり、

ゼロバンゲートに挑む者は誰もいなくなった。

 

そんな頃――

理事長室から呼び出しが届いた。

 

---

 

ゼロ

「榊原さん……やっぱり不味かったんじゃ……」

 

榊原は、いつもの無表情のまま短く言った。

 

榊原

「まぁ、ついてこい……」

 

その声は叱責でも慰めでもない。

ただ、何かを“見せる”つもりの声だった。

---

理事長室の重たい扉が、ゆっくりと開く。

 

榊原

「理事長、榊原だ。入るぞ。」

 

俺は覚悟していた。

怒鳴られる。

叱責される。

解雇の話だって出るかもしれない。

 

だが――

秋川やよいの反応は、まったく逆だった。

 

秋川やよい

「見事!!

 派手に暴れてくれているようだな、キミ達!」

 

その声は怒りではなく、

まるで祭りの始まりを告げるような明るさだった。

 

秋川やよい

「見事だ、榊原。

 お前、プロモーターとしての才能があるんじゃないか!?」

 

榊原

「……ふん」

 

榊原はそっぽを向くが、

耳がわずかに赤い。

褒められて照れているのが丸わかりだ。

 

秋川やよい

「トゥインクルシリーズの話題まで吸われてしまっているが、

 それは我々の力不足だ。

 気にするな!」

 

ゼロ

「やっぱり怒ってるんじゃ……」

 

俺の声は震えていた。

怒っていないように見えて、

実は裏で何か企んでいるのでは――

そんな不安が胸を締めつける。

 

秋川やよいは、俺の方へ振り返り、

満面の笑みを浮かべた。

 

榊原

「で、わざわざ呼び出しての話ってなんだ?

 ゼロは夜勤明けだ。手短にしてやってくれ。」

 

榊原の声はいつも通り低くて淡々としている。

だが、その裏に“ゼロを気遣う”色がわずかに混ざっていた。

 

秋川やよい

「これから、ゼロバンゲートについて、生徒会から公式会見がある。

 それをキミ達と一緒に見たくてな!」

 

満面の笑み。

怒っているどころか、完全に楽しんでいる。

 

ゼロ

「……え? 会見……?」

 

秋川やよい

「そうだとも!

 学園中が注目している“ゼロバンゲート騒動”だ。

 生徒会がどう動くか、見逃す手はないだろう!」

 

榊原

「……はぁ。

 理事長、あんた本当に楽しんでるだろ。」

 

秋川やよい

「当然だ!

 学園に新しい風が吹くのは良いことだ。

 それが嵐であってもな!」

 

ゼロ

「……やっぱり怒ってるんじゃ……」

 

秋川やよい

「怒ってなどいない!

 むしろ感謝しているぞ、ゼロバンゲート!

 キミのおかげで学園は活気づいている!」

 

ゼロ

「活気……?」

 

榊原

「……まぁ、理事長の言う“活気”は、だいたい騒動のことだ。」

 

秋川やよい

「騒動こそ青春だろう!

 さぁ、会見が始まるぞ。

 キミ達、席に着きたまえ!」

 

---

 

学園のメイン講堂で、

生徒会主催の緊急記者会見が開かれた。

 

カメラのフラッシュが乱れ飛び、

学園内の生徒・トレーナー・関係者で満員。

 

壇上に立ったのは、

トレセン学園生徒会長、シンボリルドルフ。

 

彼女は黒い制服に身を包み、

皇帝の威厳を纏いながら、

静かにマイクに向かった。

 

表情は冷静沈着、

公明正大そのもの。

だが、言葉の端々に、

強い決意が込められている。

 

シンボリルドルフ

「皆さん、ご静聴いただきありがとうございます。

トレセン学園生徒会長、シンボリルドルフです。

本日は、最近学園を騒がせている『ゼロバンゲート』に関する、

生徒会の公式見解と決定事項を発表いたします」

 

会場が息を飲む。

 

ルドルフはゆっくりと視線をカメラに向け、

まるで闇の中にいる誰かに語りかけるように続けた。

 

シンボリルドルフ

「ゼロバンゲート、見ているな?

我々はこれまで、お前を黙認してきた。

非公式レース、謎の覆面、挑発的なビラ……

すべてを『学園の活性化』という大義の下に、見逃してきた。

だが、もはや看過できるレベルではない。

生徒会の名の下に、

規律と秩序を乱す行為は、許容できない」

 

彼女は一瞬、目を細め、

皇帝らしい厳しさを見せた後、

少しだけ声を柔らかくした。

 

心配性で保護欲の強い本質が、

わずかに覗く。

 

シンボリルドルフ

「そこで、決めた。

選抜メンバーによる『ゼロバンゲート討伐レース』を開催する。

名称は『皇帝杯ダービー』。

中距離2400m、

出走者は生徒会推薦の精鋭たち。

無論、参加するかは君次第だ。

 

…逃げるようなら、我々はもう追わない。

しかし、以後の関わりは断つ。

学園から、完全に排除する」

 

会場がざわつく。

ルドルフはさらに言葉を続ける。

その声は、

威厳がありながらも、

どこか挑戦を促す響きを帯びていた。

 

シンボリルドルフ

「君の欲求を満たすレースにするつもりだ。

お前が『ヴィラン』として立ち続けるなら、

ここで決着をつけろ。

お前が本当に強いなら、

皇帝の名を冠したこの舞台で、

証明してみせろ。

……連絡を待つ」

 

 




いよいよゼロの物語は最終章へと進みます。
恐れ、迷い、そして挑戦を経て、彼はどこへ辿り着くのか。
その答えを、どうか最後まで見守ってください。
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