にも関わらずエルフ族の故地であるロデニウス大陸やエルフ族の神【緑の神】おわす「リーン・ノウの森」に関して作品群内においてミリシアル帝国関連キャラから特に言及が無く、「神の船」に関しても知ってはいるものの、それが存在する場所に対してはあまり関心が向けられていません。
本外伝ではその辺の辻褄合わせを考えたものとなります。
外伝1 「責務と私心」前編 中央暦1639年2月16日 神聖ミリシアル帝国皇帝ミリシアル8世
外伝1 「責務と私心」 中央暦1639年2月16日
神聖ミリシアル帝国皇帝ミリシアル8世
帝都ルーンポリス北部郊外 皇帝の別荘「ディシジョンの間*1」
我が居城たるアルビオン城から魔導機関車と魔導車を乗り継いで南へ凡そ3時間の場所に存在する別荘の1つ、周辺地区より高所に建築された石造りの別荘からは眠らない魔都として繁栄を極めているルーンポリスが一望出来る。
この別荘の一角、ディシジョンの間にて椅子に座り、数十枚ある魔写を見比べつつルーンポリスを見つめる人物がいる。
世界最強の国家として名高い神聖ミリシアル帝国を率いるミリシアル8世である。
「始めは一都市でしかなかったルーンポリスが、ここ迄大きな都市になってくれるとは…」
今では【眠らない魔都】と呼ばれ、人口800万を超える世界一の規模を誇る我が帝国の首都だが、800年前、今は第三文明圏と呼称されるフィルアデス大陸で発生したとある大事件の影響でやむを得ず都を遷都した時代には人口僅か数万足らずの小さな自治都市でしかなかった。我が居城として国内外に名高いアルビオン城と帝国を支える政庁が存在する区画も、元々は自治都市が存在した範囲だ。今では往時を偲ばせる物は海側にかつて面していた西側正面門のみだが、それ自体が貴重なルーンポリス設立期の数少ない遺構として佇んでいる。
魔写から目を離し風景を見る。
本日は良く晴れた雲1つ無い快晴、視界左に中央法国の島が僅かに見える程である。魔帝技術解析において我が帝国も頼りとしている重要な同盟国であり、今も世界中から将来の魔導師となる卵達【魔法学生*2】に教えを伝授している。
「陛下、東方国家群冒険者ギルド協会本部*3より使者が参られました」
「うむ、この場に通してくれ」
第三文明圏において一般的な、パーパルディア式衣装*4を着込んだ青年が入ってくる。
「世界秩序の守護者にして神の恩寵を受けし神聖ミリシアル皇帝陛下、御初にお目に掛かれて光栄です」
今すぐにでも聞きたい事があるのだが、侍従の手前無下には出来ん。
「遠路遥々で済まぬが、例の件について聞きたい」
「ロデニウス大陸では大陸西部を統一したハーク・ロウリア34世率いるロウリア王国が【亜人殲滅】を掲げ急速に軍備を増強しております」
「先々代国王によるクワ・トイネ侵攻が50年程前だったな」
「はい、しかし当時とは違い今のロウリア王国は西部・南部の諸侯達を従え軍力は大陸一と言って差し支えありません、まともにぶつかれば東部2ヶ国は間違いなく併呑されます」
「把握した限りでよい、陣容や方針は分かるだろうか?」
「先ずロウリア王国唯一の常備軍たる王領軍は間違い無く投入されるでしょう、王国最大のオーティア港*5には膨大な量の武具・食料が新たに建設された木造倉庫群に日々備蓄されております」
当代のロウリア王は先々代と比べ慎重な性格をしている様だ、前の戦争ではクイラ獣人部隊の夜襲に釣られ王国先遣隊が壊滅、次いで本隊が壊乱する先遣隊敗残兵との接触で士気が低下した所を公国軍騎兵集団の急襲で敗北したとされる。
「ですがそれ以上に恐ろしいのは王国海軍です。特に諸侯領を含んだ王国全土の造船所にて膨大な数のガレー船・帆船が建造されており、ロウリア王は大陸随一の艦隊と公表しております」
「だが海軍は列強であっても簡単に規模を増やせる組織ではない、乗り手はどうしているのだ?」
「ロデニウス大陸周辺のみならず、ベスタル大陸や第三文明圏で蠢動していた海賊衆をも取り込んでいる、とギルドの方では推測しております」
列強や文明国では発想自体しなくなった手だな。
帝国海軍創設期において散々使った手である故、人の事は言えぬが。
「既にロウリア諸侯には軍役令が出されていますが、彼等の文明度では軍役令から動員完了迄2〜3ヶ月は掛かると思われます。特にワイバーンは集めるだけでも膨大な食料を消費いたしますので、王都ジン・ハークに呼び寄せた時点で侵攻命令が降されるでしょう」
「帝国から見れば魔導船も魔導車も無い古い軍隊とはいえ、相当な数の陣容となるか…」
「間違い無く数十万の規模となりましょう」
クワ・トイネ公国とクイラ王国も軍の陣容は然程差が無い、密集し固まる歩兵に突破と側方攻撃に投入される騎兵、そしてかつて第一文明圏でも空の王者とされたワイバーン、違うのは文明国では当たり前の魔導兵器が無い事位か。
「軍の作戦方針に関しては申し訳ありません、王国の重要機密故、各ギルド支部からの断片的な情報による推測となります」
「表向き政治には関わらぬ事を方針としている君達冒険者ギルドだ。無茶な注文を付けたのは余の方故、君達の責任ではない」
「ではお答えいたします、王都北部の各軍港には既に軍船が集結中である為、海上からの公国沿岸部への侵攻が予想されます」
「加え、軍船団には水兵の他に王国陸兵も分乗する様です」
となると陸海一体の侵攻か、それとも海軍による沿岸地域制圧後の陸上侵攻か。公国は東西に細長い国土をしている、公国中部…マイハーク辺りから揚陸し西部からも侵攻すれば首都を含む公国の西半分を押さえられる。
「公国海軍では防げぬか?」
「公国も海に面しない内陸諸侯には海軍を担当する沿岸諸侯への協力金として軍役金を公国政府が臨時徴収する等をしていますが…」
「足りぬか」
「なにしろ公称4000隻とされるロウリア艦隊、仮にクイラ海軍全艦が援軍に来たとしても勝ち目はありませぬ」
「陸路の方は?」
「3ヶ月程前に東部諸侯随一の領地を持つジーンフィルア伯爵が王都に呼び出されました、恐らく侵攻軍先遣隊を任されると思われます」
「軍指揮系統を家格に縛られる文明圏外国としては妥当な任命ではあるな」
「東部諸侯は先の戦争後もクワ・トイネ西部とは多かれ少なかれ関係を維持していました故、街道・地理も詳しいでしょう、それ故に任命されたと思われます」
「となると、先遣隊根拠地はビーズルか」
「既にビーズルには王国港と同じ倉庫群が郊外地区に数多建設されています、ビーズル近郊を流れるビーズル河の水運によって膨大な物資が運び込まれるのをビーズル支部の職員が目撃しています」
王都~ビーズルを兵站線として確保するのなら、侵攻軍先遣隊第一の目標はギム以外あり得ぬ。
「目標はギムか」
「私個人の見解も、ギルド長他幹部職員達の考えも概ね一致しております」
「ギムの様子は」
「既に西部方面騎士団が土塁・柵からなる防御工事を行っているとギム支部からは継続的に魔信で送られております。しかし公国政府からの命で退避勧告が通達されております故、送り続けられるのは後1ヶ月可能かどうかと支部からは報告されています」
「ギムでロウリア軍を防げるか?」
「彼我の戦力差から難しいでしょう、仮にギムで侵攻を阻止し得たとしても海路からの侵攻を防げなければ間違いなく公国国土は西部と東部に分断されます」
陸路と海路何方の侵攻が先かは分からぬが、海路が先だとすれば公国軍は西部に増援を送れるか怪しくなる。
そしてギムが陥落すれば公国唯一とされる城塞都市エジェイに立て籠る事になるだろうが、西東からロウリア軍が来れば長くはあるまい。
「避けられぬか、エルフ族国家の滅亡は…」
「幸い、リーン・ノウの森ではかの伝説のオーガですら弱体化させる強力な加護が今もなお存在すると公都冒険者ギルド支部から報告が上がっております、如何にロウリア王国が大軍を以って攻め様とリーン・ノウの森を陥落させるのは至難の業でしょう」
「だがリーン・ノウの森でロウリア王国を退ける事に成功したとして、エルフ族や獣人族に苦難が押し寄せる事に変わりあるまい?」
「…」
「いや…すまぬな、これは余個人の私心だ」
「神聖ミリシアル帝国が有する魔導艦隊であれば、文明圏外国の軍船が何千隻集まろうと蹴散らせるでしょう。しかし介入する政治的理由が帝国には存在しません」
「分かっている。嘗ての時代ならば兎も角、最早余が余個人の判断で親征*6を行う様な体制にはなっていない、外ならぬ余が決定を下したしたのだからな」
「史書では800年程前の大陸北部統一戦争途上におけるトルキア王国侵攻戦*7が講和によって終結した後と伺っておりますが」
「うむ、あの当時の余はミリシエント大陸*8統一による大陸安定を志向していたからな」
「しかし陛下はこれ以降融和路線へ方針を切り替えるという賢明な判断を成された、というのが帝国歴史家達の見解となっております」
確かに史書ではそうなっている。だが実際は完膚無き迄の敗北と言っていい、トルキア王国の援軍として現れたエモール王国「風竜騎士団*9」は、当時の我が帝国の航空戦力たるワイバーンを簡単に蹴散らし、あっという間に戦場上空を支配してしまった。
後は一方的に狩られる様な有様となり、余自身もあの時は九死に一生を得た。
「天の浮舟も無い当時の帝国軍ではエモールの風竜騎士団には太刀打ち出来ませぬからな」
「当時の余は竜人族の孤立主義的姿勢から介入はせぬと判断して侵攻を独断で決定してしまった、強い反対を押し切ってな」
余にとって悔やんでも悔やみきれぬ誤判断だった。
あの時に復讐心に取り憑かれていたならば今日のミリシアル帝国は無かったやもしれぬ、命を賭して諫言してくれた当時の臣達には感謝しかない。
「それが陛下が【賢王】と称賛される始まりであったと」
【賢王】等と今でこそ国民は褒め称えてくれるが、正直屈辱感が無かったかと問われれば嘘になる。問われた事は今まで一度として無いのだが。
「結果論ではあるがな」
余とてミリシエント大陸南方を制する過程で幾多の国々を毒牙に掛け、婚姻・買収・武力制覇を行なってきた。その過程で祖国を滅ぼされ余や帝国に恨みを抱いた者達は1000や2000ではきかぬだろう。今日の帝国を築き上げる過程を直接知るのは、最早余個人しかいない。帝国の安定と世界の安寧を忘れた事は無いが、800年の時間と同じ視点で話が出来るのはハイエルフ族*10位だ。
「クワ・トイネを、エルフ族の故地を見捨てる事になってしまうか…」
「陛下、それは御身の責任では御座いません、ロウリア王国が野蛮な目的を掲げて侵攻等する事に責任があります」
個人的な良心と国家指導者としての判断の正誤は違うと分かってはいる。
「帝国が敷く世界秩序を守る為に同胞を見捨てなければならんとは、皮肉もよい所よ」
「第三文明圏もここ10年で急速に勢力を拡張しつつあるパーパルディア皇国によって圧政の度合いを強めています。以前は乱立する文明国や文明圏外国が互いに小競り合いを行う不安定な状況でしたが、現在は別の意味で安定性を欠いた状況になりつつあります」
パーパルディア皇国、元々はフィルアデス大陸南部中央の内陸国家として成立したパールネウス共和国と呼ばれた貴族共和制*11国家が元だ。今から約800年前、つまり余がトルキア王国侵攻で大失敗した件と重なる時期に発生したベスタル大陸南方国家群の突如とした滅亡とフィルアデス南方沿岸国の国力消耗が立て続けに発生するという不可解な事件*12が発生した。
その力の空白に割り込む形で共和国は南進を行い、現在の皇都エストシラントを含む大陸南方沿岸中央部を占拠する結果を生んだ。
「現皇帝ルディアス、あれは傑物よ、惜しむらくは嘗ての余と同じ事をしているという点を除いてな」
「…」
私よりも遥に長い時を生きて来た御方だ、私如きでは内心は伺いしれん。
「10年前に帝国としてではなくミリシアル8世個人としてロデニウス大陸の国情調査を内密に依頼した時は冒険者ギルド総出の激論になったそうだな、済まなかった」
「は、我々は表向き【政治には関わらぬ】を標語に東方国家群で国境を越えて活動しています故、当時は否定的な意見も少なからずあったと聞いております」
「その方等東方冒険者ギルドにとっても、ロデニウス大陸は活動の主体ではなかったと聞いている」
「我々冒険者ギルドはルディアス帝が拡張したエストシラントに本部を置いています故、第三文明圏周辺の文明圏外であるベスタル大陸やロデニウス大陸へ好んで赴く者は少数派となっております」
陛下には申し訳ないが、列強・文明国出身のギルド員の中には文明圏外のギルド支部へ赴任する事に同意しない者もいる。治安が安定せず盗賊・山賊・海賊からなる三賊*13や魔物による襲撃が頻発するのが表向きの理由だが、文明圏外国へ出向く事自体を嫌悪する事も関係している。
「陛下、今より話す事は今回の最終報告からは少し外れるのですが、宜しいでしょうか?」
「?、何か変わった事でも発生したか?」
「実は、私がエストシラント本部から出立する1ヶ月程前にクワ・トイネ公国のマイハーク冒険者ギルド支部から未確認飛行物体が都市上空に侵入したという報告が魔信で送られまして」
「東方国家群では野良ワイバーンや邪竜による襲撃は屡々ある様であるし、特に変わった事ではあるまい?」
我が帝国の「天の浮舟」には野良ワイバーン退治も任務の内に入っている、第三文明圏を始めとした東方国家群では軍や冒険者のワイバーン乗り達が古の時代の勇者の如く討ち取る事が子供向けの絵本として流通する事もある。
「…俄かには信じがたい事なのですが、ムーの飛行機械や天の浮舟の如く羽搏かずマイハーク上空に侵入し去って行ったとされ、それから時を置かずに帝国魔導戦艦に伍する程の大きさを持つ大船がマイハーク港沖合に姿を現したと」
「続けよ」
「その大船よりクワ・トイネ公国政府との外交締結を求める使節団と思わしき集団が公都クワ・トイネにて会談を行っていると市中に噂が広がり、時を置かずしてその謎の国家へ公国から使節団を派遣する決定がなされたそうです」
「今のクワ・トイネ公国の指導者の地位にあるのは、確かカナタ何某というエルフ族の人物だったな」
「公国中部における伯爵家現当主であり、頭脳明晰と公国内では名が知れた名族の生まれです」
頭脳明晰とは言い換えれば深く思考する人物という事でもある、その様な人物が即断即決とも言うべき決断をしたのは尋常の事ではあるまい。
「具体的な使節団の規模は分からぬか?」
「申し訳ありませぬ、正確な人数は分かりませんがギルド職員の目撃情報に依ると凡そ数十人規模という事と、使節団の代表として当代の外務卿が直々に首相から任じられたという事に御座います」
うーむ、文明圏外国では其々の国務大臣を特定の「家」が専任又は複数貴族家の持ち回りで担当する事も多い、時代遅れという面も確かにあるが、逆に言えば技法を代々受け継いでいる替えが効かない無形の技術でもある。
何にせよ、断言するには情報が少なすぎる。
「魔写でもあれば話は別となるが…」
「マイハーク支部長と職員からの証言を基にしたスケッチならば、従者に預けた荷物の中にあります」
「侍従官よ、荷物を検査した上で持って来てくれ」
侍従官が足早に控えの間に赴く。
10分程して、何かが描かれた羊皮紙を数枚持ってくる。
「これか…」
「1枚目が魔信を介して描かれた物、2枚目はシオス王国経由の定期商船にて職員が直接送り届けて来た物となります」
一見すると我が帝国海軍のロデオス級に見えなくもないが、双胴ではなく魔導戦艦の様な単胴艦、片側によった横長の尖塔らしき物は艦橋だろうか?
「この写生*14は何時描かれた物か?」
「1枚目は今年の1月25日に冒険者ギルド本部へ緊急信された報告を基に描かれた物で、2枚目と3枚目は2月12日に送り届けられた物です」
「3枚目は…これは客船*15だろうか?」
高台から描かれた2枚目とは違い、3枚目は横から描かれた物だ。
船体下部の喫水線より少し上が黒く塗りつぶされているが、上は輪郭以外何も描かれていない、真横から描いているにも関わらず船橋に張り出し部が設けられている。
「帝国の魔導船やムーの機械船と比べても優美さでは劣っておらぬな」
「第三文明圏では未だ主流の帆船とはまるで違う船としか思えませぬ。エストシラントにも定期的に来訪するムーの定期貨客船にも見るのですが、支部長からの報告では吐き出す煙が妙に薄かったと」
魔導機関で駆動する魔導船は煙を吐かない、ムーの機械船は蒸気機関と呼ばれる装置で動いていると大分前の先進11ヵ国会議に参加していたムー海軍の機甲戦列艦艦長から説明を受けた事がある。
「興味深くはあるが、この断片情報で帝国情報局に調査を依頼しても現状では真剣には取り上げられはすまい」
「我々とて半信半疑なのです、何かが起こっている事は間違いないのですが…」
「現状では静観するしかないな。今すぐは無理だろうが、折を見てそれとなく情報局に伝え様と思う」
「この情報を含め、よく伝えてくれた」
手を叩き侍従官を呼ぶ。
「冒険者ギルドに対する今回の依頼料だ、皇帝としてではなく、一依頼者として受け取ってくれ。それと手配は住んでいる故今日は帝都のホテルで泊まって行くと良い、そして此方は依頼料としてのパソ紙幣*16に明日のエストシラント魔導港行きの航空券だ」
「契約内容より報酬が少し多い様ですが…」
「随行員が2人待っておるのだろう?君は何度か来た経験があるが彼等は初めての様だ、第一文明圏へ来た記念に何か買って行く様に」
これ等の依頼は元より余個人の私費から出ている、公費を使う訳にはいかぬからな。
「本部長には、これからも冒険者ギルドをよろしく頼むと伝えてくれ」
「その言葉でギルド長も喜びましょう、確かに御伝え致します」
意思の間よりギルドの使者が退出する。
「ふう…」
「陛下、替わりの茶を用意致しました」
「ほうフェン茶*17か、珍しいな」
「はい、ゴースウィーヴス南の開拓村トウケイ*18産の物です」
「フェン人の移民団が荒地を何代にも渡って開墾した村であるな、今では良き茶を産出する立派な農村になったか」
「はい、ゴースウィーヴスの茶市場では既に多く取引が成されておりまして、近年ではルーンポリス茶葉市場にも出回り始めております」
「50年程前に魔導回路技術の応用によって開発された魔導式冷却庫*19の賜物だな、今では内陸の小都市でも新鮮な魚介類を食する事が出来る様になるとは」
「初期の冷却庫は魔導回路板の大きさから大型金庫の様な製品ばかりでしたが、ルーンズヴァレッタ魔導学院*20による冷却魔導版の断続的改良により小型化に成功した為、今では都市部中流家庭にも普及しつつあります」
元々は個人的素質に頼らずに魔導兵器の操作が可能となる様に長年試行錯誤を繰り返していた魔導回路技術。今では民生魔導製品への転用も進められ、国民生活の発展に寄与している。
ふとあの使者が最後に持ち出した話題を思い出す。
「侍従長、すまぬが神森…リーン・ノウの森に関する装飾本を持って来て欲しい」
「神話関連の書籍は地下図書空間のかなり奥の方に御座います故、少々お待ちを」
この別荘の地下には個人的に集めた全世界の様々な書籍を収集した広大な空間がある。列強・文明国・文明圏外国問わず気に入った書籍を私費で集めているのだが、既に万を超えてしまった故、一部は密かに民間に流す事もある。
侍従官数名を率いて魔導昇降機で地下に降りて行くのを視線で見送りつつ、カップの茶に視線を移す。
「第三文明圏におけるパーパルディア皇国の躍進、ロデニウス大陸におけるロウリア王国の蠢動、第二文明圏西方にて侵略を行う謎の国家、そしてクワ・トイネに出現した更なる謎の国家、好むと好まざるとに関わらず、変革の時が来たのかもしれぬな…」
フェン茶を飲みつつ遠からず起こるであろう激動の世を想像し、少し憂鬱になる。
如何でしたでしょうか?
「皇帝個人は独自の依頼で把握するべく努めていたが、帝国情報局の方は第三文明圏からも離れた大陸の文明圏外国を重要視しておらず問題視していなかった」という形で纏めた次第となります。なろう・書籍版とコミカライズ版における神聖ミリシアル帝国は大きく産業その他の設定や能力が異なる為、本作では双方の中間辺りを基準に書いております。
例題 コミカライズ47話
「すべての戦場の裏には我々情報局がいて、あらゆる記録を持ち帰る」
書籍版同様に情報局職員ライドルカ・オリフェント氏がトーパ王国にて情報収集を行っていた事が語られるが、書籍版よりも詳しく調べていたらしく、フェン王国内や日本国によるデュロ爆撃をアルネウス(と思われる人物)に報告している。
他の差異
①書籍版と違い「戦車と言う名の兵器」発言が無く、戦車という概念が存在するかの様な発言をしている
②デュロ爆撃を行ったBP-3Cを特に説明を挟む事無く【爆撃機】と名指しで発言(爆撃機の概念がある?)
③ライドルカ氏が情報活動をした戦場では自衛隊は誘導弾を使用していないのに古代魔法帝国の誘導魔光弾に類似する兵器を有すると掴んでいる
④本人1人による調査か他局員との合同調査か不明な上、情報局現地協力者から送られた情報の可能性もある
地球の歴史を基に時系列でみた場合ミリシアル8世の生誕期
日本⇒縄文時代中期から後期(5000~3000年前)
欧州⇒地中海のミノア(クレタ)文明、鐘状ビーカー文化期
中近東⇒メソポタミア文明&シュメール人の最晩期にあたる
インド亜大陸⇒インダス文明古代都市モヘンジョダロ
上記に相当する“遥か昔の”時代となります。
参照
明治学院大学機関リポジトリ 戸谷浩著
『近世ヨーロッパの東と西ー共和政の理念と現実』
近世ポーランド・リトアニア共和国における貴族層(シュラフタ)が議会(セイム)を通じて国王選挙権や国政を行った独特な貴族共和制を行った。ちなみに著名な軍人としてソビエト連邦赤軍元帥のコンスタンチン・コンスタンチノヴィチ・ロコソフスキーの父親がポーランド貴族層シュラフタの出身である。
posfie
『意外と古いぞ冒険者ギルド』
「冒険者ギルド」と呼ばれる概念の名前の歴史。
TRPG方面における所謂【冒険者の酒場(形態は西部劇のウェスタン・サルーンに近い)】自体はソードワールド1.0(1989)から存在する他、J・R・R・トールキンの指輪物語に出て来る宿屋“躍る小馬亭(新版翻訳)”も概念的には近いが、「冒険者の酒場(又は店)」から直線的に「冒険者ギルド」の概念が出て来た訳ではないらしい。