生徒(黄昏接触済)に転生したけど何とか原作以上の結末を目指します。 作:冴月冴月
「なるほど、今までも何人か捕まえたけど全員ハズレと。まぁ手配書に顔写真とか載ってない以上仕方ないとは思うけどね」
「あ、あの、なんで私もここに…?」
ブラックマーケットのどこかの裏路地。セヤたちに案内されてやってきたこの場所で、私たちは改めて話を聞いていた。隣では己に場違い感を感じてか、分かりやすく戸惑ってるヒフミがいる。そりゃあそうだ、トリニティのお嬢様には無縁の場所だろうよ。
というのも、先程の一騒動の後にしれっと帰ろうとしていたのを見つけたので、引っ捕まえてここまで引っ張ってきたのだ。あの場に居合わせていた以上、彼女だって関係者だ。絶対逃がさんよ。恨むならこっそりブラックマーケットなんかに立ち入った自分を恨め、ヒフミ。
さて、2人に詳しい話を聞いた所によると、『山猫』というのは、このブラックマーケットで爆破テロを何度か起こしたことのあるテロリストらしい。
和服にライフルを携帯しており、獣耳が特徴とのこと。……いやどっかの災厄の狐さんとやってる事一緒では? え、まさか、無いよね? ね?*1
そうじゃなくとも、こんな偶然が有り得るのかというレベルで私の特徴に当てはまっているし。というかネームド生徒にも結構当てはまってる。特に百鬼夜行は和服がデフォだから合う子が多いけど……でもそんな事する子は居ないし……。こんな所でネームドに会うことには多分ならない…はず。
ま、まあとにかく、襲撃された理由も分かり、ヘルメットの2人とも和解できた…かは分からないけど、一先ず銃口向けるのは止めて貰えたからよしとしよう。本物を捕まえられたら万事解決なわけだし。
こればかりは、この袴のような制服のままだったのが良くなかったとは思う。花鳥風月部の拠点から直行でブラックマーケットまで来てしまったばっかりに起きてしまったことだ。
動きにくいなとは常々思っていたし、こうなる事なら来る途中で何か別の服を買って着替えておくべきだったかもしれない。
そんな後悔もそれなりに、私たちはその後軽い自己紹介と作戦会議に興じ、集合時刻と場所を決めて一度解散した。
物資調達やら何やらを終わらせる為の準備時間。
私はセヤたちと別れるや、すぐにヒフミにとある店の場所を訊いた。
「戻ったよ〜」
「も、戻りました…」
数十分後、セヤたちのいる裏路地に帰ってきた私たちは、建物の壁に背を向けて胡座をかいた姿勢で銃の整備をしていた彼女に話しかけた。
丁度整備を終えたらしいセヤが振り返る。
「おう、思ったより早かった……ってアンタその格好…」
私の姿を見たセヤが驚いたように声を上げた。
その反応に私は大満足で胸を張り、その場で1ターンした。
「ふふふ、どう? もう山猫モドキとは言わせないよ?」
そう言った私の服装は、あの袴のような制服ではなくなっていた。
白いシャツに藍色のキュロットスカート、同系色のジャケット。ボタンなどの金属パーツの金色が良いアクセントになっている。
まさにブラックマーケットにいそうな黒ずくめ。
長くて広がる髪も後ろで一纏めにし、素性を隠す時に使う用のサングラスも胸ポケットに引っ掛けてある。
弾薬の消費が少なかった私は、自由時間に被服店を訪れ、新しい服を調達してきたのだ。
…にしてもヒフミ、やっぱりマーケットの地理に詳しすぎる。ダメ元で訊いたのになんで被服店の場所知ってるんだ君は。もう突っ込まないでおくけども。
「おぉ……なんつーか……いかにもって感じの格好だな?」
「なんか思ってた感想と違うなぁ? ……まあ良いか、とにかく!」
私は気合を入れるように声を張る。
「服も一新して来たから、私はもう無敵! 頑張って本物の山猫を見つけようね!」
さて、結論から言おうか。
『山猫』と呼ばれて賞金が懸けられていたのは、生徒ではなかった。
キヴォトスで『生徒』以外の住民として数えられる存在である……
……猫の獣人だった。
獣耳が特徴、というか獣そのものじゃないか。手配書を書いた者がどれだけ『山猫』の容姿を知っていたのか定かじゃないが、書き方に悪意がある気がする。
……ともかく、それを判明させるべく、確保する為に取った作戦というのはこうだ。
見た目が分からない以上、確実に本物を捕まえるには現行犯しかない。という事で、テロが起きる可能性の高い店で張り込みをすることにし、張り込む店を3ヶ所に絞った。
セヤの下調べによると、『山猫』が爆破する場所は大体『武器屋』であることが多いらしい。何故かは不明だが。
なのでブラックマーケット内でまだ被害に遭っておらず、且つ利用者の多い所をピックアップしたのだ。
そしてそれぞれの場所を張り込み、連絡を取り合いながら見張りを続け……
見事内1ヶ所に『山猫』の仕業らしき爆発が起こったので、合流して鎮圧、確保した。
ちなみに私は連絡手段を持っていなかったので、ヒフミとチームアップしてヒフミのスマホで連絡を取っていた。ヒフミ様様だ。
作戦参加に関してヒフミはギリギリまで嫌がっていたのだが……私が発した一言で口を閉じざるを得なかった。
『ヒフミ』
『は、はい、なんですかミハナさん?』
『はいこれ、被って』
『えっ?』
私がヒフミに手渡したのは、全身が丸ごと隠れるような白いマントと、先ほど食べたたい焼きの袋に穴を開けたもの。
『えっと……これってどういう……』
ヒフミは若干嫌な予感を感じ始めたのか、それらを受け取る前に私に意図を聞いてくる。
『どういう、って……これから山猫を捕まえに行くんだから、素性を隠せないと困るでしょ?』
当然のような口調で言いながら、私は胸に掛けていたサングラスを装着して見せる。これだけでは心許ないので、ジャケットを脱いで、代わりにヒフミと色違いのフード付きマントを羽織る。
『ほら、中々様になってない?』
くるりとターンしながら聞いてみるも、ヒフミは答えてくれなかった。
代わりに恐る恐る、といった風に声を震わせながら、違う質問を投げ返してきた。
『ま、まさかですが……私も作戦に参加しなきゃいけないんですか?』
『そうだよ?』
沈黙が降りた。間髪入れずに即答した私に対して、ヒフミは信じられないという表情をした。
『……い、いやいやいや!? 待ってください、私は無理ですよ!! ここには内緒で来ているのに、そんなことしちゃってもしティーパーティーにバレたら……』
『だからバレないようにそれ渡してるんじゃん! 制服ごと身体と顔隠しちゃえば大丈夫だよ!』
『そ、そういう問題じゃ……あうぅ…!』
ヒフミは頭を抱えた。そりゃあそうだ、今からやるのはブラックマーケットの賞金稼ぎ、真っ当な仕事とはとても言えない。
バレない為にも目立つ行動はしたくないだろう。
『大丈夫大丈夫! バレなきゃ犯罪じゃないんだよ! セーフ!』
『やった時点でアウトですよぅ!!』
路地裏にヒフミの悲鳴のような声が木霊した。
しかし抵抗虚しく、ヒフミは私の手によってマントを着せられてしまう。
『うん、ばっちりだね! 制服もペロロ様のリュックもしっかり隠れてるよ!!』
『や、やめてくださいぃ……トリニティに帰れなくなっちゃいます……』
『ヒフミ』
両の瞳をグルグルと回しながら尚拒否するヒフミに、私は短く呼びかけた。
『さっき、君がした発言、覚えてるかな?』
『へ……?』
その時の私は、自分では見ることはできなかったが、相当悪い笑顔をしていたと思う。
『なんでも手伝う……確かにそう言った、よね?』
『……あっ』
ヒフミが気の抜けたような吐息を漏らした。同時にパタリと抵抗が止まる。
『ってことで、えいっ!』
その隙に、私はヒフミの頭に紙袋を被せた。
『……卑怯ですよ、酷いですよミハナさん……!』
『ごめんごめん、でもあんなこと気軽に言ったヒフミも悪いよ? 次からは言質取られないように、もっと危機感を持って発言すること』
『ううぅ……!』
『大丈夫! 君は連絡手段だけ担ってくれればいいから! 突撃と制圧は私たちで全部やるから!』
『頑張って! 『ファウスト』!!』
『そんな仰々しいコードネームまで……あうぅ〜…!』
『あぁ、私のことは『メフィスト』って呼んでね、今回だけじゃなくて、この格好の時は常に』
『なんでそんなノリノリなんですかメフィストさん〜……!』
作戦中は終始私に文句を言っていたが、なんだかんだヒフミ……いやファウストはしっかりと役目を果たしてくれたのだった。
3ヶ月。
実に3ヶ月の間放置しておりました。申し訳ございません(土下座)
なかなか展開が上手く思い付いてくれず…インスピレーションを待っていたらこんなことに。
これからも投稿ペースは亀だと思います……ちまちま投稿していきますので、よろしくお願いします……