生徒(黄昏接触済)に転生したけど何とか原作以上の結末を目指します。 作:冴月冴月
道の両側に建ち並ぶ店頭には、改造が施された武器の数々が並べられ、表通りには武装したロボットや、いかにも不良らしい格好をした生徒たちが行き交い、少し裏路地に道を逸れれば、その身柄を狙われることになる。
そんな物々しい空気感の中で、羽織は置いてきたとはいえ小綺麗な和風の格好をしている私は、さぞ周りから浮いているのだろう。
ジロジロ*1と不良生徒たちから投げられる好奇の視線に晒されながら、私は街道の奥へ歩を進める。
━━━━━ここはブラックマーケット。連邦生徒会の目が届かない、文字通り真っ黒な取引の数々が行われている場所である。
「百鬼夜行を出てみようと思うんです」
そうコクリコ様に宣言する前、私は色々と脳内で今後の事を考えていた。
これからの計画は、まだ未完成ではあるが考えてある。その中でも大前提として、百鬼夜行は離れなければならない。
何せ私がやりたいのは、この世界を原作よりもずっと良い結末に導くこと。それなのに百鬼夜行に留まっていては、他のストーリーへの介入もままならないからだ。
……と、思っての方針だったのだが。私はつい先程、致命的な部分が分からないことに気付いてしまった。
というのも私は、
現在の時系列を知らないのである。
そもそも今っていつ? という所からなのである。
………(
(以下長たらしい言い訳の数々が続く)
……失礼、話を戻して。もし今の時点で本編が開始していた場合、現状の把握とどう介入するかについての計画の再構築を急がなければならない。
本編前ならば好都合ということで、色々な学園に赴き、ネームド生徒との交流を深めて人脈を作っておくことも可能だろう。その下地作りとしても、時系列を探りながら自身の立ち位置を明確に決めておくことが、現在の最重要事項。
その為にも、ざっと挙げるとして、まず真っ先に来るのは安定した生活環境の確保。それも『学園に無所属』の状態が望ましい。それだと不良生徒ではないかって? それはそう。けれど学園無所属でも実装されている生徒は居るから、無所属であることがシャーレと接触する上で不利になることは無いだろう*2。なので何ら問題ない。
そこまでして無所属に拘る理由として挙げるのは、学園自体が国のような扱いを受けるこのキヴォトスで、どこかの学園に属しているという事はそれだけで行動を大幅に制限しかねないことだ。
トリニティとゲヘナのように、犬猿の仲でよろしくやっている学園同士もあるのだから、幾らシャーレに入部した上だとしても、あまりに好き勝手に学園間をうろつき回れば所属校の生徒会ポジションから圧が飛んでくることになる。
あちこち飛び回らなければ成り立たない私の目的において、そういう壁は正直ものすごく邪魔である。
だからこその無所属。それに所属の無い状態でシャーレに入部出来れば、必然的に本所属がシャーレになる。専属生徒である。そうすれば先生の近くに合法的にずっと居られるので全ストーリーに介入可能。いや、完璧では?*3
と、いう訳で。ここまで考えた上でコクリコ様に百鬼夜行出立の旨を伝えたのだが。
結果その後私がどうなったか。
正解は、
シュロに後ろからしがみつかれている。
である。
お前が何を言ってるのか分からない? それ私の台詞。今の状態になった理由? そんなの私が聞きたい。
百鬼夜行を離れると言った途端、拗ねて背を向けていたシュロが凄い勢いで振り向いたのだ。「え゙」という見事な濁音の声と共に。
その後の二言目が「本気ですか?」対する私の返事が「うん」
そして今これ。台詞これだけ。
間に何かすっ飛ばしてる場面あるのでは? となる程唐突である。
けど無言で立ち上がってテケテケと此方に近寄って来るシュロは可愛かった。何あれ。守りたい。
……にしても離れてくれない。会話を試みたが「…話が違います」とだけ言ってまた黙ってしまう。
少し身を捩れば更に強くくっついてきた。ちょ、そんな細腕の何処からそんな力gいだだだ痛い痛い。
そして肝心の何故急にこうなったかについては……満悦そうなニコニコ笑顔のコクリコ様が教えてくれた。さては私たちで眼福感じてるなこの人。
「なるほどねぇ〜? シュロは私がこれから花鳥風月部として一緒に活動するものだと思ってたからあんな反応したのかぁ〜このこの、愛いやつめぇ〜!」
「そうよぉ、愛いやつやろ?」
「それはもう凄く! ほれ、うりうり〜」
「突っつかないで下さいよぅ! ……悪いです? やっと手前にも後輩が出来たと思ったことがそんなに悪かったです?」
「いやいや悪くない、悪くないよ全然!」
ただめちゃくちゃ可愛いってだけで。
「よく考えればそう思うのも分かるよね。まだ目覚めて1日も経ってないのに出ていく宣言する方がおかしいよ。ごめんね、期待を裏切って」
「い、いえ裏切られたとかはそんな…でも本当に行っちゃうのですか? 今からでも花鳥風月部に…」
「うーん、ごめん。百鬼夜行を出るのはもう決めちゃったんだ」
こればかりはどうにも譲れないのだ。でも。
「でも花鳥風月部には入部させて貰うよ」
「は、はい?」
入部くらいなら問題ないだろう。
表立って彼女たちの活動に加担することはおそらく出来ないが、幽霊部員として名前だけでも入っておくなら喜んでする。
「部員として、定期的にここに顔出すからさ、その時たくさん話そう? 私だって、寝てる間ずっと様子見ててくれた恩人兼先輩に、何もしないでさよならは出来ないよ」
そう言うと、シュロはどうやら納得してくれたようだった。
「……仕方ないですねぇ…ならちゃんと帰ってきて下さいね?」
「うん、なんなら1週間置きに帰ってこようか?」
「流石にそこまでしなくていいです」
「そんなぁ」
半分冗談の提案は軽くあしらわれてしまった。さっきまであんなにくっつかれていたのに何だこの差は。
ともかくして、その後コクリコ様にも*4頷いて貰い、私の百鬼夜行出立は無事承認されたのだった。
シュロ「一緒に花鳥風月部として百物語創りするって言ったじゃないですかぁ!(言ってない)」
存在しない記憶(という名の思い込み)でひとりでむくれちゃうシュロちゃんかわいいね。
という訳で1ヶ月ぶりの黄昏生徒です。遅くなりまして申し訳ない。
息抜きに思いついたデカグラマトン系の小説と並行でちまちま執筆していきますので何卒これからもよろしくお願いします。