生徒(黄昏接触済)に転生したけど何とか原作以上の結末を目指します。 作:冴月冴月
「……
ヒフミの自己紹介の一節に、私は違和感を覚えた。
学年。彼女は原作では確か、
「…ヒフミって1年生なの?」
「え…? は、はい…トリニティ総合学園の高等部に今年度入学したばかり、ですが…何か気になる所でもありましたか?」
「あっ、いや、そういう訳じゃなくてね」
いけない、つい不自然な訊き方になってしまった。咄嗟に口から誤魔化しの一言が飛び出す。
「…トリニティ1年目にしてブラックマーケットなんて、随分アグレッシブな子だなって………」
飛び出てきたのは半ば皮肉のようになった言葉だった。決して悪意はない。……本音は若干混じっているかもしれない。
「あはは……それほどでも…」
「褒めてないからね?」
何故かへにゃりと笑うヒフミにすかさず突っ込む。
……にしても、1年生か。つまり、原作から1年前って事でいい…のか?
なら、おそらく連邦生徒会長もまだ失踪しておらず、先生も赴任してないと見ていい…と思う、多分。余程原作ブレイクした別世界線でもない限りはそう考えていいはず。……その可能性も簡単に捨てきれないのがブルアカ世界の怖い所だけど。
「…まあいいや、じゃあ私も名乗るとしようかな」
気を取り直し、私も自己紹介をする。
「紫雲ミハナだよ。同じ理由で追いかけられて出会ったご縁ってことで、これからよろしくね」
同じ理由で追われたご縁…我ながら言ってる意味は分からないけど、仲良くなれるに越したことはない。ペロロ関連を除けばヒフミはいい子だし、私だって仲良くなりたいと思っている。
「…それで、危険をおかしてまでこんな所に来た理由は? 何か大事な捜し物でもあるの?」
「!」
互いの名前も知れた所で*1、次はマーケットに来た理由の方を訊いてみた。すると突然ヒフミの目にギランと強い光が宿ったので、それを見て私は直感した。多分この後、ヒフミは私の想像通りのことを言う。
「勿論! 私には、授業を欠席してでも手に入れなきゃいけない物があったんです!!」
いや、授業はちゃんと出ろ。堂々とサボるな。
そう内心突っ込む私の目の前で、ヒフミはゴソゴソとペロロ型リュックサックに手を突っ込み、小さな何かを取り出して私に差し出してきた。見るとそれは小さなぬいぐるみ。白くて、何やら可愛らしい衣装を着せられている。目は焦点が合わずぐるりと回って、舌がだらし……愛らしく口の端にペロリと出ている。
「━━━━━この数量限定のマジカルペロロ様を手に入れるために、私はここに来たんです!!」
声高らかに宣言するヒフミの手には、デフォルメされた魔法少女*2の衣装に身を包んだペロロのぬいぐるみが乗っていた。
う ん 知 っ て た 。(2回目)
この子本当に人の期待を裏切らないな。
他人事のようにそんなことを考える。あまりに予想通りなので、呆れを通り越して悟りの境地にまでぶっ飛んだ気分になる私だった。
「えっ、じゃあミハナさんは、これからここで働くってことですか!?」
「ま、まあざっくり言うとそうなるんじゃないかな…? どっちかって言うと定職に就くんじゃなくて、傭兵とか賞金稼ぎみたいなことするつもりだけど……」
ヒフミにだけブラックマーケットに来た理由を聞くのもアレだったので私の目的も話した所、ヒフミはそれを聞いて心配そうに眉尻を下げた。
「や、やめておいたほうが良いと思います……ブラックマーケットは怖い所なんですよ? さっき追いかけてきたような不良さんもたくさん居ますし、怖いマーケットガードも巡回してます。裏路地にも危険がいっぱいですし……長居する場所じゃありませんよ……?」
「その怖ーいブラックマーケットに自らやって来てカモられそうになってたトリニティさんはどこのどいつかな?」
「あうぅ…!? そ、それは……」
どの口が案件である。
「というか、なんでマーケットガードとやらが居るなんて情報まで知ってるのさヒフミは。まさかとは思うけど、君ブラックマーケット初見じゃなかったりする?」
「……は、はい、既に5回くらい来てます……うぅ……」
「…不良に追いかけられた回数は?」
「内3回です……」
「3回も!!? え、どうやって凌いだの?」
「裏路地などの入り組んだルートを使ってなんとか撒いてました……」
今自分で「裏路地は危ない」って言ってたじゃないかぁ……!*3
何、もしかして経験談? なら信憑性は高いかもしれないけど……はぁ。
……なるほどなるほど、ヒフミが思ったよりアウトローだったことは理解した。
「あはは……今回は逃げきれなくて困ってた所だったんです……なので本当に助かりました……」
助かりました、じゃない。
どこをどう見たら『平凡』なんだ君は。
もう一度言うけれど、せめて来るなら素性を隠すなりしようとは思わないのか。
その校章を隠すだけでかなり違ってくるのではと思うのは、私だけなのか。
「……よーしよく分かった、突っ込むのはもう辞めておこう、余計疲れちゃうからね」
元よりヒフミがぶっ飛んでいるのはゲーム内で判明していた訳だから、私は今何もおかしいものは見ていない。突っ込むようなものは見ていない。『当たり前』のものを見ていただけだ、うん。*4
「あっ、やっぱり疲れてますよね…? さっきの戦いほぼ任せちゃってましたし…お詫びと言ってはなんですけど、たい焼きの分は私が払っておきますので、遠慮なく食べてくださいね」
疲れてる理由はそっちじゃないよヒフミ。
あとそんな無双した記憶は無いよヒフミ。
「いただきます……モキュモキュ…」
まあ、有難く頂くけども。
……んまい。
「ご馳走様、ヒフミ」
「いえ、むしろこれだけじゃ足りないんじゃないかと思ってるくらいです……ミハナさん、もし何か私に手伝えることがあれば何でも言ってください、力になりますから!」
ん? 今何でもって*5
……冗談は置いておいて。たい焼きを食べ終えた私たちは、マーケットの出入口付近まで戻って来ていた。私はマーケットに滞在するので行く必要は無いけど、ヒフミがまた不良に追い回されないとも限らないので、護衛のようなものとしてついて行った。…ただし腕に自信はない。
ちなみに道案内はヒフミである。迷いのない足取りだった。確信犯的な歩き方だった。ギルティだよヒフミ。
「あっ、見えてきた」
「出口、ですね…ミハナさん、改めてですが、今日は本当にありがとうございました」
「いいって言ってるのにな。…次はトリニティに遊びに行くから、こんな殺伐とした場所じゃなくて、お洒落なカフェとかで会おうね、ヒフミ」
「はい! 今度連絡しますね!」
そう言ってヒフミが自分のスマホを軽く掲げてみせる。
私たちは先程、連絡先を交換した。私のスマホはコクリコ様から貰ったもので、彼女曰く中古品らしい。一昔前の型なのでちゃんと動くか少し心配だったけれど、有難いことにスムーズに操作することができた。
記念すべきモモトーク1人目ゲットである。
「じゃあ、また!」
ヒフミが背を向け、出口へと歩き出す。
見送る私は、その行く手にある物陰で、キラリと何かが光るのを見た気がした。
目を凝らすと、それは━━━━━
ライフルの無機質な銃口だった。
「ッ! 危ないヒフミ!!」
「えっ…きゃっ!?」
少し乱暴だけど、私はヒフミの制服の襟を掴んで床に引き倒す。
━━━━━同時に大きく銃声が鳴り、私たちの頭の真上を弾丸が掠めていったのを感じた。
これは流石ファウスト様って感じですね(白目)
それでも可愛いからヒフミは困るんですよ(ニッコリ)
最近ミハナさんのイメージ立ち絵を描くのにハマって執筆の方が遅くなってしまってます。キャラデザ考えるの好きなのでつい……ね(目逸らし)
早く本編入りたいけどその前に書きたいことが多過ぎる……うあー