生徒(黄昏接触済)に転生したけど何とか原作以上の結末を目指します。 作:冴月冴月
「痛た…ど、どうしたんですかミハナさん…!?」
「ごめんねヒフミ、いきなり引っ張っちゃって」
驚いたように私を見上げるヒフミに謝罪しながら、弾丸が飛んできた前方を睨む。既に銃口は引っ込められたのか、その先に光るものは何も見えない。
「……はぁ、また敵襲か」
私は背負っていたライフルを手に取り、残弾を確認して構える。
先程外したからか敵も警戒しているらしく、すぐに次弾は撃ってこなかった。
頭の獣耳をアンテナのように動かして、周囲の音を拾おうと試みる。ちなみに私の獣耳はちゃんと聴覚をもっており、小さい音や人の耳では聞けない高さの音も拾える。他のキヴォトス人の獣耳もそうなのかは知らないけれど。
━━━━━集中して動かずにいる私の背後で、踏み込むような足音が1つ聞こえ、
「━━━━━そこッ!!」
私は音のした方向に吸い込まれるように銃口を向け、1発放った。
鋭い音を立てて飛んだ弾丸は、今まさに物陰から飛び出したらしいヘルメットの生徒の手に当たり、銃を取り落とさせる。
「ぎゃっ!?」
「気配消しが甘いよ!」
踏み込んで一気に接近、足元に落ちている銃を蹴って遠くへ飛ばし、完全に丸腰となった相手を組み伏せる。今蹴り飛ばしたのはアサルトライフル…ならさっきのスナイパーとは別人か。
「君はどっかのヘルメット団? 何の目的で私たちを━━━━━ッ!?」
問い詰めようとした瞬間、ガッ! と殴られたかのような強い衝撃が頭に響いた。金属音が真横で聞こえ、見るとそこには転がる銃弾。
どうやらスナイパーの方からヘッドショットを喰らったらしい。目眩に襲われながらもその場から退避する。少し離れた所で、ヒフミが心配そうにこちらを見ていた。
「ミハナさん!!」
「ヒフミ、援護頼める!?」
「ごめんなさい! さっきの戦闘で弾薬がほとんど…!」
そうだった。
私とヒフミでは使う武器が違うので、私の弾薬を渡してあげることもできない。
……仕方ない、ここは私のワンオペって所か。
目眩はヒフミとのやり取りの間に治まった。安定した視界で先程私を撃ってきたスナイパーを探す。
……見つけた、さっきとは違う遮蔽物に隠れている。
相手も見つかったと悟ったのか、隠れるのをやめて堂々と銃口を向け、撃ってきた。
身体を捻ってその弾を避け、そのまま距離を詰める。
相手の姿が見える位置まで近付くと、その子も先程組み伏せた子と同じヘルメットを被っていた。仲間同士、ということか。
「━━━━━ッ、クソっ!」
ヘルメットのライフル使いは間合いを詰められて焦ったのか、銃身を振り回して私に当てようとしてきた。合わせるように自身の持つ銃を当て、弾いて手放させる。
「無駄だよ」
銃をヘルメットのバイザー越しに額に向ける。撃ったとしてもこの子は無事だろうけど、ヘルメットは多分割れる。
「ま、待て! 撃たないでくれ!!」
焦ったように懇願される。理由はおそらく、ヘルメットを壊されるのが嫌だから。
ブルーアーカイブのアニメ版では、アビドスに襲撃を仕掛けたカタカタヘルメット団はヘルメットを壊されて慌てていた。その様子からして、ヘルメット団は基本顔を見られたくないのだと思う。
普通に撃っても「痛い」で済まされてしまうので、今回はそこを突いてヘルメットを質にさせて貰った。悪く思わないで欲しい。
「…君が私の質問に答えてくれるなら、撃たないよ。早速だけど、君たちはなんで私たちを狙ったのかな?」
一番知りたいことから質問する。またお金関係なのか、それとも━━━━━
「…は? なんでって……お、お前だろ? 賞金がかけられてる『山猫』って奴は………」
━━━━━ん?
……賞…金? 山猫?
私は一瞬ぽかんとしてしまった。…確かにお金関係ではあるけれども、それにしたってあまりにも斜め上の返答。私は賞金をかけられた覚えは一切無いし、なんなら今日来たばかりだ。
「……ごめん、何のことかな?」
「と、とぼけんじゃねえ! 和服に獣耳でライフル使い! 山猫の特徴と完全に一致してんだよ!!」
ヘルメットの生徒が一枚の紙を私に突きつけてくる。見ると、賞金の情報が記された手配書のようだった。結構な額がかけられている。
……しかし、そこには箇条書きで通り名と特徴が書かれているだけで、顔写真や似顔絵の類が一切載っていなかった。それ一番必要な情報だと思うんだけど。
「…………なる、ほど。確かに私と特徴は一緒だね」
「だろ!? だから……」
「………でもさ、決定的に1つ違う所があるんだよ」
「はぁ………!?」
「……私、猫じゃなくて狼なんだよね」
「………えっ」
「『山猫』って呼ばれてるくらいなんだし、その人って猫なんじゃないの?」
「…………………」
ヘルメットの子が黙った。薄らと見えるバイザーの向こう側で、気まずそうに目線が逸れた。
「……い、いや手配した奴が見間違えた可能性だってあんだろ! そんなんでアタシが納得すると思ったか!?」
が、すぐに再起動してそう言い返してきた。
「いやー、そう言われてもね。そもそも私は今日ブラックマーケットに来たばかりでさ、ここで賞金かけられるほどのことを何度もやらかすのは無理なんだよね」
「ぐ……し、証拠あんのかよ証拠!!」
うーん納得してくれない。事実なのに。まあ賞金が懸かってる人物が見た目不明だというなら、疑わしい人物を手当り次第に捕まえようという考えも分からなくは無い。手っ取り早くはあるし。
それはそれとして私は山猫じゃないので見逃して欲しい。何とか話術で丸め込んで切り抜けなければ。
「証拠……は、確かにないけどね。獣耳に和服の人なんて正直珍しくないし、写真とかも無い以上は逆に私って断定するのも無理じゃないかな? 現行犯なら分かるけど」
「うぐぅ……」
よし、押されてる。
ここでもうひと押し……
「…じゃあ提案なんだけど、私と一緒にその賞金かかってる人捕まえない?」
「は?」
「手伝うってこと! 報酬はー…ほんのちょびっとだけ分けてくれればいいから! それで本物が無事捕まったら、私の無実も証明されるでしょ?」
協力申請。
私も
これから傭兵業や賞金稼ぎで食べていくつもりなのだから、やり方を学ぶ上でも丁度いい。
「ね、どう?」
銃口を少し離す。私はあくまで『交渉』にしたいから。銃を構えていては脅迫になってしまう。
「……わかったよ」
ヘルメットの子が観念したように言った。
「つーか、拒否った所でどうせボコボコにされて終わりだろ? もう抵抗する気も起きねーよ。ヘルメット壊されたくねーし」
戦意喪失した様子で両手を上げる。やっぱりヘルメットは壊されたくないらしい。
「うん、それなら良かった」
銃のセーフティを戻し、背負い直す。
そしてヘルメットの子に手を差し出した。
「じゃあ、ちょっとの間よろしくね。君、名前は?」
少し間を置いた後、その子は返事と共に手を取ってくれた。
「……セヤ。仕事ではそう名乗ってる」
「コードネーム? 素性バレないようにってこと?」
「まぁそんなとこだ」
「考えられてるなぁ」
流石ブラックマーケットで賞金稼ぎなんてやってるだけある。
……私も仕事する上で、そういう名前を決めておいた方がいいかもしれない。後で考えておこう。
ヘルメットの子改めセヤと歩いて戻っている内心で、私はそんな事を考えていた。
ストックが、ストックが溜まらない……!!
どうも冴月²です。5月ももう終盤ですね。
唐突なエリカ実装に驚いてたら5月終わりかけててテラー化しそう() 私は今月も何も成せませんでした。
次話投稿の目処は立たないわクオリティはお察しだわで踏んだり蹴ったりの作者をどうか見捨てないで下さい…m(_ _)m