IS~Lost Memory~   作:竜太

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10話『言葉は大切』

「楯無…どうする…?」

「う~ん…困ったわね…」

時刻は夕方、私と楯無は寮へ向かった所、IS学園校門付近を見るとグループの集団を見つけた。

私は遠くて見づらかったけど楯無が言うには箒、鈴、シャルロット、セシリア、ラウラの1年生の専用機持ちの女子というね…。

 

「あそこに居るのは別に構わないわ。でも誰を待っているかがそこが問題なのよねぇ…」

楯無は手に持った扇子を頭に当てて険しい表情だった。

誰を待っているか…さっきの楯無の簪の計画が成功していたのなら…。

尾行できなくて待ち伏せる為に待っているのでしょうね…簪と一夏を…。

 

「待っているのは簪達でしょうね…」

「よぉし!おねーさんが一肌脱ごうかしら!」

私の呟きに横に居る楯無が意気込んだように元気な声をあげた途端に走り出した。

人肌脱ぐ…?じゃない一肌ね…。

とりあえず、楯無の後を追いますか…。

 

 

…。

……。

………。

 

 

―IS学園校門―

 

校門付近には不機嫌な表情と苛立つような雰囲気を漂わせる箒、鈴、シャルロット、セシリア、ラウラの5人が居た。

 

「なんということでしょう!わたくし達は欺かれましたわ!」

怒鳴り声をあげているのはセシリア。

 

「まったくだ。鈍感の一夏の癖に私達をやり過ごすとは許さない」

見えない炎のオーラを燃やす箒、その手には竹刀がある。

 

「あぁ!もう一夏はほんとに記憶を失うまで殺す!」

歯を食いしばって空に向かって大声をあげる鈴。

 

「………(一夏今度という今度は…)」

無言でみんなに見えないよう背を向けたままナイフを眺めるラウラ。

 

「…あはは……(最初は怒っていたけど僕怒る気失せたんだけど…)」

乾いた笑い声をあげるのはシャルロット、皆の周りの不機嫌と苛立ち、気圧の空気に我に戻っていた。

 

そこへ一夏と簪が学園のゲートをくぐってきた。

待ち構えていた女子5人は一夏達を睨むように見つめた。

いや、シャルロットは背中を向けた。

 

(僕…もう知らないよ…)

シャルロットの心情だった。

我に戻っているからこそ呆れてしゃべる気を無くしていた。

 

「「「「いちかぁぁあ!!」」」」

シャルロット以外の4人の怒りにまみれた声が重なった。

 

「ちょっとあんた!何しているのよ!」

「そうですわ!わたくし達を欺いた挙句に簪さんとな、なにしてらっしゃいますの!?」

「一夏、説明を願おうか…なぜ簪と……」

「これより敵対象を排除する……」

怒りの矛先は一夏だけに向けられていた。

一夏は簪を姫様抱っこしていたからだ。

これにより怒りはピークにあがっていた。

一方、シャルロットは我に戻っていたせいか見て見ぬ振りを決め付けた。

 

「まてまて!ちょっとまて!簪とは一緒に遊びにいっただけだ!これは寝てしまったからこうして運んでいるだけだ!」

実際、簪と遊んでいたから疲れて眠ったから一夏が姫様抱っこで運んでいた。

大声でやり取りしてても眼を閉じたままの簪ははたから見てもよほど疲れたんだろうと思えるが…。

 

「「「「言 い 訳 は 無 用 だ !!!」」」」

怒りで我を忘れたシャルロット以外の4人は一夏に掴みかかろうとしていった。

 

 

『ストォォォォォォプ!!』

「「「「きゃぁぁっ!!?」」」」

ザパァァと言う水音と共に一夏に掴みかかろうとした4人の集団は水で拘束されて宙に浮かされた。

4人はこれに驚きの声をあげた。

 

「ふぇ…?」

「この水は……」

さすがに眼が覚めた簪は間抜けな声をあげ、一夏はその水の正体を知っているような表情だった。

 

 

「はぁい。楯無おねーさんでした☆」

「うわっ!?楯無さんどこから現れるんですか!?」

「……(わぁ…ぎゅってされてる…)」

楯無はニコニコ顔で一夏の後ろに現れ、それに驚いて身を翻した。

簪を抱えてる為、落とさないように力が余計に入ってその力強さを感じた簪は顔が真っ赤になった。

 

「さぁて、1年生のこの4人はちょっとおねーさんとお話しましょ?んふふ♪シャルロットちゃんは今日は免除ね♪」

「「「「えッ……」」」」

「あ…いえ…僕は別に居ただけです…」

呆気にとられていたシャルロットは楯無の言葉に我に戻って、お辞儀をしていた。

残りの女子4人(箒、鈴、セシリア、ラウラ)は青ざめた表情で絶句の声をあげた。

その後、離して離してと抗議の声をあげながら水で拘束されたまま学園の中へと楯無に連れて行かれたのであった。

 

 

 

「…あれが楯無のISかな?」

「朱音さんも居たのか…あれが楯無さんの専用機だ…」

私までも呆気に取られて、声をかけるのを忘れていた。

一夏が気づいて絶句したような表情を浮かべながら、話を返してきた。

それにしても楯無はすごく楽しそうな顔で女子4人を学園の中へ連れて行った…。

 

「一夏もう下ろした……」

「あ、悪い簪。忘れてた…」

我に戻ったのかハッとした一夏は簪を地面に下ろした。

簪の顔が真っ赤で恥ずかしさだろうね…きっと。

 

「あはは…僕も混ざっていたら楯無さんの餌食になってたかな…?」

「シャル…そうかもしれないさ…楯無さんはああ見えて捕まると後が知らないからな…」

「お姉ちゃん楽しそうだった…」

シャルロットはすごく青ざめた表情を浮かべて絶句をしていたようだった。

それにしても生徒会長の楯無になるとあんな感じになるのね。

私の前ではしおらしい面を見せたけどこれは秘密のものになるでしょう。

 

「それにしてもシャルロット?どうして待ち伏せまですることになったの?」

「それは…僕達はただ一夏達の後をつけていたけど…逃げられたから帰ってきた所を捕まえようと…」

私が感じた疑問をシャルロットに聞くと、申し訳ない表情で話を返してきた。

一夏はそれを聞いて首をかしげていた。

 

「なんで俺達の後をつけているんだ?ただ遊びにいくだけでおかしくないか?シャルも俺と2人で街に何回もいっただろ?」

首をかしげて疑問符だらけで聞く一夏。

私もそれは思った…簪みたいに遊びに誘えばいいのに尾行する必要ある?

楯無の時は妹想いから簪のことつけていたという理由はわかるけど、こっちの理由がわからない…。

 

「一夏の鈍感……」

「唐変木……」

「何故そうなるんだ…?」

シャルロットと簪はそれだけ言うから一夏は余計に困惑した表情だった。

なんかこのやり取りすごく私としてはムズ痒いというか、はっきりしない気持ちに嫌気が差してきた。

 

 

「はぁぁ…人ってね…言葉にちゃんと表さなければ誰もわからないのですよ。今回の簪と一夏さんだって、私が簪は遊びに誘いたいからって言ったからこうなったのでしょう?もし私がちゃんと言わなければ一夏さん昨日のあの時なんて言おうとしていたの?」

私は溜息をついてから率直に思ったことを言って一夏に聞いたら考え込んでから口を開いた。

 

「そうだな…昨日のあの時は『トイレか?』って言おうとした」

「「そこが鈍感!」」

一夏の答えにムッとした表情でシャルロットと簪が声を揃えて怒鳴った。

たしかに一夏のその言葉は鈍感かも知れない。

だけど私の中では憶測はしっかりと出ているから…。

 

 

「それは違うのよ。一夏さんは話の受け答えを間違えているけどね。でもちゃんと何をしたいのか伝えれば一夏さんだってわかりますよ。だってもう実証しているもの…簪、今日はどうだったの?」

思った事感じたことから出てきた憶測を述べて簪に質問する。

私は一夏へ少し黙っていてという感じで指を立ててジェスチャーを送ったから口を閉じてる。

 

「ちゃんと遊びに付き合ってくれた。それも引っ張ってくれるぐらい……楽しくて嬉しかった」

「思い返してみれば僕の時も一夏は気遣ってくれて嬉しかった…」

簪の答えに便乗するように言うシャルロットの話を聞いて私の憶測は推測に変わった。

 

「ほらね。一夏さんはただ話の受け答えに気が利かないだけなのよ。鈍感かもしれないけどやる時は一生懸命やる頑張り屋さんじゃないの?シューターフロー習得するときは食事が喉を通らなかったらしいけど、一夏さんはやっている間は弱音吐いた?」

「俺だって男だ。遊びも特訓もやる時はしっかりしているつもりだ。それに俺は弱音なんて吐きたくない。今までいろんな事あった…辛いときもあった…倒れてもその度に俺は起き上がった」

私の率直な思いを述べて一夏に聞くと頷きながら言った。

それを聞いたシャルロットと簪も頷いていた。

 

「うん…僕は見てたからわかる。一夏は弱音吐いたことなかったよ。倒れても起き上がってがんばってたよ」

「私もわかる…一夏はこの前のタッグマッチの時パートナーとして誘ってたけど私が拒絶しても1週間以上も私をずっと誘い続けてくれた…続けてくれたから今の私が居ます…」

シャルロットと簪の言葉を聞いて私の考えは当たっていた。

どんなに鈍感とか言われようが、ちゃんと何をしたいのか言葉にすれば誰だってわかる。

はっきりとした言葉で言ってもわからない人が鈍感と言われると私は考えている。

私が来る前の時は簪は拒絶とかそういう事してたんだ…改めて楯無が言ったツンツンと殺伐の意味が理解した。

 

「タッグマッチの時そんな事になってたんだ…僕はてっきり最初から一夏と簪は決まってたかと思って勘違いしてた…ごめんよ…」

「シャル。俺のほうこそあの時は理由が言えなくて悪かった…この際言うけど、簪と決めていたのは楯無さんの計画でそれで俺が頼まれていて、大会自体も計画の1つだったんだ」

「お姉ちゃん。私の事心配してくれてたんだ…」

「一夏、別に良いよ。僕達も誤解してたんだから。楯無さんが簪と仲良くなる為にしょうがなく一夏に頼んでやったんなら何も言えないよ」

一夏も簪もシャルロットも謝罪し合っていた。

私は3人の会話のやり取りを黙って聞いていた。

あの時の当事者でもないし状況は話を聞かないとわからない。

でも楯無、簪と仲よくなる為に大会まで計画に入れるなんてね…。

行動力があるのは姉妹揃ってあるんじゃないって思った。

 

「これでわかったでしょう?一夏さんはただ会話に気が利かないだけ、はっきりと言わないみんなが悪いのよ。鈍感だとかただ大声あげて騒ぐだけだと誰もわからない。私だってわからないよ」

「そうだね…後は僕がみんなに説明するよ。朱音の話には説得力あったから」

「朱音さん。悪かったな…俺のせいで巻き込んでしまって」

「私もごめんなさい…はっきり伝えようと勇気が足りなくて…」

私の言葉にみんなは頷きながら、謝罪と感謝の意が感じられる。

肩の荷がおりた気分ね。

 

「良いのよ。私はここに居るのも何かの縁だからお礼は要らないからね」

「サンキュ。じゃあみんな学園へ戻ろうか、そうだ、これから簪とシャルで食堂に一緒に行かないか?」

「あ、良いよ。まだ夕飯食べてないから」

「私も良い。朱音さんは…?」

「私は行かないから良いよ。ちょっと疲れているから寮で先に休むから」

話のやり取りをして、3人は食堂へ向かうみたいね。

でも私は今日はすごい疲れた…。

朝は楯無の話から組み手、昼食後は散歩もかねて学園の中を楯無に案内してもらって…今ここって感じ…。

 

「ふぅぅ……」

校門付近で立ったまま、簪とシャルロットと一夏を見送る形で溜息を吐いている。

 

 

 

『ここに来ても相変わらず大変そうね?』

「ッ!?……」

私の背後で突然声が聞こえて、振り向いたら豊かな金髪の大人の女性が立っていた。

この人は一体?

 

「誰ですか…?」

「そうね。いつか思い出すかもね?『運命の歯車』…ふふっ」

女性はそう言い残して去っていった。

一方、私はその言葉を聞いて、身が固まっていた。

何故なの……私の頭によぎった言葉をなぜ知っているの?

私は思い出せない記憶に苛立ちを感じて歯を食いしばっていた。

 

 

 




原作の時系列だとそろそろ楯無が一夏にフラグが立つ頃ですね。
原作の騒ぎ具合も良いけどやっぱり読んでいると作者はムズ痒いからこうなった。
シャルロットは案外気が利くようなキャラなんだよね…。
でもどこか抜けているからそこは補正だ!

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