次に私が目が覚めた時は薄暗い部屋だった。
牢獄とまでは言わないけどそれぐらい薄暗く広い部屋。
ベッドがいくつもあって…私のような少女が複数人居た。
服装を見たら囚人服とまでは言わないけどズボンにシャツという素っ気無いもの。
皆の表情は正気をなくしたかのように無言で無感情、無表情だった。
何故そんなに無感情で無表情で静かなのか不思議に思った。
「ここはどこ…?」
「…ここは訓練所、あなたはさっき連れてこられた」
私の呟きに返事を返してきたのは横に居た黒髪の少女だった。
訓練所ってどういう事…?
「訓練…所?それに…あなたは…?」
不安を覚え声が震えながらも横に居る少女に質問した。
「私は佐藤明日香…訓練所は訓練所…育てる為の所よ…」
明日香と言う子は暗い表情で細々とした声で言う。
育てる為…一体どういう意味…疑問に思ったけど暗い表情だから聞けなかった。
「私は青木花蓮。ここに来る前は保護されてたんだけど…私って…」
「そう…花蓮も連れ去られた…私と同じ…」
私の話を返しながらも暗い表情で細々と言う明日香。
そこで部屋のドアが開くと屈強な男が入ってきた。
皆は男の姿を見た途端に恐怖の表情で震えていた。
傍の明日香も身を縮めて震えていた。
私でもこれは恐怖心からきていると気づいたけど呆気に取られていた。
「おう。起きているな。オラァ!ぼさっとしてねーでさっさと動け!」
男はムッとした表情で部屋に響くぐらいの怒鳴り声を上げ、壁をバァァンと大きな音を立てるように叩くと明日香含む少女達は駆け足で部屋から退室していった。
「お前も早く動けッ!!」
「あが!」
部屋の片隅で震えている1人の少女を見て男は近づき、ガァンと鈍い音と共に拳骨を力いっぱい振りかざしたように見えた。
そこでやっと少女は動き出して退室していった。
そのときの表情は青ざめ虚ろな目だった。
「む…赤髪のお前はたしか花蓮と言ったか…お前は丁重に扱えと言われていたな…。今のは見なかったことにしてくれ…。ほら俺の後についてこい」
私の姿を見ると男はさっきの睨むような表情を解いてバツが悪そうに頭をかいてさっきの怒号とは裏腹に優しい声で話しかけてきた。
人の扱いを切り替えるとか理不尽すぎると感じ思った。
でも、私には逃げる方法なんてわからないから男に黙ってついていくしかなかった。
それからこの訓練所と言われる理由がわかった。
ここは主にISを訓練する場所であり、ISの訓練以外にも体の鍛練、射撃訓練など兵士みたいな事をする場所だった。
ただ1つ違うのは皆は希望してここに来ていない、何者かに連れ去られた少女ばかりだった。
皆の無感情、無表情の理由は失敗したり従わない奴はひっぱたくという暴力による恐怖のせいだった。
しかし私はIS適性SでありIS操縦の才能もあってか他の皆よりまるでガラス細工を扱うような丁重な態度で扱われて、私と皆への扱いは千差万別な理不尽な世界だった。
そんな理不尽な扱い、人の扱いに私は怒りを感じながらも屈強な男が多い訓練所では怒りを出す事は出来なかった。
そんなある日1人の少女が来た。
エイミーと言う金髪の子は来てからずっと泣いていた。
泣いていたから私は泣き止ませようと身を寄せて話を聞いた。
「ぐす…私…どうして…なんで…あの時…ISに乗りたいとか…うぅ」
エイミーに話を聞いてすぐに理解できた。
私は文字通り保護されたのにこうして連れ去られてしまったのが境遇だったように、エイミーも恐らく境遇が似ているからと思って私は共感した。
「私もエイミーと同じだよ。あの時あんな事言わなかったらここに居ないのよ。でも泣いてばかりじゃダメなのよ…私も居るから一緒にがんばろうね」
私はなるべく優しい声でエイミーに言い聞かせる。
言葉を聞いたエイミーは頷いた。
「そう…ね…花蓮も私と同じで…泣いてちゃ…だめ…だよね…」
嗚咽が漏れつつも目から流れる涙を拭きながら、話を返すエイミー。
私がこの訓練所に来てから明日香の次に話が出来た子だった。
ちなみに明日香はいつのまにか別の部屋に移動されてから見かけていない…。
あれから様々は怒号、罵声が飛び交いながら射撃、武術、体術を毎日繰り返し学び、ISのほうは操縦が私の才能もあってか指導官が見守る中で私が指導し共に訓練するという理不尽な訓練所としては変わった光景になっていた。
皆は無表情、無感情のまま失敗すると恐怖で震える毎日を過ごしている中、エイミーだけは失敗する度に泣いていた。
私はそれを見る度に駆け寄って、屈強な男からの暴力から守っていた。
エイミーの体に身を重ねるように私が居ると男達は困った表情を浮かべて強引に引き剥がしたり手を出したりしない。
ガラス細工のように私を丁重に扱う事は『傷つけるな』『手を出すな』という事を意味していると理解したからだ。
そんな日々を1年ぐらい私とエイミーは訓練所の皆と一緒に過ごした。
「花蓮…いつも私の事守ってくれてありがとう…」
エイミーは涙目になりながら、お礼の言葉を言ってくる。
「私はここに来てからずっと考えていた。なんでこんなに人の扱いが理不尽なのか、だったらそんな理不尽な世界を私は利用し、エイミーを守るって決めた」
私の決意をエイミーに強い口調で言う、気を強く張り、エイミーを守るという決意の為にこの言葉遣いにした。
この頃から言葉遣いが変わっていた。
「花蓮は強いね…私は泣いてばかりで弱い…」
まだ眼を潤ませながら顔を歪ませて言うエイミー。
そんな姿を見ると私の心は痛々しく感じる。
「エイミーだって弱くない。泣くという感情を持っているから。でも私や周りの皆を見て…泣くという感情を無くしてしまっている。だから私や皆には無い感情をエイミーが代わりに持っていることが強い」
私は力強く言う、人にあるべき感情。
この1年ぐらい私は気を張りすぎて泣くという感情を感じる事が鈍くなっていた。
でもエイミーは泣くという感情を1年間忘れずにずっと持っているのは強いと感じていた。
「泣く…のも強いの…?」
私の言葉に疑問を感じたエイミーは首をかしげていた。
「人が人である為に泣くのも必要…でも私は泣くという感情が沸かない…だからもう人じゃない私は……そう、並みの人じゃなくなっている。でもエイミーは並みの人。これでわかる?」
「余計わかんないよ…」
「ふふ。それはいつかわかると良い…」
私の話に疑問符が浮かんだようなエイミーの顔を見ながら私は微笑んだ。
エイミーと一緒に居る間だけのこのひと時は心安らぐから…。