説明話ですが長いので分割しております。
IS学園―特別会議室―
本来、重要な会議などで生徒以外で使われる特別会議室である。
時刻は夕方、放課後を指していた。
部屋の中央には椅子が横10脚、縦4脚の横長の円卓テーブルが置いてある。
横の席には右寄せで左からセシリア、シャルロット、ラウラ、鈴、真耶が座っている。
反対側には生徒会メンバーから順に座っており最後は簪、それから一夏、千冬、箒の順で座っていた。
場の空気が重苦しく生徒会メンバー、千冬と真耶以外の者は緊張感が漂っていた。
「諸君、既に通知した通り秋葉朱音の本名は青木花蓮と判明した。以後その名で接するように。それとだ、今回は重く暗い話になるだろうから覚悟がない者は立ち去って構わない」
千冬は険しい表情で話をしたが、席を立つ者は誰も居なかった。
皆、花蓮の過去が気になっていたから覚悟は決めていたがそれでも緊張で張り詰めている。
「皆様、紅茶をどうぞ。織斑先生はコーヒーでしたね」
そう言うと皆に紅茶が入ったカップを運びながら、千冬にはコーヒーのカップを運んでいるのは生徒会会計であり3年生の"布仏虚"(のほとけ うつほ)
「私も手伝うよ~」
「本音は手伝わなくて良い」
虚がカップを運ぶのを見て手伝おうと席を立ったが隣の席に座る簪が止めたのは生徒会書記であり1年生の"布仏本音"(のほとけ ほんね)
「一夏と箒さ、あんた達大丈夫?顔色良くないわよ」
一夏と箒の浮かない表情を見て心配そうに声をかけるのは鈴。
「大丈夫だけどさ。あか…いや、花蓮さんの過去の話が暗い話って聞かされたら俺の時みたいで心苦しいんだ」
一夏は過去の記憶を思い出し浮かない表情で言う。
「私もだ…昔の姉の事を思い出してこの1ヶ月は気が重くなかなか寝つけずに居た…姉と花蓮の間に何があったのか気になってしょうがなかった…」
花蓮が渡した霞桜に添えられていた束の直筆のメモを手に持ち眺めるように見つめる箒の表情も気が沈んだように浮かない。
「一夏、篠ノ之。それは直にわかる。少なくともお前達にも関係がある話でもあるはずだ」
険しい表情のまま両脇の席に座る一夏と箒を横目で見ながら言う千冬の言葉を聞いて箒は頷いた。
席順をこうしたのも何かあった時には千冬が止めるつもりで両脇に一夏と箒を座らせた配慮だった。
「ちふ…織斑先生。箒はともかく俺も関係があるってどういう事だ?」
疑問を感じたのか首をかしげて一夏は隣の千冬を見て質問する。
「一夏。今は教師と生徒の関係で接しなくて構わない。そのほうが話しやすいだろう。その話も直にわかる。花蓮がくればな」
淡々とした言葉で千冬は言う。
「千冬姉…わかった(花蓮さんの事を下の名で呼び捨てた…?18歳ってのは聞いたけど歳は関係ないか…う、うーん…)」
一夏は頷きながらも、千冬が名前を呼び捨てするのは束、一夏、真耶ぐらいだったから疑問が頭に浮かんで険しい表情で思い悩んだ。
そこへ会議室のドアが開いて楯無と花蓮が入ってきた。
花蓮の制服姿を久しぶりに見た皆は安堵と共に場の空気が一気に和らいだ。
しかし、花蓮は皆の視線に受けても凛とした態度で平然としていた。
「みんなお待たせ。さあ主役の花蓮ちゃんはこっちにどうぞ」
楯無はそう言うと、縦席の真ん中の席へ花蓮を案内させ座られる。
「みんな、長く寝すぎて心配かけてごめん。これからいろいろと長くて暗い話になるけど気楽に…って言ったら無理がある話だけど…はぁ…」
花蓮は謝りながらも平然とした態度と共に話の内容に理解しているだけに自分に嫌気が差して溜息をついた。
「花蓮。貴様、雰囲気が軍人に似ておるぞ」
腕を組んで厳しい表情で言うラウラ。
花蓮の1ヶ月前と雰囲気ががらりと変わっている事に感づいた。
「(虚、私も手伝うわ)」
「(え…ですが…)」
「(いいから。気にしないでね)」
話の横では楯無が無理強いをして虚と一緒にケーキを乗せた皿を配り始めた。
「ラウラ。その話はすぐに理解するけど、境遇が私と似通っていると言う事」
平然と凛とした態度でラウラに視線を向けて言い放つ花蓮。
言葉に感情は篭っていないが、言葉の意味をラウラは理解し一瞬まゆを歪めた。
「む…了解した(この雰囲気はあの時の教官と似ている…?)」
花蓮の凛としている雰囲気が千冬と似通っている事に疑問を感じ険しい表情のまま了承したラウラ。
「先に言うけど、私の言葉遣い、雰囲気がいろいろ変わっているのは記憶が戻った事によって昔の私に戻っているからこれが私と思って良い」
平然と凛とした態度のまま花蓮を話を聞いて皆は頷いた。
皆は花蓮の1ヶ月前とは言葉遣いが変わっている事に気づいて困惑していた人も居て納得した表情になった。
「花蓮ちゃんは会うのは初めてだよね。紹介するわ…こっちが布仏虚、そっちは布仏本音。私の幼馴染で姉妹よ」
楯無が私の前のテーブルにケーキが乗った皿と紅茶を置いた所で2人の女子を紹介してきた。
あれが以前楯無が言っていた幼馴染か…。
私と歳が近いだろうから親身になって話そうとしたのも納得できる。
「始めまして、布仏虚と申します。お嬢様から話は伺っております。青木さんは私と同い年でもあります」
お辞儀してまで言う虚…お手伝いとしての役柄に染みきっている。
やはり、私と同い年か…。
楯無が嫌そうな顔をしたけど口癖を正すのも難しいだろうから私は手を出して口を止めさせた。
「私はー布仏本音です~。1年生です~。以上ー」
布仏本音のほうは天然みたいなほわほわしているのが印象的。
姉妹の差がありすぎるこの個性的な…ん?本音が1年生なら簪と同い年としたら本音が簪のお手伝いの役柄なのか…。
これはこれで簪は大変そうだと苦笑しておく。
――よく思い出して。もっと大変で恐ろしい事が起きちゃうよ
……誰?この声は少女…?
花蓮は平然としつつも突然聞こえた少女の声に内心困惑した。
「それじゃ、学園長が来るまで食べましょう。このケーキは楯無おねーさんのお墨付きよ♪」
全員にケーキと紅茶、千冬はコーヒーを配り終わったら楯無の合図で「いただきます」と声を揃えて言ってからケーキを食べ始める。
皆、ケーキのおいしさに絶賛の声をあげる中、花蓮だけケーキを口にはしたが浮かない表情だった。
「ど、どうしたの?花蓮ちゃん?」
花蓮の隣の席に座る楯無は浮かない表情になっている花蓮に気づき動揺し声をかけた。
「いや、別になんでもない…が、記憶喪失時では感じたおいしいという感情が記憶が戻ったことで感じなくなったという事に気づいてしまってね…」
浮かない表情のまま片手で頭を抱えた花蓮の言葉に皆は絶句と驚愕で言葉を失った。
さすがの千冬も花蓮の言葉を聞いて険しく厳しい表情になっていた。
「花蓮…貴様は…私以上の厳しく辛い過去の経験を持っているようだな…私の過去もそれは辛いものだったが味覚までは失っておらんぞ…」
「ボーデヴィッヒ。お前は花蓮のようにはなるな。絶対にな」
腕を組み眼を閉じ同情するかのような表情で言うラウラに対して千冬は小さく優しい声で言うとラウラは頷いた。
「そう…こうして皆が集まっているのは私が何故こうなったのかその過去を皆には知っておいて欲しい。ISに関わる事がどんなに辛い事か…ISが登場してから『たった10年』だからこそ今伝えなければいけない。ISの未来の行く末の分かれ目だから今ここが、この場が世界が戦いに向かうのか平和に向かうのか決定事項になっている。その自覚を持って欲しい」
淡々と凛とした態度と口調で言う花蓮。しかし言葉の意味には重みがあり、皆の心に突き刺さった。
一部の人は動揺を隠せない様子になっている。
「ちょ、ちょっと待ちなさい!花蓮ちゃん世界が戦いにってどういうことよ!?」
楯無は声をあげ動揺した。ロシア国家代表でもあるが世界が戦いに向かうとか物騒な事は道理からでも嫌だからだ。
「…ごめん。まだ全部を話してからにする。今のは語り癖から口が滑った…はぁ…」
花蓮は謝りながら自分の語り癖は要らない事まで口に出る事に嫌気を感じて溜息をついた。
そこへドアが開いて学園長が入ってきた。
その拍子で学園長を知る者は席を立とうとした。
「皆さん待たせましたね。立たなくていいよ。今日は個人的な話だからね。花蓮くん、隣に座るよ」
学園長の十蔵は手を出して席を立とうとした人を止めながら、花蓮の空いている隣の席へと座った。
知っている人は驚愕したような表情になった。何より下の名前で呼ぶことはない事を知っている千冬、真耶、楯無はさらに驚いていた。
「知らない人も居るだろうから改めて自己紹介するよ。私はこのIS学園の本当の学園長の轡木十蔵です。ただこの事は他のみなさんには極秘にしてください。これから話す事もね」
表舞台では学園長は十蔵の妻が役目を果たしているから知らない人は驚愕で言葉を失っていた。
極秘に関しては皆声を揃えて了承した。
これでも来る前に極秘に関するの承諾書を交わしているしているが改めて極秘を確認するように言い聞かせた。
――それから学園長は花蓮が8年前、研究所で保護し連れ去られるまでの経緯を話をした――
「それで私は花蓮くんが保護できなかったその反省と後悔でこのIS学園を設立するきっかけになったよ。こうして花蓮くんに再会できたのも何かの運命みたいにね」
言い終えた学園長は紅茶を口にして気持ちが安らいだのか穏やかな表情になった。
「IS学園が出来たのも花蓮さんのおかげなのか…保護したはずが誘拐されて…この学園が無かったから俺もそうなっていた可能性があるのか…千冬姉は学園が出来た訳は知っていたのか?」
一夏は驚愕の表情のまま千冬に聞いた。
「いや…私も初耳だ…IS学園の第一期生徒にも関わらず…なんということだ…」
IS学園設立理由を千冬も知らなく驚きを隠せない。
「織斑先生。私はIS学園を設立した途端に花蓮くんと同じIS適性Sが発覚して本当に驚いたよ。一歩遅かったらと思うとね…」
申し訳ない表情で言う学園長。
「学園長には感謝している。こうして教師としてまたこの学園に戻ってこれたのだから」
「私もだ…教官がIS学園で学んでおられなかったら私という存在がどうなっていたか想像もできん」
「私も、一夏を追って中国からわざわざ飛んできたけどIS学園が無かったら今頃中国で国家代表へ向けてまい進の日々だわ…」
「ISが全ての元凶であり運命が歪み、1つのきっかけが枝分かれのように分散して今ここに運命のように集中している。そうでしょう?どこかで見ている束さん?」
千冬、ラウラ、鈴のそれぞれ話をして他にも口を開こうとした所を話に割って入るように花蓮が天井を見ながら、意味深で強い言葉を言い、それを聞いた皆は言葉を呑んだ。
しかし、花蓮の束を呼ぶ言葉に答える気配は無かった。
「はい、次は花蓮くんの話ですね。ここからはもっと長い話になるでしょう」
学園長は言い終わるとまた紅茶を口につけていた。
「ここからはもっと重い話になります。私は亡国機業に連れ去られた後は訓練所という施設に放り込まれた。そこでは私はIS適性Sという事でガラス細工を扱うように丁重で優遇された扱いを受けた。その反面、施設に居る他の皆は…ラウラ、いやそれ以上に失敗したら暴力暴言罵声の世界だった。入った当時の私は10歳か11歳ぐらいだったと思う。研究所に居たせいか歳の感覚は曖昧になっているから。それから―――」
花蓮は真剣な表情になって淡々と告げる言葉に感情は篭っていないが言葉自体に重みを感じ皆は息を呑み、真剣な顔、厳しい顔、険しい顔、人それぞれ様々な表情で聞いていた。
――それから花蓮は明日香の死の経緯までを話した――
「――で、全ての闇と罪悪を私1人で背負う覚悟を決め決心した。他の皆にはあの感覚を味あわせない為に…。その時から今の言葉遣いへと変化していった。雰囲気で言えば他の皆全員がラウラのようなのがそうで男達から私が毎日庇うみたいな関係を皆平等にやっていたと思ったらラウラはわかるでしょう」
花蓮は話終わるとラウラに視線を送っていた。
「想像絶する苦労だと私は思うぞ…私は罵声だけだったが暴力まであるとは…想像できん…無論、薬といっても怪力になるような物は経験しておらん」
ラウラは厳しい表情のまま腕を組んで花蓮の話を聞いて同情していた。
「ISの装甲を素手で折れるまでとはな…私でもそれは無理な話だ…花蓮は…人の命の重みを感じながらも……それを故意でやらなくてはいけないと……花蓮の心はとても辛かっただろう……」
千冬は席を立ち、日が沈んだ窓の外を見ながら小さい声で呟く。
4年前の記憶に同情するかのように体が震えているように見えた。
「花蓮は悲しいとは思わないのか?全ての罪悪を背負ったせいで感情も感じない?ここまで話を聞いても言葉に感情が篭っていないように感じたが?」
箒は鋭い目つきと厳しい表情で疑問符だらけで花蓮に質問した。
「そう、繰り返しここまで背負ってきた全ての闇と全ての罪悪によって私の体も心も麻痺している。もう並みの人じゃなくなっている。箒、私の体を触ってみたらわかる」
花蓮は席から立ち上がり、箒の前へ歩み寄った。
突然体を触れと言われて箒は動揺した。
一夏は花蓮がそんな事言うから『いきなりなんだ!?』と心の中で叫びながら顔が赤くなった。
「な、何故触る必要がある!?」
「いいから、触れ。ここで良い」
戸惑う声をあげる箒に、花蓮はお腹を指さして箒はお腹だった事に内心安堵しながら意を決して手で花蓮のお腹を触りまさぐった。
「「「「「「え……」」」」」」
学園長、千冬以外の全員が花蓮は箒にお腹を触られても平然とした態度に絶句と驚愕に声を失った。
「こんな感じに私の体と心は、感情も感覚もほとんど感じるものが無くなった。でもまだ知識で理解しているから今のお腹を触るという行為はくすぐりと言うのは知っている…だけど私はそれが一体どんな感覚なのかわからないから表現できない。知っているからこそ感じないことに内心私は腹立たしく苛立ちを感じてはいる」
花蓮は席に戻って淡々と告げる言葉にはやはり感情は篭っていない。
皆険しい表情や様々な表情を浮かべていた。
「花蓮。それはすまなかった…そこまで無感覚、無感情になっているのも理解していたのだな」
「別に大丈夫。こうなってしまったのも背負う覚悟を決めた以上は覚悟しなければいけない」
箒は顔を俯きながら、花蓮へ謝ったが首をふって話を返した。
「それでさっき話をした事が私が全ての闇と罪悪を背負う事になったきっかけだから、話を飛ばして私は4年前、訓練所から亡国機業に任務を貰って出た。そう4年前だよ。一夏」
「なにっ!?」「え!?」
花蓮の話を聞いて、一夏と皆は驚きの声をあげた。無論楯無も驚いた声をあげた。
千冬は立ち尽くし険しい表情のまま窓の外を眺めるように向けたまま無言だった。
「ずっと私は気になっていた。一夏、私の事ずっとさん付けで呼んでいた。楯無は学年が上だからともかく、記憶喪失の時の私をさん付けしていた理由は何か引っかかっていた?」
花蓮は一夏に視線を向けながら言うと一夏は戸惑いの表情を浮かべた。
「うぐ…花蓮さんはやっぱり…いやでもあれは…しかし…うーん…」
「一夏!あんたはっきりしなさいよ!4年前のあの時なにがあったのか私だってよく知らないんだからさ!」
おどおどと思い悩む一夏に鈴がテーブルに両手をついて一夏に向けて厳しい顔で怒鳴った。
箒は目を閉じ口を閉じていた。
「たぶん一夏は私に見覚えがあったから"さん付け"していた。4年前の当時の私のほうが年上なのがはっきりとわかっていたから。そしてあれは私自身は関わっていないけど、はっきりという私はあれが任務だった。一夏をあの場所まで誘い込む事が私の亡国機業としての任務だった」
「っ!!」
淡々と告げる花蓮の言葉を聞いて、怒りが篭ったような表情で箒が立ち上がろうとした。
「箒まて!あれは俺も悪かったんだ。見ず知らずの女の子…花蓮さんに道に迷ったのかと思って紙に書かれた地図と場所を見て理由を聞かずに俺が勝手に行ったんだから」
とっさに一夏が席から立ち上がって箒を抑えて止め、話を聞いた箒はムッとした表情になった。
「一夏!!貴様というやつはその頃からお人よしだったのか!」
箒は一夏の顔に向けて厳しい顔で怒鳴る。
「はぁぁ…呆れた…あんた…それで誘拐されたとか洒落にならないわよ…」
深い溜息をついて落胆した表情で言う鈴。
「いや、一夏も悪いが私のほうがもっと悪い。4年前私は世界大会に出るなと警告されていた。出ると一夏が連れ去られるぞと…だが当時の私は…そんなのまやかしだと、でまかせだと思い込みすぎていた…本当に悪いのは警告されていたにも関わらず一夏に何も教えなかった……私のせいで一夏は誘拐されて……それで……」
千冬は皆に背を向けたまま窓に向けて言葉を言うほど身も声も震えていき口が止まった。
「千冬姉…俺が誘拐される事を知っていたのか…」
一夏は千冬の言葉を聞いて、心が痛み浮かない表情になった。
「この4年前の一夏誘拐事件は私視点と織斑千冬の視点がある。ただ私は傍観者だったから先に私から言う」
口が止まった千冬にまだ話す勇気がない事を察した花蓮から口が開いた。
「ふぅ…花蓮。頼む」
一息ついて気を落ち着かせてから願い出る千冬。
「あれから私は―――」
花蓮は話したあの4年前の千冬が復讐心に燃えるような地獄絵図は言葉では表現できないから出来事だけを簡単に説明をした。
「そして、織斑千冬は我に戻ってそれから泣き叫んで放心した。それからしばらく経ってから一夏を救うという想い一心にして奮い立って一夏を救ったと予想しているのが私視点です」
淡々と平然と言う花蓮の言葉、でも先ほど無感情になっている事を教えたから皆は何も疑問は浮かばなかった。
しかし、皆は話を聞いて胸、心が痛んだのか浮かない表情で俯いていた。
学園長は強いのか無言で話を聞き続けている。
「…そうだ。私は泣き叫んだ。一夏知っているか?私が人の命の重さがなんたるかを教えただろ?」
「あぁ。千冬姉が真剣を教えてくれた事は俺はよく覚えている」
千冬は気持ちが落ち着いてないのか少し震える声で言うと一夏は頷きながら気を張っているのか真剣な表情だった。
「……私は人の命の重さを教えるほど知っていたにも関わらず、一夏が誘拐されたと知って我を忘れた。ISで向かってしまった…そして武器で花蓮が言った通り…我を忘れ続けてしまったのだ…だからもう私はISには乗れない。人の命の重さを生身でしか感じる事の出来ない私はISに乗ってしまってはまた繰り返してしまうだろうと思った…その恐怖心でな」
落ち着きを取り戻したのかはっきりとした口調で言う千冬だがそれでも体は震えていた。
花蓮を除いた皆はこの事実を知って言葉を無くしていた。
学園長は一息ついてから真剣な表情になった。
「織斑一夏くんの事件は隠蔽されて極秘扱いになっています。この話は本当に他所に他言してはいけませんよ」
学園長が言うと皆は頷いた。極秘に関しての承諾書は既に集まる前には済ませてはいるがあえて確認させるように言った。
「それじゃ、一旦休憩しましょう。みんなお腹減ったでしょう?虚。用意していた物を運んで頂戴。私も手伝うから」
「…かしこまりました」
楯無の休憩の合図で皆の体の緊張がどっと抜かれたように張り詰めた場の空気が解けて和んだ。
虚は楯無が用意させた食事を運び出すのを止めようと思ったが無理強いすると思って観念した。
「はぁ~私も手伝いたいけど~さすがに~疲れたぁ…」
「本音は手伝うと後が大変だから」
本音はだらーんとしながらも簪はやれやれと落胆したよう表情で言った。
「千冬姉が花蓮さんのこと呼び捨てにした訳が俺にはわかる気がする。心が強くてISに乗っているからだろ?」
「そうだ。一夏、花蓮の心は私が考えていた以上に強かった…境遇を聞かされてわかった。もう私にはISに乗れと言われたら恐怖で体が震えてしまうのだ。もう無理だ…」
「教官…それでも私は教官の指導が的確ですばらしかった。ISに乗れなくても指導できるなら問題ありません」
一夏、千冬、ラウラの順で話が出てそれぞれの言葉を聞き、理解し頷きあう。