IS~Lost Memory~   作:竜太

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1話が1日分を描写するとか無理なことをしてしまった。
だが後悔はしていない。






2話『IS学園入学』

私が記憶消失になった日から翌日の朝。

 

―IS学園生徒用寮―

 

「んぅ…んっ?」

眼が覚めた途端に私の顔を覗き見るように1人の少女の顔が視界に入った。

IS学園の制服を着た水色の髪に紅瞳、眼が覚めた私と視線が合った瞬間に慌てたよう様子で身を離した。

眠気眼の眼をこすりながら私はベットから体を起こす。

 

「お、おはよう……驚かせちゃったね」

「おはようございます…んー、まあ…驚きましたね」

動揺しながら苦笑いしている少女を見ながら、ぼんやりしている頭を手でこすりながら言う。

それにしてもなんで居るんだろう?

そういえば寮は相部屋だっけ…?

 

「あ、私はここの生徒の長をしている"更識楯無"よ。そしてルームメイトよ。よろしくね」

「私は秋葉朱音です。よろしくお願いします…って生徒会長がルームメイト…?」

自己紹介を交わして、ふと疑問に浮かんだことが口に出た。

生徒会長がわざわざ私と相部屋になったの?

 

「そうよ。朱音ちゃんはいろいろ複雑な事情があるでしょう?適性の件もあるけど記憶喪失だから知識はあっても個人的な事は何も思い出せないからってこの私が警護もかねてね」

微笑みながら扇子を手に持って広げると『学園最強』という文字が出ていた。

IS学園の中で最強、その自ら警護に来る意味は…。

 

「そうなんですね…適性はたしかにSと出た以上、話が広がるけど…えーと、更識さんが自ら警護に出るほどの事でしょうか?」

私は思ったことをそのまま口に出して聞いた。

扇子を閉じてピシっと私のほうに突き出す更識さん。

 

「楯無って呼んでね。後、私が警護に出るほどの事は少し長い話になるわ」

更識さんもとい楯無は真剣な表情になって話をしだした。

 

――世界で唯一ISを使える男性の織斑一夏及びISの専用機"白式"を狙われて幾度となく学園は襲撃されている事。

――襲撃者はファントムタスクという名乗る裏組織という事。

――学園自体もISの無人機によって襲撃されている事。

 

簡素的に出来事だけ楯無は話をしたけれど、私の知識にはファントムタスクという言葉に何故か心当たりがあるような無いような曖昧な知識がある…。

言葉に言い表せれないからこれは黙って話を聞いていた。

 

「それで、今度は朱音ちゃんが適性Sの人であり、おまけに記憶喪失だから一夏くんと同じように狙われる危険があるかもってことよ。最後は学園長の指示でもあるけどね」

「そうですか…だいたいの事はわかりました。何回も襲われていたらさすがに安全じゃないって事ですね」

話を聞き終わり、私は感想を述べた。

 

「そういう事よ。それじゃ私はやる事あるからいってくるわね」

微笑みながら扇子を広げて『仕事』と書いてあるのを見せ付けながら楯無は部屋から退室していった。

扇子の文字表示はどういう仕組みなのかと思いながら、今日の事を考えた。

私は何者なのか誰なのか何も思い出せない事に言いようの無い不安は募るけど、それでも今を過ごすしかないから気持ちを割り切って不安は胸に秘めよう。

知識の記憶に関しても不安はあった……詳しすぎる事に。

さっきは突然だったからすぐに思い出さなかったけど『更識楯無』の事を私は知っていた。

楯無は更識家当主の名でその活動は対暗部用暗部、つまり裏組織の行動に対処する為の裏組織…。

何故ここまで知っているのか私自身が不安になるけど裏世界の人が私の傍に居る事自体を思い返しても何も悪い気はしなかった。

 

 

…。

……。

………。

 

 

着替えを済まし食堂で朝食を取り、職員室に今私は居る。

道中、他の生徒が私の事の噂話しているのは聞こえたけど外見的特徴を知らないのか話しかけることはなかった。

そして、織斑先生から今日の入学についての説明を受けていた。

 

「――という事で、4組に居る専用機持ちが更識だけだったから秋葉を4組に入れる事となった」

「わかりました」

織斑先生によるとISの実習は1組2組、3組4組……と2組ごとの合同が基本だけど、専用機持ちが3組に居なく4組に居る更識簪だけだったからという。

更識簪、更識楯無の妹ということなのは言われなくても私は知っていた。

知識が豊富の私の記憶に溜息が出そうだけど、周りに気づかれないように接しないとどうしてそこまで知っているのかって言われると困るから気をつけないと…。

 

「それでこちらの先生方が4組の担当をしている真籐先生と桜庭先生だ」

織斑先生は視線を向けると2人の女性が傍に立っていた。

どちらも出で立ちは教師のスーツ姿、山田先生みたいなワンピースの服装は特殊なのかな?と思った。

 

「どうも、始めまして。私は1年4組の担任の"真籐真紀"(まとうまき)です」

「副担任の"桜庭八千代"(さくらばやちよ)です」

自己紹介を聞いて私は2人の教師、真籐先生と桜庭先生へお辞儀で返した。

織斑先生と違って口調は礼儀正しい雰囲気に感じた。

 

「では、後はよろしく頼む。山田先生、教室へ」

「あ、わかりました」

織斑先生と山田先生は職員室から立ち去っていった。

 

「それじゃ、私達も教室に行きましょう」

「はい。よろしくお願いします」

担任の真籐先生についていく形へ教室へ向かう。

特に緊張感は無いんだけど廊下を歩いているとちらちらと他の生徒が覗いてくる。

さすがに教師の後についてきているからそろそろ気づいているのかな?

 

 

「(あの子が噂の子?)」

「(赤色の長髪が綺麗で可愛い…)」

「(適性Sだけど記憶なくてもIS乗るのは上手いのかなー?)」

すれ違う生徒から囁く声が耳に入るけど、何も気にしないで無視しよう。

 

 

 

しばらく廊下を歩いていると1年4組の教室の前に着いた。

廊下で呼ばれるまでドアの前で待つように言われ、先に真籐先生と桜庭先生が教室の中へ入っていった。

 

『はいはい、みんな席についてください。今からSHRを始めますからね』

真籐先生は手でパチパチと叩きながら、クラスの生徒に注目を集めるように聞こえた。

ドアは閉まっているから中の様子が見れないんだけどね。

 

『今日からこのクラスに一緒になる子を紹介します。どうぞ』

「(ッ!?)」

真籐先生の告げる言葉で教室の中が息を呑むような空気を感じた。

ドアが開かれて私は教壇のほうへと歩いていった。

 

「「ほんとにきた!?」」

「1組じゃなくて私達のところにきたよ!」

クラスの皆は眼を見開き驚いた声を上げた。

そんなに私は珍しい…?と苦笑を浮かべながら戸惑った。

 

「はいはい。静かにしなさい。自己紹介お願いします」

騒然としている教室を真籐先生は手を叩きながら静まり返した。

そして私は自己紹介の内容を迷ったけど意を決して口を開く。

 

「私は秋葉朱音です。噂話がいろいろと広がっていますが、記憶喪失というのは私の名前を含めた個人の事の記憶なので今の私の名前は仮名であり本名ではありません。ただ記憶が無くても今まで覚えた知識はありますがどうやって覚えたのかは思い出せません。そしてIS適性Sについても学園の検査で判明した事なのでたしかです。こんな私ですがよろしくお願いします。以上です」

「「「よろしくお願いしますっ!!」」」

もう私の噂が広がっているし嘘偽りなく正直に自己紹介をした。

クラスの皆の返事が一斉に重なって、語尾が弾んで聞こえた。

 

「それじゃ、自己紹介は以上ですね。秋葉さんの席は後ろです」

「はい」

後ろの席、よく見たら窓側から1つ左隣に追加したかのように空いた席がある。

私はその席へ向かって歩いて、席に着く。

 

「SHRは以上です。それでは授業を始めます」

SHRの終了を告げると桜庭先生は授業の担当科目が違うのかドアを開けて退室していった。

そしてISの授業をし始めた。

授業を聞いていると私の知識の記憶はISについては知っていたからおさらいもかねてよく聞いていた。

 

………しばらく経過後。

 

キーンコーンカーンコーン。

1時間目の終了のチャイムが鳴る。

 

「はいはい。授業はここまでね」

はいはいと言うのは癖なのかな?と思いながら真籐先生は授業を切り上げて退室していった。

休憩時間もあって教室内はガヤガヤと騒然をし始める。

 

 

「ねーねー!」

「あっ!ずるい。先に声かけるなんて!」

「ん?なんですか…?」

ぼんやりしようとしていたら、私の周りはクラスのみんなに囲まれていた。

皆の顔は輝いているというか…適性Sのせいで何か期待がこめられているのでしょうか?

 

 

「適性SとかISの知識どのくらいあるのかなー?」

「ちょっと!その前に自己紹介を…」

……。

これを皮切りにクラスのみんなの自己紹介が一斉に始まった。

総勢…覚えきれません。

その最中に、こんなに自己紹介されるの理由は私がIS適性Sで記憶喪失だからということが判明した。

代表候補生だと声をかけづらい雰囲気があるから遠慮するとか。

だから皆一斉に自己紹介始めたのね…聞くだけの私は呆れつつ愛想笑いしておいた。

内心は一斉すぎて疲れました。

 

 

…。

……。

………。

 

 

あれから昼休みまで普通科目の授業だったから聞いていたけど、私の知識は所々わからない所があった。

IS学園は位置づけは高等学校だから普通科目は高校レベルなんだけど、私の知識は偏ってて知らないのもあったことがわかった。

なんでも知っているとかおかしかったから知らないのもあってなんだか気持ち的に楽になったのもある。

 

そして、今昼休みで疲労を感じて机に両手を伸ばして突っ伏している。

隣の席の子、水色の髪で赤眼の眼鏡をかけている子に顔を向けて見ると机から投影ディスプレイを開いてカタカタカタとタッチパネルを打ち込んでいた。

投影ディスプレイから流れるように表示されているウィンドウの内容を覗き見するつもりはなかったけど眼に入った瞬間に私の知識の記憶は表示されている内容を理解し把握してしまった。

 

 

「…ISの武装プログラム…」

「えっ!?」

頭に沸いた知識をつい口から滑って、水色の髪の子は眼を見開いてこっちを振り向いた。

しまった……詳しすぎる知識はどうして知っているのか疑心を与えかねない…。

 

「ど、どうしてわかるの…?」

「私の知識が知っているだけだから、どうしてなのかわからないですね。あはは…」

険しい表情で聞いてきたから、私は率直な想いを伝え最後は乾いた笑い声を出してしまった。

 

「そ、そう…これ…知っているの2年生からだから…ビックリしちゃった…」

「驚かせるつもりはなかったけど、私は知識だけ記憶があるせいでついね…」

険しい表情から力が抜けたようにやわらかくなったのを見て、私はやれやれといった表情で言った。

 

「あ、私は…更識簪です…」

「簪さんね。私は秋葉朱音です。よろしくお願いしますね」

人見知り気質があるのか言葉が震えているけど私は緊張させないように微笑みながら自己紹介を返した。

 

「あぁぁ!そうよ!秋葉さん!放課後に更識さんと訓練付き合ったらどうですか!」

私の前に座っているクラスの……(名前覚えきれてない)が元気な声をあげてこっちを振り向いて言った。

 

「え、で、でも…整備が…」

「う、うーん?」

突然の提案に戸惑う私と簪さん。

簪さんの整備と言うとISの機体にダメージ受けるような事は避けたいのかなと思って心配になった。

 

「えーと、秋葉さんがどのくらいISの操縦できるのか見てもらう為にどうですか!?訓練機の用意は私のほうでしますから!訓練機を使う場合って結構人手必要ですからね。秋葉さんは専用機を持ってないんでしょ?」

「専用機は持ってないのはそうだけど…簪さんはどうしますか?」

「う、うん…動き見るだけなら…大丈夫…模擬戦みたいな事はちょっとまだ…不安…」

私は知識の中にISの操縦方法はあるから後は簪さん次第と思った。

簪さんは緊張しているのか頬を赤らめて言った。人見知り気質ありと私の予想は当たっている?

 

「じゃあ、決まり!第3アリーナのAピットに訓練機"打鉄"(うちがね)を用意するようにしますね!更識さんと秋葉さんには後で時間を連絡しますのでその時間に集合してくださいね!」

「わかりました。ありがとうございます」

「あ、ありがとう…」

礼はいりませんよーって言いながら元気な人(名前確認するの忘れてた)は退室していった。

それから私は食堂へいって昼食を済ませて、昼休みはゆっくりと時間を潰して、午後も普通科目の為、聞いて学ぶだけだった。

 

 

―更識簪side―昼休み

 

放課後の約束を決めた後の簪は1人で考えていた。

 

(ど、どうしよう?)

ISの実習以外でクラスの人から頼まれたの初めて…。

いつも声かけてくれる事なんてなかったのに…。

一夏…と打鉄弐式をみんなで作って以来…。

一夏…のとまるで違う気持ち…。

このドキドキは嬉しい感覚なのかな…?

 

簪は織斑一夏が好きと感じたときのドキドキした感覚とは違う気持ちと感覚でドキドキしていた。

戸惑いながらも織斑一夏の事が好きとは違う感覚から別の感覚なのは比べられた。

 

side end

 

…。

……。

………。

 

 

IS学園―第3アリーナAピット―放課後

 

放課後、早めの夕食を済ませてから元気な子もとい岡崎さん(やっと名前を聞けた)に連絡された通りの時間に合わせて第3アリーナの更衣室で簪さんとISスーツに着替えてAピットに集合した。

 

Aピットには訓練機"打鉄"は待機状態で鎮座していた。

訓練機の為、用意するのに2年生の整備科の人達のグループが打鉄の最終チェックをしていた。

 

「あ、きたきたー!更識さんに秋葉さん、こっちこっち!」

「岡崎さん、わざわざありがとうございます」

「あ、ありがとう…」

岡崎さんが私達の姿を見てこっちに手招きしていた。

そして近づいて礼を言うと簪さんも礼を言って、岡崎さんは照れ隠しなのか頭を手でかいていた。

 

「いいっていいって、秋葉さんが適性Sなら訓練機ちゃんと動かせるんだろうなーってみんなも見たかったからね!」

「「「「そうで~す!」」」」

私はあははと苦笑混じりの笑い声をあげた。

皆、私が動かす所を見たいのか訓練機のチェックをしていたみんなから熱っぽい視線を私に送る。

 

 

「チェック終了よ。秋葉さん、乗ってみてください」

「はい…っと」

チェックが終わり、打鉄の周りに居た生徒は離れた。

私は打鉄に乗り込む方法を思い浮かべて、打鉄の機体を手で掴んでトントントンという感じで身軽に飛び乗った。

体がかなり身軽というか力強さに私は表情に出さないけど、疑問になった。

私の力量ってどのくらいあるのか不思議に思ったけど今は目の前の事を考える事にしよう。

 

「記憶喪失でも知識あるのか身軽に乗ったねー」

「はい。そのようです…それじゃ起動します」

整備科の人が感心を示した表情で言いながら、私は起動の合図を言うと手を振っていた。

 

《IS起動》

 

「っ……」

IS起動させると手足の隙間を埋めるように装甲が肌に密着され、"ハイパーセンサー"によって知覚が頭の中に広がる感覚がどこか懐かしい…。

各種センサーの感覚、ISでしか知りえない感覚は私は理解し、これを知っている。

操作方法などいろんな知識が頭の中に思い出すように溢れてくる。

――ハイパーセンサーとはISに搭載されている高性能センサー。操縦者の知覚を補佐する役目を行い、目視できない遠距離や視覚野の外(後方)をも知覚できるようになる。

 

「ふぅ…各操縦方法、私は覚えているみたいです。基本動作、大丈夫です…」

「すごい!ちゃんと何も教えなくても操縦できているね!」

私は懐かしいようなISの感覚に息を吐いて落ち着かせて、打鉄をピット内で歩行させて動きを確認している。

それを見た周りの人は感心と熱い視線を私に向ける。1人眼が潤んでいる人が居る気がするけど気にしないでおこう。

 

「じ、じゃあ…後からアリーナの中へ…私もいくから…」

「わかりました」

簪さんの言葉に私は頷き言う。

 

「それじゃあ、私は行って来ます」

「「「「「いってらっしゃーい!」」」」」

挨拶をするとみんな声を揃えて見送ってくれた。

打鉄をピットの射出台に乗って、射出の指示を送ると、一気にアリーナの中へとパシューっと音と共に射出された。

"PIC"の浮遊感を感じながらブースターを効かせてアリーナ内部の地表へとゆっくりと降り立つ。

――PIC(パッシブ・イナーシャル・キャンセラー)とはISの基本システム。これでISは浮遊・加減速などを行うことができる。

 

そして私は武装をチェックした。

 

武装:葵(あおい)

近接用ブレード

 

武装:焔備(ほむらび)

アサルトライフル

 

この二つが打鉄の武装…訓練機だから基本的な武器だと率直に思った。

 

 

「ど、どうです…?」

簪さんのオープンチャンネルによる通信の声が聞こえた。

見上げるとISを身に纏って心配そうに見ていた。

そのまま私の目の前まで下りてきた。

 

「大丈夫ですよ。所でそれが簪さんの専用機ですね?」

「はい…『私達』の"打鉄弐式"です…」

私達の言葉に何か深い意味があるような気がした。

経緯を知らないから何も聞かないでおこう。

それより…。

 

「簪さんの武装で遠距離系の武器ってあるかな?それ使って私は回避行動とってみたいと思っているんだけど」

「え、えーと…山嵐(やまあらし)があるけど誘導ミサイル…マニュアル制御でも出来るけど…」

「誘導ミサイルね…どうなるかわからないからマニュアル制御で良いかな?」

「うん…大丈夫…」

私がやりたい事を伝え、簪さんは頷いた。

マニュアル制御によるミサイル攻撃を回避するだけ、それだけの操縦能力を試したかった。

 

「じゃあ行きます…山嵐発射っ!」

上空へと上昇した簪さんは、打鉄弐式の左右武装の後方からミサイルが8発発射された。

 

「っ…」

打鉄のブースターを全開にし、地表を浮遊したまま滑るように即時転回で右往左往へとミサイルを避け、マニュアル制御で上空から飛んできたミサイルはまっすぐに地面へ突っ込み爆発していった。

 

「反応いいです…」

「ふぅ…知識だけでもここまで操縦できるみたいね…ふふ」

操縦能力を確認し、最後に微笑んだら、簪さんも少し微笑んだように見えた。

それから同じことを2セット繰り返した。

 

「ふぅ…簪さん確認したかったから、今日は付き合ってくれてありがとうございます」

「い、いえ…わ、私こそ…ありがとう…」

礼を言うと嬉しいのか簪さんがさっきよりも微笑んでいるように思えた。

 

「それじゃあ、帰りましょう。操縦の確認も出来たからね…帰りについでにイグニッションブースト(瞬時加速)!」

「!?(打鉄でイグニッションブースト…?)」

瞬時加速でピットへと一気に急上昇していく。

 

この時、朱音は気づいていなかった。

打鉄で瞬時加速を使うのは1年生で初めて見たから簪も目が点になって驚いた。

 

 

………少し経過後。

 

 

ピットに戻ったけど、私を待っていたみんなは驚いた表情をしていた。

 

「ちょっと!秋葉さん、今のイグニッションブーストだよね!?」

「1年生の中じゃ訓練機でイグニッションブーストが出来る人は代表候補生しか居ないんだけど…?」

瞬時加速の使い方の知識があったから思わず使ったせいでみんな驚いてたんだ…。

1年生の中で代表候補生しか訓練機で瞬時加速を使える人が居なかったのならなおさら驚愕するよね。

 

「え…えーと…それは私の知識がそれほど豊富だったって事で…あはは…」

「「「「や、やっぱり!!」」」」

素直に伝えたら、予想通りなのか、みんな声を揃えて叫んだ。

わかっていたならこの程度で驚かないでよとか呆れそうになりつつも私は打鉄から降りた。

 

「みんなも今日はありがとうございました。訓練機まで準備してくれて…」

「いいんですよ。私達整備科はそのために居るんですから、それにミサイル撃たれても無傷なので私達の仕事は運ぶだけです」

「はい、そうですよー」

ここまでしてくれた事に感謝をこめて礼を言うと、みんなは首を振って微笑んでいた。

それが整備科魂という感じで当たり前なのかなと疑問が浮かんだ。

それから岡崎さんはまだここに残るということで私は更衣室へと向かう為にピットから立ち去る。

 

 

 

IS学園―第3アリーナ更衣室―

各アリーナごとに更衣室が隣接して設置されている。

 

私はピットから更衣室に着くと簪さんも来て一緒にISスーツから制服に着替えた。

 

「ふぅ…いろいろ疲れたかも…」

溜息を吐きながら、ベンチの椅子に腰掛ける。

本当に疲れた。いろんな知識を思い出す量が多いのと戸惑わないように気を張りすぎて…これだけ詳しいと私が何者なのか…って気持ちが沸いてくる気持ちを抑えるのが大変ね。

 

「そ、そうです…秋葉さんは…自分の本当の名前がわからないのに…ずっと落ち着いてて強いですね…」

簪さんはそう言ってきた…でも私はそうじゃない。

気持ちを抑えるように割り切って落ち着かせるように気を張っているだけ…。

 

「簪さん…そうでもないよ…何事も割り切らないといけない…私だって…この詳しすぎる知識のせいで私が何者なのか…気になって仕方がないのよ。気になるほど気になる。だから気にしないように割り切るように気を張っている」

今の私の想いを率直に伝えた。

言葉にするほど私自身に言い聞かせるように、少しずつ声が強くなった。

簪さんはちょっと悲しそうな顔を浮かべていた。

 

「ご、ごめんなさい…そんなに…気を張って…過ごしていたなんて…思わなかった…」

「人が何を思って考えているなんてね。誰にもわからない。言わなきゃ伝わらないし知らないんだから簪さんは心配しないで、これは私自身の気持ちの問題だからね」

心配そうに言う簪さんに、私は一言一言噛み締めるように言い自身の考えを伝えた。

むしろ自分に言い聞かせるように言ったのもある…じゃないと泣き崩れてもいいぐらい記憶の喪失による不安は重たい。

 

「そ、そうですね…」

「それじゃあ。私は寮に戻りますね。お疲れ様」

「う、うん…おつかれ…」

私は疲労を感じつつ、簪さんへ別れの挨拶をして寮の部屋へと向かう。

 

―――。

 

 

―更識簪side―

 

朱音を見送った簪は更衣室のベンチの椅子に座ったまま、考えにふけっていた。

 

「……(『人が何を思って考えているなんてね。誰にもわからない。言わなきゃ伝わらないし知らない』)」

秋葉さんのこの言葉はすごく心に響く…。

早く会えてたら、もっと早くお姉ちゃんに仲直りできたのかな…?

そうすれば一夏と…?

そうだ…まだお姉ちゃんに伝えてない事…一夏の事…どう想っているんだろう…?

 

簪は朱音の言葉に関心を示しながら一つの疑問が頭によぎったのであった。

 

 

side end

 

 

…。

……。

………。

 

 

IS学園生徒用寮―朱音、楯無部屋―

 

寮の自室に戻ってきたときには窓の外は暗くなっていた。

そういえば楯無と相部屋だったけど、楯無はまだ帰ってきてない。

よくよく考えてみれば生徒会長だし、忙しいんでしょうって思いながら汗を流す為にシャワーを浴びている。

 

「……」

暖かいシャワーの湯で疲労していた体が安らぐ…。

それにしても今日はいろいろ知識の記憶が思い出される日だった…。

学園に入ったばかりでこれだけの知識の量…。

 

「はぁぁ…」

自分が何者なのかって考えるといいようのない不安にかられるからこれは考えないほうが良いね…。

深い溜息をついて落ち着かせる。

 

「なぁに、溜息ついちゃっているのかなぁ?」

「?楯無…?」

楯無がシャワー室に入って、シャワーを浴びている朱音の姿を見ていたが平然と落ち着いた態度で返事をした。

 

「あら?驚かないのね?おねーさん失敗しちゃった?」

「楯無…同性に見られて驚く人って居るんですか…?」

驚かせるつもりでそこにいたのかな?

悪戯が失敗したっていう苦笑しそうな表情でしたけど。

 

「うーん…他の子は驚くんだけどね…朱音ちゃんは落ち着いているわね」

楯無は手にもっている扇子の先をあごに当てながら、考えこむ振りをして言っている。

他の子はってこんな感じで驚かせているの…って内心苦笑を浮かべた。

 

 

「今までどんな驚かせ方をしたのか…気になる所ですけど聞かないでおきます」

「あれ?聞いてくれないの?そんな子にはおねーさんはこうしちゃうぞっ」

「………?」

場の空気は止まった。

楯無の思考が斜め上にいったのか朱音の胸に手を当ててしまっていた。

『並の人なら何か反応を示す』が、朱音は「ん?」といった表情で平然としていた。

 

 

「あはは…ごめーん。手が滑って…さようならー」

「あ、はい?」

楯無は苦笑を浮かべながら、なんだか逃げるように去っていった…。

なんだったんだろう…?と私は疑問に思った。

たかが女が女の胸を触ったぐらいで…?男が相手だとそれは一般的に拒否しますけど。

タオルで濡れた体を拭いて部屋着に着替えて、身支度を済ませてベットに腰をかける。

ぼんやりしていると疲労からか眠気が早くきている…もう寝よう…。

 

 

―――。

 

 

―更識楯無side―

 

あれから学園のどこかに楯無は逃げるように身を隠していた。

 

「ふぅはぁ……」

いつもの癖でしちゃった…。

それにしても朱音ちゃんが無反応なのは予想外だったわ。戸惑ってつい逃げた…。

他の子は何かしら反応してくれるのに無反応ってどういう事、並みの人じゃ…。

でも、記憶喪失だから経緯なんて思い出せないでしょうし…。

こんなの織斑先生以来かしら…?

 

楯無は朱音に対して悪戯をしても無反応で平然としたことに思い悩んだ。

 

 

 

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