IS~Lost Memory~   作:竜太

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4話『2日目―IS実習』

教室―1年4組―

 

簪と教室に着くとクラスの人がいきなり詰め寄ってきた。

 

「「「秋葉さん!訓練機でイグニッションブーストしたんですって!?」」」

それぞれの口調ではあるけど一斉に揃った声はこれだった。

昨日の今日ですからみんなの話題はそれなのねと苦笑した。

 

「えぇ。まあ知識の記憶でこうだってやったら出来ちゃったので教えるのは難しいかも」

「そうなんだ。でもいいなー。出来るなんて憧れるなぁ…」

「うんうん。そうだよ~」

クラスのみんなの目が好意の熱い眼差しで私はあははと愛想笑いというか苦笑というか…。

言葉に出来ない気持ちだった。

そして席につくと真籐先生がやってきた。

 

「はいはい。SHR始めますよ。今日はISの実習なんだけど皆さん喜びなさい。1組との合同になりました」

「「「「「うそぉっ!?」」」」」

「お、織斑君に会える。会える…あー」

真籐先生のお知らせで教室内はどよめいていた。

みんな、魅了されたような熱っぽい溜息を出していた。

そんな中隣の席の簪はどうなのかなと見たらちょっと顔が赤い。

……平然と落ち着いていたのは私だけだった。

 

 

「静かにしなさい。皆さん着替えて第2グラウンドまで集合ね。ただし!!織斑先生が指導だから時間は守りなさい。SHRは以上よ」

連絡事項で織斑先生が指導なのを言い聞かせるように大声をあげていた。

言い終えた真籐先生は退室していった。

 

「あぁ~…織斑先生なら急がないと…」

「でも1組と合同とか初めてだね」

「そうそう、これも秋葉さんと更識さんの縁よ縁っ」

「そうだね…」

クラスのみんなが着替え始める前に私と簪のほうを向いてきた。

 

「「「ありがとうございますっ!!!」」」

「あはは…別に良いですよ」

「う、うん…嬉しいけど…そこまでしなくていいです…」

みんなに感謝されても、私は苦笑しながら首を振って言う。

簪は嬉しいようで頬が赤くしながらも頭を俯かせていた。

……?私は嬉しいという感情が沸かない気がする。

このやり取りは苦笑するような呆れるような感覚だった。

これは記憶喪失前までの私がしてきた事が関係しているんだろうと憶測は立てれるけどよくわからない。

 

 

…。

……。

………。

 

 

―第2グラウンド―

 

ISスーツに着替え終わってグラウンドへと簪と一緒につくと織斑先生が既に待機していた。

時間前にも関わらず生徒のみんなは組ごとの整列を始めていた。

これが織斑先生だから?それとも教師と生徒の関係なのかな。

4組のみんなは織斑君云々の声と生暖かい視線を送っているけど時間前だから織斑先生は無言で眺めていた。

 

「よっ、簪と朱音さん。4組と合同とか初めてだなぁ」

「あ、一夏…は、初めてだね…」

「私は実習はこれが初めてです」

「朱音さんはそうだったぜ…」

一夏が組ごとに並んだ列の隣だったから話しかけられた。

簪は顔が赤くなっておどおどしたような雰囲気で返事を返していた。

一夏は言葉間違えたときづいて頭をかいていた。

一方私は、平然と落ち着いた返事だった…簪やみんなとの熱っぽい感情の違いに一途の疑問と違和感を覚える。

 

キーンコーンカーンコーン。

チャイムが鳴ると織斑先生は声を出し始めた。

 

「静かにしろ!今からISの実習訓練を行う。今日は4組と初めての合同だから気をしっかりと持てよ。では織斑と秋葉。前へ」

「あ、はい」

「え?お、おう…」

織斑先生に呼ばれたからみんなの前に行く。

一夏は「はいと返事しろ!」と織斑先生に怒鳴られると同時にスパァンって音を立てて頭を叩かれていた。

「いつものことだねぇ…」って1組の人たちが言ってたから恒例なのかなって私は苦笑を浮かべた。

 

「んんっ。実戦訓練を織斑の白式と秋葉は訓練機"打鉄"で行ってもらう。訓練機はそこに用意されている。準備しろ」

「「はい」」

よく見たら訓練機、打鉄はグラウンドの中央に1機、鎮座するように待機されていた。

私は打鉄に乗り込み、一夏はIS"白式"を起動展開させて身に纏った。

 

「はぁ…織斑先生、訓練機と白式は荷が重いんじゃないか?」

「つべこべ言うな織斑。これもお前の為だ」

「お、俺?」

「やってみたらそのうちわかる。秋葉、準備はいいか?」

「はい、起動終わっています」

私は会話のやり取りを聞きながら、打鉄の起動を終わらせていた。

 

 

一夏の百式は近接武器は"雪片弐型"でワンオフアビリティ(単一仕様能力)"零落白夜"が特徴的。

零落白夜は莫大なエネルギーを使う分、攻撃がヒットすると相手のシールドエネルギーが全部消滅するという一撃必殺の武器。

左腕の雪羅が射撃武器である荷電粒子砲があるけど連射は効かない単発射撃武器。

他にもビームシールドとビームクローが特徴。

という知識を思い起こしてこれでどうするか落ち着いて考えていた。

弱点は射撃による遠距離攻撃と憶測を立てながら私は作戦を練っている。

性能とエネルギーの総量の差はあるはずだからね。

 

 

「では、初め!」

「いくぞ!」

織斑先生の合図と共に私はPICの浮遊感を味わいながら、スラスターを効かせて白式と距離をとりながら、手にはアサルトライフルの焔備で後退しつつ射撃を繰り出す。

一夏は焔備の弾を横に滑るように回避しながら、スラスター全開で近づいてきている。

機動性は訓練機より上だから離すことはできないと判断し、焔備を打ちながら後退をやめて瞬時加速で一夏の横をすり抜けようと考えた。

 

 

「ここだッ!」

「っ……」

一夏の叫びが聞こえると同時に一夏は瞬時加速を使って急加速の特攻をしかけてきた。

私は想定していた瞬時加速を使って一夏の横をすり抜けながら、焔備で横の胴体を狙い撃つといくつか当たったのかシールドバリアが発動したのが見えた。

流石に射撃を受けながら急旋回をすることまでは出来ないみたい。

そう判断し方向を一夏に向けるように姿勢制御ブースターを使って即時に転回し、円を描くように動くシューターフローの行動をした。

 

「ぐ…」

焔備の射撃を数秒間受け続ける一夏は衝撃で身動きとるのが遅れて、シールドエネルギーを削らせて一夏は急上昇で射撃攻撃から逃げた。

機動性と推進力が早い一夏を実弾兵器で狙い打てるわけでもなく、威嚇射撃みたいに前方にまきながら、私は横へ移動していく。

訓練機である打鉄は最大エネルギーが400と少なく、瞬時加速を使ったから300を切って200に近かった。

 

「そこだぁぁッ!」

「ッ!」

瞬時加速による一夏の特攻が来た、ただまっすぐではなく、上空からの斜めに進むように使っている…。

言わば曲線の特攻、反対側へ向けて瞬時加速を使うにもエネルギーは少ない…なら。

 

 

ギィィィィィン!!

と甲高い音がグラウンドに響き渡った。

 

「ふぅ…」

「は、はええ…」

私は一息を吐きながら、一夏は驚愕の表情をしていた。

特攻をしてきた一夏に避けれないと思って近接用ブレードである葵へと武装を瞬時に切り替えて両手で持ち、白式の剣である雪片弐型を受け止めたからだろうね。

武装切り替えと構えるまでの時間は瞬時加速で近づかれる前に終わったから1秒という瞬間かな?体感感覚だからわからないけど。

 

 

「そこまで!」

「「はいッ」」

織斑先生の終了の合図がかかって揃えて返事をして、打鉄を指定された場所まで歩行で移動させてから降りた。

 

「では、次は――」

みんなの所に戻った後は、織斑先生は次の組を呼び対戦を始めた。

私はそれを眺めながら、隣の簪が声をかけてきた。

 

「あの…さっきの訓練…すごく朱音が…真剣な顔でしていた…」

「あ、そういえば…私って声出てた?」

言われて思い返せば、真剣に思考を巡らせていた気がする…。

一夏は力むように声出していたけど私はどうだっけ…?と疑問が浮かんだ。

 

「ううん…叫んでいない…集中するように無言だったよ…」

「そう…それが私のプレイスタイルかもね…昔の私がしてきたことが体が慣れてしまって…」

簪の言葉を聞いて、私はそういう風に真剣に集中するようにISの操縦していたんだと憶測を立てた。

昔の私はどんな風にISやってたんだろうね…気になるけど思い出せないから仕方が無い…。

 

「それにしても朱音さんは反応早いなぁ…瞬時に武装の切り替えってどういう感じなんだろうか?」

「一夏さん、それはよくわからないけど体がやり方を覚えていた…」

「そんなもんかなぁ…」

一夏に聞かれたけど、あれは私でもどうして出来たのか教えづらい…。

直感感覚が近接武器で受け止めるという発想からああなったとしか…。

お互い首をかしげてちょっとおかしな光景に思えた。

 

「織斑。射撃から接近武器に瞬時に武装を切り替えたりするような強い相手が居る事を覚えるんだ。良いな」

「了解」

私達のやり取りを聞いていたのか、織斑先生は言葉をかけてきた。

一夏は真剣な表情になって力強く頷いた。

そう…一夏の立場からしたら専用機じゃない訓練機でやり合えた私が居る…強い相手にもなりえる存在だからこうして4組と合同にさせたんだ…。

 

 

………しばらく経過後。

 

 

「よし、最後に秋葉と……更識。前へ」

「「はい」」

なんだか織斑先生は私を呼んだ後、誰呼ぼうか思い悩んだような間が空いた。

 

「今から秋葉と更識の両名には違う事をしてもらう。垂直急上昇から折り返しで垂直急降下による完全停止をやって見せろ。目標は地表から10センチだ。降下を始める距離は上空200メートル以上ならいつでも構わない」

「「はいっ!」」

織斑先生の説明で私は理解した。

垂直急上昇から折り返しで垂直急降下とか、一線を描くようにずれずにやれれば良いんでしょうと思いながら訓練機の打鉄に乗り込む。

簪は専用機の打鉄二式を召喚展開していた。

私は打鉄の動作の確認を念入りにしてミスが出ないように各種センサーなどのチェックをしていた。

 

「では、更識から始めろ」

「はい」

織斑先生の合図で簪はスラスター、ブースターを全開にして真っ直ぐに急上昇した。

空高く急上昇した後、急降下を始めようと姿勢を変える時スピードに負けたのか転回するときは曲線を描くようにずれたように見えたけど急降下は垂直にまっすぐだった。

つまり垂直急上昇と垂直急降下は折り返しがうまくいかなくて逆U字になったと見ていてわかった。

ギュンッって音と共に地表すれすれに簪は完全停止した。

 

「ふむ。地表10センチは合っているな。垂直も良い。だが折り返しの際の転回はずれたな。精度をあげるよう心がけるように」

「…わかりました」

織斑先生の感想を聞いて簪は頷き、ISを解除してみんなの列に戻った。

 

「よし、秋葉。始めろ」

「了解」

あれ?準備を終えて無意識に力んでいたのか返事に違和感を感じたけどまあ、始めよう。

意識を操縦に回して打鉄のスラスターとブースターの出力を全開にして垂直で急上昇を始める。

 

《10…30…50…70………120……》

センサーが告げる上空何メートルかという数字が頭に入りながら機体を正確に制御していっている。

上空200メートルを突破したときに瞬時に180度転回して垂直急降下をしなければならない。

その方法はブースターとスラスターを止めて上空を進んでいる推進力はそのままに機体を回すように動かす必要がある。

ただブースターなしの無理矢理では機体は動かないから、機体を回すときに姿勢制御ブースターをタイミングよく使って切らないといけない。

PICではこの加速状態では役に立たないし姿勢制御ブースターを無駄に入れると簪のように勢いあまってずれるから一瞬の気の緩みも許されない。

この操作は1秒以内のコンマの世界だ。

 

 

 

「おい、諸君も見ておけ。そろそろ転回と急降下を始めるぞ」

千冬の言葉に1組の専用機持ちの全員と簪は真剣な表情で見ていた。

確証はなかったが内心では千冬は訓練機で瞬時加速を使っただけに期待をこめていた。

1年生では習得するには難しい操縦技術と精度はどれくらいあるのか皆の見本になれるからだと考えていた。

そのほかの生徒も息を呑んで見守っていた。

 

 

 

「…っ……」

私は上空200メートルを超えたとき、想定通りに姿勢制御ブースターを一瞬だけ入れて切る、それと同時にブースターとスラスターを切る。

その場での180度転回、一気に機体が180度回転したところで回転を止めるように姿勢制御を入れ、ブースターとスラスターを再度全開に入れると垂直急降下を始める。

 

《190…160…130……》

最大速度で急降下、機体の重さも相まって早い…。

完全停止する時はスラスターとブースターそしてPICを上昇方向で全開に吹かせる事で出来るからそうする為に神経を構えさせる。

そして地表すれすれの10センチになるように近づいたらブースターとスラスターを上昇方向へ全開に吹かせる。

ギュンッと音と共に完全停止が出来たら瞬時にブースターとスラスターを切ってPICの浮遊に身を任せる。

 

「よし。秋葉の垂直急上昇からの折り返しの転回はわずかにずれはあるが精度は良い方だ。完全停止も10センチと合格だ」

「ふぅぅ…ありがとうございます」

私は深く息を吐いて訓練機の打鉄から下りた。

みんなのほうを見るとちょっと驚愕で放心…していない?

 

「すげぇや…」

「す、すごいですわ!綺麗な一線が描かれましたわっ!」

「そうだな…一線だったな…」

「僕も驚いたよ…」

「朱音…上手かった…」

それぞれの口調だけど驚愕の表情で驚きの声をあげていた。

ラウラぐらいかな黙っていたの。

それにしても私は疑問に思った…。

 

「これはシューターフローとか習得するぐらいの難易度かと思ったけど…」

「そうだ。貴様らがそういう練習をしなかっただけだろ」

私の疑問の声にラウラが頷きながら言う。

 

「これは1年生では教えない操縦技術をこの実習を通して秋葉は持っている事がわかった。専用機持ちの諸君は2年生にもなればこの程度の技術と精度を持たなければいけない。わかったか?」

「「「「はいっ!!」」」」

織斑先生の説明に皆は声を揃えて返事をした。

やっぱり私はみんなの見本もかねての合同実習になったんだね。

 

キーンコーンカーンコーン。

そこへ午前の終業のチャイムが鳴った。

 

「では、午前の授業は終了だ。午後も引き続き実習だから遅れるなよ。解散!」

「「「「はいっ!」」」」

織斑先生の号令でみんなは校内のほうへ向かって歩いていく。

 

 

「秋葉。ちょっと待て」

「あ、はい?」

私は織斑先生に呼び止められて疑問系で返事が出た。

 

「秋葉の操縦能力の高さはこの眼で確かめてもらった。お前は国の代表候補になる気持ちはどうだ?」

代表候補生になる気はあるのかという質問でしょうね…。

でも私は……。

 

「……私は記憶が喪失している以上は国家代表を目指す気はありません。ですが将来を考えると生活する為に必要な金銭の問題があるのでISに関わる事につけたらと思っています。というか学園を出たらどうやって生活すれば良いのか当てがありませんからIS学園の教師なんてのも選択として良いじゃないかなと思っています」

しばらく私の考えをまとめてから想いを伝えた。

今はIS学園に居るから生きているけど卒業した後を考えるとISに関わる仕事のほうが良い。

私の操縦能力と適性Sは国家代表を目指すのも良いかも知れないけど、そもそも記憶が喪失している以上記憶を思い出した時を考えるとそこは不安要素になる。

国家を背負えないかもしれないからね。

だからどちらかといえば無難そうなのはIS学園の教師でしょう…。

 

「ふむ…。秋葉の希望はわかった。ただ秋葉には専用機が来るから、日本の代表候補生にはなるが時期が来たら辞退も出来る。山田先生も元は日本の代表候補生だったからな」

「そう…ってえ?私に?」

つい返事しようと口が滑ったけど、専用機が来ると…?

呆気に取られそうになった。

 

「そうだ。近い内に専用機が来る。詳細はそのとき教えるが今は覚悟だけしてくれ。秋葉は記憶喪失だから先の人生の選択を見失って欲しくないからな」

「わかりました。いろいろありがとうございます…」

織斑先生の言葉を聞いて私の事を心配してくれているんだと理解し感謝の気持ちが沸いてきた。

 

「気にする事ではない。ではもう行っていいぞ」

「はい」

織斑先生は微笑みながら首を振っていた。

生徒の前では厳しそうだけどいろいろ心配してくれる面はあるんですね…。

そして、私は校内のほうへとその場から立ち去っていく。

 

 

―――。

 

 

―織斑千冬side―

 

千冬は黙って立ち去る朱音を見送りながら歩きだした。

 

「ふぅ……」

記憶喪失だから心配していたが将来の事を考えれるほどしっかりしていたな…。

一夏はまだ将来の事を何も考えてないこの差は…。

秋葉、お前は見た目より歳が3年生に近いのかも知れないな。

しかし専用機…これだけは頭痛の種だな…。

 

千冬は話をして朱音が見た目の幼さから年齢に合わなくしっかりしている事に1年生との違いがはっきりとわかって納得していたような感じだった。

 

 

 

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