IS学園―食堂―放課後
午後のISを終えて簪と一緒に夕飯の食事をしている。
他のみんなは部活とかで散らばった。
「それにしても…ここの食堂って意外とおいしいのね」
夕食は魚の煮込み…という和食を食べながら呟くように言う。
「うん。食堂のおばさんは腕が良い」
そういう簪はかき揚げうどんです。
かき揚げを箸でつゆの中に沈めてぷくぷく時々浮かぶ泡を見つめわくわくした表情で見ていた。
なんだか子供みたいと思いながら微笑ましい光景だった。
「お、簪と朱音さんじゃないか。隣いいか?」
「一夏さんどうも。えーと、簪の隣でもどうぞ」
「っ!」
一夏が私達に声をかけてきて、私は返事をすると簪の隣に一夏は座った。
隣に座った事により簪の顔が赤くなっていた。
男女の好意があるとこうなるんだと関心を示すけど私はそういう感情が沸かない。
見ている事は微笑ましいんだけどね。
「やっぱここのご飯はうまいよなぁ。朱音さんは和食か、簪はやっぱうどんが好きなのか…?」
「そうですよ。一夏さんは鶏肉の野菜炒めですか」
「うん…かき揚げはおいしいから…」
食べている食事の話をしながら、私は新鮮な気持ちになる。
こういう経験が無かった気がするから虚しさは感じないけど何かひっかかる。
「そうさ。以前は夕食は小食で済ませていたけど放課後の特訓のせいで腹減りやすくて普通に食べるようにしているんだ」
「そうなのですね。一夏さんのISは近距離型だから腕とかよく動かしますし大変でしょう」
一夏の話を返すと一夏は溜息をついていた。
「そうそう、シューターフロー習うときも大変でさ。あの時はご飯も喉を通らなかったんだ…今は大分平気だけどあの時は死ぬかと思ったさ…」
「最初は疲れるでしょう。訓練を続ければ疲れなくなりますからね」
……こんな感じで食事しながら他愛もない話で時間を潰していった。
その一方簪は顔を赤くしながらも、うどんを食べていた。
隣に一夏が座っているせいで会話に混ざるような勇気が出ないのかなと思ったから私は何も言わない。
………しばらく経過後。
「あ、あの…い、一夏…明日学園…休みだから…その……」
「ん?どうした簪?」
食べ終わって一息ついた所で簪が一夏を何かに誘おうと言葉に出したけど詰まっている。
それを聞いている私は一夏を誘いたいんだと理解した。
だって簪の顔が真っ赤だもの、私は黙ってお茶を飲む。
それにしても一夏は簪の言葉に疑問が浮かんでいるような表情だった。
何を言いたいのか気づいてない雰囲気に感じる。
「…えと…そ…の……」
「簪…もしかして」
両手の指を重ねてもじもじしている簪。
言う勇気が足りないようね。
一夏が何か口走る前に私が言ったほうが良いかもね。
「簪はね。明日は休みだからって一夏さんと遊びにでも行きたいみたいです」
「あー。なんだそういう事か?別に俺は構わないぜ」
言葉に詰まっている簪のフォローするように言う。
それを聞いた一夏は簪のほうを向いて聞いていた。
簪は息を呑んで顔を俯かせていた。
「う、うん…そうです…明日…ね…」
「おう。時間は後でメールでもってアドレス交換していたっけ?」
「あ…して…ない…」
「じゃあ。今しようか」
私はやり取りを黙って聞いていた。
簪は顔が真っ赤でたどたどしく動きながらも、一夏は平然とした顔。
一夏は異性に誘われたのにこれだから鈍感な感じなのかなって私の知識からしてもわかった。
それでもこれは見ていて微笑ましいと思いながら、二人はメールアドレス交換をして済ませた。
「サンキュ。それじゃ俺はそろそろ特訓の時間だから先に失礼するぜ。簪、朱音さん。またな」
「えぇ。またね」
「うん…また…」
一夏はそう言うと食べ終わった食器のトレーを持って食堂に返すと立ち去っていった。
簪は顔を真っ赤にしたまま視線はずーっと一夏の後を追うように見ていた。
微笑ましいねって内心思った。あれ?私微笑んでいるかもしれない。
「あの…朱音…ありがとう…」
「どういたしまして、言う勇気なかったんでしょう?」
礼を言う簪に私は返事をすると頷いた。
あれだけ言葉が途切れ途切れでうまく言えないのは聞いている私のほうがムズ痒いもの。
「でも…朱音は一夏の事は何も思わないの…?私達みたいに…慌てたりしないで落ち着いている…織斑先生みたいで…」
簪は私の平然と落ち着いた態度に疑問が沸いたのか聞いてきた。
私も内心異性との知識はあるものの感情は何も感じないのは不自然に思えていたから…。
でも無感情で落ち着いているんだから仕方が無いのよ。
「それは私が一夏さんのことを何も想っていないからかもね。落ち着いているのもそうだと思う。むしろ簪と一夏さんのやり取り見ているほうが微笑ましいと思ったぐらいね」
「そう…微笑ましい?」
「羨ましいとかそういうものじゃなくて、なんだか応援したくなるってことよ。がんばりなさいって事ね」
私は率直に思った考えを簪に伝える。
感情が沸かないとかは言えないけど。
一夏の周りの状況は私は今日会ったばかりで知らないからこういう風に言うしかない。
「そうなんだ…ありがとう…私がんばってみる…」
「えぇ。がんばりなさい。また何かあったらフォローしてあげるから」
「うん…ありがとう」
微笑みあいながら、席を立ち食べ終わった食器のトレーを返しに食堂のほうへもっていく。
簪も一緒に返しに向かった。
「じゃあ…私はこれで…また…」
「またね」
手を振って簪は食堂から立ち去った。
「さて……はぁ…」
私は腰に手を当てて、溜息交じりな声が出た。
なんかずっと気配を感じていたんだけどなんだろう?
この気配……。
「――隠れている人は誰ですか?」
気配を感じるほうに顔を向けながら私は声を発する。
食堂の手前にある廊下への曲がり角の辺りに何か気配を感じたから。
『おねーさんばれちゃったかぁ…』
小さく遠い声が聞こえるけどこのしゃべり方は楯無…。
「……楯無だったのね」
「うふふ…隠れていたつもりだったのに…」
私は額に手を当てて、やれやれといった表情で言いながら、楯無が廊下の曲がり角からバツが悪そうに出てきた。
なんで隠れて見ていたんだろう?
「それでどのへんから見ていたのかな?」
「一夏くんと一緒に食べてる所から……会話も聞いてたわ」
楯無はごめんって申し訳ない表情で言う。
会話もというとあのやり取りは全部知っているわけね…。
「それでなんで見ていたのかな?」
「簪ちゃんの事だから心配で…」
疑問を聞くと、心配で隠れていたのですか…。
「妹想いなのはわかりましたよ。隠れて見るぐらいなら一緒に混じれば」
「無理……」
私の言葉を遮るよう楯無が即答して表情はしょんぼりしている。
何が無理なのかなと疑問を感じる。
妹想いだから一緒に混ざれない?
でも朝は混ざったよね…?
「無理ってどうしてです?」
「うーん…ここじゃ言いづらいから寮へ…」
朝の時の楯無の茶化すような元気なあれはどこへやらとシュンとしてて、ちょっとしおらしい楯無ですね……。
促されるままに寮の自室へと楯無と一緒に向かう。