IS学園寮―朱音、楯無部屋―夜
あの後、楯無と一緒に寮の自室に戻ってきてベッドに私は腰をかけ、反対側の隣のベッドに楯無が腰をかけた。
「ふぅ…なんだろうね。こうして他の生徒の前では見せない楯無と話するのは…」
「朱音ちゃんだからかしら…?話したくなるのかもね…生徒会長とかじゃなくて…普通の私に…」
浮かない表情の楯無、生徒会長としてのプライドが他の生徒との会話の仕方をしないといけないから素直になれないということかな?
私もこの自分が何者なのかという言い表せない不安と悲しみ、そして恐怖の気持ちを気を張って抑えているから人の事いえないけど…。
「それで…無理って何かな?」
本題を楯無に聞くと思い悩んでから口が開く。
「実は、私も一夏くんの事好きなのかもしれないのよ…でも簪ちゃんは一夏くんの事が好きなことに気づいている…でも私は好きなのかもだから簪ちゃんと一夏くんの場には混ざりづらいのよ…大勢ならまだ平気なんだけど…」
小さい声で言う楯無の言葉に私は理解した。
妹想いだからこそ姉である楯無が混ざった事によって一夏の事を好きになってしまうかもしれないという葛藤があるんだね。
一夏の事が好きになると姉妹で一夏の取り合いが始まる。
それが喧嘩を生む原因にもなりやすいとわかっているから怖い思いもある。
でも今の話だけでは私は解決できるような言葉が見つからない。
「うーん…楯無は一夏さんの事どうして好きかもしれないのか教えてくれる?何かあるはずよね…私がここに来たばかりだから何も知らないから」
「そうよね…じゃあ長い話になるわ」
ふぅと息を吐いてから楯無が経緯を語りだした。
「私が一夏くんと初めて会ったのは、更衣室で一夏くんが溜息ついているところを見てちょっかい出したところが始まりね。一夏くん自体は前々から知ってたんだけど…それから――」
――織斑一夏を私のように警護する為に相部屋生活が始まる。
――相部屋が解消されても私が来るまでほぼ毎日のように1回は悪戯もかねて遊びに行っていた。
――簪のISの専用機"打鉄弐式"は手作りで完成させる為に一夏に頼んだ事。
楯無から聞かされる長い話を出来事だけを簡単に私の中でまとめるとこうなる。
毎日一夏の所に会いに行っていたら……。
「――それで、最後は一夏くんの事を考えると、顔が熱くなるという感じなのよ…」
長い話を終えた楯無はふぅっと息をついて気持ちを落ち着かせていた。
最後の言葉言うときだけ顔が少し赤くなったのを私は見過ごさなかった。
「難しい問題ですね…最初の出会いからしばらく何かと会っていて長い期間を異性である一夏さんと関わっていたから、そんな気持ちが生まれているのかもね」
率直に思う感想を私は伝えた。
正直楯無の気持ちは私にはわからないし、憶測だけ述べれるけどはっきりとした解答はできない。
「そうよね…私はどうしたら良い?」
思い悩む楯無、生徒会長でもこういう事案は決断ができないのね。
決断させたほうがいいのかな?うーん…。
「楯無は簪の幸せを願うのか願わないのかの違いだと思いますよ。一夏さんは1人しか居ないのだから、姉妹で取り合う事は仲が割れる可能性もある。私としては思い悩んでいる楯無次第で簪の今後が左右されると思うよ」
思考を巡らせ私の考え思ったことを楯無に伝える。
楯無は聞きながらもなんだか納得したかのよう表情だった。
「やっぱり、そうしたほうが良いよね。一夏くんを私が取っちゃうとまた昔みたいに簪ちゃんが…それだけは私はしたくないし…でも…」
小さい声で言う楯無、また思い悩んでいくのはムズ痒い…。
だから私は……。
「楯無はそこまでわかっているならもう思い悩む必要はしなくて割り切れば良いのですよ。簪と一夏さんの仲を取り持つように見守り、必要な時以外は近づかなければいいのですよ」
はっきりとした強い口調で私は想いを伝える。
楯無は私の言葉を聞いて頷いた。
「そうね。そのほうが簪ちゃんの為だもの…やっぱり朱音ちゃんは…しっかりしているね。記憶喪失でも根の性格かしら?」
「さあ?私にはわかりません。ただ思ったことを言ったまでですよ」
首をかしげる楯無の言葉に私は両手を広げてやれやれといった表情で言う。
ここまで理解し話できるのは楯無の周りには居ないのかな?と率直に疑問に思った。
生徒会長という立場だから、こういう相談できる人が居ないのかな?
「ふぅ…さてと、私の気持ちもなんだかすっきりしたしお風呂いこうかしら。朱音ちゃんも行く?」
「いえ、私はシャワーで済ませます」
楯無が誘ってきたけど私は拒否し、しょうがないという表情で退室していった楯無。
正直、長い話を聞くのは疲れて睡魔がきていた…。
シャワーをして寝巻きに着替えて身支度を済ませベッドに入る頃には眠くてすぐに眠りについた。
―――。
―更識楯無side―
楯無は大浴場のほうへと廊下を歩いていた。
そこへ人影を見つけた。
「あら?簪ちゃんこんな所でどうしたの?」
楯無は廊下で誰かを待っているかのように立っていた簪を見つけて声をかけた。
「うん。お姉ちゃんにちょっと…聞きたいことがあって…」
「どうしたのよ?簪ちゃんらしくないね?」
体をむずむず動かしながら言う簪に、楯無は首をかしげながら声をかける。
「お姉ちゃんは……い、一夏の事どう想っている?好きなの…?それともただ遊んでいるだけ…?」
意を決して言う簪は緊張なのか顔は赤くなっている。
楯無は先ほどの朱音との話のやり取りで予想はしていたけどこうも早く来るとは思わず眼を点にして驚いていた。
「ぷふっ。簪ちゃん、私の性格知っているでしょ?一夏くんはそんな風に思っていないよ。からかうのが楽しいだけよ。もう簪ちゃんは男の子を想うようになったのね…おねーさんは感心しちゃうなー。ふふ」
楯無は笑ってから妹を想って、一夏への想いを割り切るように言葉にして言った。
「もー…お姉ちゃん笑わないでよう…やっぱり今まではからかう為にやっていた?」
「んふふ。そうよ。慌てる一夏くんを見るのは楽しかったよ?でも簪ちゃんがそこまで一夏くんの事を想っているなら、おねーさんはもうからかうのはやめますから」
簪の質問に、楯無は微笑みながら一夏との関係は遊びだったと割り切って、もうしないことを約束するように言った。
それが楯無として姉として出来る事はそれぐらいしかないのだからと朱音と話した事で考えはまとまっていた。
「ありがとう。お姉ちゃんの気持ち聞けて私は楽になったよ」
楯無の答えを聞いて簪は気持ちがすっきりとしたのか言葉がはっきりとして弾んでいた。
「でも一夏くんの周りは女の子多いから簪ちゃんは人一番の努力が必要かもね。ふふ」
「うん。それは知っているよ。みんなに負けないぐらいたくさんがんばる」
楯無はちょっとからかう調子で言った言葉に、簪は真剣な表情で強い言葉で言った。
簪は一夏の周りは女子が多いのは理解し覚悟の上だから人一倍がんばることに決心していたようだ。
「がんばりなさい。簪ちゃんはもう弱く無いんだからね。私も応援するよ」
「ありがとう。お姉ちゃん…っ…」
「もう、簪ちゃん泣かないでよ」
簪は、姉である楯無から応援してくれるとわかって簪は眼が潤んでしまった。
楯無は一夏との関係を割り切った事で妹とのわだかまりが起きないとわかって気持ちがすっきりとしたように微笑んでいた。
そして、簪は楯無に手を振って廊下から立ち去っていった。
「………」
朱音ちゃんと話してよかった…。
私がまだ一夏くんへの気持ちがはっきりしてない割り切れる段階でよかったわ…。
このタイミングで簪ちゃんが話してくるなんて運命だったのかしら…?
もし私が一夏くんの事を好きになっていたら…?
簪ちゃんから一夏くんを奪う最低なお姉さんになっていたのかな…。
でももうそんなことは私は起こさないよ。
がんばると言った姿を見たらお姉さんとして簪ちゃんを応援したくなる…。
朱音ちゃんありがとう…。
楯無は朱音に対して感謝する想いを胸に秘めた。
簪の仲が良い段階で気持ちを伝えられたのだから。