IS~Lost Memory~   作:竜太

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7話『隠された過去』

IS学園寮―朱音、楯無部屋―朝

 

「それにしても今日は学園が休みと言っても……何も考えてなかった」

朝、眼が覚めて身支度はしたものの部屋着のままどうしようか悩んでぼやいた。

今日は学園が休日だけど私には所持金という概念が今は何も無かった…。

 

「そうねぇ……朱音ちゃんはまだ来たばかりだから学園から出れないね。それと後これ」

楯無が考えこみながら言って、何か端末を私に手渡してきた。

携帯型の…なんだろう?

 

「これは…?」

「通信端末よ。電話とかメールする為の物ね。学園から朱音ちゃんに用意されたものだけど自由に使っていいのよ」

楯無の説明を聞いて思い出した…所持金の他に連絡方法が私には何も無かった…。

 

「…ありがとうございます」

「気にしないで、元々朱音ちゃんは何もない状態だったからね。学園が用意するのは当たり前みたいな…んふふっ」

私は感謝の気持ちをこめて礼を言うと、楯無は首を振って微笑んだ。

それにしても落ち着いて考えると私はいろいろと足りない事が多い気が…。

 

「ちなみに楯無…たしかこのIS学園って部活動または委員会か何かに入るのが必須じゃなかったっけ…?」

思いついた疑問を生徒会長でもある楯無に聞いてみた。

険しい表情で扇子を頭に当てていた。

何か難しいことが起きているのかな?

 

「朱音ちゃんその通りなのよ。生徒会のほうへラブコールがいっぱい届いているわ。そもそも本人は記憶喪失だから迷惑かけないよう生徒会に招待状を送ってって生徒のみんなに連絡したから書類の山ね」

楯無は両手を広げてやれやれといった表情で言っている。

部活動とかそういう話が一切なかったのは生徒会の手回しがあったから声をかけられることは無かったと…。

 

「そんな事になっているのですね…なんだか生徒会に迷惑かけてしまってますね…」

申し訳ない気持ちが沸いたから思いを伝えると楯無が首を振った。

 

「いいのよ。生徒会はそういうものだから。それに一夏くんは今は副生徒会長だから勧誘話は止まったけど、生徒会に所属する以前は朱音ちゃんの時より倍の倍以上あったから…さすが男の子って感じ…うふふ」

私は呆気にとられた…倍の倍……一夏はどれだけ見えないところで人気があるのよ…。

 

「でも…そうねぇ…朱音ちゃんの所属は早めに決めたほうがいいわね。今度専用機来るみたいで適性Sは国家代表になるかも知れないだけに人気がもっと出ちゃうわ」

「私は国家代表になるつもりはないけど代表候補組になるとそういう噂になりますね…」

楯無の話を聞いて私は思ったことを言った。

私に専用機が来ることは代表候補生になるのも決まったも同然だから将来的に国家代表になるかもっていう憶測の噂は必ず流れる。

 

 

 

「……朱音ちゃん、生徒会長の…ううん、私の補佐になってみる気ある?昨日みたいに私と話するだけで良いから役職としては生徒会長補佐ね」

楯無の考え込んだ後に出た話に私は眼が点になって驚いた。

話するのは別に構わないけど…。

でも補佐とかそこまでなる理由って何?って疑問になる。

 

「うーん…楯無、なんで私が生徒会長の…楯無の補佐になってほしいのは何故なの?」

「そうね。朱音ちゃんに全部教えてあげる…私の事…長い話になるから良いかな?」

私の質問に楯無は顔を俯きながらも、はっきりとした言葉を聞いて頷いた。

 

「私の楯無の名は更識家当主の名前で代々受け継がれた由緒正しい名前なのよ。そして私には幼馴染が居るのよ。でも楯無の名を私が引き継いだ時…特別視するようになっちゃってね。まあ、元々お手伝いとして居た人の子供だからそうなるのも仕方が無いんだけど…」

私は黙って楯無の話を聞いていた。

何故私が話し相手になっていたのか…なんとなく憶測が出てきた。

 

「それってつまり楯無の幼馴染は両親が更識家のお手伝いとして居たから、楯無の名前を引き継いだせいでその子は幼馴染ではなくお手伝いとして仕事として側に居るという関係に変わった…?」

私の憶測を疑問として楯無に質問する。

 

「そうよ…簪ちゃんもそう…私が楯無になったからお姉さんじゃなくて楯無の名を汚さないように更識家全体を見るようになって姉妹という関係じゃなかった…とてもツンっとした殺伐とした感じだったのよ?それでも今の簪ちゃんの雰囲気になっているのは一夏くんのおかげなの…感謝しているわ」

……話を聞いて私の憶測は合っていた。

楯無はただ友達として接して欲しかった。

更識家、生徒会長、それら権威がある人として見て欲しくなかった。

呼び捨てで呼んで欲しいのも距離を近づけて欲しくてそうしている…。

簪が一夏の事を好きになった理由もここにある…更識家当主としてではなくただの姉妹の関係へと仲を戻してくれたからだろうね。

詳しい経緯は聞かなくてもだいたいは予想がつく。

 

「私にはね…朱音ちゃんのようになんでも話できる相手が居なかった…IS学園では生徒会長として見られ…更識家では当主楯無として見られ…幼馴染には仕事として……」

楯無は言葉にするほど、沈んだように身が小さくなっている雰囲気を感じる。

そして泣きそうな顔をしている…。

もういいよ…楯無の気持ちはわかったから…。

 

「楯無、良いよ。私はわかったから、更識家当主として、生徒会長として役割を全うしようとして気を張っていた近付いて親身になる相手が居なかった…私にもわかる。それがどれだけ重くて辛いことなのか…」

楯無の話は、私が何者かという不安と悲しみ…そして恐怖にかられる気持ちを抑える為に気を張っているのと同じぐらい重たいと思えるから同情できる…。

 

「朱音ちゃんにはわかるの…?この私の気持ちが重たいって…」

楯無の泣きそうな表情で言うのを見ると私も全てを打ち明けていいかなって思った。

この想いは記憶喪失してからずっと抱えていた胸の内…。

たった3日なのにもう崩れそうなほどの想い。

……聞いてばかりいないでさらけ出したほうがいいよね…。

 

「私もこうして落ち着いて平然としているのは私の性格じゃないのよ。私の失っている記憶が関係しているのよ。それはとても深い闇と思う…。闇に体が浸っていたから気持ちを抑えることに慣れている…。だからこうして落ち着いている…なんで深い闇なのかっていうのはね……」

一呼吸を置いて真剣な表情で次の言葉を言う。

 

 

 

 

 

 

『更識家が裏組織と敵対している事を知っている。そしてファントムタスクという名前に以前から聞き覚えがある』

 

 

 

 

 

 

―――。

―更識楯無side―

 

胸に秘めて誰にも言えなかった事を話した。

それから朱音ちゃんが打ち明けた言葉を聞いて私は天地がひっくり返った思いを感じた。

驚愕の一言…私の沈んだ気持ちを一気に変えた…。

打ち明ける言葉を言う時の朱音ちゃんの雰囲気が…。

真剣な表情の中に闇を纏っているように感じる…。

 

「それが…朱音ちゃんの知識という事…?」

記憶喪失では個人的な事は思い出せないはずだからそう質問するしかなかった。

 

「私の知識の記憶は更識家は対暗部用暗部という事を知っていた。そしてファントムタスクに何か聞き覚えがあるけどそれが何か思い出せない。恐らくそれほど喪失している記憶に関係性があるからと思う…。何よりIS学園の専用機の情報が簪の打鉄弐式以外全てある。それはつまり…打鉄弐式の完成以前まで裏組織に私は関わっていた可能性がある。それがファントムタスクかもしれない……」

朱音ちゃん…あなたはしっかりしていたせいで膨大な知識から何者なのかもう検討がついていて…その恐怖と戦っていたの…?

普通の人…並みの人間じゃないから気を張ってまで平然を装える…。

だから私の悪戯にも無反応だった…辻褄が合う。

闇に関わらない限りそんなに無反応になれる人なんて居ない…。

私以上の裏の闇を体に背負ったから記憶喪失しても体から闇が消えていない…。

でもね朱音ちゃん…あなたは記憶喪失になったからこそ根の性格がはっきりしているんだよ…?

 

 

「朱音ちゃんの事は私はよくわかったわ。でもね…今の朱音ちゃんはIS学園の生徒よ。ファントムタスクでもなんでもないわ。記憶喪失なのは何か抜け出すのに必要だったから悪い事考えている人はそこまでする必要がないもの。記憶喪失してまでスパイするような裏世界の人は私は知らないわ」

記憶喪失してIS学園に来るまでの利点なんてないもの、そのことを教えてあげた。

だって、朱音ちゃんは人間関係を考えられるほどしっかりしているもの。

 

「……ありがとう。楯無…」

朱音ちゃんは頷きながら礼を言っている。

ございますの語尾が抜けているのはやっぱり気を張っていたのね…。

 

「それにね。朱音ちゃんの根の性格ははっきりしているのよ。話をよく聞いてくれて、気が利く…何より気が強いわ。私の家の事知っていてファントムタスクに聞き覚えがある事で自分の正体に気づいて不安になっても、ずっと落ち着かせるように気を張って平然としていた事はとても強いことよ」

私の感じた思いをはっきりと伝える。

朱音ちゃんの側に居た私が言える事だから。

でも朱音ちゃんの話を聞いて私も楽になった気分…この子悪い子じゃないもの。

あなたのおかげで私のほうが助けられているんだからね…。

 

 

side end

―――。

 

 

 

「ふぅ……楯無に言えた事で肩の荷が下りた感じですね」

私は胸に秘めていた、隠していたことを言えてすっきりとしていた。

知識だけとは言え、楯無の前では隠すものが多すぎたからね…。

一緒に居ることが多い分言いたくても言えなかった。

 

「お互いさまよ。私も誰にも言えなかった事を言えたんだから」

「そうですね。まあ、生徒会長補佐とか副生徒会長じゃないのは疑問ですが…」

話していて失念するところだった。

補佐とか言う話をしていて脱線しすぎた。

 

「それね。副生徒会長は一夏くんだからそれ以上の席がないのよ。でも生徒会長は学園最強じゃないといけない。けど補佐は私の自由になれるからね。私の権限でね♪」

楯無は微笑みながら扇子を広げて『権限執行』を見せつけている。

生徒会長権限はどこまで発揮するのと感じて溜息が出そうになった。

 

「それと、私の補佐でもあるから面倒を目合うのもいいわね。朱音ちゃんは私の事を特別視してないから素直になれる…よく考えたら一夏くんと気持ちが似ているかもね」

「うーん…まあ何かに所属しないと話がややこしくなるからここは素直に従う事にしましょう…ってそれはどういう意味なの?」

一夏と気持ちが似ていると…?

こういうとき無感情な私がやるせない。

 

「んふふ。まだそれは教えないわ。じゃあ決定ね。それと長話しすぎたわね…たまには体を動かそうかしら…」

「それで良いですけど…そうですね。今日は休日だけど私はやる事何もないです」

楯無の秘密は聞いてもなかなか答えてくれないだろうから諦めた。

それにしても今日休日だから私は何もする事が思いつかないんだよね…。

 

 

 

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