楯無が何もする事ないのなら体を動かすという事で何をするかと思ったら組み手だった。
組み手といっても武術ならなんでも良いというね…。
胴着と紺袴を楯無が生徒会長権限とか言いながら貰って更衣室に今居る。
「楯無……私はどうやら胴着の着方を知らないみたいです。武術、体術の知識はあるのにね…」
更衣室での私の一言でした…。
知識では胴着の着方をまったく知っていないのに武術とかどうやって覚えたのでしょう…。
「あらら?じゃあおねーさんが教えてあげる♪」
楯無がわくわくした表情で私に手取り足取り胴着の着方を教えてくれた。
悪戯半分で私の体触ったりするんだけど、悪戯はやめてください。
………しばらく経過後。
「よしと…ちゃんと着れたね(朱音ちゃんに悪戯しても無反応は変わらなかったわ…)」
「ありがとうございます」
「じゃあ道場へ……向かいましょう」
胴着に着替え終わったけど、楯無は悪戯が失敗したような浮かない表情のまま、道場のほうへと向かっていった。
…。
……。
………。
―武道場―
IS学園は武道場のほかに剣道場といった専門の場所が種類ごとに設置されている。
「それで楯無、どういう風にしますか?」
組み手でもどんな事からしたらいいのかわからなかったから質問した。
「そうね…誰も見て無いから本気の勝負をしてみましょう。私を負かしてもいいよ?」
本気の勝負…私の知識からではかなり膨大に武術、体術あるけどまだそれは口にしていない。
そして負かしても良いとか疑問系で聞いてくる。
「私が勝ってしまったら学園最強が覆してしまいますよ?」
「まぁまぁ。冗談よ。ただ朱音ちゃんの本気みてみたいからそれぐらいの覚悟でしてちょうだい」
本気でしてもらいたいのですね。
じゃあ…そうしましょう…。
「ふぅ…じゃあ少し心の準備しますよ」
私はそう言って武術、体術の知識を思い起こしておさらいするかのように頭の中でイメージを膨らませる。
(…なにこの朱音ちゃんの気配が…)
楯無と向かい合う朱音は眼を閉じて意識を集中しだすと気配が変化した。
気迫と威圧感に闇を纏っている感じで体を力ませないと息苦しくなるような複雑な気配だった。
「…良いですよ。楯無」
朱音は眼を開けて息を吐くと集中力が増したように真剣な表情だった。
気迫はそのままに威圧感はなりを潜めた。
「えぇ…本気できなさい」
楯無はそう言うと、真剣になって体に力を入れる。
相手が朱音だろうとさっき感じた気配は並みの人ではなかった。
闇をわずかに感じて知識だけなのにそこまで出来るのかは理解が及ばなかった。
「いきます」
「ッ!」
朱音のなりを潜めていた威圧感が湧き上がりと同時にドンッと目の前に急接近してきた。
楯無は息を呑み反射的に身を横にし、かわそうとする。
「うっ…」
朱音は楯無の手首をぎゅっと掴んで、力いっぱい引っ張り、楯無の体を後ろ向きにさせた。
予想外ほどの力がある事に楯無は一瞬戸惑ったものの、身を反して手首の拘束を解いて距離をとった。
「…こんな感じ」
「朱音ちゃんの力強さが女の子じゃないわ。あぁ…驚いた…」
朱音の落ち着いた声を聞いて、楯無は一瞬の戸惑いによって浮き出た額の汗をぬぐっていた。
「うーん…楯無もやっぱりそう思う?打鉄に乗るときも身軽だったことに違和感ありましたからね」
朱音は首をかしげながら自身の手を眺めてみていた。
「朱音ちゃんの身体能力が異常に高い数値だったのよ。これほどまであるなんて私は驚きよ」
やれやれと言った感じで言う楯無。
身体能力の高さはデータ上の数値だったから目の当たりにして朱音の力強さを改めて思い知った。
「それで…どうする?」
距離は離れたままお互い動かないことに思い悩んだ朱音は質問する。
「んー…次から私も本気でやります」
真剣な表情になって言う楯無に朱音は頷き、組み手を再開させる。
誰かが見ていたら呆気に取られるだろう2人の素早い動きと身のこなしは鋭かった。
お互い力の限り全力で挑んでいるから、掴んでは解いて掴まれては解いてを繰り返している。
鋭く素早い動きの連続でも潜るように避けては動き続ける。
………しばらく経過後。
「はッ」
「あんっ」
状況整理、気合入れて足払いと掴み投げを瞬時にやったら楯無を床に倒せました。
倒した途端に楯無の女らしい声が出ました。
以上です。
「すぅはぁ…体力…勝負になったけど…楯無が倒れたね……」
「はっはぁふぅ…そう…ね…」
時間わからないほど続いたせいで楯無も私も汗だく…。
息も荒れてて少し落ち着かせよう…。
「すぅ…はぁ…でも…すごく疲れたね…」
「ぷふぅぅ…はぁぁ…朱音ちゃん…私も…これ…みんな見てなくてよかったぁ…」
私も楯無も床に大の字ならぬ仰向けに倒れて道場に荒い息が響いて聞こえる。
全力でやった達成感というか…満足した気分だった。
『だが、私は見ていた』
「「えぇッ!?」」
道場に響く声に私と楯無は声を揃えて驚いた。
気配も何も感じてなかったから、さすがの私も驚愕した。
床に寝たまま声をしたほうに顔を向けると織斑先生だった。
「ふふっ。今日は学園は休みでも教師は休みではないからな。まったく、誰がやっているかと思ったら更識と秋葉とはな。にしてもだ、更識は久しぶりに全力で相手して満足できただろ?」
「織斑先生、そうです。朱音ちゃんは強かったから全力で出来たの織斑先生以来です」
楯無は息を整えて弾んだ声で微笑んでいるように言っている気がする。
私もこの満足感は悪くない…どうして私は強いのかなんてどうでもいいぐらい気持ちが良い。
楯無もこれ全力でやれるの織斑先生しか居ないんだねって率直に思った。
「秋葉もだ。その強さは謎だろうが今の秋葉は人としてしっかりしているのは私にはわかるからな。何も不安する事は無い」
「はい…ありがとうございます」
私の心の闇を知っているかのような言葉に安心感を感じて顔が緩む気がする。
「あの、織斑先生。それより私の学園最強は譲らないといけないかしら…?」
「おいおい、何故私に聞く?更識はたまに馬鹿になるから困るぞ」
額に手を当ててやれやれといった表情で言う織斑先生。
聞く相手が違うよって私は口には出さない代わりに織斑先生が言っているから…。
もう笑って良いかな?
「あはは。楯無、私は勝っても結局その座は要りません」
「朱音ちゃんのことだからそう言うと思ったわ。しょうがないなぁ…続投させていただきます。ふふ」
楯無の返事を聞いて一緒に微笑みあう。
結局わかってて聞くとかないですよ。
「まったく、お前達は打ち解けるのが早いな。私はこれで失礼する」
「「ご苦労様です」」
楯無と声が揃ったせいで「息もぴったりだな」と言って織斑先生が立ち去っていった。
それを聞いて私達は笑いあった…とても気持ちが良い…。
「さてと…汗も結構かいたわね…シャワーいきましょ?」
「そうですね。場所案内してください…」
楯無の誘いに返事すると「もちろーん」といって元気な声あげて、私の手を引っ張っていく。
私は隠してきた事、話せたから気を張ることもなくてすっきりとしていた。
それでもさらなる不安はある…喪失している記憶が私にとって今後の生活に左右されるかもって…。
そう…全てを思い出した時……。